英国ロイヤル・バレエ団プリンシパルの高田茜に聞く~2023年日本公演『ロミオとジュリエット』ほかに主演
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高田茜(撮影:引地信彦)
英国ロイヤル・バレエ団が2023年6月~7月、4年ぶりに日本公演を行い『ロミオとジュリエット』と〈ロイヤル・セレブレーション〉を上演する。バレエ界屈指の人気と実力を誇る名門による夢の饗宴だ。綺羅星のごときスターたちの一翼を担うのがプリンシパル(最高位)の高田茜。高田は『ロミオとジュリエット』に平野亮一と共に主演し(7月2日13:00公演)、〈ロイヤル・セレブレーション〉では『ジュエルズ』より“ダイヤモンド” (6月25日13:00公演)に出演(2022年11月28日現在)。「SPICE」では2022年7月下旬、一時帰国中の高田に単独取材を行い、自身やカンパニーの近況、配役決定前ではあったが日本公演に向けての思いなどを聞いた。
■どん底からの復活 新作でも活躍し充実期へ!
――先ごろ(2022年7月)、東京で行われた〈ロイヤル・バレエ・ガラ〉で久々にロイヤル・バレエの同僚たちと日本で踊りました。その際の印象はいかがでしたか?
シンプルに楽しかったですね。いつも一緒に踊っている素晴らしいダンサーたちと日本で踊ることができてよかったです。本当に貴重な時間を過ごせました。
――2021/2022シーズンを振り返っての思いをお聞かせください。
先シーズンは怪我をしては戻り、また怪我をして戻りの繰り返しだったので、9公演しか踊っていないんです。出演したのも『ジゼル』とウェイン・マクレガーの『ダンテ・プロジェクト』それにクリストファー・ウィールドンの新作『Like Water for Chocolate』(原題)だけだったので、舞台に立つ時間は決して長くはありませんでした。でも新作の振付に参加する機会にあまり関わってこなかったので楽しくできました。『Like Water for Chocolate』は私の好きなストーリー性のある作品だったので、すべてにおいて楽しめましたね。
――2016年にプリンシパルに昇格され、直後に日本公演があり話題になりました。しかし2019年の日本公演では『ドン・キホーテ』全幕に主演予定でしたが怪我のため降板。その際も含めて近年怪我が続きましたが、モチベーションをどのように保ちましたか?
私自身ケアや予防をできる限りしているつもりですが、それでも怪我をする時はあるんですね。特に先シーズンはせっかく復帰したのに舞台でのリハーサル中にまた怪我したりもしました。感染症で長くオフになってしまうことも続き、本当に落ちこみました。「なぜ私なんだろう? どうしてこんなに続くんだろう?」と。でも落ち込むだけ落ち込んで「今できることは何だろう?」と気持ちを切り替えるのが早くなりました。自分の思うようにいかない時にどのようにしたらいのか解決策みたいなものがあれば、そこから抜け出したり、次の手段にいくことがもっとスムーズにできるようになったりします。
■「皆が一丸となって助け合う」~チームワーク抜群のロイヤル・バレエ
高田茜(撮影:引地信彦)
――小さい頃からの夢を叶えトップバレリーナとして活躍されています。プリンシパルとして日々何を大事にして踊っていますか?
プリンシパルになってからの数年は「ロイヤル・バレエのプリンシパルはちゃんとしていなければいけない」というプレッシャーがありました。変に自分に期待をしたり、ハードルを高くしたりして、そこにたどり着かなかったら全然駄目だと落ち込んでいたんです。そうして舞台を楽しむことができなくなってしまいました。でも最近は自分だったらどのように表現できるか、どうしたら今のこの舞台を楽しむことができるかに集中するようになりました。
――英国ロイヤル・バレエ団は日本でも人気で、近年は映画館上映(「英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン」)も盛況で親しまれています。カンパニー全体のチームワークがよい印象を受けますし、映画館上映される公演直前にアクシデントが起こり代役が主演しても皆でカバーして成功させるなどエネルギーを感じます。その辺りを実際にどう思われますか?
チームワークは本当にいいですね! 皆が一丸となって良い舞台を創ろうという気持ちを常に持ち続けています。「アクシデントにも強い」というのは、普段からいかにレッスンとリハーサルに力をこめているかの証でしょう。ダンサーとして自分自身で葛藤している人が多く、だからこそライバルというよりも皆で助け合おうという気持ちが生まれるのだと思います。
――日本人ダンサーの方も多く在籍しています。後輩がたくさんできましたね。
皆仲よくしています。小林ひかるさん(元ファースト・ソリスト)とフェデリコ(・ボネッリ)夫妻のお家で日本人パーティーをやっていて楽しかったです。でもフェデリコがノーザン・バレエのディレクターになったので引っ越してしまい寂しくて……。でも変わらず皆仲よくやっています。〈ロイヤル・バレエ・ガラ〉で急きょ『白鳥の湖』より第2幕(白鳥)のパ・ド・ドゥを踊った佐々木万璃子ちゃんも可愛くておもしろいので、プライベートで一緒にご飯を食べにいったり、彼女がイタリアで五十嵐大地くんとガラ公演で踊る時にコーチングしたりしています。後輩からインスパイアされるし「がんばろう!」という気持ちになります。
■「物語に真実味と厚みを増している」ロイヤル・バレエのマクミラン作品
「ロミオとジュリエット」舞台写真(撮影:長谷川清徳)
――2023年6~7月の日本公演でケネス・マクミラン振付『ロミオとジュリエット』が上演されます。ジュリエット役を2019年に踊られていますね。
最初にスティーヴン(・マックレー)と組む予定でしたが、彼が怪我をしてしまい、(平野)亮一さんと踊りました。小さい頃から観ていて踊ることが夢だったのでうれしくて。リハーサルと本番では違う感情が生まれて気づきがありました。日本公演で踊ることとができれば、それから数年たった今の私がどのように演じるのか、どのように感じるのかが楽しみです。
――マクミランの『ロミオとジュリエット』は全幕を通して疾走感があって、若いロミオとジュリエットが情熱的に命を燃やし尽くします。踊っていてどう感じますか?
マクミランの作品にはすべてのキャラクターに人生があるのが素晴らしいと思います。振付も時代背景や人物像を浮かび上がらせるようになっていて、全体を通して一つの物語を、ロミオとジュリエットの恋の悲劇を描いています。パワフルなシーンもありますが、私のお気に入りはジュリエットが寝室でただ座っているだけの場面です。一人で葛藤しているのですが、演じていて入り込めるので好きですね。
――平野さんとのパートナーシップはいかがでしたか?
凄く自由に踊れました。役に没頭できるようにしてくださいました。ジュリエットが自分の魂を解放して踊るというシーンを本当に自由に踊らせていただけました。
――マクミラン作品でいえば『マイヤリング』のマリー・ヴェッツェラ(皇太子ルドルフの心中相手)、『マノン』のタイトルロールなども踊られています。世界中のカンパニーがマクミラン作品を上演していますが、英国ロイヤル・バレエ団には本家ならではの伝承があるかと思います。マクミラン作品の魅力はどこにあると思われますか?
人間の複雑な心情をお客様に伝えることができるからこそ、さまざまなダンサーが踊りたいのだと思います。私も「物語を伝えたい、何かを伝えたい」という気持ちで踊っています。ロイヤル・バレエのダンサーたちは演じることが好きです。それこそがロイヤル・バレエが人間味のある演技をすると言われる理由のひとつではないでしょうか。ただ主役が踊るだけではなくて皆で物語を創って演じ、周りからレイヤーを深めていく。物語に真実味と厚みを増していくことができているのがロイヤル・バレエのマクミラン作品なのではないかと思います。
■今シーズンの意気込みと、日本公演に向けての思い
――2022/2023シーズンの抱負をお聞かせください。
『くるみ割り人形』のほか『眠れる森の美女』や『シンデレラ』もあります。コロナ禍ですし、怪我をしていたので古典全幕をやることが最近あまりありませんでした。また一から古典のテクニックを見直します。古典は誤魔化しができません。そこを追求することは通らなければいけない道です。怪我をしないようにして全幕ものに向けて体を調整していきたいです。
――日本公演への思いを一言お願いします。
私は日本の皆様に全幕作品を踊る舞台を観ていただきたいんです。ストーリーのある『ロミオとジュリエット』を日本公演で踊ることができれば、それは本当に特別なことです。ずっと心に残るような舞台にしたいなと今から願っているので、私自身も楽しみにしています。早く日本で踊りたいという気持ちを持ちながらがんばります。
取材・文=高橋森彦
公演情報
上演予定作品:
「ジュエルズ」より“ダイヤモンド” [全編](ジョージ・バランシン振付)
「田園の出来事」(フレデリック・アシュトン振付)
「FOR FOUR」(クリストファー・ウィールドン振付)
「プリマ」(ヴァレンティノ・ズケッティ振付)
マリアネラ・ヌニェス、リース・クラークほか/ナターリヤ・オシポワ、ウィリアム・ブレイスウェル ほか/マシュー・ボール、ジェイムズ・ヘイ、ワディム・ムンタギロフ、マルセリーノ・サンベ/フランチェスカ・ヘイワード、金子扶生、マヤラ・マグリ、ヤスミン・ナグディ
サラ・ラム、平野亮一ほか/マリアネラ・ヌニェス、マシュー・ボールほか/ウィリアム・ブレイスウェル、セザール・コラレス、ジョゼフ・シセンズ、アクリ瑠嘉/メーガン・グレース・ヒンキス、佐々木万瑠子、クレア・カルヴァート、佐々木須弥奈
高田茜、スティーヴン・マックレーほか/ラウラ・モレーラ、ワディム・ムンタギロフほか/マシュー・ボール、ジェイムズ・ヘイ、ワディム・ムンタギロフ、マルセリーノ・サンベ/フランチェスカ・ヘイワード、金子扶生、マヤラ・マグリ、ヤスミン・ナグディ
◆ケネス・マクミラン振付「ロミオとジュリエット」
【配役】ジュリエット/ロミオ
6月28日(水) 18:30 サラ・ラム/スティーヴン・マックレー
6月29日(木) 13:30 ヤスミン・ナグディ/マシュー・ボール
6月29日(木) 18:30 フランチェスカ・ヘイワード/セザール・コラレス
6月30日(金) 18:30 ナターリヤ・オシポワ/リース・クラーク
7月1日(土) 13:00 アナ・ローズ・オサリヴァン/マルセリーノ・サンベ
7月1日(土) 18:00 マリアネラ・ヌニェス/ウィリアム・ブレイスウェル
7月2日(日) 13:00 高田茜/平野亮一
会場:東京文化会館(上野)
主催:公益財団法人日本舞台芸術振興会
S=\26,000 A=\23,000 B=\20,000 C=\16,000 D=\12,000 E=\9,000 U25 シート=\5,000
会場:フェスティバルホール
公演日:7月5日(水)18:30開演 主演:金子扶生、ワディム・ムンタギロフ
会場:アクリエひめじ
公演日:7月8日(土)14:00開演
プレゼント情報
サイン入りチェキを1名様にプレゼント
2023年1月31日(火)23:59まで
ご購入はこちら:https://eplus.jp/royalballet2023/
【応募条件】
・日本に居住されている方(賞品配送先が日本国内の方)。
・応募に関する注意事項に同意いただける方。
【注意事項】
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