ハンブレッダーズ、バンド初のホールワンマンツアーで誘った銀河という名の理想郷ーー「最後の1人になっても純愛を歌い続けようと思います」
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ハンブレッダーズ
ハンブレッダーズ『2026年 銀河の旅』
2026.3.18(WED)東京・東京ガーデンシアター有明
ハンブレッダーズにとっての銀河。それは音楽そのものである。教室の片隅で解放のチャイムを待ちわびていた私と僕の音楽を鳴らすバンドだと世界へ知らしめた1stアルバム収録曲「DAY DREAM BEAT」を耳にすれば、あるいは、タイヤと道路の摩擦音がやけに響く深夜の高速道路でハコからハコへ駆け回った日々を一気に思い返す「銀河高速」を一聴すれば、両者の同値関係は明らかだ。4人はノイズまみれの世の中をシャットアウトするヘッドフォンの中を、月光すらも届かない暗い地下室を、宇宙と重ね合わせてきた。
そんな彼らが2026年1月にリリースしたアルバム『GALAXY DRIVE』は、「地球から銀河系をドライブし、帰ってくるまでの車内で流れるプレイリスト」というコンセプトを土俵に、ハンブレッダーズが命題とし続けてきた銀河そのものをダイレクトに表現した1枚である。このコンセプトアルバムを携え、全国10カ所を旅したバンド初のホールワンマンツアーが『2026年 銀河の旅』。2月にスタートしたこの宇宙旅行は、3月18日(水)に東京・東京ガーデンシアター有明にて幕切れを迎えた。MC曰く「江戸星(エドセイ)」で繰り広げられたこの一夜で改めて証明されたのは、ハンブレッダーズにとっての銀河が彼らの理想郷であることだった。
真っ暗の会場に、モールス音のごとき電子音がポンポンと鳴りだす。暗闇に目が慣れてきた頃、少しずつ背後に映し出された街なみへピントが合ってくる。日が暮れて、みるみるうちにビルの灯りが柔らかな光を溢す。すると、木島(Dr)のさらさらとしたシンバルとリバービーなギターが響き始め、鷹揚としたマーチングビートに伴って、車は分厚い雲を突き破っていく。さぁ、「プレイリスト」でドライブの幕開けだ。まどろみを誘う静けさを抱え込んだその旋律は、夢へ落ちていくみたいに一瞬で客席を現実から切り離された場所へ案内していく。
「本日演奏する曲全てが皆さんのフェイバリットソングというわけですよ」と投下した「フェイバリットソング」で《こないだ聞いた話だけど最近の学生は 友達と共同作業でプレイリスト作るらしい》と記されている通り、考えてみると、プレイリストはバラバラの時間と1ヶ所に定まらないエリアを手元に引き寄せていく行為と言えよう。両親が聞いていた歌謡曲と水曜日に出会ったばかりの歌に共通項を見出して、「朝に聴きたい」「勉強のお供」なんてラベルを付与してみる。365日それぞれのテンションに合わせて、手のひらでオリジナルの対バンイベントを開催してみる。
こうしたコーディネートは連想ゲーム的な性質を備えているわけだけれど、「オカルティック・ラブ」から「スローモーション」を束ねたブロックのテーマは恋の芽生えと発展だろうか。一切の力みなく綴られる《君だけに恋するため この僕は生まれてきた》の1節は、生を受けた理由を確信するほどの片思いを映し出し、続く「スローモーション」ではでらし(Ba,Cho)のコーラスワークと底から込み上げてくるローなタムによって、押さえきれない胸の高鳴りを代弁。なるほど、プレイリストは時空間だけではなく、リアルをも超越して、妄想を形にしてくれるようだ。
となると、銀河版AIこと“ブレッピー”との会話を経てプレイした「SUPER TOMODACHI」だって、《別にいい》という間の抜けた語尾の伸ばし棒とは裏腹に、鋭い批評性を備えているのではないか。ダルンダルンで大きく震えるukicaster(Gt)の弦から放たれるヘビーなサウンドは《あらゆる嘘も分断も 僕らを引き裂けない》の1節と相まって、血で血を洗う2026年に対する反骨心とピースフルな共存を希求する思いを象徴していく。心無いプロンプトで作られたフェイクには、騙されたくない。ドーパミンが欲しくてたまらなくたって、一見無意味に思えるダラダラとしたお喋りには敵いやしない。どれだけ環境が変わろうとも微動だにしない関係がいかほどに尊いのかを理解しているからこそ、ハンブレッダーズは新基軸たる音像で壊れない友情を要求しているのだろう。
さて、叶わない恋心の成就と争いのない世界の実現を歌いあげたところで、ドライブは終幕へと向かい始め、段々と地球というリアルが顔を出す。ここまでロマンが詰まった車内で過ごしていた我々は、不条理な現実へ放り出されてしまう。ムツムロ アキラ(Vo,Gt)が口にしたこんな言葉は、そうしたバトルフィールドへ挑む1歩目を後押ししてくれるものだった。
「同じルートばかり周回していると、その現状に甘えたくなって、踏み出すことを恐れてしまうと思うんですよ。でも僕は、ドキドキしたり、ワクワクしたその瞬間に生まれる小さなバグを見逃さないで、育てていこうと思っています。皆さんのバグがルーティンで修正されてしまいそうな時、それで合ってるよと言えるのが自分の曲だったら最高です」。
均一化されて押し殺した感情を掘り起こすように、「バタフライエフェクト」が打ち鳴らされる。なかなか許せやしない傷も皺も美しいんだと断言するこの歌が、私だけの宝物だと思えるトキメキを《生きたいように 生きていいんだよ》と濁すことなく真正面から抱きしめていく。
満員電車で戦う月曜日から金曜日までを耐え抜くための常備薬を与えてもらったところで、いよいよ「着陸」だ。ムツムロが静かに一語一語を確かめていく中、上手からは白い光が注ぎ出し、4人の背後には朝日が登り始める。この2時間にも満たない夜間遊泳を《避難訓練》と称し、少しばかり分かち合えたあのエモーションと、いつの日か世界を変えるんだと握りしめた拳を刻み込んでいく。背後の映像に住宅街が映し出され、メンバーのシルエットだけが浮き彫りになる頃、《プレイリストは最後の曲へと向かう》とハンブレッダーズのアンサンブルは最高潮へ。
あぁ、この世界に帰ってきた。そう思ったのも束の間、「恋の段落」から「混迷する時代の中で、俺たちは最後の1人になっても純愛を歌い続けようと思います」と「ピース」が続けて手渡される。たおやかなカーテンや木目調の食卓をイメージさせる温もりに満ちたこの2曲は、どこまでも生活の匂いが香る作品にほかならない。つまり、彼らは目覚めた時に広がる光景をひたすらに大切にしようとしていたのだ。
本来『GALAXY DRIVE』を踏襲するのなら、「恋の段落」と「ピース」でこの旅行譚は締めくくられるはず。そんな中、「この星の重力が苦しくなったら宇宙に行けば良い、と初めて歌った曲です」とピリオドを打ったのが「逃飛行」だったこと。そして、アンコールでようやく「スクールカーストの最底辺から青春を歌いにきました」と伝家の名乗りを上げ、「銀河高速」から「ギター」を連投したこと。この2つの事実は、彼らがこの先も銀河という名のシェルターを開き続けてくれるのだと教えてくれた。汗と労働にまみれた暮らしに疲れたら、時にプレイリストへ、時にライブハウスへ逃げ込めば良い。ハンブレッダーズの銀河は、今日もイヤホンの中でいくつもの歌を瞬かせている。
取材・文=横堀つばさ 撮影=マスダ レンゾ
ライブ情報
リリース情報
1月28日(水) Release
https://humbreaders.lnk.to/GALAXYDRIVE
¥7,500(税込)
SRCL-13516〜13517
¥3,750(税込)
SRCL-13518
1.プレイリスト
2.⚡️
3.アイズワイドシャット
4.SUPER TOMODACHI
5.バタフライエフェクト
6.わっか
7.夜明けの歌
8.アクション!
9.MUSIC
10.フィードバックを鳴らして
11.オカルティック・ラブ
12.ちょっとロンリー
13.着陸
14.恋の段落
15.ピース
プレイパス封入(有効期限:2027/1/28)
『GALAXY PARK』ライブ映像
1.グー
2.DAY DREAM BEAT
3.DANCING IN THE ROOM
4.⚡️
5.ちょっとロンリー
6.銀河高速
「GALAXY DRIVE 水金地火木土天海冥ver」
CDとは収録曲数が異なります。
2.アイズワイドシャット
3.SUPER TOMODACHI
4.わっか
5.MUSIC
6.オカルティック・ラブ
7.ちょっとロンリー
8.着陸
9.恋の段落