湖月わたる 粘土をこねるようにーー元タカラジェンヌによる連載『早花まこの、「2STEP、できますか?」』

2023.3.29
インタビュー
舞台

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宇月颯へのインタビューから始まった、早花まこによる連載『早花まこの、「2STEP、できますか?」』。宝塚歌劇OGでライターとして活躍する早花が、GANMI×宝塚歌劇 OG DANCE LIVE 『2STEP』に向けて出演者の様子をお届けしていく。第二回目は同公演スペシャルゲストの湖月わたるに話を訊いた。「湖月わたるスタイル」の基盤とは。

ダンサーにとって「自分のスタイルを持つ」ということは、ときとして踊りの技術よりも大切だ。ダンスに限らず、職業や趣味によっては「自分らしさ」が求められる場合があるだろう。だが、特別な才能のない私などは「難しい……」と感じてしまう。お芝居では演出家の指示通りに動くことはできても「あなたらしく演じて」と言われると、自信のある演技ができなかったり。

そんな私に湖月さんが語ってくれたのは、宝塚を卒業してからの経験だった。

振付では「得意なステップを自由に踊って」と、曲の中の短いパートを任せられることがある。そこで思い切って個性を表現しなくては、ダンサーとして認められない。

そんな緊張する場でも積極的に前に出て、ほんの一瞬でも自分らしさを発揮できた湖月さんは、確実にチャンスを掴んできた。その「湖月わたるスタイル」の基盤となっているのは、宝塚で培った男役のダンスだという。

「男役時代の『自分のダンス』というものが、今も私の根底にはあります」

それまでの積み重ねと全く違うことをする必要はないという考えを、彼女は「粘土」にたとえて説明してくれた。

「無理をして新しい粘土を使わなくても良いんです。今まで作り上げた粘土作品に、水を加えてまた柔らかくして、それからもう一度練り直す」

自由自在に形を変える粘土は、湖月さんの柔軟な取り組み方、創造の楽しさを伝えてくれる。「今の私の粘土を練る」と思えば、新たな挑戦が少しだけ怖くなくなった。

「振付を作る時、瞬発的に「閃いた!」というタイプではないんです、私。しっかり時間をかけて、たくさんイメージして振り付けていく……だから、ひとりでスタジオにこもる時間が長いの。すごく集中できる、私の大好きな時間です」

宝塚歌劇団在団中から、湖月さんは多くの時間をお稽古場で過ごしてきた。どんなに多忙でも劇団のレッスンに参加する姿は、他の生徒のお手本となる程の努力家であったが、クラシックバレエは昔から苦手意識があったそうだ。

ジャズダンスの楽しさにばかりのめり込んでいた彼女の転機は、選抜メンバーとしてジョイスシアターの舞台に立った、ニューヨーク公演だった。

元花組のトップスターであり、男役のダンスを追求し続けた大浦みずきさんの踊りを間近で見た湖月さんは、その圧倒的な素晴らしさに衝撃を受けたという。

「クラシックバレエを踊って鍛え抜いた大浦さんのダンスを目の当たりにして、まず基礎を身に付けなくてはと思った」と、当時を振り返る。

それからの湖月さんは、時間を見つけてはクラシックバレエのレッスンに出席するよう心がけた。

「私にとっては苦手なレッスンだけど……踊り続けるためならやるべきだって覚悟したのね」

笑いを交えて語る湖月さんだが、生半可な気持ちではできない努力を続けたその強さを思うと、聞いていて胸が熱くなった。

取材・文=早花まこ

湖月わたる(こづき・わたる)
埼玉県出身。
1989年宝塚歌劇団入団。星組男役トップお披露目公演『王家に捧ぐ歌』が文化庁芸術祭優秀賞受賞。宝塚退団後、NYダンスカンパニーTHE MOVEMENT初来日公演、CHICAGOアメリカカンパニー来日公演等、ダンス、ミュージカルと幅広く活躍している。今秋、ZUKA IN JAZZ SONG & DANCE with NAOKO TERAI Quartet『ALL THAT ZZJA ALL THAT ZZKA』出演予定。

公演情報

GANMI×宝塚歌劇OG DANCE LIVE『2STEP』
 
■振付:GANMI
■構成・演出:Sota(GANMI)
 
■出演:
【GANMI】
Sota、SUN-CHANG、kooouya、Kazashi、
Mr.D、shun、Dyson、Yuuki、Ryoga、O.S.M、AOI
 
【宝塚歌劇OG】
宇月颯、風馬翔、隼海惺、矢吹世奈、綾凰華、飛龍つかさ、輝生かなで
《SPECIAL CAST》湖月わたる
 
【東京公演】
日程:2023年5月26日(金)~5月28日(日) 
会場:日本青年館ホール
 
5月26日(金)15:00●
5月27日(土)12:00/16:00(貸切)
5月28日(日)12:00●/16:00☆
※●=アフタートークショー ☆=スペシャルカーテンコール
 
:S席11,500円、A席7,000円(全席指定・消費税込)
 
【大阪公演】
日程:2023年6月2日(金)~6月4日(日)
会場:梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
 
6月2日(金)14:00●
6月3日(土)12:00/16:00(貸切)
6月4日(日)12:00●/16:00☆
※●=アフタートークショー ☆=スペシャルカーテンコール
 
:全席11,500円(全席指定・消費税込)
 
■公式HP:https://www.takarazuka-live-next.co.jp/stage/2023/2step/
■公式SNS:
Twitter @Takarazuka_LN
Instagram @takarazuka_live_next
TikTok @2step2023 ※2STEP公演限定
 
■お問合せ:
梅田芸術劇場(10:00~18:00)
〔東京〕0570-077-039 〔大阪〕06-6377-3888
 
■企画・制作・主催:タカラヅカ・ライブ・ネクスト、梅田芸術劇場

『早花まこの、「2STEP、できますか?』

第一回:宇月颯インタビュー(全文はこちら
<早花まこプロフィール>
東京都出身。2002年宝塚歌劇団入団。2020年の卒業まで雪組娘役として幅広い役を演じた。宝塚歌劇団の機関誌『歌劇』のコーナー“組レポ。”では、8年にわたり執筆。独自の視点で見た雪組生の様子を豊かな文章表現で伝え、ファンの人気を集めた。また、2023年3月1日『すみれの花、また咲く頃―タカラジェンヌのセカンドキャリアー』が新潮社から刊行される。現在は、文章といけばなの修行中。
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