岡宮来夢「僕らのカンパニーでできる最高傑作になっている」 ミュージカル『ファンタスティックス』初日前会見&ゲネプロレポート

2022.10.23
レポート
舞台

ミュージカル『ファンタスティックス』のゲネプロの様子

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ミュージカル『ファンタスティックス』が2022年10月23日(日)から日比谷シアタークリエで開幕する。

1960年にオフブロードウェイで初演されたミュージカル『The Fantasticks』。これまで67カ国以上で上演され、日本では1967年、東宝創立35周年記念東宝ミュージカル特別公演として菊田一夫が製作を手掛け、芸術座で初演された。それから55年の時を経て、演出家・上田一豪の新演出により、装い新たに上演される。

初日を前にした10月22日(土)、出演者の囲み取材とゲネプロ(総通し舞台稽古)が行われた。その様子を写真とともにレポートする。

岡宮来夢

ーーまずは皆さまから一言ずつお願いします。

岡宮来夢(マット役/以下、岡宮):マットは割と自分のことを過大評価した、大人だと思い込んでいる子ども。大きいことを言う割には何もできないみたいなところが、すごく愛くるしくてですね。僕、大好きなんです。マットと一緒にいると、自分もまだまだこれから大人になっていかなきゃなと思ったりもするんですけど、世界中でマットを演じてこられた方々がいると思うので、僕ならではのマットが出せたら嬉しいなと思います。

愛月ひかる(エル・ガヨ役/以下、愛月):今回、ずっと男性が演じてこられたエル・ガヨという役を私がさせていただくことで、このお芝居にまた彩りが増えたらなと思って演じております。男なのか女なのか分からないけれど、人として魅力的と皆さまに思っていただけるように役作りしていけたらなと思っております。頑張ります。

山根良顕(モーティマー役/以下、山根):ミュージカルは初めてなんですけど、「日本のジョニーデップ」と呼ばれるように、みんなで宣伝していただきたいなと思いながら頑張って演じようと思います。よろしくお願いします。

愛月ひかる


山根良顕

青山達三(老俳優ヘンリー役):老いさらばえたシェイクスピア俳優と呼ばれています。シェイクスピアの言葉を喋ったりします。それを懐かしんで言うんじゃなくて、今を精一杯に生きるおじいさんという風にやりたいなと思っています。頑張りたいと思います。よろしくお願いします。

植田崇幸(ミュート役):ミュート役はセリフが一切ないんですけども、その分、スタイリッシュに、舞台上を所狭しと一生懸命働いておりますので、その点においても注目していただけたらなと思います。すごく手作り感満載のすごく温かいミュージカルですので、一人でも多くのお客様に観ていただきたいと思います。

青山達三

植田崇幸

斎藤司(ハックルビー役/以下、斎藤):ハックルビー役をやらせていただきます。この役は、うちの父がやっていた役で……あ、すみません。会社員でした。ハックルビーという役は、ブラッド・ピットやジョージ・クルーニーもやりたいと言っていた役ですので、私もその名に恥じないように頑張っていきたいんです。

厳格な元海軍育ちという役柄ですが、私、横断歩道のお婆さんを助けてしまうほどの気の弱さと優しさがありますので、そのギャップの役作りがとても大変でした。ですが、今回は心を鬼にして、マットをしっかりと自分の手の上で転がせるように。そういう演技をしたいと思います!

ーー嘘はいくつ入っていました?(笑)

斎藤:嘘は入っていないです。やりたいって言うかもしれない。maybeですので(笑)。

斎藤司

今拓哉(ベロミー役):この『ファンタスティックス』という作品、僕はニューヨークでも観ていますし、日本でも何回も観ています。本当に大好きな作品で、物語はとてもシンプルなんですけども、客席と一緒に作っていく物語です。おそらく想像力をたくさん使って、それぞれが、客席の人数分だけファンタスティックスな世界を楽しめる、素敵な作品なんだと思います。

僕も大好きな作品に出られることがとても嬉しいですし、こんなに可愛い娘の父親役というのも嬉しいです。とにかく今は愛しかありません。たくさん愛を届けて、愛をもらって、素敵な時間にしたいと思います。よろしくお願いします。

豊原江理佳(ルイーザ役/以下、豊原):ルイーザは「自分は特別な女の子なんだ」「ハッピーエンドを迎えられて、普通の子ではないんだ」と夢見る、自分を信じて生きている女の子です。自分にもそういうときがあったなと共感していただきたいなと思いますし、舞台に立っていて、セットやバンドと一緒になると、魔法にかかったというのを実感しますので、ぜひ劇場に来ていただいて、一緒に魔法にかかっていただきたいです。

すごく忙しない毎日ですけど、劇場に来て、立ち止まって、自分の人生や幸せ、愛について大切に考えてもらえる時間になったらいいなと思っています。

今拓哉

豊原江理佳

ーー岡宮さんは本作が東宝ミュージカルで単独初主演ということになりますね。

岡宮:いわゆる座長ということは一切考えていなくてですね。食らいついていくので精一杯というか……。僕自身の性格も相まって、引っ張っていくというよりは、みんなで頑張ろう!みたいな考えが好きなので。「頑張ろうぜ〜!」というよりも、自分が頑張る姿を見てもらって、(カンパニーが)いい感じになれたらいいんじゃないかと。まぁ(そんなことは)今考えましたけど(笑)。

僕がそんなこと考えなくても、本当に皆さん素敵な方々ですし、演出の(上田)一豪さんが僕らをしっかり導いてくださったので、素敵なミュージカルになっているんじゃないかと思います。

岡宮来夢、愛月ひかる、山根良顕、青山達三(左から)

――いつもよりキラキラは少ないかもしれませんが。

岡宮:そうですね。演じている役もヘタレなので……キラキラしていないですよね?(笑)

斎藤:私もちょっと演出入りましたけども、ファンの方が来夢にどきっとさせられるシーンを1、2シーン散りばめさせていただきました。

岡宮:本当に斎藤さんに見てもらったシーンあります(笑)。

豊原:一番厳しかったです。怒られました(笑)。

岡宮:斎藤さん、普段すごく優しいのに、そこだけ厳しいんです(笑)。

植田崇幸、斎藤司、今拓哉、豊原江理佳、岡宮来夢、愛月ひかる(左から)

ーー愛月さんも宝塚歌劇団を退団後、初ミュージカルですね。

愛月:そうです、先ほど言うのを忘れました(笑)。初ミュージカルです。男性と絡ませていただくのが初めてなんだ、初めてなんだと思っていたんですが、自分が男を演じているせいか、いまいちそこの違和感はあんまりなく……。ただ、娘役さんではない、リアルな女性に格好つけているという方がかゆいです(笑)。

――愛月さんはファンがたくさんいて、南海キャンディーズの山里(亮太)さんも沼に落ちたと公開告白をしたら、すぐに退団をされて、話題になりました。そのあと何かありましたか?

愛月:や、山里さんとですか?(笑)。山里さんには番組に呼んでいただいたりして、いろいろお話はさせていただいて。今回も『ファンタスティックス』には山根さんも斎藤さんも出ていらっしゃるので、観にきてほしいと伝えたら、「絶対行きます」と言っていました。

山根:僕は配信のライブで絡んだですけど「山根さんは愛月さんのすごさを分かっていないからムカつく」と言われました(笑)。

ミュージカル『ファンタスティックス』のゲネプロの様子

――今となりにいることも嫉妬されそうですね(笑)。

山根:(愛月さんは)演じているときはすごいスターな感じがあるんですけど、それ以外にスターな感じをあんまり感じないんですよね。

斎藤:怒られますよ?

山根:いい意味でね!接しやすい方なんだなとびっくりしました。

愛月:ありがとうございます(笑)。山根さんはいろいろ動画を検索して見られていたり、日常の行動を観察されていたりして、「グミお好きなんですか?」などとぶっ込んでくるのが面白いです。

山根:だってスターの人が稽古中にずっとグミ食べているなんて思わないじゃないですか。

ミュージカル『ファンタスティックス』のゲネプロの様子

――そんな山根さんも初ミュージカルです。

山根:そうですね。僕は初なんですが、他の方々は本物のプロの方ばかりで、演出の方にも「好きなようにやっていい」と言われているので、気は楽です。アンガールズでやっているときより自由にできるので。

――どういう経緯で出演が決まったのですか?

山根:事務所のマネージャーさんから「オファーが来ているんですが、やりますか、やりませんか」と言われて、やりますと言って、ここにいます(笑)。オファーされた理由は聞いていないですが、この役はミュージカルや舞台をやっていない人に任せてもいい役だと聞いて。いつもは田中(卓志)なんですけど、今回は青山とコンビで。

(青山さんは)本当にすごい方なんですけど、本番めちゃめちゃ笑っちゃうんですよ。貫禄と芸歴と積み重ねてきたものがすごすぎて、本番で起こすアクシデントの質が高いんです(笑)。舞台ごとに違うと思うので、楽しんでいただけたら。

ミュージカル『ファンタスティックス』のゲネプロの様子

ミュージカル『ファンタスティックス』のゲネプロの様子

――ミュージカルの先輩である斎藤“先輩”からは何かアドバイスはありましたか?

山根:斎藤先輩も楽しんでいて。普段の芸人がいる楽屋よりもボケているなって(笑)。

斎藤:芸人の楽屋はとがっているのでね(笑)。ちょっとでも僕の役割みたいなものを意識していました。

岡宮:斎藤さんと山根さんが空気を柔らかくしてくれましたよね。

山根:いや、でも岡宮くん座長でしょ?年下なんだけど、格好いいなって思わせてくれるところがあるから、ついていける感じがします。

岡宮:ありがとうございます。嬉しいですね。

山根:……これぐらい言っておけばいいかな?

斎藤:計算かよ(笑)

――最後にメッセージをお願いします!

岡宮:ミュージカル『ファンタスティックス』は燦然と輝く不朽の名作という代名詞があって、それだけたくさん世界中で上演されてきた作品だと思うんですけど、令和の時代に僕らのカンパニーでできる最高傑作になっていると思います。

どことも違う『ファンタスティックス』になっていると思うので、他のところで観たよという方もぜひ新鮮な気持ちで観に来てもらえたら楽しめるんじゃないかなと思います。

僕らは日比谷で3週間ぐらい、素敵なセットとカンパニーでお待ちしておりますので、ぜひ楽しみにしていただけたらと思います!

植田崇幸、斎藤司、今拓哉、豊原江理佳、岡宮来夢、愛月ひかる、山根良顕、青山達三(左から)

さて、ここで本作のあらすじを簡単に説明しよう。

隣同士に住んでいる若いマット(岡宮来夢)とルイーザ(豊原江理佳)は、恋人同士。ルイーザの父・ベロミー(今拓哉)と、マットの父・ハックルビー(斎藤司)が2人の仲を引き裂こうと築いた壁越しに、二人は日々語らい、将来を誓い合っている。

そこへ現れたのは、怪しげな流れ者のエル・ガヨ(愛月ひかる)、老俳優のヘンリー(青山達三)、旅芸人のモーティマー(山根良顕)。彼らの秘密の企みによって、幸せだったはずの二人の関係は少しずつ変化していって……。誰もが経験するであろう、恋と、人生のほろ苦い物語だ。

ミュージカル『ファンタスティックス』のゲネプロの様子


ミュージカル『ファンタスティックス』のゲネプロの様子

『シラノ・ド・ベルジュラック』などで知られるフランス劇作家エドモン・ロスタンの韻文劇『レ・ロマネスク』をもとに、シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』『真夏の夜の夢』のエッセンスを織り交ぜたストーリーではあるが、ストーリー自体はシンプルなので、何も気負う必要はないと思う。

劇場に入ると、ペンダントライトやフラッグがつるされていて、まるでサーカス小屋のよう。上手がマットの家、下手がルイーザの家として設定され、中央に円形舞台が配置されている。ピアノやハープなど、バンドの姿も観客から見える。大きな舞台転換こそないが、手作り感あふれる演出は、観客の想像力を刺激する。

ミュージカル『ファンタスティックス』のゲネプロの様子

はじけるような若さで、物語の中心を担う岡宮と豊原。岡宮マットは、ヘタレな役ながらもその笑顔に癒されたし、豊原ルイーザは、そのヒロイン性と透明感ある歌声が見事だった。愛月のエル・ガヨは、宝塚歌劇団の男役出身という魅力を最大限に感じさせ、今のベロミーと斎藤のハックルビーもなかなかいいコンビネーション。青山のヘンリーは見た目のインパクトも相まって、存在感があり、初ミュージカルの山根は素で笑ってしまう点はいただけないが、その適当さが逆にいいのかもしれない。植田のミュートは、ダンサーらしく無駄がない動きがいい。

上演時間は1幕約60分、休憩25分、2幕約50分。ぜひお見逃しなく!

取材・文・撮影=五月女菜穂

公演情報

ミュージカル『ファンタスティックス』
 

■日程:2022年10月23日(日)~11月14日(月)
■会場:日比谷シアタークリエ
 
■台本・詞:トム・ジョーンズ
■音楽:ハーヴィー・シュミット
■翻訳・訳詞・演出:上田一豪
 
■出演者:
マット役:岡宮来夢
ルイーザ役:豊原江理佳
ベロミー(ルイーザの父)役:今拓哉
ハックルビー(マットの父)役:斎藤司(トレンディエンジェル)
ミュート(黙者)役:植田崇幸
ヘンリー役:青山達三
モーティマー役:山根良顕(アンガールズ)
エル・ガヨ役:愛月ひかる
 
■製作:東宝株式会社
 
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