岡本圭人、話題作の日本初演出演に「自分もこういう人間になれたら」 『4000マイルズ~旅立ちの時~』で伝えたい人生のこと
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「自分の人生にも伝えるべきものがある」と思ってもらえたら
――9月~10月に主演舞台『盗まれた雷撃 パーシー・ジャクソン ミュージカル』(以下、パーシー・ジャクソン)が終わったばかりで、あまり間を空けずに次の作品に臨まれることになりますが、気持ちの切り替えというのはどのようにされているのでしょうか。
最初にこの舞台の話をいただいた時、もちろん台本を読んだのですが、まずは原文を探して読んで、そのあとで出来上がってきた日本語の台本を改めて読みました。でも自分の性格的に一つのことにしか集中できないタイプなので、今回も『パーシー・ジャクソン』が終わるまでの間は『4000マイルズ』の台本を読めませんでした。本当は『パーシー・ジャクソン』をやってる時も『4000マイルズ』の台本を読みたくなったんですよ。 休演日とかに読もうかなと思うんですけど「舞台が終わるまではまだダメだ」と我慢して、大千穐楽が終わった次の日に台本を開きました。でも中には、舞台中に次の作品の台本を読んでいるという俳優さんもいらっしゃるので、そういう方はすごいな、と思います。僕は完全に終わってから次に行く、という感じですね。
――舞台が終わるとそこで切り替えられる、という感じなのでしょうか。
『パーシー・ジャクソン』の稽古が始まる前日までは『M.バタフライ』に出演していたのですが、稽古中に意識はしていないけれども『M.バタフライ』で演じたソン・リリンのしぐさが出てしまったり、役が抜けるまでにちょっと時間がかかるんだなとそのときに思いました。今回は『パーシー・ジャクソン』が終わってから今作の稽古が始まるまでの間が少し空いているので、そういうことはないかなとは思います。
――今作は何かどんでん返しがあるわけでもなく、細かい心の機微を重ねて行く静かな部類の作品です。
海外に留学していたときによく先生から言われていたのが、俳優であるかどうかの前に人はみんなそれぞれストーリーテラーなんだ、ということでした。人間は自分の人生だったり自分に起きたことを人に伝えるべきなんだ、という話を聞いて「すごい素敵だな」と思ったんです。舞台や演劇では大きな事件とかが起きるけれども、自分の人生にはあまりドラマがないな、なんて思ってしまうこともあるのですが、今作も大きなドラマがあるわけではなく日常を描いている作品で、でもすごく人間らしい心の動きが描かれている。こういう日常を描いた作品を届けることによって、ご覧いただいた方に「自分の人生にも伝えるべきものがあるんだ」と思ってもらえたら嬉しいですね。
自分の経験も生かして舞台を作り上げていきたい
――今回演じるレオという役はどんな青年だと感じていますか。
最初に思ったのは、レオは自分の心に正直だな、ということでした。素直で自分の言いたいことを言うし、でもちゃんと人の話も聞くし、感情の浮き沈みもあって人間らしい人なんだろうなと思いました。強さの中にもちょっと脆さとか弱さとかもあって、 自由奔放に見えてすごく人に優しいところもあって、自分もこういう人間になれたらいいな、と尊敬できる人物ですね。人の影響を受けやすいところもあって、レオの中では人との関係性がすごく重要というか、人との繋がりを大切にする男の子なのかな、と感じています。
――演じる上で難しそうだなと感じたところはありますか。
レオはマルクスが好きだったりと政治的な事にも詳しくて、おばあちゃんが共産党員というエピソードも出てきますし、セリフをより生きたものにできるようにそうした政治的なことも勉強していかないとなと思っています。あと、レオは母親との関係があまりよくなくて、そこが自分の人生とは違うし、今までやってきた他の舞台でも母親のことが好きな子の役が多かったので、そういったところもいろいろ考えていかなければと思っています。
――レオとヴェラは年齢を超えて心を開き合える関係ですが、岡本さん自身には年齢や性別を超えてそういう関係になった方というのはいらっしゃいますか。
留学先の演劇学校で出会った人たちは、年齢も人種も育った国もバラバラで、でもみんな目指すところは一緒、という環境で共に学び、いろんなことを話し合うことができました。ボイス&スピーチという、声の出し方と話し方の授業があるのですが、クラスメイトの前で自分が今まで誰にも語ったことのないトラウマを話す、という試験があったんです。事前に「こういうことを言えばいいかな」と自分の中で用意していたんですけど、実際に試験が始まったらクラスメイトがどんどん心をオープンにして、親友が亡くなったこととか、母親に起きた出来事とかを話していたんです。それを聞いているうちに、自分の番が回ってきたら事前に用意していたものではなくて、本当に人に言えなかったようなトラウマを泣いたり叫んだりしながら話してしまって、そういった姿を今まで人に見せたことがなかったので、授業が終わった後にクラスメイトのみんなとの間に生まれた信頼感というか、お互い心がオープンになった瞬間というのを今でも覚えています。レオも、自分の身に起きたある出来事がきっかけで心を閉ざしてしまって、誰にも言えずにいたんですよね。でもヴェラと一緒にいるうちにどんどん心が開いていく過程というのは、自分がかつて経験したものと共通点があると感じられたので、そうした経験も生かして舞台を作り上げていけたらいいな、と思っています。
取材・文=久田絢子
公演情報
演出:上村聡史
日程・会場:2022年12月12日(月)~28日(水)日比谷・シアタークリエ
お問い合わせ:03-3201-7777(東宝テレザーブ)
<全国ツアー公演>
【大阪公演】
日程・会場:2023年1月7日(土)~9日(月・祝)梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
お問い合わせ:06-6377-3888(梅田芸術劇場)
【愛知公演】
日程・会場:2023年1月11日(水)~12日(木) 日本特殊陶業市民会館ビレッジホール
お問い合わせ:052-972-7466(キョードー東海)
【香川公演】
日程・会場:2023年1月15日(日)レクザムホール(香川県県民ホール)大ホール
お問い合わせ:087-823-5023(県民ホールサービスセンター)
製作:東宝