岡本圭人、話題作の日本初演出演に「自分もこういう人間になれたら」 『4000マイルズ~旅立ちの時~』で伝えたい人生のこと

2022.11.10
インタビュー
舞台


2022年12月、シアタークリエにて、『4000マイルズ~旅立ちの時~』が上演される(23年に大阪・愛知・香川公演あり)。

今作は2011年にオフ・ブロードウェイにて初演、2012年にオビー賞のベスト・ニュー・アメリカンプレイ賞を受賞、タイム紙のベストプレイに選ばれ、2013年にピューリッツアー賞の最終候補となった。以降、世界各地で上演され、2020年春にはロンドンのオールド・ヴィック劇場にて、ティモシー・シャラメ主演で上演されることが発表され、話題を呼んだ(※ロンドン公演は新型コロナウイルスの影響により上演中止)。

大学生のレオが祖母のヴェラが暮らすマンハッタンのアパートを訪れるところから物語は始まり、長い時を経て再会した2人が同居生活の中で次第に他の人には言えなかった心の内を明かすようになり、お互いの年齢や時代を越えて共感を抱いていく様子が描かれている。

レオ役は近年舞台で目覚ましい活躍を見せる岡本圭人、ヴェラ役は映画・ドラマ・舞台とジャンルを問わずその存在感を放つ高畑淳子。読売演劇大賞最優秀演出家賞を二度受賞し、旬な演出家のひとりである上村聡史が演出を手掛ける。

レオ役を演じる岡本に、今作に向けての意気込みを聞いた。

初めての上村演出、名前の呼び方に「キュンとした(笑)」

――話題作の日本初演へのご出演ということで、今のお気持ちをお聞かせください。

稽古が始まる前のこの期間は、ずっと台本を読み解く作業をしています。読めば読むほど本当によく書かれている素晴らしい作品で、上村さんは尊敬する大好きな演出家でもありますし、キャストも素晴らしい方々ばかりなので、どのような稽古になるのかすごく楽しみな状態です。

――現時点で上村さんとは今作について何かお話しされましたか。

上村さんとお仕事をご一緒するのは今回が初めてですが、父の舞台の演出もよくされているので、舞台を見に行った後でご挨拶をしたりと、昔から知っていました。先日上村さん、高畑さんと本稽古に入る前の本読みを行ったのですが、そのときに上村さんが僕のことを「圭人」と呼び捨てにしてくださったのがすごく嬉しくて、その呼び方にキュンとしちゃいました(笑)。既にそういう関係性が出来上がっている中で、上村さんに導いていただいて、自分がどういう役者になっていくんだろう、どういうレオになっていくんだろう、というのが今楽しみにしていることです。

――読み合わせのときはどういうアドバイスがあったのでしょうか。

1シーン読み終えた後に、もう一度最初から細かくそのシーンを説明してくださるんです。セリフの意味とか、間の取り方とか、テンポとか、非常に具体的な指示を与えてくださいます。自分も戯曲を読んで分析したりするのが好きなのですが、自分が想像する以上のことを上村さんは想像していらっしゃると思うので、そこを稽古で聞くのが楽しみでもあります。

高畑さんはパッと華やぐ太陽のような存在

――戯曲を読んでどのような感想を持たれましたか。

レオとヴェラおばあちゃんとの関係性がすごく素敵でいいな、と思いながら読んでいるうちに、自分自身の記憶がよみがえってきたんですよね。自分のおばあちゃんとの楽しかった思い出とかを思い返して、すごく温かい気持ちになりました。レオもヴェラも、それぞれ心に傷というか抱えているものがあるけれど、コミュニケーションを取ったり会話していくことによって、徐々にお互いが心を開いていき次に進んでいこうとするところが、すごく素敵で素晴らしい関係性だなと思いました。

――読み合わせをしてみて、気持ち的に何か変わったり深まったりした部分はありましたか。

自分が持っている高畑さんのイメージというのが、出てきた瞬間にパッと華やぐ太陽のような存在の方という印象で、実際に本読みをしているときに、こちらも高畑さんの太陽のような輝きに巻き込まれるような感覚がありました。そういう影響を周囲に及ぼす方というのもなかなかいらっしゃらないと思います。本読みの段階から既に、自分が想像していたよりもずっと魅力的なヴェラおばあちゃんだったので、今後の稽古の中で素敵な関係性を築いていけたらなと思いましたし、必ず築いていけるなという確信をその時に持つことができました。

――高畑さんとは今回が初共演ですが、1998年に芸術座で上演された森光子さん主演の『本郷菊富士ホテル』という作品でお父様の岡本健一さんと高畑さんが共演されたときに、当時5歳だった岡本さんと楽屋で一緒に遊んでいたというエピソードを高畑さんがお話しされていました。その当時のことは覚えていらっしゃいますか。

全然覚えていなくて、それを聞いたときに自分が一番ビックリしました(笑)。自分の人生の中で一番暴れん坊だった時期で、森光子さんの部屋で遊んでぐちゃぐちゃにしたなんていう話も聞いていたので、先日の本読みで高畑さんに「その節はお世話になりました」と言ったら「本当に大変だったんだから!」と返されました(笑)。でも、自分が覚えていない幼い頃を知ってもらえているということはすごい安心感がありますし、しかも今こうやっておばあちゃんと孫役で共演するなんて非常に感慨深いですね。安心して身を任せられるというか、他の人に見せられないような部分も高畑さんになら見せられる、と思えるような関係性を稽古が始まる前から築けているなんて、こんなにいい環境はなかなかないと思います。

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