工藤美桜、次は江戸の心中者をゼロへーー映像と舞台が融合した映画『まくをおろすな!』から始まる2023年は「良い年になりそう」
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工藤美桜
●人と比べないことが挫折を乗り越えるポイント
ーーブン太とモン太がコンセプトにしている「人生の幕は自分でおろすな」。このご時世においてメッセージ性が強いなと思うのですが、観た方にどんな気持ちになってもらいたいとかはありますか?
この時代に私が生きていたら、多分ブン太とモン太のように明るく「やってやろうぜ!」とはならなかったと思うんですよ。自分自身もこの作品を観て、「この人たちが今の世界よりも生きづらい世界で一生懸命生きているから、今の私も生きれるんじゃない?」と思ったので、そう感じていただきたいです。最後のエンディングのMVぽくなっているところは楽しそうで、自分で観ていてもニヤニヤしてハッピーな気持ちになれましたし、観客の皆さんにも笑顔が伝染していたので、同じようにおもしろかったなと思っていただけたら嬉しいです。
ーー作中では、「幕をおろす=心中で命を落とすこと」ですが、今の時代では挫折した時にも「その道の幕を下ろす」、「幕を閉じる」という言い方をすることもあります。そういう意味で、挫折しそうになっている人にもこのメッセージは響きますね。
私は小学4年生の時にスカウトをされてからこの仕事をしていますが、何度も辞めたいと思っていたことがありました。同年代の子がどんどん先に行くのを見るたびに、自分と比べて「私はこのまま続けていて意味があるのかな?」と。一般のお友達も新しく進路を決めている中で、自分はずっとそんなに変わらずな状態で。そういう時は辞めたいな、私も別の勉強をした方がいいのかなとか思ったりしていました。
工藤美桜
ーーどんどん知名度も人気も獲得していってらっしゃる印象だったので、挫折しそうになっていただなんて驚きました。
そう言っていただけることが多いのですが、少し前まではよく辞めたいと思っていましたね。でも辞めようと思ったタイミングで『仮面ライダーゴースト』や『魔進戦隊キラメイジャー』などのレギュラー番組が決まっていったので、まだ辞めるなと言われているのかなとポジティブに解釈していました。やっぱり人それぞれのペースがあるから、自分はスロースターターで、自分のペースでやっていけばいいやと思って。そう思えてからは人と比べることもなく、辞めたいとも思わずお仕事できています。人と比べず、自分らしくあろうと思えたからこそ、乗り越えられました。
ーー挫折から乗り越えた今、何か目標はありますか?
今回共演させていただいた竹中(直人)さんや、岸谷(五朗)さんのように、周りを見れるような役者になりたいですね。あと2023年は、良い年になりそうだなと思っていて! 別にこれといった根拠があるわけじゃないですが、2022年にお仕事をして自信がついてきたので、それに驕らず、もっともっといろんなことに挑戦して頑張っていきたいなと思っています。2023年はもっと良い年にできるようになるように頑張ります!
●越岡は「全てにおいてブン太と同じように助けてくれた」存在
工藤美桜
ーーストーリーだけでなく歌、ダンス、殺陣がひとつの映像作品に融合しているところも見どころですよね。それぞれ経験はありましたか?
戦隊モノに出ているのでやっているイメージがあるかと思うのですが、作品の中で歌うことと殺陣は初めてでした。ダンスは『魔進戦隊キラメイジャー』のときにちょっとしていたのですが、まあ下手くそで……。越岡さんが普段歌って踊られているので、撮休の日にも越岡さんに「このダンスどうやってやるんですか?」と聞いて、ダンスを練習していました。殺陣も重心を下にするなど男性の形でしなければいけないので、普段より気を遣うことが多くてすごく苦労して。休みの間も現場に行って殺陣を練習させてもらって、越岡さんとも何回も合わせて撮影に挑みました。
『まくをおろすな!』
ーー動きがダイナミックで男性的でした。その他に越岡さんからアドバイスはありましたか?
めちゃくちゃありますね。周りがすごく見えている方で、主演の方が現場にいらっしゃることでこんなに空気が変わるんだと思いました。お芝居の時も掛け合いが多かったので、何回も台本をあわせて「このセリフはこっちの方が良いんじゃない?」というアドバイスをくださったり。ダンスも私が悩んでいても「楽しんでやればいいから、失敗しても全然大丈夫」と言ってくださって、心が軽くなりました。殺陣も「全然俺のことを切っちゃっていいから」と言ってくださったので、思いっきり刀を振れましたし。普段も人見知りで、男性が多い現場だったので最初は馴染めませんでしたが、引っ張ってみんなの輪に入れてくださったり、全てにおいてブン太と同じように越岡さんも助けてくださいました。
ーーチームワークが出来上がってから舞台を上演されたのですね。映像で演技された役を舞台で再演することはあまりないと思うのですが、難しさはありましたか?
思い出せー! と(笑)。その間に他の役もやっていたりするので、「あれ? どんな感覚でやっていたっけ?」と頑張って思い出していました。やっぱり他のキャストの方と掛け合いしているとだんだん思い出してきて、コツを掴んできました。
工藤美桜
ーー映像と舞台のどちらも演じてみて、得意不得意はありましたか?
中学の頃に演劇部に所属してはいたのですが、私は映像の方が得意だなと思いました。舞台を観にきてくださった方の感想で「私は映像の女優さんだなと思った」という声が多くて。舞台に慣れていないというのもあって、癖で目とかちょっとした表情でお芝居をしがちなのですが、それだと客席からは見えないから(笑)。「そうか、ダメだな」と思いつつ、普段は大きく動かないので、どう舞台で動いていけばいいのか悩むところですね。
ーー舞台では動きを変えてみたり?
リアクションだけじゃなくて、ちょこちょこブン太と一緒に動いたりとか、強引さを大きな動きで表現することは舞台でやっていました。
ーー映画の中で流れる舞台映像でも、大きな動きをされていると感じ取れました。映画で初めて『まくをおろすな!』の世界に触れて、「舞台版も観たかったな」と思われる方もいらっしゃると思います。
もし再演の機会があれば、またやりたい! ほんとですよ! 舞台では毎回ビデオを撮っていただいているのですが、いつもそれを観て「もっとここはこうした方が良かったな」と反省していました。また私自身がちょうど千秋楽の前にコロナになってしまって、千秋楽に立つことができなかったので、もう一回みんなで集まってできたらいいなと思います。
工藤美桜
取材・文=川井美波 撮影=ハヤシマコ
公演情報
上映中
<監督>
清水順二(30-DELUX)
<出演>
ブン太(紀伊国屋文左衛門)······ 越岡裕貴(ふぉ〜ゆ〜)
モン太(近松門左衛門)············ 工藤美桜
ヤスベー(堀部安兵衛)············· 寺西拓人
大岡越前守忠相······················· 原 嘉孝
寺坂吉右衛門·························· 高田 翔
犬屋敷郎府····························· 室 龍太
出雲也哉子····························· 緒月遠麻
柳沢吉保································ 坂元健児
大石内蔵助····························· 田中 精(30-DELUX)
吉田忠左衛門·························· 椙本 滋
浅野内匠頭長矩······················· 清水順二(30-DELUX)
井田玲音名(SKE48)、田辺美月(SKE48)
LiLiCo
我 善導(WAHAHA本舗)、藤澤アニキ、古旗宏治、いっとん(KoRocK)
近藤直央、市川恭之介、竹内叶人、猿渡陽斗、原田百嘉
村瀬文宣、竹之内景樹、谷口敏也、田沼ジョージ、中村悠希、大塚晋也
師富永奈、髙木俊輔、林 宏樹、寺田遥平、片山日南、石井鈴音
須貝汐梨、沓掛龍一、長田健一、鮫嶋一範、末棟友里奈、三枝百合絵
津山直紀、上玉利澄斗、石倉和樹 、唐沢朱音、山本柚香、ラヒム勇希
松尾芭蕉································ 竹中直人
吉良上野介義央······················· 岸谷五朗
<あらすじ>
ブン太こと紀伊国屋文左衛門(越岡裕貴)は、モン太こと近松門左衛門(工藤美桜)とバディを組み、「人生の幕は自分でおろすな」と、心中希望のカップルに芝居を打たせ助けている。
溜まり場「どっぐかふぇ」で、芸人・犬屋敷郎府(室龍太)などと交流を深めている時、アルバイトに来たヤスベーこと堀部安兵衛 (寺西拓人)が赤穂浪士で、吉良上野介義央(岸谷五朗)への仇討ちを目論んでいることを知る。
寺坂吉右衛門(高田翔)ら赤穂浪士が江戸に集結する中、ブン太はモン太と共に一計を案じる。
しかし、討ち入りの裏には、10年前に南町奉行の大岡越前守忠相(原嘉孝)と、諸国を巡って情報収集していた松尾芭蕉 (竹中直人)が戦った反乱軍による企みがあった。しかも、それによってブン太の秘密も明らかに・・・。
◆「まくをおろすな!」公式サイト:https://www.makuoro.com
◆「まくをおろすな!」公式Twitter @maku_wo_orosuna
◆「まくをおろすな!」公式Instagram @maku_wo_orosuna