【“解き放たれた怪物”関根シュレック秀樹インタビュー】初代タイガーマスクSSPW Vol.20 12・8後楽園ホール大会
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スーパー・タイガー、間下隼人と所属選手を連続で倒し、ストロングスタイルプロレスの絶対的な王者として君臨した真霜拳號。その真霜に挑戦者として名乗りを上げたのは、現在RIZINヘビー級戦線でも活躍する関根“シュレック”秀樹だった。
“プロレス”・“ストロングスタイル”というものに並々ならぬ熱を持って活躍する関根がどのような想いでこのベルトに挑戦するのか? プロレスラー関根“シュレック”秀樹の本質に迫った。
《メインイベントレジェンド選手権試合 60分1本勝負》
【第16代王者】真霜拳號(2AW)vs【挑戦者】関根シュレック秀樹(ボンサイ柔術)
船木さんに『お前もそろそろベルトを狙え』って言っていただいて視点が変わった
――まず改めてストロングスタイルプロレスの印象をお聞かせいただいてもよろしいでしょうか?
関根「そうですね~、最初やる前は“初代タイガーマスク”佐山サトルさんの団体ということで、かなり質実剛健なとこだなと思っていました。最近はタイガークイーンとか女子プロレスラーの試合がたくさん入ってきて、いろんなプロレスがあって面白いなって思っています」
――間下隼人選手&スーパー・タイガー選手のような、所属選手の持つストロングスタイルの源流というものに対してはどう感じていますか?
関根「もちろんアントニオ猪木さんから始まって、おそらくだけど一番弟子というか、一番すごかったのがタイガーマスクであって。ストロングスタイルの正統を護っているっていう感じがしますよね」
――ストロングスタイルプロレスは格闘技とプロレスがある意味合わさったような路上格闘実践型を念頭に置いて作られてるわけですけど、それはMMAファイターである関根選手から見て格闘技の魂みたいなものは感じますか?
関根「やっぱり自分たちがアントニオ猪木の事が好きだった部分は強さです。ショーマンシップというか、ショー化されたプロレスじゃない本当の強さ、凄み。アントニオ猪木が時折り見せる格闘技的な動き、それは今ビデオで見ても強かったんだなってわかるんですよ。タックル一つ、腕の取り方一つ見ても実践的。そういったところで、自分もスーパー・タイガーとは手合わせしたことあるけど、すごく格闘技ができてるんでやりやすいっていうのがあります」
――6月のストロングスタイルプロレスでは格闘家でもある船木誠勝選手との戦いもありました。改めて船木戦を振り返ってみていかがですか
関根「船木選手の場合は自分が学生の頃、一番プロレスにはまっていた頃に憧れていた選手。憧れのまま戦ってしまったっていうのはありますよね。でもこれは仕方ないことだと思うんですよ。きっと何度やってもそうなっちゃいます。あの船木誠勝を体感してみたいっていう、そういう気持ちでずっと戦っちゃってたので。全てを味わいたいっていう。船木誠勝の攻撃力、どんなものか計りたいっていうのがありましたよね」
――それは前回の戦いで、その気持ちっていうのはある程度満足したのか、それともまだまだ船木さんを体感したいのかですとどちらでしょう
関根「そうっすね~、あの時も戦い終わった後にインタビューで言ったんですけど、船木誠勝がちゃんと強くて嬉しかったと。もちろん当時も強いと思ったんですけど、自分も格闘技の結果を出した今の時点で戦ってみて、50を超えた船木誠勝がこれだけ強いっていうのは驚きました。だって当時はもっと強かったんでしょ。あ、でも今の方が強いのかもしれないな。とにかくあの強い船木誠勝が嘘ではなかった。ホントに強かったっていうのがすごく嬉しかったです。それを踏まえて、その船木さんに『お前もそろそろベルトを狙え』って言っていただいて、少し視点が変わった気がしますね」
――その船木さんも持っていたベルトに遂に挑戦することになるわけですけど、ストロングスタイルのベルトというものに対してはどのような思いがありますか?
関根「さっきも言った通りストロングスタイルプロレスのレジェンド王座っていうのは、今、巷にあるプロレスの中でアントニオ猪木・初代タイガーマスクと続く正統派の、ストロングスタイルの正統なベルトだと思ってるので、欲しい、欲しいっていうそういう気持ちしかないです」
プロレスの最初の「型」が上手い人っていうのは確実に強い
――現在の王者・真霜拳號選手とは多分戦われたことないと思うんですけど
関根「無いですね。一回タッグを組む予定はあったんですよね。確かコロナかなんかで、代わりに佐藤光留選手が入って戦ったことはあるんですけど」
――『Uの戦い』とリングアナが叫んでいた試合ですよね
関根「ストロングスタイルでUの名前を出しちゃいけないです(苦笑)。佐山さんの団体なんで。あの時酷かったです、実況がU・U・U言っちゃって。選手の名前から技までもうすべてが間違ってるだろうと。
UWFっていうのはアントニオ猪木のストロングスタイルを突き詰めた、先鋭化させたものであって、うーん、例えて言うならアントニオ猪木のストロングスタイルがイスラム教だとしたら、過激な原理主義なんですよねUWFは。もうそれこそ、イデオロギー闘争とか宗教闘争みたいなものがすぐ起きて分裂してまた争う。まあそれで俺も夢中になったし今でも好きなんですけど。
そしてそのUの書いてある部分、経典の一番大事なところ、言わば根っこのとこだけを切り取って成形、競技化してできたのが総合格闘技ですよ。だから今こそ源流に戻って佐山さんはそこだけを切り取って使うな、それは一つの側面であって・・・ってことだと思うんですよね、自分の解釈は」
――なるほど
――確かに。(Uは)一部ですね
関根「そこだけ切り取ってると誤解されちゃうだろうって。イスラム原理主義者の一部がテロとかしたら・・・そういうことですね。そこじゃないんだよ、だと自分は理解してるけど、(佐山さんの)目の前でお話できないですよね(苦笑)。1回お話してみたいですけどね」
――真霜選手の試合を見られて、どういう選手だと思いますか
関根「そうですね、自分からすると、器用な選手だと思います」
――それはどの辺りの部分で
関根「技もそうですし、自分の場合はまだまだプロレス経験浅いし格闘技から入ってるんで、臨機応変ってのはなかなか難しいです。彼の方がいろんな機微あふれる動きができるのかなと思いますね」
――2人とも体格が大きい方にも関わらず寝技が得意な選手ですけど、プロレスの関節技の怖さっていうものはどの部分にあると思われますか?
関根「自分はブラジリアン柔術がバックボーンなんですけど、それとは違う入り方ですね。いろんなプロレスの控え室でも言うんですけど、序盤のレスリングの攻防あるじゃないですか? ツカミの。あれを退屈に感じるファン、あとプロレスラーも、自分に対して『つまんないでしょ?』って言う方いるんですけど、それは違いますよね。それはある程度のレベルまで格闘技を修めた人間ならばあれがどんなにすごいものかわからなければいけないと思うんです。それは柔道でいったら型の世界選手権であったり、達人がやる空手の型だったりっていうものと全く一緒で、あそこに戦いの全てのエッセンスが詰まってるんですよ。最初の、序盤のプロレスリング、あれが戦いの全てを具現化した、デフォルメしたものなんですよね。だから、自分は今、ブラジリアン柔術、格闘技をやってみて、あそこに全てが詰まってんだな~と思って。あそこをスッゴイよく見ますよね。素晴らしいと思います。平本選手ご存知ですか?」
――RIZINの?
関根「そうです。平本蓮選手が前回のRIZINで勝ちましたけど、岩崎空手、元極真のチャンピオンの岩崎先生の。あの方は伝統派空手を学び直して型の素晴らしさを教える。型に全てが詰まっているということで。空手の型の動きの中にも、実は柔道でいう小内刈りの型だったりとか、あとUFCでも何でもそうなんすけど、全て空手の型で決まってるものが多いですよ、打撃とか。実は。だからプロレスのそういう最初の『型』が上手い人っていうのは確実に強いと思います。ストロングスタイルでも最初やるじゃないですか。あれは素晴らしい事。あれが見せられる人は格闘技が強い」
――真霜選手も20年のキャリアがあり、今まで戦われてきた選手の中でも船木選手と同じ系統の強さを持ってる方だと思うんです
関根「そうですね、プラスで寝技の部分でも手が合うのか合わないのか楽しみなところです」
――真霜選手はインタビューで『パワーの部分では圧倒されるかもしれない、体格差があるのでまだ攻めどころがわからない』というふうにおっしゃられてます。逆に関根選手は真霜選手の攻めどころはどこにあると思いますか?
関根「自分の場合は、これは格闘技の試合ではないんで、弱点を最初から攻めるってことないと思います。あったとしても。彼の全てを感じたいですね、真霜選手のいいところも悪いところも。その上で倒したいですね」
――関根選手はいろんなプロレス団体を見られてると思うんですけど、真霜選手のバックボーンというか源流であるTAKAみちのくに関してはどういうイメージを持ってますか?
関根「自分は学生の頃にUWFインターを中心に観てたんですけど、やっぱり興行が少ないんで、その他に全日本プロレス、あとみちのくプロレス、FMWとかもよく観に行ってたんです。TAKAみちのく選手っていうのは実は当時すごい好きな選手で、ディック東郷選手、スペル・デルフィン、(ザ・グレート)サスケさんとか、すっごい好きだったんですよ。
TAKAみちのくさんは当時宇宙人とかって言われてたりとかして、アメリカでもやられてましたよね。すごいですね、あのときのメンバーが、新崎人生さんとかもそうだし、はあ、すごいよな~。今。また話外れちゃいますけどすごいっすよね、獅龍さんとか、またGLEATとかあの辺で自分が一緒になってやれるのがすごい嬉しいですね~(笑顔)」
――当時のメンバーが30周年記念試合で集まる事が増えてますね
関根「TAKAみちのくさんっていうのは、当時は思わなかったんすけど今JUST TUP OUTやられてるじゃないですか? 若手のプロレスが凄いしっかりしてますよね。あれだけの人材を育てるっていうのは、手腕と実力がないとできないことであって、その源流で育ってるわけですから、それはもうすごいとしか言いようがありません」
内柴正人さんと佐藤光留さんがプロレスの恩人
――根本的な質問になるんですけど、なぜそれだけのプロレス愛がありながら、最初にプロレスラーを目指さずに格闘技に進まれたんですか?
関根「元々は大学卒業したときにUWFインターに入りたかったんですけど、ちょうど対抗戦が終わって、活動停止になっちゃったんですよね、大学4年の12月くらいの時に。第二希望がみちのくプロレスだったんで行こうかなと思ったんですけど、祖母に警察官の願書勝手に出されていて受けたらたまたま受かっちゃってたんですよ。そしたら行くだけ行ってくれと泣かれて警察官になったっていういきさつで(苦笑)。受かってなかったら多分みちのくプロレス行ってたと思います。」
――関根選手がプロレスラーになっていた道もあったんですね
関根「そうですね~。で、そのまま警察を20年近くやっていたんですけどやっぱりリングのうえで戦いたいという夢が諦められなくて、43歳で警察を辞めて格闘技に専念することにしました。で、ある時、佐藤光留さん主催のハードヒットで、内柴正人さんがオファーされていたんですよね、試合出てくれと(2017年)。だけど内柴さんは出る気はないとずっと断ったんていたんです。内柴正人さんっていうのは、その当時うちのボンサイ柔術に来てブラジリアン柔術学んでたんですね、浜松にアパート借りて。その時に仲良くなって話してくうちに『実はプロレスの試合に出ないかって誘われて困ってるんですよ』って相談されたので、「俺だったらすぐ出ちゃいますよ!プロレス最高じゃないですか!」って答えたら、『じゃ代わりに出てくださいよ。言っときますよ』って言われて(笑)。それで出ることになりました。だから内柴さんと佐藤光留が恩人なんですよ。プロレスの」
――本当にそこから一気に世界が変わったというか
関根「そうですね、あんだけ憧れ続けたプロレスの世界に」
――もう今やRIZINファイターにまでなられて、自分の中で思い描いてましたか? 全国区のファイターにっていうのは
関根「いやもう自分は、年数回PRIDEやDREAMを嫁さんと3万円のSRS席で観に行くのが唯一の楽しみだったんですよ。あと自分だけでも仕事の都合さえつけばDEEP観に行くとかでしたから、まさか自分がこうなるっていうのは思ってもみなかったですよね」
『目の前に敵がいるのにそんなこと考えるバカがいるかよ』って猪木さんは怒りますよ(笑)
――今ボンサイ柔術がRIZINを席巻していますが、その強さの秘訣はどこにあるのでしょう?
関根「もちろん寝技なんですけど、自分が思うにその強さに不思議はなくて勝っている選手は誰よりも練習してるからなんですよ(笑)。でもそれはつらい練習じゃなくて、本当に柔術が好きなだけで、たとえ試合の翌日でもダメージがあっても、練習が楽しいから、ジムのみんなに会いたいからって必ず行くんですよ練習に。とにかく練習が好きで楽しくてたまらない。その雰囲気がいいんじゃないですかね? もちろん必ず来ますねクレベルもサトシも俺も(笑)。誰よりも練習してるんすよ」
――その中で二足のわらじといいますかプロレスの練習も含めてっていうとやっぱり筋肉の使い方も違うと思うんですが、大変な部分っていうのは
関根「これって持論なんですけど、なんでも一つに絞ったらダメだと思っているんです。一つの事象でもいろんな側面がありますよね。でも一方面から見える景色しか知らないと、考えも一方向しか出てこない。それで戦争になるわけじゃないすか。みんな自分から見える正義を主張するから。だからこそいろんな見方ができるようにいろんな事やるのがいいのではないかと。格闘技は年に2試合か3試合です。じゃあその間何をするのって言ったときに自分のモチベーションだったり生きてる目標だったりにもなるんですよね。やっぱりプロレス大好きなファンと触れ合ったりとか自分の生き様知ってもらうことであったりとか、それはすごく自分の人生の糧になってますよプロレスが。いろんな自分を見せれる、いろんな自分を知れる」
――その生きがいの中で、今回のベルトっていうのは大事な一つのターニングポイントになるんですね
関根「そうですね、物心ついた時ストロングスタイル、アントニオ猪木は強かったです。学生になってプロレスのイデオロギーとか考えるようになって、その源流のベルトっていうのが取れれば、すごい自分の中で人生の一つの勲章というか、核になるものだと思いますね」
――そのベルトを持ってINOKI BOM-BA-YE×巌流島も出て行きたいですか?
関根「INOKI BOM-BA-YE、もちろんそうですし、来年のRIZINもです。日本において格闘技の最高の舞台がRIZINなのは間違いありません。そこにストロングスタイルのベルトを巻いて花道を歩いて入場するっていうことができたら、プロレスと格闘技界に対する今自分ができる最高の恩返しだと思うんですよ。最大の目標がそこ。プロレスラーの強さを証明するっていう。それはもう先鋭化された現在のプロレス界で誰もができることじゃないんで。だからこそいろんなプロレスラーが応援してくれていると思うんですよね。絶対奪りたいですよね」
――今回のストロングスタイルプロレスは猪木さんの追悼大会になることが発表されまして、イノキボンバイエで令和猪木軍入りも発表された関根さんがストロングスタイルのベルトを賭けて猪木追悼大会のメインを務めるっていうのは、そこある意味プレッシャーを感じるところはあるんでしょうか
関根「そういう気持ちは当然ありますし、プレッシャーに感じてる部分もあります。ただ、ゴングが鳴れば待ち構えてるものは真霜拳號っていう男一人なんで、始まればもう関係ないです。真霜拳號という男を丸ごと味わうだけですよね。『目の前に敵がいるのにそんなこと考えるバカがいるかよ』って猪木さんは怒りますよ(笑)」
――ありがとうございました。改めて関根選手の格闘家としてのファン、プロレスファン両方へ向けて意気込みをいただけますと
関根「プロレスと格闘技の勝負の価値観の違いですよね。格闘技は競技としての強さ、相手にいいところ出させずに勝つ。苦手なところを攻めて自分だけが良い想いをするのが格闘技。自分だけが美味しくて良い。相手に良いとこ出させない、それが格闘技。徹底的に無駄を省いて勝つ。洗練された勝負の美しさ。プロレスは逆に相手の良いところを限界まで引き出して引き出してそれをまた上回って勝つ。格闘技とは逆に競技の勝ち負けからは外れた無駄な部分も根こそぎ比べ合う、お互いを高めあい限界を突破するもの。プロレスの勝負の価値観、格闘技との価値観の違いを皆さんに見てほしいですね」
日本のヘビー級ファイターの中でもトップクラスの実力者である関根は、“令和猪木軍“として、熱いプロレスファンとして、ストロングスタイルプロレスのベルトに人並みならぬ想いを持っていた。
プロレスへの心技体すべてを持つ関根と、試合巧者の真霜拳號。この二人の持つストロングスタイルのイデオロギーが、12月8日後楽園ホールでぶつかりあう。
【対戦カード】
《メインイベントレジェンド選手権試合 60分1本勝負》
【第16代王者】真霜拳號(2AW)vs【挑戦者】関根シュレック秀樹(ボンサイ柔術)
《セミファイナルタッグマッチ 60分1本勝負》
タイガー・クイーン(SSPW)&梅咲遥(ワールド女子プロレス・ディアナ)vs藪下めぐみ(フリー)&マドレーヌ(ワールド女子プロレス・ディアナ)
《第4試合藤原喜明組長50周年記念・石川雄規30周年記念試合 6人タッグマッチ60分1本勝負》
藤原喜明(藤原組)&関本大介(大日本プロレス)&日高郁人(ショーンキャプチャー)vsスーパー・タイガー(SSPW)&船木誠勝(フリー)&石川雄規(フリー)
《第3試合 3ウェイマッチ 30分1本勝負》
ジャガー横田(ワールド女子プロレス・ディアナ)vs高瀬みゆき(フリー)vsダーク・パンサー(DarkerZ)
《第2試合タッグマッチ 30分1本勝負》
間下隼人(SSPW)&槙吾(Mil gracias)vsブラック・タイガー(不明)&阿部史典(プロレスリングBASARA)
《第1試合シングルマッチ 30分1本勝負》
KAZUKI(チームCRICIS/PURE-J女子プロレス)vsダーク・タイガー(DarkerZ)
※対戦カードは変更となる場合もございます。