syrup16g、宮本浩次、YEN TOWN BAND、Chara、椎名林檎、コーネリアス、ピチカート・ファイヴ……約30年もの間、活躍を続けるベーシスト・キタダマキ。初めてキャリアを訊いた【インタビュー前編/連載・匠の人】

2022.11.2
インタビュー
音楽

■ホフディランは四半世紀まだやっているという

──じゃあ、ギャラが発生する仕事として、初めて演奏したのはEL-MALO?

ですね。で、2枚目のレコーディングの時は、バンドまるごとじゃなくて、各々で呼ばれて。その時にドラムが、当時THE COLLECTORSの阿部Qさん(阿部耕作)で、初めて会って。だから、ギャランティが発生した仕事はファーストが初めてだけど、初めて会う人とセッションのレコーディングをした最初は、その時。EL-MALOはツアーも行って。プロのライブの現場もそれがはじめてでした。…そのセカンドは、小山田(圭吾)君が共同プロデュースだったから、その流れでCorneliusの『69⚡96』に堀江と呼ばれて。その頃から、だいぶ仕事らしいモードにもなりましたね。更にカヒミ・カリィにも何作か。で、小西(康陽)さんの仕事が来て。カヒミ・カリィのEPで、小山田君が3曲プロデュース、1曲小西さんという時に、ディレクターに「できる?」って言われて。ピチカート・ファイヴ好きだったから「やりますやります」と。

──小西さんの仕事、そこから増えますよね。

ピチカート・ファイヴと…T.V. JESUSっていうユニットを。ご存知ですか?

──憶えてます。最初はソロでデビューした有近真澄が、新たに組んだユニット。

有近さんと寺本りえ子さんがフロントで、それをやったりとか。小西さんがプロデュースしたPUFFY吉村由美さんのシングル、野本かりあさん、CM楽曲やジングル、とか。

──ホフディランは?

「ホフディランのデビューライブのバンドのメンバーを探していまして」って、マネージャーさんから電話があって。で、もう26年。おそろしいことになりましたね。四半世紀、まだやっているという(笑)。ちなみにバックバンド名「BEST3」はもちろん「GREAT3」にあやかってつけました(笑)。

■僕が知ってるプロデューサーはみんなジャッジが速い

──Salyu等の、小林武史プロデューサー関連の仕事の始まりは?

名越(由貴夫)さんの紹介で。…名越さんとも長いけど、最初に一緒に演奏したのはASA-CHANGがプロデュースしたアルバムのレコーディングでした。ドラムASA-CHANG、ベース自分、ギター名越君で。…STUDIO APESをやってる頃に、アイゴンと、イッチャン(LOW IQ 01)、小松っちゃん(bloodthirsty butcher・小松正宏)とか、よくライブに遊びに来てて。小松っちゃんに「今度ライブ、観に来て」みたいに言われて。その頃、名越君と一緒にやってたんじゃないですかね。

──ブッチャーズの吉村秀樹さんが、名越さんのコーパス・グラインダーズのメンバーでもありましたよね。

そうそう、コーパスとブッチャーズが両方出たクアトロを観に行ったのが、最初じゃないかな。名越君、その頃もうCharaさん、YEN TOWN BANDで知ってはいたんですが。…それで、小林さんが、Salyu名義でのファースト・アルバムを作ろうってタイミングで、ベーシストを探していて。このプロジェクトは新しいメンバーで始めたい、ただ、ギターは名越君で、っていう。それで始まったんだけど、その後も小林さん、よく呼んでくれて。最近の宮本(浩次)さんもそうだし。お世話になっています。…あと、これは個人的な事なんですが、妻が宮城県出身で、東日本大震災で実家が被災しているんです。自分にとって重大な出来事で。なので小林武史さんが震災以来、今も復興支援の様々な活動を継続していることを尊敬しています。…これだけは表明しておきたかった。

──小林さんのメンバーに対するプロデュースというのは、どんなもんなんですか?

とにかくジャッジが速い。小林さんは求めてるものと、バッファがはっきりしているので。レコーディングも「じゃあ13時から音出しで」って、13時になったら小林さんが来て、「音できてる? 始めようか」で録って、「うん、だいたいこんな感じで。じゃああと、やっといて」って次の仕事に、ってことも何度かあった。最初はびっくりしたんだけど、とにかく求めてるものが明確なんですよね。だから速いんだろうけど。

──録ったあとでの加工や編集は?

してるかもしれないけど、あとで自分のベースを聴いて「うわ、いじられてる」って思ったこと、ないな……小林さんは速い、って言ったけど、よく考えたら皆さん速いですね、僕が知ってるプロデューサーは。小西さんに至っては、スタート時間にスタジオに来て、「ごめんごめん、今から曲書くわ」って。

──はははは!

ということがありました。で、ピアノブースに入って、15分でスコアを書くんです。頭の中ではもうできてたんでしょうね。それでスコアをもらって、見ながら一回音を合わせて、「ここのシンコペを変えます」とか「ここの構成を変えます」というようなセッションをして、すぐ録るっていう。

以上、前編でした。後編では、syrup16gへの参加・解散・再結成・現在についてと、最近の大きな仕事である宮本浩次のツアー等について、じっくり掘り下げています。ので、そちらもどうぞご期待ください!

取材・文=兵庫慎司 

※インタビュー後編はこちら

ツアー情報

syrup16g tour 「Les Misé blue」
 
12月2日(金)大阪・Zepp Namba
OPEN 18:00 / START19:00
前売り:1Fスタンディング ¥5,500 / 2F指定 ¥5,800 (ドリンク代別)
INFO:キョードーインフォメーション(0570-200-888)
 
12月8日(木)横浜・KT Zepp Yokohama
OPEN 18:00 / START19:00
前売り:1Fスタンディング ¥5,500 / 2F指定 ¥5,800 (ドリンク代別)
INFO:VINTAGE ROCK std.(03-3770-6900)
 
12月9日(金)横浜・KT Zepp Yokohama
OPEN 18:00 / START19:00
前売り:1Fスタンディング ¥5,500 / 2F指定 ¥5,800 (ドリンク代別)
INFO:VINTAGE ROCK std.(03-3770-6900)

リリース情報

syrup16g『Les Misé blue』
11月23日発売

syrup16g『Les Misé blue』

収録曲
01. I Will Come (before new dawn)
02. 明かりを灯せ
03. Everything With You
04. Don't Think Twice (It's not over)
05. Alone In Lonely
06. 診断書
07. Dinosaur
08. モンタージュ
09. うつして
10. In My Hurts Again
11. In The Air, In The Error
12. Maybe Understood
13. 深緑の Morning glow
14. Les Misé blue

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  • syrup16g、宮本浩次、YEN TOWN BAND、Chara、椎名林檎、コーネリアス、ピチカート・ファイヴ……約30年もの間、活躍を続けるベーシスト・キタダマキ。初めてキャリアを訊いた【インタビュー前編/連載・匠の人】