ACIDMAN 25年の歴史を証明した『“SAI”2022』 ミスチル、エルレ、back numberなどなど全19組のオリジナルレポ解禁

2022.12.19
レポート
音楽

ACIDMAN 撮影=三吉ツカサ

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ACIDMAN presents SAITAMA ROCK FESTIVAL“SAI”2022 
2022.11.26-27  さいたまスーパーアリーナ

11月26日と27日、さいたまスーパーアリーナで『ACIDMAN presents SAITAMA ROCK FESTIVAL“SAI”2022』を観た。朝10時から夜8時過ぎまで、2日間しっかり観た。始める前からとんでもない規模と豪華な顔ぶれに期待を煽られていたが、終わってみれば予想を上回る熱演の連続に圧倒された。ライブの中で大木伸夫(Vo/Gt)も言っていたが、ACIDMANの結成25周年/メジャーデビュー20周年というテーマを超えて、それぞれのバンドの生き方を見せつけられた、全19組の渾身のパフォーマンス。歴史的イベントとなった「SAI 2022」の意義を考察する。

DAY-1

東京スカパラダイスオーケストラ 撮影=AZUSA TAKADA

土曜日の午前10時、朝の眠気が消えない時間に観客の心に火をつけてフェス全体のエンジンを始動させる。誰よりも難しい仕事を誰よりも見事にやってのけたのが東京スカパラダイスオーケストラだ。百戦錬磨のキャリアとスキルをフル稼働させ、全員が激しく動き回りながら激しくもポジティブな音楽で観客を目覚めさせる。

東京スカパラダイスオーケストラ 撮影=AZUSA TAKADA

お馴染みの「DOWN BEAT STOMP」やドラムス茂木が歌う「銀河と迷路」、カバー曲「君の瞳に恋してる」など、彼らを一度も見たことがなくても強引に乗せられる曲ばかり。「追憶のライラック」では大木伸夫がスカパラと揃いのオシャレなスーツ姿でゲストボーカルに加わり、華やかに盛り上げる。スカパラとACIDMANとの強い絆については後述するが、それにしても気合の入り方がすさまじい。

DOPING PANDA 撮影=三吉ツカサ

2012年に解散し、今年10年振りに復活したDOPING PANDAのライブを生で見たことのある人はこの中にどれくらいいただろう。パンクとダンスロックを融合させた煽情的なサウンドと尖りまくったパフォーマンスでシーンを引っ掻き回した彼らも、ACIDMANと同じ1997年結成だ。「早く再結成しろと大木に言われてたけど、間に合って良かった」というフルカワユタカのMCには少し泣けた。友情は永遠だ。

DOPING PANDA 撮影=三吉ツカサ

「ぶちかますぜ!」と煽りまくりながら、ステージから放たれる爆音はあの頃よりは少し丸くなって素直になって包容力を増した気がする。ロックの本質である「踊る」というポイントにフォーカスしたDOPING PANDAのサウンドが今も有効なことは、初めての観客にもしっかり伝わったはずだ。

SiM 撮影=Taka"nekoze_photo"

「今日も明日もオッサンばっかりじゃねぇか」。毒舌をぶちかまして観客を爆笑させ、すさまじくヘヴィなメタルコアとレゲエパンクでスーパーアリーナを揺るがしたSiMもまた、いつ何時でも自らの生き方を堂々と示すバンドの一つだ。アメリカのBillboard ハードロックチャート1位を記録した「The Rumbling」をはじめ、自前の映像を駆使して独自の世界観を創り出し、ラウドミュージックをスケールの大きなエンタテインメントにしていく腕前は見事の一言。

SiM 撮影=Taka"nekoze_photo"

ACIDMANとは属するシーンも音楽性もファン層も異なるが、バンドシーンの荒波を乗り越えてきた年下の同志のように思って声を掛けたのかもしれない。演奏力、トーク力、キャラクター、どれをとっても完成度が非常に高い。

back number 撮影=山川哲矢

「クリスマスソング」のイントロの最初の一音だけでスーパーアリーナがどよめく。back numberのエントリーはこの「SAI 2022」にとってはある意味意外だったが、観客は一瞬でそれを受け入れた。「怪盗」「アイラブユー」とヒット曲を連ねて突っ走り、ただただ圧倒的な歌の世界に観客を引きずり込む。

back number 撮影=山川哲矢

少年時代にACIDMANのデビューに出会い、憧れた日々。本当は今日ここに出ている先輩バンドたちのように「強心臓でどんな状況にも左右されない」バンドになりかったけど、「予定とは違うけど、ここに呼んでもらえて、歩んできた道は間違ってなかったと思う」という清水依与吏のMCはなかなかに深い。超のつく人気者でありながら、今も憧れを抱えた一人のバンドマンであり続ける。back numberはいとおしいバンドだ。

氣志團 撮影=石井麻木

氣志團についてあらためて言うことはあまりない。綾小路翔を中心にいつ何時でも超エンタテインメントに徹し、シーンもジャンルも超えてとことん盛り上げ、爆笑も苦笑もひとまとめにして誰をも笑顔にせずには帰さない。今日の目玉は「One Night Carnival」とACIDMAN「造花が笑う」とのマッシュアップ「造花が踊る」。原曲を完コピしながら構成を細かく練り上げた優れもので、仕上げるのに何日かかるんだろう?と思う労作だ。ベースの白鳥がサトマ似のキャップをかぶってるのも芸が細かい。

氣志團 撮影=石井麻木

ラストを締めるパンクスタイルの「MY WAY」は、音楽も笑いもひっくるめて今後も我が道を行くという心の表れだろう。氣志團もまたフェス主催者として奮闘するバンドだ。同じ喜びと苦労を知る者として、翔やんと大木が何かと相談しあったのかもしれないと想像するのも楽しい。

LOW IQ 01&THE RHYTHM MAKERS+ 撮影=AZUSA TAKADA

LOW IQ 01とACIDMANとの関係もまた深いものがある。90年代パンクシーンの生き証人であるイッチャンと、その下の世代にあたる大木伸夫らの間には、音楽性や精神性を手渡しで繋げていくような特別な感覚がある。THE RHYTHM MAKERS+と名乗る今日のバンドは、フルカワユタカ(DOPING PANDA)、山﨑聖之(CONFVSE)、渡邊忍(ASPARAGUS)を従えた鉄壁の編成で、良質のメロディックパンクとパワーポップの粋を集めたようなソリッドで爽やかなサウンドで観客を魅了する。

LOW IQ 01&THE RHYTHM MAKERS+ 撮影=AZUSA TAKADA

ラウドなシーケンスになじんだ耳には柔らかく音数少なく聴こえるが、これが生のバンドサウンドだ。「今日はオレが最年長かと思ったらスカパラがいました」と、飄々としたMCも楽しい。良い意味で観客のノリを気にせず、やりたいことを楽しくやって楽しく帰る。これがLOW IQ 01&THE RHYTHM MAKERS+。

MAN WITH A MISSION 撮影=石井麻木

1曲目「Emotions」から、映像も照明も音圧も何もかもがケタ違い。フェスなのにワンマン並みの自前の映像と照明と音響システムを持ち込んだような、とんでもない迫力で度肝を抜いたのはMAN WITH A MISSIONだ。宇宙と地球を巡る壮麗なCGを駆使した映像をバックに、アメリカナイズされた壮大なロック、エモ、ハードコア、ファンク、ダンスの様々な要素が束になって襲い掛かる。

MAN WITH A MISSION 撮影=山川哲矢

「2日間デ唯一空イテイタ“ペット枠”ニネジコンデイタダキマシタ」と笑わせ、「ライブハアーティスト、スタッフ、お客サンガ守ッテ来タモノ」だと、歓声ならば声出しOKとなった今日のライブへの感慨を伝える。姿はオオカミだが心は古き良きニッポンのバンドマン。マンウィズらしいエンタメとメッセージあふれる世界基準のパフォーマンス。

ストレイテナー 撮影=石井麻木

ミドルテンポの「Graffiti」でゆったりと幕を開けたスレイテナーのライブは、いつも以上に気負わず自然体。映像も照明も最小限、ライブハウスの演奏をそのまま持ち込んだシンプルなたたずまいがいい。「シーグラス」「Lightning」などシングルを盛り込み、初見の観客でも盛り上がれる親切なセットリストがいい。

ストレイテナー 撮影=AZUSA TAKADA

「オレたちのロックフェス「SAI」へようこそ」と、まるで主催者のような顔でホリエが言ったのは、半分ジョークで半分本音だろう。確かにこれは「オレたち世代のロックフェス」だ。そして仲の良いback numberに「久々に共演できてうれしかった」と言葉をかける、ホリエもまた後に続く者に手を差し伸べる男だ。大木の宇宙好きをいじりながら「僕らなりの宇宙の曲を」と紹介した「宇宙の夜 二人の朝」の、すべてをなぎ倒して雄々しく進むエイトビートがかっこいい。メロの良さ、コーラスの良さ、青春の情景、テナーの良さをしみじみと再確認できた35分間。

Dragon Ash 撮影=Taka"nekoze_photo"

コロナ禍の向こうに希望の光を見据えたメッセージソング、最新曲「Entertain」のリズムに乗ってKjがステージに飛び込み、熱いラップで会場内の空気に火をつける。いきなりのハイテンションで始まったDragon Ashのステージは、一気に20年以上の時をさかのぼって「Let yourself go,Let myself go」へ、そして「For divers area」へ。ミクスチャーの名のもとに、Dragon Ashの音楽的変遷を3曲で一気に見せる怒涛の選曲。

Dragon Ash 撮影=Taka"nekoze_photo"

「ロックフェスはおまえらのもんだ」と、ライブ中のルールやマナーを観客に託す姿勢がKjらしい。最強のモッシュ&ダイブチューン「Fantasista」も含めて疾風怒濤で駆け抜けた、彼らも今年デビュー25周年の記念イヤー。同年代だが早くに頂点を見た彼らは常にシーンの先駆者だ。「SAI 2022」に参加する意味はとても大きい。

ACIDMAN 撮影=Victor Nomoto - Metacraft

ここまで9組が上げまくってきたハードルを飛び越えなければいけない、フェスのヘッドライナーは名誉であると同時にとてつもない重責だ。そして今日、それができるのはACIDMANしかいない。若く鋭いトゲを持つ「to live」から「造花が笑う」「FREESTAR」へ、生命の生まれ変わりを歌った12分に及ぶ大曲「廻る、巡る、その核へ」から「世界が終わる夜」へ。ACIDMANほど一つのメッセージを執拗に深堀りしてきたバンドをほかに知らない。それは大木が歌い続けてきた「宇宙」「生命」「生と死」「希望」のメッセージだ。

ACIDMAN 撮影=Victor Nomoto - Metacraft

そして「ある証明」ではスカパラの谷中と加藤を呼び込み、5年前の「SAI」以来の共演が実現した。長いキャリアのなかでただ一度、ACIDMAN存続の危機に手を差し伸べてくれたのがこの二人だったというエピソードを、ファンならば知っている。ラストチューン「Your Song」までの全9曲で、ロックバンドが生きてきた軌跡を見せ切った見事なパフォーマンス。高く高く発射された金のテープがきらきらと宙を舞う。

ACIDMAN 撮影=Victor Nomoto - Metacraft

かくして「SAI 2022」の初日は終わった。とんでもない重責から解放されたのだろう、大木がいきなり陽気にしゃべりだしてアーティストたちの記念撮影を仕切ってる。スタイルは違えどバンドという生き方で繋がれたミュージシャンたちが、さまざまな垣根を超えて一堂に会す。大木が「SAI」で見たかったのはこの光景だったんだろう。明日への期待がさらに高まる、それはとても素晴らしいフィナーレだ。

DAY-2

THE BACK HORN 撮影=AZUSA TAKADA

ホテルの部屋でワールドカップを見ていたら夜が明けた。日曜日の朝、午前10時。昨日のスカパラ以上に朝イチの火付け役にふさわしいバンドはまさかいないだろうと思ったら、そのまさかをやってのけたバンドがいた。THE BACK HORNだ。裂帛の気合を込めて「刃」を歌い「シンフォニア」を奏でる。山田将司の武道家のようなストイックなアクションと真摯な情熱にフロアが揺れる。“帰る場所ならSAIにあるから”と歌詞を変えて歌ってくれる細やかな気遣いがいい。

THE BACK HORN 撮影=AZUSA TAKADA

大木はよくTHE BACK HORNのあまりの素朴さや素直なキャラをいじる発言をするが、それは絶対の信頼感の裏返し。THE BACK HORNは情熱を持って情熱に応えるバンドだ。「希望を鳴らせ」から「コバルトブルー」へ、朝冷えのホールをしっかりとあたためて帰った、本当の良い友達とはこういうことだろう。

sumika 撮影=山川哲矢

sumikaの本気リハーサル、行きます。暗転の中でのリハーサルの段階から観客に呼びかけてぐいぐい盛り上げる、sumikaは生粋のライブバンドだ。ACIDMANへの憧れを素直に語りながら、「ふっかつのじゅもん」「ファンファーレ」など得意の明朗快活ポップチューンを連発して波に乗る。

sumika 撮影=山川哲矢

中盤にメロウな「Summer Vacation」やせつなさたっぷりの「願い」を配して、この後登場するラウドでヘヴィなバンドとの違いを見せることも忘れない。影響を受けたものと自分ができることとの差異を冷静に見つめ、自らのスタイルを創り上げアリーナ級バンドに成長したsumikaもまた、現在のバンドシーンが生んだ素敵な成果だ。片岡健太のボーカルはJ-POPの宝の一つだ。この日の「SAI 2022」には必要なバンドだ。

the band apart 撮影=藤井 拓

ベースの原昌和があの渋い低音でぼそっと何か言うたびにおかしくてたまらない。独特のユーモアと抜群のセンス、パンクとシティポップとを繋ぐ架け橋のような立ち位置のthe band apartもまた、ACIDMANと同時代を生きてきたバンドメイツとして重要な存在だ。

the band apart 撮影=藤井 拓

しゃきしゃきとして切れ味いい演奏ぶり、エモさとクールさの適度なバランス、洒落たBGMにも踊れるダンスチューンにもなる汎用性の高さ。昼12時という難しい時間帯も委細構わず、飄々と自分たちのカラーを出し切って楽しませてさっと消える。スマートな存在感が逆に強い印象を残す、軽妙洒脱なさすがのパフォーマンス。

マキシマム ザ ホルモン 撮影=浜野カズシ

マキシマム ザ ホルモンはどのバンドとも比べることはできない。登場するやいなや、メタルコアとアイドルポップとダンスロックとそのほかの何かを混ぜた怪奇な曲「maximum the hormone Ⅱ~これからの麺カタコッテリの話をしよう~」で観客をマイワールドに引きずり込む。アニメ映像をフィーチャーしたヒットチューン「恋のメガラバ」で会場内を興奮のるつぼに叩き込む。思いつきのジョークを連発する一方で、大木が普段話す宇宙の話をわざわざテロップを作ってスクリーンに映してみる。パンク/ハードコア界の突然変異にしてシーンを超えた訴求力を持つ稀有なバンドの、オタク気質丸出しのパフォーマンスが2万人を盛り上げる。ここまで徹底されたら脱帽するしかない。マキシマム ザ ホルモンはどのバンドとも比べることはできない。

BRAHMAN 撮影=石井麻木

おのれを信じて、ハードコアパンクと共に。ACIDMANにとっては先輩格のBRAHMANと、昨日出演したLOW IQ 01は、『AIR JAM』に代表される90年代シーンからの証人として「SAI」の中でも特別な位置を占める。大木にとっても迷った時に戻る原点の一つだと推測する。とにかく姿勢が、音楽性が、まったくブレない。「時の鐘」「SEE OFF」など初期からの代表曲と、新しい「Slow Dance」などの間に無駄な慣れや要らぬ円熟がまったくない。常在戦場の迫力。

BRAHMAN 撮影=三吉ツカサ

「ANSWER FOR」で大木が、「今夜」で細美武士が飛び入りコーラス参加したが紹介すらしない。全力で歌う姿に見入るしかない。圧巻は「真善美」を歌い終えたあとのMCだ。ユーモアをまじえてACIDMANの25年を称えながら、一転して、生きる事とは?と重い問いを観客に託す。BRAHMANがいるフェスは締まる。かっこよさにしびれながら襟を正す気になる。

ASIAN KUNG-FU GENERATION 撮影=山川哲矢

ASIAN KUNG-FU GENERATIONもまた、かつて自らの主催フェスを通してロックシーンの活性化に貢献してきたバンド。「SAI」の趣旨にはぴったりだ。逆に一出演者として臨む時は気持ちが楽になるのかもしれない。後藤正文の「みんな自由に楽しんで」という一言で始まったステージは、「君という花」「リライト」「ソラニン」と人気曲を惜しげもなく放出する、とてもリラックスしたあたたかな雰囲気。静寂の中で赤ちゃんの泣き声を聞いたゴッチが「子供もいて、いいよね」とつぶやき、それを拍手が包み込む優しい世界。

ASIAN KUNG-FU GENERATION 撮影=山川哲矢

ゴッチがマイクを握ってお立ち台に駆け上がって歌う「Be Alright」の、何があっても大丈夫さという肯定的メッセージが今こそ胸に沁みる。酸いも甘いも噛み分けた、といった雰囲気で伸び伸びとロックを鳴らしてる、今のアジカンのまとう空気はとてもいい。

ELLEGARDEN 撮影=石井麻木

さあELLEGARDENだ。長い空白を経て実に16年振りのアルバムを完成させたELLEGARDENだ。髑髏と炎を配したロゴがスクリーンに登場しただけで場内はとんでもない大騒ぎだ。「Fire Cracker」「Space Sonic」「The Auntumn Song」と、90’sパンクとパワーポップの良いところを凝縮したような、痛快なビートとグッドメロディに貫かれた楽曲の大盤振る舞いだ。細美と生形が並んでマイクに向かう。高田と細美が向き合って目くばせする。「風の日」の間奏、細美が“生形、行ってこい!”と叫び、生形が猛然とギターソロを決める。何気ない仕草のすべてがかっこいい。

ELLEGARDEN 撮影=石井麻木

「呼んでくれてありがとう」。シンプルなその言葉はACIDMANへの感謝であり、再び歓声のあるライブが戻って来たことへの感謝にも聞こえる。声は出せないが「Make A Wish」を歌う観客全員の心の声が聴こえる。ELLEGARDENが帰ってきた。

10-FEET 撮影=藤井 拓

人は誰かのためなら頑張れる。今日はACIDMANのために頑張るぞ。TAKUMAの男気挨拶から始まった10-FEETのステージは、「ハローフィクサー」「RIVER」と続く超盛り上げ仕様で、「ライオン」の中にACIDMAN「赤橙」のフレーズを紛れ込ませるなどサービス精神もたっぷり。

10-FEET 撮影=藤井 拓

2万人にスマホのライトをつけさせてほったらかしにして笑いを誘ったかと思えば、「人はいつでも変われる」と真摯なメッセージを託して「ヒトリセカイ」を歌う、感動的シーンも演出する。泣き笑いの中で真実を伝える、唯一無二の人情味ロック。彼らもまたフェス主催者として喜びも悔しさも噛みしめてきたバンドだ。「SAI」というフェスに寄せる思いは並みならぬものがあるだろうと推測する。気合みなぎる全6曲。

Mr.Children 撮影=AZUSA TAKADA

これは夢か現実か。本物のMr.Childrenが本物の「終わりなき旅」を歌っている、現実なのに現実味の薄い不思議な時間。90年代以降のすべての音楽に多大な影響を及ぼすスーパーバンドは、「SAI 2022」に出演するバンドたちにも有形無形の影響をもたらしていることは間違いない。しかし目の前の4人は実に若々しく清々しく、シンプルなバンドとラウドなギターサウンドで伸び伸びとロックしている。「僕たちがMr.Childrenです」と名乗る言葉がまるで新人バンドのようにはずんでいる。

Mr.Children 撮影=AZUSA TAKADA

「名もなき詩」「HANABI」「himawari」と、誰もが知る超ヒットチューンが次々と演奏される。極めつけは最新曲「生きろ」だ。おそらくACIDMANの、「SAI」の意図を汲んだのだろう、生きることを肯定する希望の歌ばかりだ。派手な演出もスクリーンもない。歌と演奏だけで人の人生を変えうる、これが本物のトップ・オブ・トップ。

ACIDMAN 撮影=Victor Nomoto - Metacraft

熱演に次ぐ熱演で昨日よりもさらにハードルが上がった中で、しかもMr.Childrenのバトンを受けて2日間のラストステージに臨む。とてつもないプレッシャーを、しかしACIDMANは果敢に正面突破でぶち破ってみせた。1曲目を「world shymphony」に変え、「造花が笑う」を「夜のために」に変え、昨日よりもスピードとパワーを上げて突っ走る。音楽でもらった愛は音楽で返すしかない。中盤の「Rebirth」「赤橙」のメロディアスな表現力。「廻る、巡る、その核へ」のすさまじい熱量。「ALMA」に込めた大木の生命哲学の究極と、天から舞い降りる星。昨日よりも演奏は荒々しいと感じるがそれがライブの良さだ。生きている証を刻んでいきたい。そう前置きして歌った「ある証明」、そして「Your Song」。この日のライブの模様が早くも写真になってスクリーンに映される。今は一瞬で過去になる。今日の「SAI 2022」も思い出になる。だからまた会おうと約束する。

ACIDMAN 撮影=Victor Nomoto - Metacraft

オーキーを探せ。恒例の記念撮影で、TAKUMA、NAOKI、ナヲ、ダイスケはん、細美武士が大木の私服を勝手に着て大木ごっこで遊んでる。TOSHI-LOWが桜井和寿に大木のハットをかぶせてる。昨日よりもさらに年齢もシーンもバラバラのミュージシャンたちが一堂に会して笑ってる。なごやかな大団円の中で、一悟がマイクを取って「(総合プロデューサーの)大木伸夫に大きな拍手を!」と言った。同時代を生き抜いたバンドの、バンドによる、バンドのための、そしてバンドを愛する観客のためのフェス。文中では触れられなかったが、特別参加のラジオDJ、VJ、俳優、お笑いタレントらもMCとして盛り上げてくれた。ACIDMAN presents「SAITAMA ROCK FESTIVAL“SAI”2022」に大きな拍手を。一つのシーンを思い出すたびに心があたたかくなるような、2日間の体験に祝福を。


取材・文=宮本英夫 撮影=各写真のクレジット参照

ACIDMAN 撮影=Victor Nomoto - Metacraft

配信情報

「Amazon Music Live: ACIDMAN presents “SAI” 2022」
配信日:2022年12月19日(月)20時〜
配信URL: https://www.twitch.tv/amazonmusicjp
※Twitch上のAmazon Music Japanチャンネルにて配信
※視聴無料

ACIDMANと豪華ゲストのトークと共にお楽しみいただけます
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