土岐麻子が語る充実の現在地。そして20周年を前に独立の道を選んだ理由とは
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──音楽的にも、“今”っぽい部分とずっとされてきたこととの両立のさせ方が素敵だなと思います。『Twilight』なんてまさにそうでした。
ありがとうございます。一緒に作った作家の方たちもそういうふうに思って作ってくださる方が多くて。エバーグリーンなポップスと攻めてるトラックとか、その塩梅を目指してくださる傾向があったと思いますね。そういうお願いをしたわけではなかったんですけど、冒険したことをやりたいとは伝えていて、蓋を開けてみたらメロディをすごく大切にしつつも今っぽいトラックが多かったです。
──ああいう作品を出されている以上、そりゃ下の世代のアーティストから声はかかるよな、という気がします。そして、昨年には独立をされたということで。
あ、そうなんです。実は去年の5月1日から初めて独立をして。これまであんまりそういう話をしてこなかったんですけど、20周年や、これからの活動を大きく語るにおいては、そこはわたしにとってすごく大きなポイントなので、別に隠す必要もないし話しておいた方が良いかなと思い至りました。
──ありがとうございます。
これまで20年以上、常に事務所に所属して一緒にやってきたんですけど。45歳になった時に……ソロとして『WEEKEND SHUFFLE』を出した30歳から15年経ったのかぁって思ったんですね。15年ってあっという間のような気もして、ここからまた15年って考えるともうあっという間に60になっちゃうのかと。
──たしかに。
それってすごいことだなと思って。これまでの15年を振り返るとすごく順調に来ていて、毎年毎年レコーディングをやってプロモーションをやってツアーをやって、それでまたレコーディングをやって。そういうサイクルが出来上がっていたけど、これからの15年をどう過ごそうと思った時に、もうちょっと勉強したりじっくりインプットしてアウトプットをしたい気持ちが多くなりました。節目をつけるつもりでは無かったんですけど、でもやっぱり今ここで決断しないと、もうそろそろ新しいことや新しいやり方に挑戦するには、先延ばしできない年齢かもなとも思ったんですよね。
──立ち止まれるタイミングは最後かもしれない、みたいな。
そうそうそう(笑)。自分の中では「今だ!」と思って。ずっと前から計画してたわけではなかったので、全然わからないこともたくさんあって、周りの人も「あれはどうするんですか」「これはどうするんですか」と心配してくださったんですけど、それは辞めてから考えます!みたいな感じで(笑)。とりあえず新しい挑戦という気持ちでした。
──“挑戦”とか“勉強”といったワードが出ましたが、そこが一番大きかったんでしょうか。
そうですね。具体的なことでいうと、するかどうかは分からないけど、たとえば留学とか。いま韓国語を勉強してるのですが、越えられない壁を感じることがあって。聴くのと読むのはどんどん上達するんですけど、いざ喋るとなると全然出てこなかったりするのが、留学すると一気にグッと上がるというので。
──そう言いますよね。
もうちょっと自分にチャンスを与えたいなという気持ちですね。ツアーをするのもレコーディングをするのも好きですけど、間髪入れずにやってきたことでちょっと慌ただしい気持ちもこれまではあったりして。だから、ライブをやるんだったら1年間ライブをやるとか、制作をするんだったら制作に集中するとか、そういうやり方もやってみたいなという。
──半年ちょっと経ってみて、実際どうですか。
大変なこともありましたけれども……たとえばスケジューリングで、なんでも引き受けたいからどんどん引き受けてたらすごく忙しくなってしまったりとか(笑)。表に出る仕事だけじゃなくて、書く仕事も含めて、全然休む暇がなくて結局体調を崩したり。コロナで39度の熱が出てる中でもニュースの更新とかを自分でする、みたいなこととか(笑)。いままではスタッフの方がいっぱいいてくれたから、自分は風邪をひいても治すことに専念すればよかったし、ライブの当日も行って歌うだけという状態だったけど、そうじゃないというところに最初はわたわたしました。でも、そうやって今までマネジャーがどういう仕事をしてくれていたのかとか、イベントってどういうふうに出来上がっていくのかとか、そういう見えていなかったことが見えてくるようになって、スタッフにどういうふうにしてほしいのかも、自分のやるべきことも、もっと明確に見えてきました。
──同じ景色を見ていても、目に付くことは変わりそうですよね。
そうですねえ。あと、独立するときに思ったのは──坂本真綾さんの周年ライブに出たときに、MCで「これまでの時間を振り返って、全部の活動を知ってるのは自分だけだ」っていうふうにおっしゃってたんですよ。その言葉を聞いたときに「あ、本当そうだな」って。わたしのスタッフはわりと長くやってくださる方が多かったんですけど、それでも全てを見てきてるのはわたし一人であって。作品を作ったり公演を作ったりするときはその時々のスタッフと一緒に作ったりするわけですけど……初めてのスタッフも含めて「このチームで何ができるか」という考え方でやってきて、そうして出来た作品達を誇りに思っていたんですけど。どうしてもそのチーム内で、本人の意思とは関係なく会社の事情で入れ替わりがあることもあって。
──なるほど。
それは会社であれば当たり前のことですよね。それでもこれまでは人に恵まれて、どの作品もいいチームで作ることが出来ました。すべての作品は「全部、やりたいことをやっています」と胸を張って言えるものですが、もしかしたらこれからはそうはいかないかもしれない。これからも作品に対して誠実にいるために、良い意味でもっとシンプルな形で、自分で責任を取れる環境を作らなくてはと思いました。独立してから、去年はオファーをいただいた仕事を引き受ける年にしたんですけど、今、ツアーも企画しています。そういうタイミングを自分発信で考えるというのは新鮮ですね。
──いまお話に出たツアーもそうですが、今年の活動をこんなふうにしていこう、というのもあればお聞かせください。
まずはそのツアーをやることが大きな挑戦です。リリースツアーではないので結構自由度は高いなと思っています。だから今まであんまりやってこなかったような曲とか、新鮮なアレンジでやってみたりもしたいなって。一緒にやるメンバーも、わたしのツアーでは初めて一緒にやる方をお迎えしようかなと思っているので、そこにすごくワクワクしているのが一つ。あと、そのツアーをやりながらビジョンが浮かんでくるんだろうなと思っているんですけど、制作もしたくて。ちょうど20周年の年になる2024年には新しいアルバムを出せればなと思っています。
──これまでのお話からすると、きっとそれは集大成的なものというより、その時点の土岐さんを象徴するものになりそうですね。
そうですね。今やりたいこととか、これから数ヶ月後にどんなことをやりたくなっているかは予測できないですし。そういう「今これをやりたい」ということに挑戦していきたいです。これだけ長くやっていると「土岐麻子っぽいね」「土岐麻子風だね」っていう言葉をエゴサなどをしてるとよく見かけたりもするんですが、「そうかなあ?」って思ったりもするんですね。これまで自分の中ではあまり「土岐麻子っぽい」というのを自覚してこなかったし、これからも「これが私」というものを決めずに、自分で自分のパロディをしないように(笑)、もっと自由にやっていけたらと思っています。
取材・文=風間大洋 撮影=SUSIE
ツアー情報
4/25(火)1stステージ 開場16:30 開演17:30 / 2ndステージ 開場19:30 開演20:30
【ビルボードライブ大阪】(1日2回公演)
4/27(木)1stステージ 開場16:30 開演17:30 / 2ndステージ 開場19:30 開演20:30
サービスエリア¥6,500-
カジュアルエリア¥6,300-(1ドリンク付)
※ご飲食代は別途ご精算となります。
Club BBL会員先行=2/2(木)正午12:00より
一般予約受付開始=2/9(木)正午12:00より