倉科カナ&福本莉子インタビュー~舞台『お勢、断行』がCS衛星劇場でテレビ初放送

2022.8.15
インタビュー
舞台

(左から)福本莉子、倉科カナ (撮影:宮田浩史)

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2年越しのこの公演が、わずかでも演劇界に明るい話題をもたらす光になれば

CS放送局「衛星劇場」では、世田谷パブリックシアターで上演された舞台『お勢、断行』(原案:江戸川乱歩、作・演出:倉持裕)を、2022年8月28日(日)18:00よりテレビ初放送する。もともと2020年に上演を予定しながらも、コロナ禍で公演2日前に中止となった本作は、2022年5月、主演を務めた倉科カナをはじめ、ほぼ当初の顔ぶれが揃う形で待望の上演が叶った。今回、テレビ放送に先立ち、2年の時を経て改めて感じたお勢の魅力を倉科カナ自身に語ってもらうとともに、この復活上演から参加となった福本莉子に作品にかけた思いを聞いた。
 

ーー 今回の舞台を終え、改めてどのような作品だったと感じていますか?

倉科 キャストも物語も本当に素晴らしい作品でした! どのキャラクターもしっかりとフィーチャーされていましたし、何度かタイムリープをして同じ場面が繰り返されることがあるのですが、それによって物語を多角的に見せることも出来ていて。今まであまり見たことのない舞台になっていたのではないかと思います。

福本 江戸川乱歩の原作を題材にしていますので少しダークさがあるものの、倉持(裕)さんの演出によってユーモアが加わり、とても見やすい作品になっているなと感じました。それに、倉科さん演じるお勢さんのお着物など衣装も見応えがあって。放送だと、そうした細部も楽しんでいただけるのではないかと思います。

ーー お2人が演じたお勢と晶にはそれぞれどのような印象を持たれましたか?

倉科 お勢は“稀代の悪女”と呼ばれているほどの女性で、すごくクレバー。悪に対する美学や哲学も持っていますし、ただの悪人とは呼べない存在感がありますね。掘り下げれば掘り下げるほど魅力的な人物ですし。しかも、その一方で晶さんを溺愛したりと感情を顕にするところもあるので、“稀代の悪女”である一面とは別に、人間味のある女性として演じたいなと思っていました。

福本 晶はお勢さんとは対照的に、純粋無垢すぎるお嬢様ですね。今作は登場人物のほとんどが悪人なので(笑)、その中で晶は翻弄されてしまう。誰が味方で誰が悪なのか分からない状況になってしまうんです。でも、唯一、お勢さんのことだけは慕っていて。けど、そのお勢さんにも翻弄されるから、また悩んでしまう(苦笑)。そうしたどこまでも純粋な姿を大事にしました。

ーー では、お互いから見た、それぞれの役の魅力は?

倉科 莉子ちゃんが話してくれたように、晶さんはとても純粋ですね。でも、だからこその残酷さも感じます。お勢はどちらかというと穢れている身なので(笑)、晶さんのことが光のように見えることがあるんです。そうした、一見するとまるで正反対のような2人ですが、でも実は根本の部分で繋がっているようなところもあって。だからこそ、お互い引き寄せられたのかなと思います。

福本 お勢さんは純粋にカッコいいです! 晶は一人っ子なので、こんなに素敵な女性が目の前に現れたら、お姉様として慕ってしまう気持ちはすごくよく分かります。……ただ、お勢さんってたまに難しいことを言うんですよ(笑)。

倉科 たまにじゃないよ。ほぼ難しいことばかり言ってる(笑)。

福本 ですよね! だから、一緒にお話をしていても晶はたまに置いてけぼりになっちゃうんです。しかも、お勢さんは賢いから、晶がちょっと疑問を口にしただけで、聞きたかった答えの先のさらにその先のことまで話してくれる。すると、逆に困惑しちゃって(笑)。だって、酷い時にはお勢さんってどんどんと一人でしゃべってるんです。晶としては、『えっ、ちょっと……お勢さん!?』という感じです(笑)。

ーー そうした役へのアプローチに関しては、演出の倉持さんとはどのようなお話しをされたのでしょうか?

倉科 今回は自由にやらせていただきました。でも、すごく細かく見ていらして、芝居がおかしくなっていくと的確な言葉をくださるという感じでした。印象的だったのが、私が稽古場で焦っていた時期があったんです。まわりは素晴らしい役者さんばかりですし、“稀代の悪女”と謳っているので佇まいもしっかりしないといけなくて。そうしているうちに、逆に立ち姿や動きに変なクセがついてしまったんですね。それを見た倉持さんから、『少し表現を抑えて』と言われてしまって(笑)。でも、そのひと言があったおかげで、一度ギアを目一杯まで上げて、引き算するように場面に合わせてどんどんと芝居を抑えていくという方法を取るようになりました。

福本 私は台本を一人で読んでいただけでは分からないことがたくさんあったんです。セリフにも本音と建前がたくさんあり、心の奥底では別の真意があったりして。それが見えづらかったので、倉持さんに相談したことがありました。そうしたら、『裏の言葉ばかり考えてしまうとどんどんと混乱していくから、シンプルに台本どおりにやってみては?』というアドバイスをいただいて。それからはすごくラクになりましたね。

倉科 確かにこの作品は本当に難しいんです。時間軸もバラバラですし。場面の時間が急に戻ったりすると、それに合わせて私たちもギアを……。

2人 (同時に)グッ!と。

倉科 そう!(笑) グッとギアを上げなきゃいけない。

福本 当然、お客さんにも時間が戻ったことをすぐに分からせないといけないですし、視覚的にだけでなく、見る側の気持ちまで一緒にその時間軸に引き戻さないといけないので本当に大変でした。

倉科 ただ、大変ではありましたけど、考える楽しさもありました。倉持さんは私たちが提示した演技をいつも肯定してくださって。決して否定することなく、一度受け止めてくれたうえで、プラスアルファの演出を付けてくださるので、やりがいがあるんです。ラストシーンもほぼ任せてくださいましたし。そうした演出だからこそ、キャスト全員が生き生きしているんだと思います。

ーー また、この公演は当初2年前に上演を予定していましたが、コロナ禍によって延期となり、この度、待望の上演となりました。公演が決まった時はいかがでしたか?

倉科 当時は公演が中止になるなんて思ってもみなかったので、信じられない気持ちでした。本番初日直前での中止だったので、せめてゲネはやろうということになったのですが、共演者さんやスタッフさんたちの顔を見るのがつらかったですね。泣いちゃいそうでしたから。でも、すぐに倉持さんが『必ず再演しましょう!』と言ってくださって、それがこんなにも早く実現して。今回、初日が開いた時は、“お客さんの前でお芝居ができるってこんなに幸せなことなんだ!”と喜びでいっぱいでしたし、まだまだ暗いニュースが続く中、こうして2年越しに幕を開けられたことは、多少なりとも演劇界に光が指し始めたというメッセージにもなるんじゃないかと思いましたね。

福本 私はこの復活公演からの参加になるのですが、ほぼ2年前のキャストがそのまま出演されていらっしゃったので、稽古場で孤立しちゃうかなと思っていたんです。でも、皆さんすごく優しくて。私のことを事前にいろいろと調べて話しかけてきてくださる方もいて、おかげですぐに馴染むことができました。ただ、皆さんにとってはある意味で二度目になるので、稽古のスピードがびっくりするぐらい早くって。それが一番の不安要素でしたね。

倉科 そうだよね。私もあの早さには驚いたもん(笑)。

福本 倉持さんがどんどんと進めていくから、私としては“え〜……ちょっと待ってぇ”っと思ってて(笑)。しかも、まわりはすごすぎるキャストさんばかりですし、私にとってはこれが初めてのストレートプレイだったこともあって、常にトップギアの稽古に必死についていくだけでした。

ーー では最後に、放送に向けて楽しみにされていることを教えてください。

倉科 今回はどのシーンもすごく気になります!

福本 私もです。だって、本番中も2人して舞台裏でずっとモニターを見てましたもんね(笑)。

倉科 そのモニター越しでも、全部のシーンが本当に美しくて。だからこそ、今回の放送ではどういうふうに編集されているのか、私も楽しみなんです。

福本 セットや装置も含め、本番の舞台をご覧になられた方々からよく『立体的に見えた』という感想をいただいたので、はたして映像だとどう映っているのか、私もワクワクしながら放送を待ちたいと思います。

取材・文:倉田モトキ
撮影:宮田浩史

 
【倉科カナ】
ヘアメイク:北原果(KiKi inc.)
スタイリスト:道端亜未

 
【福本莉子】
ヘアメイク:冨永朋子(アルール)
スタイリスト:武久真理江

 
衣装協力(福本莉子):
エミリオ・プッチのドレス¥248600、スカーフ¥51700(問合せ先:エミリオ・プッチ ジャパン/03-5410-8992)
イー・エムのイヤーカフ(ストーン付き)¥11000、リング¥70400(問合せ先:イー・エム青山店/03-6712-6797)

【倉科カナ PROFILE】 Kana Kurashina:1987年12月23日生まれ、熊本県出身。2009年に連続テレビ小説『ウェルかめ』で主演を務める。近年は舞台でも活躍し、主な作品は『CHIMERICAチャイメリカ』、こまつ座『雨』、『ガラスの動物園』など。また、最近のドラマでは『寂しい丘で狩りをする』、『正直不動産』、『刑事7人』など。
 
【福本莉子 PROFILE】 Riko Fukumoto:2000年11月25日生まれ、大阪府出身。2016年、第8回「東宝シンデレラ」オーディションでグランプリを受賞。2018年、映画『のみとり侍』で役者デビューを果たす。
2020年の主演映画『思い、思われ、ふり、ふられ』では大きな評価を得た。現在、ドラマ『赤いナースコール』に出演中。

 

放送情報

舞台『お勢、断行』
 

(撮影:山添雄彦)

■放送局:CS「衛星劇場」
■放送日時:2022年8月28日(日)午後18:00~20:30
※本編終了後に、倉持裕、倉科カナ、福本莉子、大空ゆうひによるスペシャルインタビューも放送

〈作品情報〉
■公演日程:2022年5月11日~5月24日
■会場:東京・世田谷パブリックシアター ほか
■原案:江戸川乱歩
■作・演出:倉持裕
■音楽:斎藤ネコ
■出演:倉科カナ、福本莉子、江口のりこ、池谷のぶえ、堀井新太、粕谷吉洋、千葉雅子、大空ゆうひ、正名僕蔵、梶原善
■STORY:時は大正末期、女流作家のお勢は資産家である松成千代吉の屋敷に身を寄せていた。屋敷には千代吉の娘・晶や住み込みの女中・真澄、そして小姑の初子からの圧力に苦しむ後妻の園がいた。ある日、園は代議士の六田とともに松成家の財産をすべて奪い去ろうと計画を立てる。が、思わぬところで殺人事件が起き、やがて計画は予想外の惨劇を生み出していく――。
 
■CS衛星劇場の視聴方法:https://www.eigeki.com/page/howto
■衛星劇場カスタマーセンター 0570-001-444
【受付時間】10:00~20:00(年中無休)
(IP電話専用 03-6741-7535)
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