加藤健一事務所『グッドラック、ハリウッド』──演出家・翻訳家・出演者に聞く
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加藤健一事務所公演『グッドラック、ハリウッド』(リー・カルチェイム作、日澤雄介演出)
加藤健一事務所が『グッドラック、ハリウッド』(作:リー・カルチェイム、翻訳:小田島恒志、演出:日澤雄介)を、2023年3月29日(水)~4月9日(日)に下北沢・本多劇場にて上演する。数々の名作を生み出した映画監督と、あまり経験のない新人シナリオライターが出会って、ふたりが思い付いた詐欺まがいの共同作業とは? はたして二人の脚本家が計画した思惑どおりに、事態は進行するのだろうか。ふだんはコメディを演出しない日澤雄介(劇団チョコレートケーキ)、劇作家の家も訪ねたことがある小田島恒志、そしてこの芝居を演じる三人の俳優・加藤健一、関口アナン、加藤忍に話を聞いた。
■古き佳き映画時代の思い出
──『グッドラック、ハリウッド』は映画界の内幕物ですが、これまでにも加藤健一事務所では、ニール・サイモン作『銀幕の向うに』、ケン・ラドウィッグ作『SHAKESPEARE IN HOLLYWOOD~ハリウッドでシェイクスピアを~』など、映画に関係する作品をいくつも上演されています。まず、64歳の名監督であるボビー・ラッセルを演じる加藤健一さんにお伺いします。いきなり冒頭で、ラッセルは先に輪のついたロープを梁(はり)に結びつけている。衝撃的な幕開きですよね。
加藤健一 わたしは一度も自分で死ぬことを考えたことがないので、この役とはちょっと距離があるんです。死にたいという気持ちがどこからくるのか、まだ、わからない。映画については、子供の頃、映画界が盛んだったので、想いはいっぱいあります。特に日本映画は全盛期でした。
ぼくが生まれ育った村は人口3千人ぐらいでしたが、それでも何百人か入れる映画館がありました。そこでは毎日、映画を上映してましたから、日本中の小さな村にそれぞれの映画館があり、しかも、町には何軒もあったはずだから、ものすごい映画館の数だったんですね。映画の作りかたはさすがに雑で、小林旭さんがギターを担いで馬に乗っていて、そこになぜかサボテンがあったりする……
──無国籍映画っぽい作りになっていた。
加藤健一 そういう映画だったり、当時は1時間物が多かったので、必ず二本立てになってました。主演俳優は年間10本ぐらい出演していましたから、いまでは考えられない本数だけど、そういう時代だから、本当に映画が楽しかったですね。
テレビができて、最初の時期は楽しかったけれども、年を重ねるにつれて、つまらないと思うようになりましたが、映画はいまでも楽しいですね。きっとスポンサーが基本的にはいないので、自由だからでしょうね。いろんなことが表現できる。そういう意味では舞台と同じで、何の制約もない。
加藤健一事務所公演『グッドラック、ハリウッド』、ボビー・ラッセルを演じる加藤健一。
■巨匠の隣りにオフィスを持つ新人
──では、新人シナリオライターとして、憧れの大先輩の映画監督の隣りのオフィスから、ときどき遊びにくるデニス・プラットを演じる関口さん。ボビー・ラッセルが死のうとしているところを、偶然目撃しちゃうんですよね。どんな感じで加藤健一さんというか、ボビー・ラッセルに向かっていこうと思っていらっしゃいますか。
関口 やっぱり、衝撃的な出会いかたをして、しかも、その人物がボビー・ラッセルという巨匠。すごいハードルの高いところから始まる。日常からゆるやかにじゃなくて、いきなりピークで出会うことに。
──ある意味、極限状態かもしれません。
関口 それを想像しても、あまりよくわからない。目の前で死のうとしてる人も見たことがないし、しかも、その人がとんでもない人という……なので、台本開いたときに、これはどうしたらいいんだろうと思ったのが、最初の感想です。
いまはもう稽古を始めて、日澤さんの言葉とかを受けてちょっとずつ埋まっていってる感じです。手探りで、こうしてみよう、ああしてみようというアイデアが出てきたり……。
──はじめは重苦しい空気があるんですが、話しかけると、ボビーは何もなかったみたいに応えてくれる。「さっき見たことは、本当にあったの?」という感じですが、天井から吊り下がっているロープがずっと残ってますからね。
関口 重い空気のなかでも、デニスが持っている若者側の軽妙さ、ノリが軽いところは、最初はもちろんですが、特に大事にしていきたいなと思いながら、お稽古をしている最中です。
加藤健一事務所公演『グッドラック、ハリウッド』、デニス・プラットを演じる関口アナン。
■助手の立場から、巨匠と新人の仕事を見つめる
──ふたりのシナリオライターの助手、メアリー・オーヘアを演じる加藤忍さんは、どちらかと言えば、ボビー・ラッセルを応援している役どころなんですけど……。
加藤忍 かなりボビー先生側なんですが、いまどきの考えかたをするデニスには「あなた、何考えてるの?」という意見がいつもある。最初、台本を読んだときに、ラストシーンがなんてお洒落な終わりかたをする作品なんだろうと思って。それと幕切れ近くに、ボビー・ラッセルがしゃべってる「わたしの愛する映画の世界は……」という台詞が、ふだんから健一師匠がおっしゃってることと本当にダブッて聞こえて、「ああ、もうこれ、加藤さんにしか見えない」と思って。「これ、加藤さんみたい」と思ったのが最初の感想でした。
読んでるときは、面白いな、お洒落だな、すごい作品に出会えてうれしいなと思っていたんですけど、お稽古に入ってみたら、先ほどふれられたように、命を絶とうとすることだったり、それ以前にも、ユダヤ人であることで戦時中にどれだけの思いを家族がしてきたかとか、わたしが演じるメアリーもアイルランド人でクリスチャンで、ニュージャージー州生まれで、子供もひとりいるけど、離婚もして、いろんな仕事もして、そういう人生を経てここにたどり着いている。ひとりずつが持っているものはすごく重くて、そこも入っているところがすごくすてきな作品だけど、同時にそこが難しいなと思って。メアリーという女性が、わたしのなかではまだつかみどころがないので、いま一生懸命、日澤さんと共演者と探っているところです。
加藤健一事務所公演『グッドラック、ハリウッド』、メアリー・オーヘアを演じる加藤忍。
■コメディを演出することについて
──日澤さんはシリアスなドラマを演出されるイメージがあり、あまりコメディは手がけないように思うんですが、『グッドラック、ハリウッド』に取り組んでみて、いかがでしょうか。
日澤 稽古場もニコニコできるし、幸せな気分になることが多いので、そういう意味では、社会を俯瞰するような作品よりはいいなと思います。劇団チョコレートケーキでやるときは、たとえば戦争とかいう大きな命題、強いコアなものを持って、それをがっつりつかんでいくのが基本的な演出になっていくんです。今回はそういうことではないのですが、ぼくが大切にしている俳優さんの個々の関係性とか、状況にどう影響されているかとか、そのなかでどう感情が動くのかというシンプルなところに行き着くので、そういう意味では変わらないです。ただ、演じかたとか出しかたを変えてもらってるところがあるかもしれないです。丁寧に人間関係を作っていくと、自ずとテンポが出てきて、自ずと笑いが出てきて、自ずと涙とか怒りが出てくる。非常にやりがいがあります。
加藤健一事務所公演『グッドラック、ハリウッド』、演出家の日澤雄介。
■生活習慣が対照的なふたり
──加藤さんが演じるボビー・ラッセルは、この世代としては標準的な人で、カフェイン入りのコーヒーを飲むし、卵もふつうに食べるし、お酒も飲む。それに対して、デニス・プラットはローファットしか口に入れず、卵はNGだし、コーヒーもカフェイン抜きを飲む。健康に気を遣うように育った世代と、あるものをそのまま受け入れてきた世代が、映画を作るということで出会う感じがするんです。
加藤健一 そうですね。アナンさんには、あまり世代ギャップを感じないから、ご家庭での育ちかたがよかったのか、古いタイプだと思うんだけど。デニス・プラットは偉そうで生意気な若造に作ってくださっているんですが、アナンさん本人はあまりぼくと齢が変わらないと思うほど……(笑)。
──関口さんはどうですか?
関口 お芝居のなかで、いろんなジェネレーション・ギャップもあるんですけど、そのことをデニスは正義だと思っていて、共同作業をするうえで「これが必要です」と堂々と言えるところが、ぼくはすごいなと思います。
──映画界の巨匠であり大先輩の監督に対して、リスペクトしながらも、物怖じしないで、意見をちゃんと言うシーンがありますね。
関口 そこにちゃんと踏み込んで必要なことを言って、しかも、ボビーの台本のリライトといったものすごいことをしてるんですけど、自分の感覚をすごく信じている人で、作品に対しては譲れないものを持っている。そういう姿勢が、ぼくがデニスの好きなところです。
──言葉に対する感覚も、ふたりは対照的で、ボビーがとても気に入っている『さらば、あとはよろしく』というタイトルを、デニスはいまどきの人の感性に合わせるために『愛の半熟目玉焼き』に変えることを提案する。この訳はすごいですね。
小田島 直訳、直訳。
──この日本語はなかなか出てこないと思いますよ。
小田島 カルチェイムに言っておきます。
──ベテラン映画監督の気持ちもわかれば、前途有望な新人シナリオライターの気持ちも自在に想像する。この訳には唸りました。
加藤健一事務所公演『グッドラック、ハリウッド』(リー・カルチェイム作、日澤雄介演出)のチラシ。
■原題に作者が込めた意味
──『グッドラック、ハリウッド』には実際の映画が3本出てきます。『魅惑を賭けて』(1930年)、『街角──桃色(ピンク)のお店』(1940年)、最後に『素晴らしき哉、人生』(1946年)。どれも古い映画ですが、劇作家のカルチェイムは、映画が持つ力みたいなものを信じていて、芝居の冒頭に自殺を考えている人を登場させ、その人が再生していく物語を描こうとした気がしました。原題は『スラウチング・トゥワード・ハリウッド』ですが、「スラウチング」はどういう意味なんですか?
小田島 実はこの題名には、めちゃくちゃ意味があって、劇作家の気持ちがすごい入ってる。そもそもこれは「セカンド・カミング」というウィリアム・バトラー・イェイツの詩から採ったフレーズなんですよ。
スラウチングは「前屈みになっている」という意味で、ちょうどゴジラが歩いているときのように「前屈みになって、よろよろ近づいてきている」イメージ。で、イェイツの詩にある「スラウチング・トゥワード・ベツレヘム」は、キリストがベツレヘムへ向かっていること。そして、「セカンド・カミング」という題だから、かつて一回やって来た救世主が、現実の世の中が悲惨な状態になってしまった今、復活して再びベツレヘムへ向かっていると人々は言うけれど、本当にそれは救世主なのか。もしかしたら、さらに世の中を悪くしちゃう怪物なんじゃないかと。
ウルトラマンが地球を救いに来てくれたんだけど、戦うときにビルとか山とか破壊しまくるでしょう? そのイメージです。救世主と言いながらも、実は恐ろしい怪物で世の中を破壊するんじゃないかという危惧を、ハリウッド映画界に掛けたわけ。新しいハリウッド映画を作る次世代の監督や作家が出てきて、昔ながらのいい映画を作ってハリウッドを再建してくれるかと期待したときに、その人たちが悲惨で恐ろしく殺伐としたものを作るんじゃないかとボビー・ラッセル世代は恐れてる、そういう気持ちを込めているわけです。
──加藤健一事務所にイェイツの詩「セカンド・カミング」のイメージを重ねると、加藤さんは北村想作『寿歌』をくり返し上演されていて、それはモヘンジョダロに向かって、3人の男女がリヤカーを曳きながら歩いていく話ですから、なんとなく『寿歌』の世界と『スラウチング・トゥワード・ハリウッド』という原題の内容が響き合っている感じがします。
小田島 次の世代がね、救いに来ると言ってるけど、本当は救うんじゃないのではということですね。
──破壊された世界をもう一度歩いていくというイメージが、『寿歌』と不思議なかたちでつながって、何度も『寿歌』を見せてもらった世代としては、それも楽しいです。
加藤健一事務所公演『グッドラック、ハリウッド』、翻訳を手掛けた小田島恒志。
■役者の持ち味を引き出す演出
小田島 劇団チョコレートケーキと加藤健一事務所で、ここがちがうなとか、ここは同じだなとか、演出のうえで何かあれば聞かせてもらえますか。
日澤 (しばらく考えて)えっと、あんまり自分でここをこうしてと決めないのは、劇団チョコレートケーキともやりかたが同じです。やりかたでいいんですか? 内容とかじゃなくて……
小田島 あと、気持ちとかね。
日澤 気持ちは、劇団員よりは格段に気は遣っています(笑)。もちろん、年齢もぜんぜんちがいますから。ちがうところというと、3人とも「はじめまして」なので、そのかたのいちばんの個性というかいちばんいいところ、魅力はどこなんだろうというのが、まだ取りあぐねている。ここが強いところで、これは強くないところというのがまだ見えてきてないので、すごく観察はしてるかもしれない。
小田島 役者の持ち味を引き出すタイプなんだ、自分のプランに役者を合わせさせるのではなく。
日澤 それはないですね。そこに乗っかる感じです。俳優さんの持ち味に乗っかって、この作品の色を出していくような感じ。俳優さんを変えることをしないから、「あの演出家さんといっしょにやりたい」とは絶対に言われないタイプですね。俳優さんのなかにあるものをさわっていくタイプだと個人的には思ってます。
加藤健一 そういう演出家とやりたいよね。
加藤忍 はい。
日澤 いや、わからんすよ、それは。
加藤忍 でも、「今回、日澤さんなんです」と役者の友達に言うと、「日澤さん、いいなあ」ってみなさん、言われますよね。
関口 ものすごい言われます。
日澤 そんなことないですよ。
──劇団チョコレートケーキの『治天ノ君』に客演された松本紀保さんとか、すごくよかったですから。俳優のいい部分をきれいに引き出すし、その人に合ったものをうまく設定されていく。今回も3人の掛け合いが、最良のかたちで、それぞれの力を引き出せるように構成されるのではないかと。
日澤 まだまだお三方、猫かぶってます。
■最後にお客さんにひと言
──では、最後にお客さんたちに、ひと言ずつお願いします。
加藤健一 ぼくは舞台に出てる時間が長い方が好きなんで、三人芝居だとかなり出ていられる。先日、ひさしぶりに6人がほぼ6等分という芝居をやったんです。そしたら、やることなくて、袖にいることが退屈だなあと思って。袖にいるぐらいなら、出てたほうが楽だよという感じで。『グッドラック、ハリウッド』はずっと舞台に出ていられるので、楽しみにしております。
──台詞量がかなりありますが、平気ですか。
加藤健一 平気じゃないんですけど、人に渡す気はないんですよ。
日澤 本当にリアル・ボビーだよね(笑)。
──それを受けて、関口さんはいかがですか。
関口 三人芝居って、ぼくはあまり見たことがなくて。やるのも初めてですし。
──3人だと台詞を忘れても、なんとかごまかせるんですよ。でも、二人芝居はごまかせない。片方が台詞を飛ばすと、本当に困ってしまう。
加藤健一 今回は三人出てるところは少ないんですよ。いつもだいたい二人。
日澤 だから、飛び込んでいく用意をしていればいいんですよ、何かがあったときに。
関口 そうですね(笑)。三人芝居もそうですし、本多劇場という場所で、この三人芝居を見られるという。いつも思うんですけど、ほんとに客席から見たいなって思うんですよ。なので、本当に期待して劇場に来ていただけたらなと思います。
──では、加藤忍さん。
加藤忍 先ほど演出の仕方のお話があったんですけど、わたしは稽古場で傍(はた)から見てると、長年、師匠がいろんな演出家さんと作っているのを見てるんですけど、こんなに細かく「ここはどういう気持ちですか?」「いま何を思ってます?」「じゃあ、こうやってみましょう」「やっぱり、これ、ちがうんじゃないですか」とおっしゃる演出家の方、初めてだったんです。そのことによって、いままで見たことのない加藤さんだなとか思うところがあって、それがすごく……。
加藤健一 それいいね、いただきだね、宣伝には。
加藤忍 すごくちがう加藤さんを見られるのは、さっきの引き出すという演出方法だったんだと思って。その手法が初めてなので、こういう演出家さんとやらせていただくのが。すごい楽しみです。アナンさんはちょっとわれるだけで、すごく変わられるので、すごいなと思うのと、その要求したものが、どんどん積み重なっていく姿が今見えていて、自分だけできてないなと思っちゃって……。
加藤健一 いやいや、そんなことはない。
加藤忍 わたしも「こんな加藤忍見たことない」というものを目指してがんばります。
──では、日澤さん、お願いします。
日澤 『グッドラック、ハリウッド』はハリウッドが舞台で、映画についての話なんですが、同じものを作るというところで、われわれ舞台人とつながることが多くて。演出しながら、ボビーの葛藤とか、ボビーの言葉とかに「だよな」って思うものがたくさんあるんですよ。
ひとつのものを作るときに、どういう思いで作るのか、台本1冊書くのにどんだけ血反吐を吐くんだみたいなことを考えると、演じることもそうですけれども、やっぱりこの三人の役のそもそものキャラクターが持っている葛藤だったり、苦しみ、喜びみたいなものが、かなり俳優三人と等身大でリンクする場面ってたくさんあるような気がするんです。そういう意味で、すごく三人の人生に乗っかった作品になるんじゃないかなと思っていて、それをコメディ仕立てといいますか、ただ重いだけではなく、おかしみもありながらというところで描いているいい作品だと思いますので、ぜひとも見ていただきたいと思います。
──では、翻訳をされた小田島さん、翻訳者としてここが見てみたいというところをお願いします。
小田島 さっき忍さんがね、いままで見たこともない加藤さんが見られるというので、「ええ!」と思ったんだけど、それでもお客さんが入ると、それがさらに倍になるんですよ。でも、お客さんが入ってくれないと、そうはならない。そこがびっくりするよね。
日澤 本当に怪物じゃないですか。
小田島 たぶん、加藤さんも気がついていない。本番が始まるとそれだけすごいということをね。みんなそれぞれお客さんが入ると変わるんだけど、加藤さんは露骨にちがう。
加藤健一 そんなことない。
小田島 といって、稽古で手を抜いてるということじゃないんだけど(笑)。
──それは客席からの視線という風を受けて、凧が空高く舞いあがるような現象なんでしょうか。『グッドラック、ハリウッド』は、「ああ、ダメだ」と人生を儚(はかな)んでいる人にこそ見てほしい。見ているうちに「いいや、そうじゃない」と問題解決のヒントを与えてくれるような話だと思います。期待しています。
取材・文/野中広樹
公演情報
■日程:2023年3月29日(水)~4月9日(日)
■会場:下北沢・本多劇場
■作:リー・カルチェイム
■訳:小田島恒志
■演出:日澤雄介
■出演:加藤健一、関口アナン、加藤 忍
前売5,500円、当日6,050円、学生2,750円(学生証提示、当日のみ)
■公式サイト http://katoken.la.coocan.jp/114-index.html
とあるオフィスのスプリンクラーから垂れ下がった、先に輪のついたロープ。そして机の上に立つ男。
偶然入って来た若い作家のデニス(関口アナン)がハリウッドに来て早々に出会った不審なその男は、過去に大成功を収めた憧れの名監督で脚本家のボビー・ラッセル(加藤健一)だった。
しかし今、ボビーの脚本を映画会社は受け入れてくれない。求めているのは質の良い脚本でも、監督の実力でもない。デニスのような「トレンドに乗った人間」なのだ。
この衝撃的な出会いをきっかけに、新旧の二人は詐欺まがいな共同作業をすることになる―誰も傷つかない嘘をつこうじゃないか。何も知らない助手のメアリー(加藤忍)は、そんな二人の違和感に気付きボビーを心配し始める。
垂れ下がり続けるロープ、そしてクランクアップした映画が三人にもたらした新しい人生、待ち受ける人生とは…。