『HERO』や『アンフェア』シリーズでおなじみの秦建日子が書き下ろす新作舞台『トムラウシ』~石黒英雄・金子昇・日向野祥・大湖せしるに聞くその魅力とは
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――太鼓の稽古ということは、皆さんが演奏もされるんですか?
金子:これだけ練習をして、ありものの音源を使われたらビビりますね(笑)。
石黒:先生みたいに上手くできないかもしれませんが、熱さは感じていただけると思います。
――現時点での台本を読ませていただいて、和太鼓に合わせたラップのシーンもあったので、てっきり演奏は別の方が行うのかと思っていました。
石黒:僕ら自身が同時にです。
日向野:結構な体力がないといけませんよね。
――ちなみにラストは稽古をしながら決めていくとのことですが、現時点での方向性などは……。
金子:こればっかりは分かりませんね。一度たたき台の台本をもらったんですが、それに近いのかなと思っていたら、全く違うものが出来上がってきましたし。秦さんは当て書きをすると言っていたので、稽古を見ながら決めていくことになるでしょうね。
金子昇
――皆さん、ドラマや舞台などで秦さんの作品を見たことがあると思います。印象や好きなポイントを教えていただけますか?
石黒:やっぱりミステリーのイメージがありますよね。
金子:シリアスや刑事ドラマなどのサスペンス要素が強いものが多いですが、舞台を見にいくと「ザ・舞台」という作り方をしているんですよね。会話劇を楽しんで作っている印象です。あと、観ているとみんなが何かしら美味しいところを担っている。ちゃんとどのキャラクターも美味しくしているところに秦さんの優しさを感じます。ただ、映像と舞台で結構違うので、今回はどうなるのか楽しみです。
日向野:会話のイメージが強いです。1個1個の言葉を大切にした演出をされていると感じます。あと、僕が観たことのある舞台はテンポがすごくよかったです。そのイメージがついているので、今回も楽しみに感じました。
石黒:この作品の序盤もテンポがいいよね。僕が演じる大和と(大湖が演じる)梨花の序盤の会話なんかはすごくテンポ良く進めて、最後に出てくる同じ会話は人間味のあるテンポにするんだろうなって。冷たさから温かみある人間の心情に変わっていく感じがした。
――作中で、皆さんが演じるキャラクターは、それぞれの想いやこだわりを貫いた結果監獄に行き着きます。また、「簡単に諦めるな」という言葉が何度か出てきますが、皆さんが“諦められないこと”は何かありますか?
石黒:それこそコロナ禍ですごく厳しい状況になり、皆さん色々あったと思うんです。僕のその一人で、もう辞めようかという気持ちもありました。でも、それを支えてくださったのはファンの方々。日本のみならず海外の方からも、僕の芸能活動を見たいという声をいただきました。2022年は、諦めず、腐らずにやっていこうと改めて大きく動き出した年であり、諦めなくてよかったという答えが少しずつ見えてきた年でもあります。2023年はより具体的に飛躍していきたいなと思いますね。あの時諦めなくてよかったという思いが強いですね。
金子:僕もそうですね。役者人生を諦めようと思っていたけど諦めきれなかった。この先も諦めずにやっていきたいと思っています。
日向野:僕は負けず嫌いなんですが、大人になるにつれて色々な数字の大切さや意味が分かってきました。舞台の集客も数字ですよね。昔は気軽に観れたものも、今は難しいじゃないですか。会社を休んで舞台やライブに来ることも中々できないと思うし。そういう意味で、数字がよりシビアな時代になったと思います。エンターテインメントをやる身としては、その部分でも諦めずにいくしかないし、諦めたくないと思いますね。
大湖:私は諦めないことが大事だと思っています。諦めずにやった結果、自分の思った結果に辿り着けたらベストだしそこを目指すのはもちろんですが、辿り着けなくても、諦めずにいた期間・過程が大事だと思っていて。無駄なことって多分なくて、目指す過程で引き出しは必ず増えるし、得るものもすごく多いと思います。だから、この作品に関しても諦めずに最後まで取り組みたいですね。
大湖せしる
――最後に、皆さんへのメッセージをお願いします。
日向野:先程も言いましたが、やはりこういうご時世。だからこそ熱さを感じてほしいです。エンターテインメントを身近に感じられ、活力を得られるような作品になると思いますし、生の舞台でないと感じられないこともあると思います。足を運んでいただき、時間を割いてもらうことになりますが、皆さんの期待に応えられるものを作りたいと思っています。ぜひ観に来てください。
大湖:コロナはまだ落ち着いていませんが、無事に上演できることを祈っています。その中でも劇場に来てくださるお客様の気持ちがとても嬉しいので、来ていただいたからには何か必ず持って帰ってもらえるような作品にしたいと思います。
金子:舞台はどれもライブで、それが楽しくて観にきてくださる方が大半だと思います。今回、芝居はもちろん和太鼓の生演奏があり、音の振動や響きが見ているお客様の身体に伝わりやすい舞台です。配信もいいですが、ぜひ劇場に足を運んでいただき、生で体感してほしいです!
石黒:新しい形の舞台ですし、自分としても新しい挑戦です。個性豊かなキャスト、スタッフさんに囲まれていますし、自由劇場も素晴らしい場所です。お時間があればぜひ観にきてほしいと切に願っています。
本作は2023年2月4日(土)~2月12日(日)東京・自由劇場にて上演される。
取材・文=吉田沙奈