SHISHAMOのデビュー10周年とコンセプトアルバムを機に行なった、3人参加の決定版インタビュー
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——2020年からはコロナ禍となり、ツアー(ワンマンツアー2020春「今だけは天使みたいに大事にしてね」)が中止になり、またしても等々力(リベンジ公演『SHISHAMO NO 夏MATSURI!!!~おまたせ川崎2020~』)が中止になりました。この期間はどんな心境でしたか?
宮崎:ライブが中止になり、撮影もできない状況になり、結構やることがない時期があったんですよ。高校3年生の夏以降、止まってなかったので、初めて止まったというか。なので、普通に休みました(笑)。休んだことがSHISHAMOのそれ以降の活動に、いい影響を与えていると感じています。ライブが中止になるなど、ネガティブなこともたくさんありましたけど、それ以上に心機一転できたことが大きかったと思います。
——変えたことというと?
宮崎:曲を作る環境をちょっと変えてみたり、機材を変えてみたり。初めて曲を作り始めた時のようなフレッシュな気持ちで曲を作れたんですよ。多分、それぞれが新しいことに挑戦した時期になっただろうし、悪いことばっかじゃなかったなと思います。
吉川:スタジオも閉まってしまって、楽器を触れなくなったので、家でドラムを叩けるようにしようと思って、電子ドラムを買い、DIYをやって、練習できる環境を作ったりもしました。そういう作業も楽しかったですし、時間があったので、自分がいいなと思ったドラムのフレーズをコピーしたりしていました。
松岡:ずっと駆け抜けてきていたので、自宅で待機となった時に、私はいったん、ベースを弾くのをやめました。それでしばらく経ったら、“ベースを弾きたいな"って思ったんですね。もちろん最初は“ベースを弾きたい"で始まっているんですが、SHISHAMOで活動するようになってからは弾きたいというよりも、弾くのが当たり前になっていたので、自分の中で“もう1回弾きたいな"と思ったことが新鮮でした。その後、コロナが収まってきて、久しぶりに3人でスタジオに入った時に、純粋に“ああ、楽しいな"って思ったんですよ。バンドに入った頃の気持ちをちょっと忘れていたところがあったのかもしれません。あっちゃんが言ったのと同じように、心機一転になって、“やりたいからやるぞ"という意識になれたタイミングだったので、いろいろ中止になりましたが、自分としては“いい時間を過ごせた"というか、この時間があったからこそ、“やりたいから頑張る"という気持ちを思いだせたと思っています。
宮崎:自分たちだけじゃなくて、たくさんのイベントが中止になっている時期だったので、“みんなで頑張っていくしかないよね"という気持ちで、まったく知らないバンドでも、中止になると、“ああ!"って残念な気持ちになりましたし、音楽業界すべてが苦戦していることを実感していたので、つながっているなと感じました。自分たちのことだけを考えるのではなくて、みんながより良くなったらいいよねって思うようになりました。だから、少しずついろんなところでライブができるようになったら、自分たちのライブでなくても、うれしい気持ちになったし。
——今年の対バンツアー(『SHISHAMO NO OMANEKI TOUR!!! ~開国2022~』)も大きかったのではないですか?
宮崎:対バンツアーは多分、SHISHAMOにとってムチャクチャ大きかったですね。
——対バンの相手(東京スカパラダイスオーケストラ、ピーズ、the pillows、TRICERATOPS、フジファブリック、ORANGE RANGE)も最高でした。
宮崎:私たちって基本、ライブでは“楽しさとプレッシャーの割合が半々だといい方"みたいなとこがあって。それがSHISHAMOの強みでもあるというか、本気でやっている証しでもあったんですよ。でも初の対バンツアーは、ただただ楽しい瞬間が続いて。“なんなんだ、これは!"って、自分たちの知らなかった世界を体験できました。“なぜ今までやってこなかったんだろう"という気持ちと、でも“今までやってこなかったからこそ、こんなに楽しいツアーになったんだな"という気持ちがありました。参加していただいたすべてのバンドが素晴らしくて、しかも私たちよりも長く活動しているバンドばかりだったので、こんなに長く輝いているバンドがいるんだなって、続けていくことへの希望を感じました。もともと私は続ける発想がなかったので、“続けるのもいいものかも"という気持ちにしてもらえました。
吉川:私も、続けていくことって素晴らしいな、かっこいいなって、対バンツアーで感じました。対バンのバンドを観に来ていたお客さんを見ていて、バンドも素晴らしいんですが、そのバンドのことをずっと好きでいるお客さんとの関係性も素晴らしいなって。自分たちもお客さんとそういう関係を築いて、続けていけたらいいなと思いました。
松岡:とても勉強になりました。メンタル的なところでも、楽しんでやることの良さを知れたので、私も取り入れたいですよね。演奏もかっこよくて、こうなりたいなって感じる瞬間がたくさんありました。年数を積み重ねる中で向上できるところもあると思うので、“私たちも努力すれば、いつかなれるかも!"という先への希望を持てましたし、いろいろ勉強になった有意義なツアーでした。
——その後、ワンマンツアーをやって、対バンツアーの成果を実感したところはありましたか?
宮崎:あったと思います。純粋にライブが良くなったと感じました。演奏もそうなんですが、チーム全体の空気も対バンツアーから大きく変わったところがありました。デビューのころからずっと一緒にやってきているスタッフがほとんどなので、ここまで来ると、チーム全体の空気が家族みたいなものなんですよ。それがここに来て、さらに良くなって、一体感がさらに強くなりました。私たちもやりやすいですし、多分スタッフもみんな楽しんでやってくれてると思いますし、とてもいい感じなんですよ。
吉川:わかる。それはすごく感じる。
宮崎:いろいろなことがまとまってきたというか。時間はかかりましたけど、10周年に突入するのにふさわしいバンドの状態になったと思っています。
——その流れの中で、2023年2月4日には、コンセプトアルバム『恋を知っているすべてのあなたへ』もリリースになります。
宮崎:とてもやりたかった企画です。5周年の時にシングルをまとめたベストを出したんですが、それはSHISHAMOを知らない人に向けてという気持ちが強かったんですね。SHISHAMOの音楽の入口になるわかりやすいベストになったと思っています。10周年で集大成の作品を出そうとなった時に、自分たちがずっと大事にして作ってきた恋愛の歌をもっと知ってほしいし、恋愛の歌にこだわって作ってきたことを知ってほしい気持ちがあったので、その気持ちにぴったりなコンセプトアルバムになったと思っています。SHISHAMOの恋愛の描き方も、かわいい部分からどす黒い部分、カラッとした部分まで、全部知ってほしいと思っていて。そのすべてが表現できた作品になりました。
——ディスク1が「恋の喜びを知っているあなたへ」で、ディスク2が「恋の痛みを知っているあなたへ」と、2枚の分け方も含めて、いい構成ですね。この作品を作るうえで感じたことはありますか?
宮崎:セレクトしていて、圧倒的に“喜び"の曲が少なくて驚きました(笑)。“痛み"の曲はセレクトした3倍くらいあるんですが、“喜び"の曲は出し切った感じです(笑)。でもそれも自分の中で答えが見えていて。恋愛してる時に音楽を聴く人は多いと思いますけど、楽しい時、幸せな時、満たされてる時って、そんなに曲に入り込んだ聴き方をしないと思うんですよ。落ち込んでいる時、つらい時のほうが曲に求めるものが大きいんじゃないかなって。でも“痛み"も“喜び”もSHISHAMOの持っている良さだと思います。
吉川:恋愛の歌をセレクトする過程で、改めて、たくさん恋の歌を作ってきたんだなという実感がありました。こういう形で、“喜び““痛み"って分けられるのは、SHISHAMOならではというか。自分たちにしかできないことを10年やってきて、10周年というタイミングで形にできて良かったですね。
松岡:2つに分かれているんですけど、その中にもいろいろな喜びの状態、いろいろな痛みの状態があって、いろんな恋愛の曲があるので、みんなのいろいろな恋愛の状態に合うんじゃないかと思います。改めて歌詞を見ても、いろいろなバリエーションがあって、“喜び"という言葉でひと括りにするのも、もったいないなあって感じました。
——確かに、“喜び"の中にも“痛み"の中にもいろいろな感情が詰まっていますよね。「恋する」を10周年のタイミングで改めて「恋する -10YEARS THANK YOU-」バージョンとして新録して感じたことはありますか?
宮崎:「恋する」はライブで育ってきた曲、お客さんに育ててもらった曲ですね。もともとただのアルバム曲で、ミュージックビデオもないんですが、ライブでやり続けることで、お客さんの中でも、SHISHAMOの中でも大事な曲になってきて、勝手に成長してきた曲なんですよ。レコーディングしなおした時に、基本は変わってないはずなのに、ライブでずっと育ってきたんだなって感じました。
——基本のアレンジが変わってないからこそ、成長していることが見えてきますよね。
吉川:ライブで育った曲、育ててもらった曲なので、変えようと思ったわけではないのに、ライブで演奏する中で自然に変わってきた部分があるんですね。たとえば、イントロのドラムのリズムの尺がちょっと長くなったり。そういう部分も含めて、今レコーディングで形にすることで、10年の活動を形にできた気がします。
松岡:私としてもSHISHAMOに入った当初からライブでやり続けてきた曲なので、自分で変えるつもりがなくても、ライブでどんどん変わってきて、成長している曲だと感じていました。ライブ感を残した状態で、成長した部分もレコーディングできたと思っています。
——CDデビュー10周年ライブも武道館と大阪城ホールであります。どんなステージにしたいと考えていますか?
宮崎:つい先日、武道館のリハーサルをやったのですが、とてもいいんじゃないかと感じました。SHISHAMOを深く知っている人も、なんとなく知っている人も、来ていただけたら、楽しんでもらえるライブになりそうだなと思いました。
——バンドの充実した状態がそのままステージに反映されるんでしょうね。
宮崎:自分たちのままでやれたらいいなと思っています。
吉川:同じですね。絶対に緊張はするんですが、できるだけその緊張も楽しんで、背伸びせず楽しみたいです。
松岡:ありのままでいたいというか。固くならずにやってきたことをただ出すというリラックスした気持ちで、お客さんと一緒に楽しめる時間になればいいなと思っています。
——2016年1月4日に最初の武道館ライブをやって、その後、2017年にやって、今回が3度目ですが、武道館の印象は?
宮崎:よく「武道館には魔物がいる」と言われますが、「魔物はいなかったな」という印象があります。お客さんが近いし、後ろのほうや上のほうの席の人もしっかり見えているので、1つになれるライブができるんじゃないかと思っています。毎回楽しかった思い出があります。
——10周年から先のことでイメージしていることはありますか?
吉川:この先もこれまでと変わらず、音楽と真摯に向き合っていけたらと思っています。3人でいい曲を作って、一生懸命練習して、ライブをやって、みなさんに音楽を届けることを地道に重ねていきたいです。
松岡:今向き合うべきことと向き合っていくことの積み重ねで、バンドが先に進んでいけると思うので、今やるべきことをやっていくだけです。10周年をみんなで盛大にお祝いしたいので、まずこの1年間、みんなで駆け抜けたいです。
宮崎:いつも同じような言葉になってしまうのですが、今、目の前のことを頑張るというだけですね。多分、デビューした頃から私が10年ということを意識していたら、続いていなかったと思うし、続けたいという気持ちが強すぎたら、続かなかったかもしれないと思うんですよ。10年やるとも思っていなかったし、やりたいとも思っていなかったんですが、その時々にやらなければいけないこと、やりたいことをやっていたら、10周年に突入していたというのが実感です。SHISHAMOが続く秘訣は、そこにあるのかなと思っています。だから、「15周年もやりたいです」という抱負すらありません(笑)。できるかぎり、いい曲を作って、健康でいて、みんなに聴いてもらえる活動をしっかりやっていけたらと思っています。
取材・文=長谷川誠 撮影=上山陽介
ライブ情報
2023年1月4日(水) 日本武道館
OPEN 17:00 / START 18:00
2023年3月4日(土) 大阪城ホール
OPEN 16:00 / START 17:00
全席指定 ¥5,500(税込)
(未就学児は大人1名につきひざ上に限り1名まで無料。お席が必要な場合は
リリース情報
『恋を知っているすべてのあなたへ』
2023年2月4日(土) リリース
UPCM-1409 ¥4,400 (税込)
恋の喜びを知っているあなたへ
恋の痛みを知っているあなたへ