go!go!vanillas 最新形でありながら原点・核心に迫る最新アルバム『FLOWERS』に詰め込まれた大事なこと
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――そもそも「LIFE IS BEAUTIFUL」以降のバニラズは、プレイヤーそれぞれの人間力というか、“こういう人となりで、こういう人生を歩んできて、こういう分野を学んできたからこそ、こういう演奏をするんですね”というものが重なって生まれる音楽の唯一無二性をより大事にしていこうというモードでしたよね。
牧:そうですね。この7人って、同じ楽器を担当している人が一人もいないんですよ。重奏だと、全体のバランスを気にして自分が一歩引くということもあると思うんですけど、そのパートが自分だけだったら“このバンドでどう自分を表現するか”という話になってくるし、その人がどんな人間なのか、今何を考えているのか、何が得意で何が不得意なのか……というふうに全部が音に出るから、僕としてはそこを見て“すごくいいな”と思った3人に新たに入ってもらった感覚で。ピアノ、フィドル、トランペットが演奏できれば誰でもよかったわけではないし、それはメンバーに関しても一緒ですよね。みんなが個人をぶつけ合っている健全な状態の中で、僕が監督のような目線で、この曲には何が一番合うのかを判断して、時には“みんなにとって一番気持ちいい落としどころはどこだろうね”ってお互いに話をしながら、時には“分かったよ、もうそこは好きにしていいよ”とか言いながら(笑)、今回のアルバムは作っていきましたね。
――アンサンブルって小さな社会だなと改めて思いますが、今回のアルバム、社会や人生、自分として生きていくこと、誰かとともに生きていくことを歌った曲が多い気がします。今の牧さんには、人生について書きたいという気持ちが強くあるんでしょうか?
牧:あると思います。例えばライブで盛り上がる曲って、僕にとって家族で行く外食のようなものなんですよ。たまにだから“やったー!”ってなるけど、毎日だったら何も感じなくなるというか。今思えば、声を出して“わーっ”と盛り上がることが当たり前だったコロナ禍前はずっと外食に行っていたような感じで、僕も“もっとそういう曲を作らなきゃ”というふうになっていた時期がありました。だけど(コロナ禍に入り)ずっと家にいるようになって、拙い手料理を作るようになった時にやっぱり感じるわけですよ。音楽も、自分の日常に根づいているものにしたいなって。それで1つ前のアルバム『PANDORA』ぐらいから書く曲が変わっていった気がしますね。
――なるほど、コロナ禍を経ての変化だったんですね。
牧:あと、今年の5月5日に大分に帰ったんですよ。
――5月5日は、大分 iichikoグランシアタでの凱旋ワンマンでした。
牧:大分でのライブがある時は毎回、僕とプリティは前乗りして実家に泊まるんですけど、うちってめっちゃ古いから、柱が黒く変色していて。小っちゃい頃は自分の家が古いのが嫌で、新築の友達の家に遊びに行った時に“羨ましいな”と思ってたんですよ。だけど大人になってからその柱を見た時に、めっちゃカッコイイなと思ったんですよね。家って、改装したりDIYで直したりして少しずつ変わっていくものだけど、柱とか、ずっと変わらないものを見た時にどこか居心地の良さを感じるなと思って。そういう“時間の経過”があるからこそのカッコよさに、15年くらい実家を離れていたからこそ、僕も気づけたんですよね。
――音楽でも、ご実家の柱のような、重厚でカッコいいものを作っていきたいという感覚ですか。
牧:そう。樹に喩えると、今はしっかりとした根を張り巡らせることが大事だと思っていて、だからこそ深度の高いアルバムにしたかったというか。この曲たちはここから芽を出していくことになるけど、曲のテーマとか、種になる部分をものすごく意識的に考えながら作ったのが今回のアルバムかなと思いますね。
長谷川プリティ敬祐(Ba)
――これは私見ですが、今って、文化芸術の世界もコストパフォーマンス、タイムパフォーマンスの概念に浸食されつつあるように感じるんです。例えば、“ここは別にいらないかな”という自己判断で倍速視聴を始めたり、ネタバレを見たり評判をチェックしたりしてから映画を観に行ったり……要は“勝ち馬にしか乗らない”人たちって結構いるなあと。
牧:うんうん。
――でも、今聴いて微妙だと思った曲でも、数年後に聴いたら“カッコイイな”と思うケースもあるじゃないですか。だから文化芸術に費用対効果を求めすぎるのは違うんじゃないかと個人的には思うんですが、今の牧さんのお話を聞いて、バニラズもまた、コスパ・タイパの逆にあるものを信じていたいバンドなんだなと改めて思いました。
牧:そうなんですよね。そういう意味で言うと、僕らは確かに旧人類かもしれないけど、時代の流れに身を投じちゃうと、どんどん老けちゃいそうだなって思います。この辺りの話って、昔はちょっとグレーにしていたんですよ。新たな層にアプローチしなきゃと思ってたし、でも自分たちには守りたいものがあったし。
――上手に両立させようとはしていましたよね。きつい言い方をして申し訳ないけど。
牧:いや、その通り、中途半端だったと思いますよ。だけどある程度実験をしてみたら分かったんですよ。これは“外食”であって、ずっとやっていきたいことではないなって。
――では、ずっとやっていきたいこととは、何だったんでしょうか。
牧:その時その時の生きた証を音楽に落とし込むことですね。“今日もごはんが食べられてよかったな”と思うのと同じように、“今回も曲を作れてよかったな”と思えることがすごく大事。そういうことをずっと続けていたら、昔の自分たちの曲を聴いて未熟さを感じても“でも、この時の自分はこうだったんだよな”ってなんか許せるようになったし、誠実に音楽に落とし込むことを信じてきたからこそ、あのアリーナがあったんだと思うんですよね。俺、MCでこんなに長く喋ることはないけど、断片的に出ているものはあるから、あの2日間のお客さんは、それに気づいて“バニラズいいよね”って集まってくれた人たちだと思っていて。自分たちのやり方が時代に逆行するものだということは自覚してるし、誰からも共感されなくなったらやめようと思ってます。でも、いるじゃん、っていう。だから僕は自分の好きなもの、カッコいいと思うものを諦めないし、僕ら独自の音楽を楽しみにしている人たちと一緒に、この先は遊ぶだけだという感覚ですかね。
ジェットセイヤ(Dr)
――紙資料を見てびっくりしたんですけど、2023年がインディーズデビュー10周年で、2024年がメジャーデビュー10周年と。もうそんなに経つんですね。
セイヤ:そうなんですよ。びっくりですよね。
――私が初めてライブを観た時は、バニラズはちょうどインディーズデビューしたばかりでした。2013年8月の爆弾ジョニー、黒猫チェルシーとのスリーマン。
セイヤ:あー、覚えてますよ! 確か初めて代官山UNITに出演した日で、ライブのあと、花火をして遊びました。
柳沢:僕はその頃まだいなかったからなあ。
――柳沢さんの初ライブも観てましたよ。2015年7月の下北沢SHELTER。緊張が伝わってきました。
柳沢:緊張してましたねー。というか、最初の2、3年の記憶がほとんどなくて。
セイヤ:映像は残ってるから、それを観たら思い出すんじゃない?
柳沢:いや、観ても思い出せない気がします。
セイヤ:でも確かに、その頃は俺らもあんまり覚えてないくらいで。
プリティ:目まぐるしかったからね。
――いつ頃から覚えているんですか?
柳沢:『FOOLs』ができた後くらいですかね。そこでやっと記憶が正しくハードディスクに保存されるようになりました(笑)。
セイヤ:でも、昔のことってどんどん忘れていくなあ。まあ、いいことなんでしょうけど。
――今が一番充実しているということですかね。年明けの1月17日からは『FLOWERS』のリリースを記念したツアーが始まります。20ヵ所23公演。ライブハウスもホールもありますね。
牧:ホールは全会場、初めて行くところですね。あと、Zepp Osaka Baysideでのツーデイズは前に連日でできなかったので(※台風のため2日目のライブが延期に)、やっと正真正銘ツーデイズできるのも嬉しいです。
――ツアーファイナルは柳沢さんの地元の秋田県。鹿角市文化の杜交流館コモッセ 文化ホールという会場です。
牧:僕たち3人は行ったことのない会場ですね。
柳沢:俺も行ったことないです。どんなところなのか、4人とも知らないという(笑)。
牧:進太郎も行ったことないんだ!
柳沢:俺が上京してからできた建物なので、めちゃめちゃ新しいと思います。
――秋田県ってどんなところなんですか?
柳沢:えーっと……基本、駐車場の広さがえげつないです。
牧:(笑)。じゃあ今度はドライブインシアターみたいな感じでライブするのもいいかもね。
取材・文=蜂須賀ちなみ 撮影=森好弘
リリース情報
2022年12月14日発売
完全限定生産盤 (CD+DVD) VIZL-2131 \5,500 (tax in)
通常盤(CD) VICL-65748 \3,300 (tax in)
▽受付店舗まとめhttps://gogovanillas.lnk.to/flowers_cd
▼go!go!CLUB https://store.plusmember.jp/shop/products/list.php?category_id=2196
▼ビクターオンラインストア https://victor-store.jp/artist/7264#artist-disco-all
<CD収録内容>
01. HIGHER
02. The Marking Song
03. ペンペン
04. I Don't Wanna Be You
05. 青いの。
06. Two of Us feat. 林萌々子(Hump Back)
07. Dirty Pretty Things
08. My Favorite Things
09. 硝子
10. RUN RUN RUN RUN
11. LIFE IS BEAUTIFUL
12. きみとぼく
「FLOWER OF LIFE」
◆「LIVE & DOCUMENTARY at 大分 iichikoグランシアタ 2022.5.5」 (79min)
・今年の5月5日=“go!go!の日” 開催、2度の延期・中止により果たせていなかった、 牧達弥(Vo/Gt)と長谷川プリティ敬祐(Ba)の地元大分凱旋ワンマン“「青いの。ツアー 2022」-FINAL-”より、厳選ライブ映像
サクラサク / 青いの。 / FUZZ LOVE / T R A P ! / ヒートアイランド / アメイジングレース / セルバ
・実家で家族との時間を過ごす牧や、出身中学校で旧友と再会するプリティなど、生立ちまでに肉迫した超貴重な密着ドキュメンタリーを収録したスペシャルムービー
◆「FLOWERS “プログラムノート” INTERVIEW」 (58min)
アルバム完成直後に撮り下ろしたメンバー全員のアルバムディープインタビュー
ライブ情報
1月17日(火) KT Zepp Yokohama OPEN:18:00 / START:19:00
1月20日(金) Zepp Osaka Bayside OPEN:18:00 / START:19:00
1月21日(土) Zepp Osaka Bayside OPEN:16:00 / START:17:00
1月26日(木) 長崎 DRUM Be-7 OPEN:18:30 / START:19:00
1月27日(金) 大分 DRUM Be-0 OPEN:18:30 / START:19:00
1月29日(日) Zepp Fukuoka OPEN:17:00 / START:18:00
2月4日(土) 郡山 HIPSHOT JAPAN OPEN:17:15 / START:18:00
2月5日(日) 仙台 GIGS OPEN:17:00 / START:18:00
2月11日(土) Zepp Sapporo OPEN:17:00 / START:18:00
2月17日(金) Zepp Nagoya OPEN:18:00 / START:19:00
2月18日(土) Zepp Nagoya OPEN:16:00 / START:17:00
2月26日(日) Zepp Haneda OPEN:17:00 / START:18:00
3月9日(木) 岡山 CRAZYMAMA KINGDOM OPEN:18:15 / START:19:00
3月11日(土) BLUE LIVE 広島 OPEN:17:00 / START:18:00
3月12日(日) 高松 festhalle OPEN:17:15 / START:18:00
4月7日(金) 長野 CLUB JUNK BOX OPEN:18:30 / START:19:00
4月8日(土) りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館 劇場 OPEN:17:00 / START:18:00
<追加公演>
3月24日(金) 中野サンプラザ OPEN:18:00 / START:19:00
3月25日(土) 中野サンプラザ OPEN:16:00 / START:17:00
4月20日(木) 大阪 オリックス劇場 OPEN:18:00 / START:19:00
4月21日(金) 名古屋国際会議場 センチュリーホール OPEN:17:30 / START:18:30
4月23日(日) 福岡市民会館 OPEN:17:00 / START:18:00
5月5日(金・祝) 鹿角市文化の杜交流館コモッセ 文化ホール OPEN:17:00 / START:18:00
【ツアー特設ページはこちら】
https://gogovanillas.com/feature/flowers#tourAnc