ハンブレッダーズが新たに4人体制で放った『ヤバすぎるスピード』 バンドのロマン溢れる快作について語り合う

2022.11.14
インタビュー
音楽

ハンブレッダーズ 撮影=高田梓

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約3年間サポートギタリストを務めたukicasterが正式加入し、新体制初の作品として3rdフルアルバム『ヤバすぎるスピード』を完成させたハンブレッダーズ。改めてピースが揃ったこのタイミングで、キャッチーなギターリフとエイトビートによるみずみずしい疾走感を追求、「いいと思う曲をただ詰め込んだらこうなった」というテンションで作り上げたアルバムについて、メンバー4人に訊いた。

――ukicasterさんは約3年間サポートメンバーとして制作やライブには参加していたので、ファンの方々にとっては既に馴染み深いんじゃないかと思います。

ムツムロ アキラ(Vo/Gt):そうですね。アルバムリリース前に今年3月のライブ映像を公開したんですけど、それを見てもメンバーみたいな感じなんですよ。何ならメンバーよりも目立ってて(笑)。

ukicaster(Gt):いや、ライブで目立ってるのはみんなが背中を押してくれるからであって、僕自身が目立ちたがり屋なわけじゃないんですけどね(笑)。

でらし(Ba/Cho):うきくんは結構動物的だよね。

ムツムロ:確かに。楽しい時はすごく楽しそうだし、何もしたくない時は何もしたくなさそう。

でらし:僕はライブ中いつもテンション100%なんですけど、うきくんのところに寄っていくと、たまにすごい顔をして弾いてる時があって。

ukicaster:それはめっちゃ集中してる時だ(笑)。

ムツムロ:でもこの3人(ムツムロ、でらし、木島)はわりと理性的だから、うきくんが動物的なのはすごくいいことだと思ってて。

でらし:そうだね。僕らもうきくんのギターに対して「うわ、おもしろっ!」ってなって、テンションが上がることも多々あるので。

――このアルバムをリリースしたあとのワンマンツアー『ヤバすぎるワンマンツアー2023』は、うきさんが正式加入してから初めてのワンマンツアーでもあるので、その時のライブも楽しみにしています。

ukicaster:『ギター』のツアーは今より感染対策が厳しい状況で、盛り上がりつつも、お客さんそれぞれの内にある熱いものを受け取ったような感じだったんです。だけどそのあとZeppでの対バンツアー(『秋のグーパンまつりZ』)が始まって、「以前の感じが戻りつつあるな」という手応えを感じられたので、ワンマンでも熱量の交換ができたら楽しいだろうなとワクワクしていますね。

――お三方から見てうきさんってどんなギタリストですか?

木島(Dr):3年前からずっと「ギター好きな子なんやな」とは思ってますね。

でらし:うん。“ギターが誰よりも好きな子”っていう印象はずっとある。

木島:いつも新しいギターを探しては、買うか買わないか迷っているんですけど、そういう感じが演奏にも出ているんですよ。

ムツムロ:フレーズはブルージーで、レッチリやガンズからの影響をめっちゃ受けてて……今の時代になかなか見ない絶滅危惧種的なギタリストというか。

ukicaster:ポルノグラフィティを好きになったのがきっかけでギターを始めたんですけど、ルーツを遡っていく中で80~90年代のハードロックに触れて、ガンズとかめっちゃ好きになったんですよ。

ムツムロ:ハンブレッダーズは2000年代以降の音楽なので、そこと合わさることの面白さはあると思うんですけど、加入した理由としては「化学反応を起こしたいから」みたいなことでは全然なくて。本当に、3年間ずっと助けてくれていたので。

――そうですよね。

でらし:今までハンブレッダーズでギターを弾いてきた人は全員かなり個性の強いギタリストなんですけど、うきくんは人柄も含めて今のハンブレッダーズに一番フィットしていると思います。

――どんな人柄でしょう?

ムツムロ:偏屈で、万人に好かれるタイプではなく、コミュニケーションにちょっと問題があり……

でらし:あと、ネット弁慶。

ukicaster:ネット弁慶ではない(笑)。でもそう言ってもらえた方が気は楽かな。取り繕わなくていいから。

でらし:僕たち的にも「根っこがちゃんと同じなんだ」と思えたことが信頼するきっかけになったところはあります。

――このアルバムの最後に入っている「光」は、アニメのオープニングテーマとして作られた曲だけど、同時にハンブレッダーズというバンドのオープニングテーマのようで。

ムツムロ:僕はヒップホップが好きなんですけど、ヒップホップのように「俺が俺が」という要素が、日本のバンドにももっとあってもいいのにってずっと思ってたんです。だからこの曲も、もちろん大学生がコピーしてもいい曲にはなるけど、俺らが歌うことでもう一つ意味を持つような“俺らの歌”にしたいなと思って。曲順が最後になったのは、曲間をすごく短くしてあるから、リピート再生をした時にすぐに1曲目のリフが入ってくるのが面白いなと思って、半分ギャグでやってます。すぐ始まるやん、って(笑)。

――こういう曲ってどういうテンションで制作するんですか? ちょっと気合いが入るのか、ナチュラルな感じなのか。

でらし:うきくんには前作の『ギター』からがっつり入ってもらってたから、「一発目だから」って切り替える必要もないのかなと思って。

ukicaster:確かに「4人でやってくぞ!」みたいな意識は特になかったですね。だけどギターアレンジは気合いが入ってたかな?

ムツムロ:俺、うきくんに「今までの人生で一番いいギターリフを弾いてくれ」って言ったしね(笑)。

ukicaster:プレッシャーかけられました(笑)。

――「光」含め、うきさんのギターに対してまず思うのは「よくもこんなにいいギターリフがどんどん出てくるな」ということで。

ukicaster:まず、どの曲もギターソロがあるんですよ。それは俺が「どうしても弾きたい」と言ってるわけじゃなくて、なんか「もっと弾け!」というモードがあったんですよね。

ムツムロ:俺、ずっとそう言ってたしね。

でらし:ギターソロはとりあえず入れとけっていう感じだったよね。

ukicaster:なので、自分の引き出しを開けて、ないものも無理やり出して。基本的には叩き台の時点で(ムツムロの作った)参考リフが乗ってるんですけど、それを整えて完成形にしていったり、全く違うものを提出したりする作業でした。

ムツムロ:その辺りは曲によりけりですけど、今回のアルバムだと「光」と「カラオケ・サマーバケーション」のリフはうきくんが一から考えてくれたものですね。うきくんに作ってもらったリフを聴いて、あまりにもギタリストギタリストし過ぎてるなと思ったら俺が「もうちょっとポップにしようよ」って言うんですよ。いつもそのせめぎ合いだよね。

ukicaster:そうそう。そんな感じでやりとりしつつ、「この曲を聴いてギターを手に取るキッズがいるかもしれない」と信じながら、「どの曲もいっぱい弾くぜ! 弾かなきゃ!」って弾きまくりました。

――でらしさんは制作中どんなことを考えましたか?

でらし:僕、『ギター』の時に思ったんですよ。みんな、そんなにベースを聴いてねえなって。結構面白いことやってたのに、ベースのことを言ってくれる人が誰もいなかったから。

ムツムロ:そんなことないよ(笑)。

でらし:いや、これは卑屈になってるわけじゃないんですよ。『ギター』では歌と自分のやりたいことを両立させようとバランスをすごく考えながらやってたんですけど、ちょっと大人になりすぎてたのかもしれないなと思って。今回のアルバムではそういうことを全く気にしませんでした。

――「才能」のベースラインは特に攻めてますね。

でらし:「才能」のテイクは自分でもすごく納得しているんですけど、さすがにちょっとやりすぎたかもしれないです(笑)。

――でも歌を邪魔しているようには感じませんでしたよ。

でらし:それはもちろんミックスエンジニアさんのおかげでもあるんですけど、「いろいろやっても多分邪魔だとは言われないだろうな」と思えたのは結構大きかったですね。「好き放題やっていいんだ」と新たな発見ができてよかったです。

――木島さんはいかがですか?

木島:僕は逆に『ギター』の時はずっとフルスロットルだったので、今回は若干引いてみました。その分、でらしとうきくんが好き放題暴れても、全体としていい感じにまとまってるんじゃないかと思います。

ムツムロ:木島さんのおかげってことですか?(笑)

木島:うん(笑)。ただ、「ヤバすぎるスピード」のラスサビの<だけどシャイな奴らが>が入る瞬間の一発とか、「いいね」の<ビビッ!と来た心に>という部分のフレーズとかはバチコーンキメた感じで。「ここはちゃんと出したい」というところは気持ちよくキメたかったので、全曲そういうところを狙いながらレコーディングした感じです。

――そこはやっぱりバンドだなと思いますね。誰かが一歩出ると誰かが一歩引いて、自然とバランスを取りにいくというか。

ムツムロ:考えながらそうしてるのか考えずにやってるのか、自分らでも分からないんですけどね。でも、一つにならない良さもあるじゃないですか。

でらし:俺もそう思う。だから俺としては「木島さん、そこまで考えなくてもいいのに」って思う部分もあるんですよ。それもそれでバンドのロマンなのに、って。

木島:なるほど。

ムツムロ:本来バンドなんてなんでもいいからね。別にどんなビートでもいいし、いい歌詞が書けても書けなくても、どっちでもいいわけで。だけどそこにこだわりが生まれるから、バンドっていいんでしょうね。
 

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