歌×踊り×殺陣満載のフレンチロックミュージカル『キングアーサー』日本版の上演迫る~主演・浦井健治「もがき続ける」役者の覚悟

2022.12.2
インタビュー
舞台

韓国の気鋭演出家 オ・ルピナの演出は「リアリズム」

――演出のオ・ルピナさんとはどのように作品作りをしていきたいと思いますか? 

ルピナさんはエンターテインメントの中にリアリズムを徹底的に落とし込みたいようなんです。ビジュアル撮影でもウィッグは使わず、群像劇らしく一人ひとりの生き様として立つ姿を表現したり、なかなか攻めたビジュアルだと感じました。作品としても、人間の機微や変化していく様を大切に描きたいんだろうなと思います。

今日の歌稽古のとき、ボーカルの先生や音楽監督の方たちが台本を見て「薄くない?」と言ったんです。歌、歌、歌、ダンス、アクションという感じなので、実は文字量(台詞量)は決して多くはないんですね。だからエンターテインメントとしては絶対に面白いんです。そこをルピナさんはショーアップされたエンターテインメントとしてだけではなく、お芝居を重視することを目指していて、台本に書かれていないようなことを徹底的に落とし込んでくるんじゃないかなと。

実はルピナさんは『デスノート THE MUSICAL』の初演、再演のときに稽古場で僕を見てくださっていたんです。当時「あなたの二面性の演技が好き」とおっしゃってくださったので、彼女の持つ浦井のイメージを裏切りたいですし、超えていきたいですね。

――浦井さんは舞台作品でこれまでに王子や王の役を多く演じてこられています。演じてきたからこそ感じる、王座につく人たちに共通するものとは?

全員が通ずるのは、孤独であること、周りが全員敵になること、利用されてしまうこと。トップになると「王って何なの?」という疑問になっていくんです。それ程までに追い詰められるし、自分というものもままならない。王は人間として扱われないし、周りの人や自分の家族ですら変わってしまう。そういう状況になると、最終的には「何のために生きているんだろう」という問いに必ず行き着くんです。シェイクスピア作品の戯曲などを通じて、自分はそういうことをよく感じています。みんなが熱中する権力のおぞましさと同時に、王冠はもしかしたらハリボテなのかもしれないな、とか。今回の『キングアーサー』という作品でも、そういったことを感じると思います。富や権力を手に入れるとなぜ人は不幸になるのか、という問いかけをお客様に感じていただける人物構成ができたらいいなと思います。

舞台に立つからには「自分がやれることは徹底してやりたい」

――話は変わりますが、雑誌『悲劇喜劇』22年11月号でエッセイを寄稿されていましたね。

嬉しい反面、恥ずかしさや難しさ、そして文字で伝えることの素晴らしさを感じました。

――「仕事とプライベートは地続きでかけがえのないものだ」というお話が、浦井さんならではだと感じました。日常のふとした瞬間や出会いを大切にされていて、それが舞台上の浦井さんに繋がっているのだなと。

ありがとうございます。もう20年以上ミュージカルを中心にエンターテインメントに関わらせていただいています。仮面ライダーでデビューしたあとは、ほとんど舞台ですが、これまでに出会った人たちの存在は、僕にとってとても大きなものなんです。特に連絡をし合うわけではないけれど、何をやっているか情報を耳にしたり、お互いに刺激を受け合ったり称え合ったり、もはや当たり前にいてくれる存在なんですね。20年という年月は、今は世にいない先輩方と過ごした時間も含め今の自分を作っているものだった、ということもすごく感じます。そういう意味でも地続きにならざるを得ないんです。

よく「生まれ変わってもまた自分になりたい」と言う人がいますが、それちょっとわかるなあって。こんなに楽しいことをやらせていただいていいのだろうかって思うんです。そりゃあ舞台上では必死にもがいているんですけど、でもやりたいという意思だけでできることでもなくて、一生懸命役者を目指す人たち全員が舞台に立てるのかというと、残念ながら難しいですよね。なかなか舞台のお仕事に結びつくのが難しい世界で、なぜ自分が舞台に立てているのかと言われたら、支えてくださる周りの方達と応援してくださるファンの方にただただ感謝だなと思います。自分がやれることは徹底してやりたい。そう思いながら、舞台の上に立たせていただいています。

 

――2022年は『笑う男』、『ガイズ&ドールズ』、『COLOR』とミュージカル中心の1年でした。今年の振り返りとこれからに向けた意気込みをお願いします。

時には公演中止になることもありましたが、いろいろな経験をさせていただいた1年でした。その中で課題もいっぱい見つかったので、自分の目の前に「これをクリアするぞ」という次に繋がるハードルを置けたなと思うんです。それをクリアしたら「さあ次へ」と歩みを進められる気がするので、これからが楽しみでもあります。みなさまの期待に応えられるよう頑張っていきたいです。

◆ブルゾン(meagratia) 59,400円・パンツ(meagratia) 57,200円・シャツ(Et baas) 18,150円・シューズ(meagratia) 55,000円/Sian PR 03-6662-5525
◆スタイリスト:吉田ナオキ
◆ヘアメイク:山崎順子


取材・文=松村 蘭(らんねえ) 撮影=荒川潤

公演情報

ミュージカル『キングアーサー』
 
<東京公演>
期間:2023年1月12日(木)~2月5日(日)
会場:新国立劇場 中劇場
主催・企画制作:ホリプロ
 
アフタートークイベント
★1月19日(木)18:00
登壇者:加藤和樹/安蘭けい/石川禅

★1月21日(土)18:00
登壇者:平間壮一/宮澤佐江/東山光明

★1月24日(火)18:00
登壇者:浦井健治/伊礼彼方

★1月28日(土)18:00
登壇者:太田基裕/小南満佑子/小林亮太

※対象公演回のをお持ちの皆様ご参加いただけます。
※登壇者は急遽変更になる場合もございます。

<群馬公演>
期間:2023年2月11日(土)~2月12日(日)
会場:高崎芸術劇場(公益財団法人高崎財団)
主催: 高崎芸術劇場(公益財団法人高崎財団)

<兵庫公演>
期間:2023年2月24日(金)~2月26日(日)
会場:兵庫県立芸術文化センター  KOBELCO大ホール
主催:梅田芸術劇場/兵庫県、 兵庫県立芸術文化センター

<愛知公演>
期間:2023年3月4日(土)~3月5日(日)
会場:刈谷市総合文化センターアイリス 大ホール
主催:キョードー東海 


<キャスト>
アーサー:浦井健治
メレアガン:伊礼彼方/加藤和樹 (Wキャスト/五十音順)
ランスロット:太田基裕/平間壮一 (Wキャスト/五十音順)
グィネヴィア:小南満佑子/宮澤佐江 (Wキャスト/五十音順)
ガウェイン:小林亮太
ケイ:東山光明
マーリン:石川禅
モルガン:安蘭けい

碓井菜央 加賀谷真聡 工藤広夢 当銀大輔 長澤風海・加藤翔多郎 長澤仙明 半山ゆきの・新井智貴 大井新生 大場陽介 岡田治己 加藤さや香 鹿糠友和 鈴木百花 高島洋樹 高橋伊久磨 高橋慈生 田口恵那 東間一貴 内木克洋 長嶋拓也 永松樹 西尾真由子 花岡麻里名 藤本真凜 MAOTO 松平和希
(五十音順)

<スタッフ>
日本版台本・演出:オ・ルピナ
翻訳・訳詞:高橋亜子
音楽監督:竹内聡
振付:KAORIalive
美術:二村周作
照明:高見和義
音響:山本浩一
映像:上田大樹
衣裳:前田文子
ヘアメイク:宮内宏明
擬闘:栗原直樹
エレクトロニックミュージックデザイン:ヒロ・イイダ
歌唱指導:やまぐちあきこ
演出助手:河合範子
舞台監督:徳永泰子
稽古ピアノ:中條純子
演出家通訳/台本下訳:キム・テイ

宣伝デザイン:山下浩介
宣伝ビジュアル撮影:神ノ川智早

公式HP= https://horipro-stage.jp/stage/kingarthur2023/
公式Twitter= https://twitter.com/kamusicaljp  #キングアーサーミュージカル
公式Instagram= https://www.instagram.com/kamusicaljp/
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