16才のシンガーソングライター・aoにインタビュー ルーツや曲作りについて、そして初のラブソング「瞬きと精神と君の歌と音楽と」完成に至るまで
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2021年9月、15才(中学3年生)の時に「Tag」でメジャーデビュー。2022年1月にはSpotifyが選ぶ2022年に活躍を期待する次世代アーティスト「RADAR:Early Noise 2022」に選出された、16才のシンガーソングライター・aoが、11月30日にウィンターバラードであり初のラブソング「瞬きと精神と君の歌と音楽と」をリリースした。
本記事では、aoの新曲「瞬きと精神と君の歌と音楽と」完成に至るまで、そしてこれまでとこれからの話をじっくりと訊いてみた。彼女の歌声や雰囲気からは大人びた印象を受けるが、取材中、16才らしさあふれるキュートな一面も……。
――2021年9月にデジタルシングル「Tag」でメジャーデビューしてから、1年とちょっと。振り返ってみて、どんなことを思いますか。
気づいたら1年ちょっと経っていて。あっという間でしたね……。
――高校生活と音楽活動の両立は大変ではないですか?
部活には入っていなくて、放課後とか学校がお休みの日に曲を作ったりお仕事を入れたりしているので、部活に入っているみんなとそんなに変わらないと思います。ただ、中学のときと比べると高校に入ってからは勉強が難しくなったので、試験1週間前から勉強するだけだとあまり点数が取れなくて(苦笑)。あと、学校が家から近かった中学のときと違って、高校は通学時間がかかるし授業時間も長いから……もっと計画的に勉強して音楽活動と両立させたいです。
――歌唱力も楽曲の雰囲気もとても16才には思えないaoさんなので、年相応な言葉が聞けて安心しちゃったりもしましたが(笑)……応援しております! それにしても、今時の10代にはボカロソングやアニメソングも人気だと思うのですが、aoさんの生み出す音楽、歌い方からは日本人離れした感性、洋楽的な要素をふんだんに感じられなと。どんな音楽に影響を受けて、今のaoさんが在るのでしょうか。
私はボカロとか歌い手さんはあまり通らず、洋楽をたくさん聴いてきて。洋楽の和訳にインスパイアされて自分なりに歌詞を書いたり、英語っぽい発音で日本語を歌ったりとか、自然とそうなっていったんです。
――ただ、洋楽に影響を受けながらも日本語を大切にされていますよね。
小学6年生で曲を作り始めたときは英詞も混ぜながら歌詞を書いていたんですけど、YouTubeのコメント欄とかを見て、自分の想いをちゃんと伝えるためには日本語のほうが伝わるのかな?と思って、最近はより日本語を大切にするようになりました。
――自分というものはしっかりあれど、リスナーの声に耳を傾けていたりもするわけですね。
コメント欄は全部チェックするようにしています! 応援してくださる声はもちろん嬉しいし、もっとこうしたほうがいいのかな?って気づかせてもらえる意見をいただけると、成長にもつながるので。いつもありがたいなと思っています。
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――ちなみに、曲作りを始めたのが小学校6年生とは随分早いなと思うのですが、それはどんなきっかけから?
小さいころから歌うことが大好きだったので、今所属している事務所主催のオーディションを思い出作りとして受けたら受かって。事務所のスクールでステージパフォーマンスや音楽理論、パソコンを使って曲を作るDTMを学ぶ中で、ステージパフォーマンスの課題で曲作りをしたのが始まりです。
――初めての曲作りはいろいろ手探りしながら?
そうですね、右も左もわからない状態で(苦笑)。オーディションを受ける直前、YouTubeでウクレレを弾き語りするグレース・ヴァンダーウォールに影響を受けて以来ウクレレを弾いていたので、周りのレッスン生がDTMで曲を作ってきた中、私だけウクレレをジャカジャカ弾きながら作った曲を持っていきました。そのあとは、バンドを組んでいたりすでにたくさんのオリジナル曲を持っていたり、そういう音楽に本気で向き合うほかのレッスン生に刺激されながら、少しずつ勉強してDTMを覚えて、音楽を作る楽しさを知っていったんです。
――そうでしたか。ウクレレのほか、ギター、パーカッション、ピアノと、さまざまな楽器演奏ができるところもaoさんの強みですよね。
ピアノは小さなころから習っていて、パーカッションは中学のときに吹奏楽部でやっていたくらいなんですけど。
――そのパーカッション経験は2022年10月に配信のデジタルシングル「余所見」で存分にいかされていますし……「Tag」から2022年11月配信の最新シングル「瞬きと精神と君の歌と音楽と」に至るまで、曲ごとにガラっと異なる表情を見せていることにも驚かされます。
私はまだまだ自分の好きな曲の作り方やスタイルを探している途中なので、新しく曲を作るときにはそれまでの曲とかぶらないものにしようということを意識しているんです。
――それにはたくさんの引き出しも必要になると思うのですが、日ごろどんなインプットをしているのでしょう。
映画を観るのが大好きなのと、よく映画のサントラを聴いたりもします。最近よく聴いているのは、『Transcendence』(クリストファー・ノーランが制作総指揮に加わりジョニー・デップが主演した映画)のサントラです。あとは、洋楽好きな友達に自分の知らないアーティストや曲を教えてもらったりとか。映画でも音楽でも、いろいろな作品に出会うのがすごく楽しいし、自分が育っていくのに欠かせない養分になっていると思います。
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――最新作「瞬きと精神と君の歌と音楽と」は、歌声もaoさん自身が奏でるピアノの音色も美しいウィンターバラードでありラブソングなわけですが、これはどのようにして生まれた楽曲なのでしょうか。
前々から、制作チームで「ウィンターバラードを作りたいね」と話していて、ウィンターバラードを作るのであれば、これまで自分が作っていなかったラブソングを書いてみたかったんです。なので最近観た映画『レ・ミゼラブル』をイメージしたり、少女漫画をたくさん読んでキュンとするシーンで自分だったらどんな気持ちになるだろう?って想像したりしながら、“結ばれない恋”をテーマに歌詞を書きました。
――なるほど、<「あったかい目優しいあなたの世界には とっても似合っているから」>という歌い出しは少女漫画的なキュンを感じるけれど、<苦しくない悲しみは知らないままで良いよ>だとか、<不安定な足元だけど立てちゃうのが恋なのかな>だとかは、『レ・ミゼラブル』で描かれていた報われない恋の痛みや苦しさを表しているように思うし……<どんな風でも良いけど結局君に辿り着きたいな>というフレーズも印象的です。突き詰めれば“あなたが好き”を、こう言い表すこともできるのかと。
映画『ふしぎの国のアリス』でアリスが流されていく場面が急に思い浮かんで生まれたのが、そのフレーズだったりします。そうやってひょんなことから言葉を見つけてつなげていくっていうのはよくあるんです。
――<「いつか」「ずっと」とか守れないものに もうね、私は しがみつきたくないの>という切実も突き刺さるし、<何も知らない、誰も知らない 距離が1 番好きだったりするんだ。>という想いを胸に秘めたエンドはあまりにも切なかったりします。実る恋ではなく結ばれない恋だったのは、どうしてなのでしょうね。
ウィンターソングを書こうと思いながら通学で電車に乗っていたとき、灰色のブラインドがかかった窓越しに外を見ていたんですけど、太陽が当たっていないときはきれいに景色が見えるのに、光が当たると全部暗くなって太陽しか見えなくなってしまって。それに気づいたときに、これは結ばれない恋だって勝手に頭の中で変換されたんです。あと、切ない物語のほうが続きがあるような気がするんです。
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――そのまま恋が実らないかもしれないけれど、実は相手も主人公を想ってくれていたかもしれないし、もしかしたら一途な主人公に惹かれるほかの誰かがいるかもしれないし。
そうです。ただ哀しいまま終わるようにも受け取れるけど、そこに実はほんの少しの希望も残っているっていう。友達の恋愛話を聞いていても、恋心とか感情とかって思いがけないタイミングで変化したり芽生えたりするなって感じるので。
――なにしろ、言葉ひとつひとつを丁寧に大切に届けるaoさんの歌声、誰かに恋い焦がれている人も恋に悩む人も気持ちを重ねて聴けると思います。
どんな人に刺さるんだろうっていう不安が発表前にはあったんですけど、遠距離恋愛中の方とか、片想い中の方とか、たくさんの反響があって。YouTubeで公開したMVのコメント欄で見つけた、「日本語がいつもより聴こえてくる」っていう言葉もすごく嬉しいし、恋を知る人にこの歌が届くといいなって思います。
――「瞬きと精神と君の歌と音楽と」というフレーズをタイトルに持ってきたのは、どうしてなのでしょう。
もとのメロディをシンガーソングライターのFurui Rihoさんにいただいて、歌詞をつけながらメロディラインを変更していったんですけど、今回は作詞に注力したので歌詞をタイトルに持ってこようと思って。<瞬き>が表すのは行動、<精神>が表すのはその人自身、<歌と音楽>は『レ・ミゼラブル』然りミュージカルに影響を受けて、自分の中で昔の恋愛と結びついているものです。そのすべてに埋もれたいという想いが一番強く出ているのが、<瞬きと精神と君の歌と音楽と>だったんです。
――タイトルからして、詩的でロマンティック。そんな「瞬きと精神と君の歌と音楽と」の制作を通して、なにか見つけものもありましたか?
これまで私が歌ってきた曲の中で、一番J-POPっぽい「瞬きと精神と君の歌と音楽と」。Furuiさんからメロディラインのデモがきたとき、サビの上がり方とかすごく素敵だなと思いました。Furuiさん、それからトラックメイキングをしていただいたESME MORIさんのおかげでとても綺麗な曲になったし、今回の学びをこれからの制作にいかしていきたいです。
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――先程MVの話が出ましたが、ドキっとするほど大人っぽい表情を見せた「余所見」から一転、ナチュラルなaoさんがピアノを弾き語りする姿や空のグラデーションも素敵な「瞬きと精神と君の歌と音楽と」のMV、撮影時のエピソードはありますか?
あの空のグラデーションは、夕方の空の色なんですよ。お天気にも恵まれて、楽しく撮影させていただきました。ただ、帰りの電車を間違えてしまって。2時間半くらいかけてやっと家に辿り着きました。
――それは……だいぶ盛大に間違えてしまったのですね(笑)。
もうヘトヘトになりました(苦笑)。実は今日も取材に向かうときに焦って反対方向の電車に乗ってしまって。気をつけたいと思います。
――東京は路線数が多いですし、ご用心ください(笑)。初めてのラブソングを生み出したaoさん、今後もまた違った色をたたえたラブソングが生まれる可能性も……。
あると思います。というか、挑戦してみたいです。まだ時間はかかりそうですけど、いつか自分自身の体験をもとにラブソングが書けたら……どんなものになるのか、自分自身すごく楽しみです。
――さて、2022年は実り多い1年だったと思いますが、2023年はどんな1年にしたいですか?
2022年はSpotifyさんの「RADAR:Early Noise 2022」に選んでいただいたり、デジタルシングル5作にEPもリリースさせていただいたんですけど、高校2年生になる2023年はもっとたくさん音楽活動をしていきたいと思っています。
――たとえばアルバムを出したり、ライブをしたりとかも。
そうですね。曲をたくさん作ってアルバム制作にもチャレンジしてみたいし……ライブはデビューしてからまだ3回しかやっていないので、ファンのみなさんと直接お会いできる機会がもっとあればなと。
――ステージに立つのは楽しいですか。
はい、すごく楽しいです。テンションが上がりすぎちゃったりもするんですけど(笑)、生の歌声、自分の想いを直接届けられる場所は、やっぱり特別です。あと、もちろんこれからも日本語を大事にしながら、いつか全部英語の歌詞を書いてみたいという気持ちもあります。
――すると、ただでさえ世代やジャンルを超えていくaoさんの歌声と音楽が、ますます国境も越えて響くことになりますね。
そうなったら本当に嬉しいです。いろいろ挑戦して、たくさん吸収して、自分の音楽をよりたくさんの人に届けていきたいです。
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取材・文=杉江優花 撮影=菊池貴裕