東京バレエ団ソリスト・涌田美紀「地元で全幕作品の主役を踊ることができて本当に嬉しい」~『くるみ割り人形』全2幕インタビュー
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涌田美紀 (C)東京バレエ団/NBS
2022年12月16日(金)に東京文化会館で開幕する、東京バレエ団『くるみ割り人形』全2幕。この度、東京バレエ団ソリスト・涌田美紀のオフィシャルインタビューが届いたので紹介する。
東京バレエ団が、クリスマス・シーズン恒例の『くるみ割り人形』を上演する。チャイコフスキーの音楽による古典バレエの傑作だが、東京バレエ団 が2019年より上演しているヴァージョンは、主人公たちがクリスマス・ツリーの中を上へ上へと旅する独創的な趣向で人気を得ている作品。今回、主人公の少女・マーシャに初挑戦する東京バレエ団ソリストの涌田美紀に、舞台への思い、作品の魅力を聞いた。
「舞台で大きく見えるダンサーでありたいと思っているんです。舞台の外の姿を見て、『実はこんなに小さかったんだ!』と思ってもらえたら!」と笑顔を見せる涌田。小柄ながら、大らか、かつ端正な踊りで数々のソリスト役を演じ、強い印象を残してきた。
「登場したらパッと目を覚まさせるような、思わず目を止めさせるような踊りを見せたい。いつもそう思っています」
ファミリー向けの作品である子どものためのバレエ『ドン・キホーテの夢』や『パキータ』(抜粋)などに主演し存在感を強く印象付けていた彼女。が、初めて古典全幕作品の主役を演じたのは今年6月の『ドン・キホーテ』。キャリア12年目にして実現した、夢の舞台だった。
「まさか自分にこんなチャンスがめぐってくるとは思ってもいませんでした。『ドン・キホーテ』のヒロイン、キトリは憧れの役でしたし、サバサバとしたキャラクターは自分に合っていたように思います。今回の『くるみ割り人形』のマーシャも、いつか踊ることができたらと思っていた役柄。強めのキャラクターのキトリとは対照的な、柔らかい雰囲気の役ですが、どちらも演じることができるダンサーになれたらいいなと思っていたんです。役作りは踊る人によって異なりますが、友佳理さん(本作の振付を手がけた東京バレエ団芸術監督・斎藤友佳理)の思い入れのある作品ですから、リハーサルを通してじっくりと学びながら、私がマーシャをどう演じたいかというところを追求したい。1幕では7歳の女の子として登場しますが、夢の世界の旅を経ての第2幕、くるみ割り王子と踊るグラン・パ・ド・ドゥでは少し大人っぽいレディに成長。その変化をしっかりとお見せできたら」
雪の精たちの美しい群舞やツリーの中の幻想的な世界、可愛らしいお菓子の国など、独創的な場面が次々と展開する舞台のクライマックス。グラン・パ・ド・ドゥでは、主役の二人が組んで踊るアダージオ、それぞれがひとりで踊るヴァリエーション、最後に二人が再び組んで踊るコーダと、古典バレエならではのテクニックが詰まった、見どころにあふれた踊りが連なる。
「姫と王子ではあるけれど、高貴なイメージというよりは微笑ましくて温かな雰囲気。東京バレエ団のヴァージョンはロシアの流れをくむ振付で、ダイナミックなリフトが何種類も出てきます。誤魔化しのきかないアカデミックな踊りですから、あの素晴らしい音楽の流れにのって踊れるよう、パートナーの康臣さん(プリンシパルの秋元康臣)とともにリハーサルを重ねていきたいですね」
初演以来毎年、東京公演と全国各地へのツアーを重ねている東京バレエ団の『くるみ割り人形』。涌田は今年、東京公演(12月17日昼公演)に加え、地元大阪の堺公演(12月21日)にも主演する。
「15歳で留学するまではずっと大阪。それ以後は行ったり来たりでしたが、大阪に帰るといつもホッとして、普段はちょっと抑え気味の大阪弁も全開に(笑)。どこで踊っても全力を尽くすのは同じですが、地元で全幕作品の主役を踊ることができて本当に嬉しい。成長した私の姿をぜひ皆さんに観ていただきたいです。誰もが純粋に楽しめるバレエですし、主役以外にも、たとえば第2幕の各国の踊りにはいろんなタイプの踊りが登場しますから、きっと好きな踊りに出会えます。私も『この役が素敵』『これを踊りたい!』と思っていたひとり。私も多くの方々に楽しんでいただける舞台をお届けしたいと思います」
文=加藤智子(フリーライター)
本公演は12月18日(日)まで東京・東京文化会館で上演。その後、堺(大阪)・西宮(兵庫)・新潟・長野・岡谷(長野)にて行われる。
公演情報
『くるみ割り人形』全2幕
上演時間:約2時間10分(休憩1回含む)
【公演日・開場時間】
2022年
12月16日(金)19:00 マーシャ:秋山瑛 くるみ割り王子:宮川新大
12月17日(土)12:30* マーシャ:涌田美紀 くるみ割り王子:秋元康臣
12月17日(土)17:30 マーシャ:金子仁美 くるみ割り王子:池本祥真
12月18日(日)14:00* マーシャ:足立真里亜 くるみ割り王子:大塚卓
【会場】東京文化会館 (上野)
【指揮】フィリップ・エリス
【演奏】東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
【児童合唱】NHK東京児童合唱団
【堺公演】(大阪府堺市)
日程:2022年12月21日(水)18:30(17:45開場)
会場:フェニーチェ堺(堺市民芸術文化ホール)大ホール
くるみ割り王子:秋元 康臣
日程:2022年12月23日(金)19:00(18:15開場)
会場:兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール
くるみ割り王子:宮川 新大
日程:2022年12月25日(日)14:00(13:15開場)
会場:新潟県民会館
くるみ割り王子:大塚 卓
日程:2022年12月26日(月)18:30(17:45開場)
会場:長野市芸術館 メインホール
くるみ割り王子:池本 祥真
日程:2022年12月27日(火)18:30(17:45開場)
会場:カノラホール(岡谷市文化会館)大ホール
くるみ割り王子:宮川 新大
指揮:フィリップ・エリス
演奏:大阪フィルハーモニー交響楽団
※その他の公演では音楽は特別録音による音源を使用します。
お問い合わせ:NBS