まるで青春の1ページ『にじさんじ 4th Anniversary LIVE「FANTASIA」』 Day1 レポート
『にじさんじ 4th Anniversary LIVE「FANTASIA」』ナイトステージ Day1 2022.9.30(FRI)ぴあアリーナMM
にじさんじ史上最大の大型フェス「にじさんじフェス2022」が幕張メッセにて開催された。「文化祭」をテーマに様々な催しが行われたのだが、まさに“前夜祭”という表現がピッタリの「FANTASIA」DAY1の様子をレポートしたいと思う。そもそも『にじさんじ 4th Anniversary LIVE「FANTASIA」』は2022年1月22日-23日に演者たちがオリジナルの共通衣装をまとった3D音楽ライブを銘打たれていたものの、延期に。その振替公演として、にじさんじフェス2022の前夜祭のようなイメージでDAY1を、DAY2はにじさんじフェス初日の夜に行われた。DAY1の出演者は月ノ美兎、樋口楓、笹木咲、椎名唯華、相羽ういは、夜見れな、戌亥とこ、白雪巴ら8名の手によって祭りの火蓋が切られた。
会場内はまさに祭りの前夜といった感じで、諸々の設営が済んだ広大な幕張メッセの会場を横目に、ライブステージが組まれたホールへと足を運ぶ。金曜の夜ということで現地へ直接足を運ぶことが難しかった方もいただろうが、逆にそれだけの労を惜しまず駆けつけたファンたちの熱気の高さが感じられる。樋口による開演前のアナウンスが流れ出すと最後に「よぉっしゃ!!ノーミス!!!」と長文を噛まずに言えたことに急に高ぶりだし、場内も大きな拍手で湧いたり、舞台裏から円陣の生声が聞こえてきたりと、呼び込みのアタック映像が流れる頃にはフロアの雰囲気も仕上がっていた。
徐々に高まっていくテンションの中、聞こえてきた1曲目のイントロは「Virtual to LIVE」。これまで数々のにじさんじライブの大トリを務めてきた名曲なだけに「うおお!初手から!?」というコメントも配信では飛び交っていた。メンバー全員による最初からクライマックスのような歌唱に場内もペンライトが荒ぶる。共通衣装の8人が勢揃いという絵面もまた華やかで、1曲終えたタイミングで改めて月ノからメンバー紹介が入り、1人ずつ挨拶を交わしていく。現地では前面の巨大モニターに8名の様子が映し出されていたが、配信ではAR技術でより解像度高く、鮮明に新衣装の姿を見ることが出来た。専用衣装のお気に入りポイントを各自紹介しつつ、ライブパートへ突入していく。
2曲目は笹木によるシンデレラ、続く3曲目は樋口、白雪、相羽の長身トリオによる「Shocking Party」が披露された。舞台袖からのリアルタイムAR映像とか、どうなっているんだ!という具合なのだが、彼女たちのダンスやフォーメーションがまるで袖のスタッフのような視点で見られたのは配信ならではの贅沢な視点だ。椎名と夜見による「エライエライエライ!」はまさに2人の為の曲といった感じで花畑チャイカの乱入もなく、無事(?)にステージを終えた。続いて委員長による「サクラあっぱれーしょん」。歌詞に合わせたダンスやカメラワークも秀逸で、間奏では花咲か爺さんばりに桜吹雪を舞い散らせ、それに合わせて会場にも紙吹雪が舞い降りてくる。まるでフィナーレのような演出だが、まだまだライブは始まったばかりだから恐ろしい。肩から息を切らしながら水分補給する委員長を横目にシラーっと入ってきた樋口を迎え、2人でMCパートへ。
延期になってしまったことで逆にハードルが上がったと語っていたように、準備期間が増えてしまったのでその分、ダンスや歌のレッスンも増えたが、その成果は十分に表れていた。冒頭の無料配信パートはここまでということで、続いては樋口のオリジナル曲「イロドレ・ファッショニスタ!」へ。元々が1月のライブということで、正月っぽい「サクラあっぱれーしょん」の選曲だったりもしたのだが、この曲も本来はこのライブでお披露目予定だったのだが、既にリリースされていたり……という弊害もありつつ、逆に予習済みのファンも多く、全編通して生バンド構成ということもあり、ファンクな曲調が生演奏でより映えたステージとなっていた。続いては白雪、委員長、夜見による「アオノショウドウ」。真っ青に染まる会場は、クールながらも芯の強さ、ハートの熱さを感じられる楽曲の通り、ステージから火花が飛び散ったり、そんな原曲に負けない重厚感のある3人の歌声が加わることで生まれる迫力は、やっぱり生で観戦してこそだろう。「幕張メッセのみんな~!もっともっと楽しんでいこうね!」と戌亥がノビのあるいい声で「Mela!」を披露。生バンドとの相性もバツグンな妖艶な雰囲気で一気に会場の雰囲気を塗り替えていく。戌亥に白雪も加わり「トキヲ・ファンカ」と2曲続けて色気たっぷりの選曲に会場も湧く。さらに「虎視眈々」を樋口・戌亥とまさかの戌亥3連続でクールでホットな戌亥の歌声を堪能。
樋口は歌いきると満足したのか何も言わずに退場し「あっ、あれっ?さっきMCしたからもう満足しちゃったのかな?ま、いっか。続いてはさくゆいの2人に登場してもらいましょう~」と戌亥がMCパートを回すことに。「はいど~も~!!」と漫才コンビばりの登場からのマシンガントーク、そして流れるように入るショートコントとCOWCOWさんの例のポーズで落ちを付けると流石に場内からも笑い(半笑い)が起こる(笑)。やりたい放題やる2人に「もう、満足かい?私、もう帰りたいんで……」と戌亥が退場すると、続いての曲へ。
先ほどまでの芸人モードはどこへやら「キミペディア」は急に可愛さ全開で、このギャップがたまらない。笹木・椎名・樋口・委員長による「強引niマイYeah~」はまさに文化祭っぽい選曲だ。アツいギターソロでは4人による掛け声でバンドメンバーらの演奏にも熱が入る。やっぱりソロでも可愛い椎名の「ヨワネハキ」、続く”楓と美兎”の「命ばっかり」はメジャーアーティストの貫禄がにじみ出るエモさだった。かわいいとかっこいいの甘辛ミックスが波状攻撃のように続いた所で、白雪巴による「ここで息をして」は初ライブとは思えない堂々としたステージングで、一気にアダルトな雰囲気で場内を掌握する。
最後のMCは夜見、相羽を呼び込み3人で。改めて共通衣装の話題に触れつつ、ここで誰が1番アイドルっぽいか?を現地のファンに決めてもらうことに。様々な“アイドルっぽい”ポーズでアピールをして、ペンライトの色で投票してもらうも、最もセクシーだった夜見が勝ちということに。最後のライブパートはそんな夜見と相羽による「どりーみんチュチュ」からスタート。2人のわちゃわちゃとした息のあったダンスがとても愛らしく、続いて夜見ソロで「チクタク・Magicaる・アイドルタイム!」を披露。曲の途中で画面の中へ入り込んでしまう演出もあり、過去の放送のサムネイルを振り返りつつ、未来に向けて……といったワンセンテンスを挟んで、再びステージに戻った時には早着替えで衣装が変わっているなど、バーチャルならではの画面の切り替えが新鮮だ。続いて戌亥・笹木・相羽による「ビバハピ」、戌亥・相羽・夜見・白雪による「CONVERSATION FANCY」とクライマックスに向けて1名ずつメンバーを増やしつつ、まるでファンに向けての感謝を述べるような選曲で繋いでいく。最後には笹木・椎名・委員長の3人による「PUNCH☆MIND☆HAPPINESS」を披露。歌詞に合わせて手拍子で会場を煽ると配信でも拍手の絵文字の爆撃で埋め尽くされる。ラストに向けて加速するような目まぐるしい展開は昨年のライブ『にじさんじ “LIGHT UP TONES” 』の終盤に披露した「ガヴリールドロップキック」を彷彿とさせたし、委員長や椎名というメンバーが偶然にも同じだったことも、それを彷彿とさせる一因にはなっていただろう。
「今日は本当にありがとう!」「明日からのにじフェスも楽しんでいってね~!」と元気よく飛び出すとアンコール1曲目「Hurrah!!」を披露。今回のにじフェスのテーマソングであり、文化祭がモチーフということもあり「フレー!フレー!」と全力な青春パンクようなイメージの応援歌に仕上がっている一曲だ。曲中の盛り上がりポイントとして3・3・7拍子を取り入れてるのも注目だが、レコーディング時のエピソードとして「私、この時はそんなに元気なかったんだよね……」と笑いを誘う委員長。「でも、歌ってくうちにすごいこの曲に励まされて。元気をもらえました!」と最高のコメントだ。ここで今日のライブを支えてくれたライブメンバーの紹介、そしてメンバーから最後のあいさつが一言ずつありつつ、やっぱり最後はこの曲「Wonder NeverLand」へ。大きく手を振るメンバーに合わせてペンライトを横に振る会場を後方の席から見ていたが、この人数が1つに動きを重ねる姿は、やはりジーンと来るものがある。文化祭の前夜祭として、最高のスタートだ。楽しい時間はあっという間に終わってしまう。今日のこのライブがそうだったように、きっと『にじさんじフェス2022』というお祭りも気付いた頃には終わってしまうのだろう。だからこそこの瞬間をめいっぱい楽しまなくてはいけないし、そう背中を押してくれるのが「Wonder NeverLand」だ。
今日はにじさんじを代表して8名がステージに立っていたが、『にじさんじフェス2022』の主役は彼女たちだけではない。様々な個性が存在し、互いに尊重しあえる場所こそが「にじさんじ」という存在なのかもしれない。だとすれば今日のステージはその象徴とも言える内容になっていただろう。8人がそれぞれ、個々の個性をうまく役割分担して、その魅力が遺憾無く発揮されていた。「まさか私が歌って踊るなんて、本当に思ってもいなかった」と委員長が語るように、得手不得手は誰にだってあるはず。それでも彼女たちが輝いて見えるのは、単純な巧拙が結果に紐付いていないことの揺るがぬ証拠だ。ある人は自分の姿をライバーに重ねて、ある人はライバーの姿を懐かしむように、彼女らが作り上げてくれる青春のきらめきこそが『にじさんじフェス2022』の、そしてこのライブ「FANTASIA」をキラキラと眩しく輝かせる魅力の正体なのだ。
文・レポート=前田勇介
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