京都公演開幕! 舞台『閃光ばなし』黒木華×片桐仁インタビュー「力を抜いて観に来てほしい」
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政子はプラスでもマイナスでもいいから何か起こしたい人
――黒木さんはご自身が演じる佐竹政子(安田章大演じる佐竹是政の妹)という人物像をどんなふうに受け止めていらっしゃいますか?
黒木:この作品に登場する女性はみんな強いんですが、その中でも政子は、より前のめりに生きているといいますか。悲しいことや辛いことを飲み込んで、そこから離れようとしている人かなと思います。でも、過去やいま起きていることからは離れられないんですけどね。それでもなんとかして振り払いたい、みんながやれないならじゃあ私ががんばってやるよ!みたいな人なのかなと思いながら演じています。ハチャメチャですけど。
片桐:妙な説得力がありますよね。乱暴だし、むちゃくちゃなんですけど、高潔さみたいなものがある。ジャンヌ・ダルク的な。
黒木:政子は兄ちゃん(是政)と対になっているので、政子にないものを兄ちゃんが持っていて、兄ちゃんにないものを政子が持っている。そこに「兄妹」ってことの意味があるのかなと思いながらやっています。あと、旦那さん(片桐演じる柳英起)が意外と政子のことをちゃんと想ってくれているんだなって。
片桐:ね!
黒木:政子は、旦那さんもちゃんと大事に……はできていないですが(笑)、好きは好きなんだろうなと、今はそういう細かい繋がりをちょっとずつ繋いでいっているところです。
――片桐さんは、その柳をどんな人物だと思われますか?
片桐:是政の台詞にもあるんですけど、こんな現状嫌だって思いつつも、まあこれはこれでって楽しめちゃう人。現状に不満はあるけどそれを変えたいっていうほどのエネルギーはない、あと矢面に立ちたくない、責任を取りたくないっていうようなね。僕もそういうとこあるんでね、はい。
黒木:(笑)
――政子のことはどう思っているのでしょう?
片桐:最近になって気付いたんですけど、柳と政子は結婚してるんだけど、正式に入籍はしていないのかもしれないんですよ。役名が「柳政子」になっていないので。結婚するっていって一緒に暮らして夫婦になってはいるんだけど、「佐竹政子」なんですよね。事実婚なのか、戦後のどさくさで戸籍がないのか、わからないですけど。その、自分のものになってほしいんだけど、やっぱこう手が出せない感じ。是政に対する嫉妬もあるけど、尊敬みたいなものもあるし。「なんとかしてほしい」とか図々しいことを思っているし。でも政子は、そこ(兄)に加担することによって、ここから抜けようとしてくれている。やっぱりジャンヌ・ダルクですよね。柳は、その環境に、歯がゆいとは思いつつもなあなあにする。日本人の美徳“なあなあ”がやっぱね、柳にはありますよ(笑)。波風立てまいとして、結果プラスでもマイナスでもない人。政子はプラスでもマイナスでもいいからとにかく何かを起こしたいって人だから。
黒木:そうですね。
――脚本・演出の福原さんとは黒木さんは初めてですが、脚本や演出に実際に触れていかがですか?
黒木:ロマンチストな人なのかなというのは脚本を読んで感じました。言葉もそうですし、音楽も。台詞の語感をすごく大事にしていらっしゃいますし。演出面では、ニュアンス含め、本当に細やかに見てくださっているように感じています。安田さんと二人のシーンでは、心情をとても大事にされています。
――片桐さんは、福原さんとは舞台では『豆之坂書店 〜読みたがりたちの読書会〜』(’11年)ぶりですね。
片桐:はい。あとはドラマ『あなたの番です』の脚本でお世話になりました。ドラマは完全に僕、当て書きでしたね(笑)。
――今回も当て書きですか?
片桐:当て書きだと思います。福原さんは僕のラジオとかも聴いてくださっているので、僕のこずるいところというか。僕は、自分を棚に上げる力がなかなかすごい、卓越したものがあるので。そこは(役に)あるんじゃないかな(笑)。でも演出をうけるのは11年ぶりですから。福原さんの舞台を観に行くと「お願いします」って言ってたんですけど、とにかくタイミングがあわなくて。
――じゃあ片桐さんにとっては念願の福原演出なんですね。
片桐:そうです。
――実際に演出をうけていかがですか?
片桐:ご本人が「最近は昭和30年代の芝居ばっかりやってる」って言ってたけど、あの世代に対する憧れみたいなものを感じます。みんなが中流社会になる前だから、まだ貧しいんですよね。でもなんかキラキラ輝くものがある。あの、なにかに対してワッと向かって行くエネルギーみたいなもの。今ってみんなが自分のやりたいことを発表できるけど、コミュニティがこまごましていますよね。それはそれでいいんですけど、でもこの作品の時代はそうじゃなくて。そういうなんか、現状を打破するエネルギーみたいなところが魅力ですね。演じるのがこんなに大変だとは思わなかったんですけどね。
黒木:(笑)。ですよね。
片桐:いや~大変です、はい(笑)。