人間にとって一番恐ろしい悪とは何なのか? 『鎌倉殿の13人』好演で話題、柿澤勇人が役者としてのプライドをかけて臨むミュージカル『ジキル&ハイド』
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『デスノート』や『フランケンシュタイン』も 二面性のある役へのアプローチ
――ジキルとハイドという善悪の二面性のある役に挑む柿澤さんですが、どのように役にアプローチしていきたいですか?
まずハイドという悪の部分は、ずっと考えて悩むことなんだろうなと思うんです。というのも、悪っていろんな種類のものがあると思うんですね。わかりやすく言うとサイコパスとか精神異常者とか。表現方法も熱さを持ってワーッと暴れるのか、静かに笑いながら刺すのかとか、いろいろ考えられます。人間にとって一番恐ろしい悪とは何なのかを突き詰めて、行けるところまで行きたいです。お客様が観たときにゾッとするような、嫌われるくらいのところまでいけたら。
反対にジキルの善の部分は、彼が思い描いた成功への道に向かって突っ走るだけだと思うので、そこに誠実に向き合いたい。いかにもいい人を演じると嘘っぽくなって自分も冷めちゃうと思うので、そうならないよう大切に演じたいですね。善と悪の対比がポイントになってくると思います。
――柿澤さんの過去の出演作でいうと、『デスノート THE MUSICAL』の夜神月や『フランケンシュタイン』のビクター/ジャックに通ずるものもあるのでは?
そうですね。それぞれ違いもあると思っていて。例えば『デスノート』では段々毒を注入されて月の正義が歪んでいくので、グラデーションのような感覚がありました。気付いたときには「自分は新世界の神だ」と思い込んで人相まで変わってしまうのが怖いところ。『フランケンシュタイン』では二役の扮装も変わるので、楽屋で一度リセットできるんです。だから苦じゃないし、やっていてむしろ楽しかったんですよ。
ただ、「悪って何だろう」ということは当時も考えていましたね。ミュージカルが好きなお客様にとって汚いものを僕は見せようと思ったし、たとえそれで嫌われても構わないという覚悟で演じていました。ミュージカルだから綺麗なものを見せなきゃいけないとは、僕は思わないので。そういう点は今回の『ジキル&ハイド』にも通ずるかもしれませんね。もちろん、演出家に止められたらやめますけど(笑)。
逆に『ジキル&ハイド』が『デスノート』と『フランケンシュタイン』と大きく違うのは、瞬発的に善と悪を演じ分けなければいけないということ。リセットする時間はないので、板の上で瞬時に演じ分ける必要があります。1曲の中で照明に合わせて演じ分けながら歌うシーンもあるのですが、相当技術もいるでしょうし、万が一噛んだらギャグになって終わっちゃいますよね(笑)。新しい挑戦がいっぱいあるんだろうなと思います。
――ジキルとハイドという役を行き来する中で、瞬時に声色を変えるのも難しいところですよね。
きっと、声は一色だけじゃ何にもならないですよね。心が違うなら技術で声を変えなくてもいいという考えの方もいますが、僕はそうじゃない気がしているんです。何種類かは声を持っていなきゃいけないんじゃないかなって。
今ふと思い出したんですけど、『スルース』という芝居で1幕は若者、2幕は老人を演じることがありました。そのときはまず声を作るところから始めて、口の中にティッシュや綿を詰めて発声を変えたり、いろいろ試していたんです。そうしたら一緒に芝居をしていた(吉田)鋼太郎さんが「かっきー、そういうのいらないから」って。「会話なんだから意図的に声を変えようとしなくていい」と言ってくださったんです。結果的には声色も変化させつつ、あくまで芝居をベースにやりました。そのときの経験が今回も活かせたらいいですね。
映像現場で刺激「自分はこのままでいいのか?」
――大河ドラマ『鎌倉殿の13人』等映像でのご活躍にも注目が集まっていますが、映像の現場で得た経験で舞台に活かせそうなことはありますか?
映像だからこうっていうものは特にないと思うのですが、ミュージカルや演劇だけでは出会えない人たちと出会えたのが大きかったですね。いい役者って、いくところまでいっちゃうんですよ。そんなことまで考えていたのかと面食らうときもあったし、自分は全然足りていなかったなと思い知らされる瞬間もありました。それは彼らが日々役者として役や作品と向き合った結果なんでしょうね。やっぱりすごいなと思う人は、見えないところで努力されているんです。そういう意味ですごく刺激を受けたので、「自分はこのままでいいのか? そう思うなら自分もやれよ!」と思うようになりました。
――『ジキル&ハイド』は、柿澤さんの役者人生の中でターニングポイントになりそうな予感はありますか?
はい、なるんじゃないでしょうか。まだ稽古もしていない段階ですし根拠のない自信ですが、代表作にしたいなとは思います。それは役者としてのプライドなのかもしれません。鹿賀さんと石丸さんが再演を繰り返してきた中でもし僕の再演がなかったら、それは役者としての技量が足りなかっただけだと思うので、そういう意味でも挑戦になります。自分にプレッシャーをかけつつ、覚悟を持って臨みたいと思います。
取材・文=松村 蘭(らんねえ) 撮影=池上夢貢
公演情報
ヘンリー・ジキル/エドワード・ハイド:石丸幹二、柿澤勇人(Wキャスト)
ルーシー・ハリス:笹本玲奈、真彩希帆(Wキャスト)
エマ・カルー:Dream Ami、桜井玲香(Wキャスト)
ジョン・アターソン:石井一孝、上川一哉(Wキャスト)
サイモン・ストライド:畠中 洋
執事 プール:佐藤 誓
ダンヴァース・カルー卿:栗原英雄
彩橋みゆ、真記子、町屋美咲、松永トモカ、三木麻衣子、玲実くれあ(五十音順)
スウィング:川口大地、 舩山智香子
原作:R.L.スティーヴンソン
音楽:フランク・ワイルドホーン
脚本・詞:レスリー・ブリカッス
演出:山田和也
上演台本・詞:高平哲郎
音楽監督:甲斐正人
<東京公演>
日程:2023年3月11日(土)~3月28日(火)
会場:東京国際フォーラム ホールC
主催・企画製作:東宝/ホリプロ
日程:2023年4月8日(土)、9日(日)
会場:愛知県芸術劇場 大ホール
主催:キョードー東海
お問い合わせ:キョードー東海 052-972-7466
(平日12:00~18:00)(土 10:00~13:00)※日曜・祝日は休業
日程:2023年4月15日(土)、16日(日)
ー4月15日(土)13:00
―4月16日(日)13:00
会場:やまぎん県民ホール
主催:さくらんぼテレビ/キョードー東北/キョードーマネージメントシステムズ
お問合せ:キョードー東北 022-217-7788(平日13:00~16:00/土曜日10:00~12:00※祝日を除く)
http://www.kyodo-tohoku.com/main.php
日程:2023年4月20日(木)~23日(日)
会場:梅田芸術劇場メインホール
主催:梅田芸術劇場
お問い合わせ:梅田芸術劇場 06-6377-3800(10:00~18:00)
https://www.umegei.com/schedule/1097/
約3時間(休憩あり)
https://horipro-stage.jp/jekyllandhyde2023-ticketinfo/#Link04
<東京公演キャスト出演スケジュール>
https://s3.ap-northeast-1.amazonaws.com/www.horipro-stage.jp/wp-content/uploads/2022/10/04174307/jekyllandhyde2023_cast_tokyo.pdf
S席:14,000円/A席:9,000円/B席:5,000円
Yシート:2,000円 ※20歳以下対象・当日引換券・要証明書・12/15より枚数限定販売
※本公演の
※やむを得ない事情により、 出演者並びにスケジュールが変更になる可能性がございます。 予めご了承ください。
※公演中止の場合を除き、 払い戻し、 他公演へのお振替はいたしかねます。 ご了承のうえ、 お申込みください。