新国立劇場によるフルオーディション企画『エンジェルス・イン・アメリカ』 翻訳家&演出家よりメッセージが到着

2023.1.16
ニュース
舞台

(上段左から)浅野雅博、岩永達也、長村航希、坂本慶介 (下段左から)鈴木 杏、那須佐代子、水 夏希、山西 惇


2023年4月18日(火)~5月28日(日)新国立劇場 小劇場にて、『エンジェルス・イン・アメリカ』が上演される。この度、本作の翻訳家と演出家よりコメントが届いた。

本公演は、新国立劇場演劇部門の小川絵梨子芸術監督が、就任とともに打ち出した支柱のひとつ「演劇システムの実験と開拓」として、すべての出演者をオーディションで決定する「フルオーディション企画」の第五弾。

今回は1991年の初演以来世界中で上演されてきたトニー・クシュナーの名作『エンジェルス・イン・アメリカ』二部作を一挙上演する。演出にはフルオーディション第三弾『斬られの仙太』を手掛けた上村聡史を再び迎え、21年10月より公募を開始、12月に約3週間かけて開催したオーディションを経て、浅野雅博、岩永達也、長村航希、坂本慶介、鈴木 杏、那須佐代子、水 夏希、山西 惇という8名の出演者が決定した。一部と二部それぞれ約4時間、計8時間の上演を、2か月に渡っておくる。

なお、新国立劇場での上演後、愛知・兵庫でも公演が行われる。

【あらすじ】
<第一部>
1985年ニューヨーク。
青年ルイスは同棲中の恋人プライアーからエイズ感染を告白され、自身も感染することへの怯えからプライアーを一人残して逃げてしまう。モルモン教徒で裁判所書記官のジョーは、情緒不安定で薬物依存の妻ハーパーと暮らしている。彼は、師と仰ぐ大物弁護士のロイ・コーンから司法省への栄転を持ちかけられる。やがてハーパーは幻覚の中で夫がゲイであることを告げられ、ロイ・コーンは医者からエイズであると診断されてしまう。
職場で出会ったルイスとジョーが交流を深めていく一方で、ルイスに捨てられたプライアーは天使から自分が預言者だと告げられ……

<第二部>
ジョーの母ハンナは、幻覚症状の悪化が著しいハーパーをモルモン教ビジターセンターに招く。一方、入院を余儀なくされたロイ・コーンは、元ドラァグクイーンの看護師ベリーズと出会う。友人としてプライアーの世話をするベリーズは、「プライアーの助けが必要だ」という天使の訪れの顛末を聞かされる。そんな中、進展したかに思えたルイスとジョーの関係にも変化の兆しが見え始める。


翻訳 小田島創志 メッセージ

『エンジェルス・イン・アメリカ』は、エイズ禍が拡大していた1980年代半ばのニューヨークを舞台としている。ストーンウォールの反乱以降も続いていた、ゲイに対する根強い差別や偏見のなかで、登場人物たちは、現状のままで立ち止まるのか、それとも変化を受け入れ、変化に向かって進むのか選択していく。エイズが、そして差別や偏見という疫病が蔓延しているという現実から目を背けるのか、それを直視して、戦いながら生きていく道に進むのか。登場人物だけではなく、我々全員が考えなくてはならないいくつものテーマを、この作品は提示している。マジョリティ主体の規範や偏見が浸透するこの社会は、今も病気にかかっているのではないか。LGBTQ+への抑圧、偏見に満ちた発言、差別的発言が未だ相次ぐ日本で、同性婚が未だ不可能なこの日本で、この作品を、2023年に上演することの意味を考え続けたい。翻訳にとりかかって以来ずっと、アメリカ社会をきめ細やかに描く劇言葉の豊かさ、奥深さ、ユーモアとの格闘が続いている。このテキストと向き合ううえで自分の訳語が原文から目を背け、「立ち止まる」ことは許されない、そうひしひしと感じている。

演出 上村聡史 メッセージ

『エンジェルス・イン・アメリカ』、いつかは手掛けたい作品でしたが、1980年代の社会構造、エイズの苦難と政治の抑圧という内容を、今の日本で鮮明に伝えるのは難しいと思っていました。しかし、この2023年、トニー・クシュナーが描いたこの劇に正対することにしました。それは、80年代のニューヨークに生きた登場人物たちが愛、偏見、政治、死といった問題に直面しては、想像上の人物や先祖の亡霊たちと対話しながら、混沌とした世界のなかで喜びを見出すために「変化の可能性」を強く提示しているからです。
二十世紀の呪いというべき現在進行形の虐殺、多数派における無自覚、そして、多様性を尊重する社会が問われる今、約三十年前に書かれたこの物語が、道標となる時が来ました。
オーディションで選ばれた八名の俳優/闘士たちと、劇場を「変化の可能性」の醍醐味で満たしたいと思います。

公演情報

フルオーディション Vol.5
『エンジェルス・イン・アメリカ』
第一部「ミレニアム迫る」 / 第二部「ペレストロイカ」
 
日程:2023年4月18日(火)~5月28日(日)
会場:新国立劇場 小劇場
 
作:トニー・クシュナー
翻訳:小田島創志
演出:上村聡史
 
芸術監督:小川絵梨子
 
キャスト:
浅野雅博 岩永達也 長村航希 坂本慶介
鈴木 杏 那須佐代子 水 夏希 山西 惇
 
 
【料金(税込)】A席7,700円 B席3,300円 1部・2部通し券(A席のみ)* 13,800円
【一般発売】2月4日(土)10:00~
※通常の座席配置での販売を予定しております。
 
に関するお問い合わせ:新国立劇場ボックスオフィス:03-5352-9999(10:00~18:00)
 
【全国公演】
日程:2023年6月3日(土)第一部 マチネ、第二部 ソワレ
会場:穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール
 
日程:2023年6月10日(土)第一部 12:00、第二部 17:30
会場:兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
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