『SANUKI ROCK COLOSSEUM 2023』四国の街を音楽で巻き込む、美しきライブサーキットが4年ぶりに本来の規模で開催
四星球 撮影=Hoshina Ogawa
SANUKI ROCK COLOSSEUM 2023 -MONSTER baSH × I♡RADIO786- 2023.03.18(SAT)〜03.19(SUN)高松市商店街
『SANUKI ROCK COLOSSEUM 2023 -MONSTER baSH × I♡RADIO786-』(以下、『サヌキロック』)が、3月18日(土)、19(日)の2日間に亘って開催された。昨年3年ぶりに開催されたが、今年はコロナ禍以前の規模的に捉えると4年ぶりの開催となり、約100組が出演した。
このイベントは、2010年から四国在住のバンド、四星球が発起人となり、FM香川と四国のコンサートプロモーターのDUKEが主催している。香川県高松市の常磐町商店街を中心として、通称「ことでん」こと高松琴平電気鉄道の瓦町駅周辺で行われた。会場となるのは、約200m範囲内にあるfesthalle、オリーブホール、DIME、MONSTER、TOONICE、SUMUS Café。去年は当時のDIMEの見納めが見所でもあったが、今年は南新町商店街付近に移転し、その手前に位置するTOONICEも新たに会場として加わった。それにより、去年より少し範囲は広がったが、それでも10分もあれば移動できる距離であるし、全て商店街を起点にしているので全く遠さは感じない。今まで以上に商店街を奥まで楽しめるという感覚すらあった。
田町商店街と南新町商店街が左右に伸びる 撮影=Hoshina Ogawa
そして、去年と大きく違ったのは、去年は瓦町駅地下広場にあった特設ステージ「786FM香川ステージ Supported by レクザム」が、常磐町商店街と南新町商店街と田町商店街が交差する南部3町ドーム下へと4年ぶりに戻ってきた事。公開生放送、トークライブ、アコースティックライブが行われる場所であり、発信基地としての意味合いもある為、観客が絶対的に通るドーム下に戻ってきた事で、去年より明らかに商店街に活気が出ていた。しかし、バンドライブが無料観覧できていた本来の瓦町駅地下広場特設ステージは復活できていない。来年5年ぶりに復活できる事を心から祈っている。
クロークとして機能していた、かじ笑店 撮影=Hoshina Ogawa
2020年と2021年はコロナ禍での中止もあり、去年ようやく私は初めて訪れる事ができた。四星球のメンバーや関係者と会う度に「もっと盛り上がっている、本来の姿を見て欲しかった」と言われたのを未だに覚えている。そういう意味では、今年は瓦町駅地下広場特設ステージ以外だと、ほぼ本来の形に戻って来たのではなかろうか。朝10時には、商店街のアーケード内でパス交換が始まるが、長蛇の列が出来ていた。同じくアーケード内には、ミュージシャンやイベントの物販エリアから、CD販売をするDUKE SHOPや毎年夏に国営讃岐まんのう公園で開催される野外フェス『MONSTER baSH』のブースも設置されている。大浦梶や、ムーディ勝山との勝山梶(後にアイスクリームに改名)といったコンビでも活躍し、現在は地元香川で「よしもと住みます芸人」を務める梶剛の情報発信スペース、かじ笑店は、観客の荷物を預かるクロークとして機能していた。
サヌキロック待ってるクレープ 撮影=Hoshina Ogawa
また、飲食店を中心に、18店舗がイベントとコラボしたメニューを提供していたり、イベントのリストバンドを提示すると受けられるサービスもある。常磐町商店街の入り口にある、三びきの子ぶた特製シュークリーム「四星シュー」や、常磐町商店街の奥にあるCREPE DE GIRAFEの「サヌキロック待ってるクレープ」は特に人気であり、手に持ちながら移動する観客も数多く見受けられた。中には、日焼けサロンのビームゾーン初回登録料金無料といった特典もあり、その幅広い街ぐるみな感じは去年同様ニヤけてしまう。あと、普段からの商店街通行人である地元の方々が『サヌキロック』の賑わいとは関係なく、いつも通り移動されている日常感の揺るぎなさも良かった。サヌキロックは、街の人の生活に自然に馴染んで溶け込んでいる。
撮影=Hoshina Ogawa
それから商店街のアーケードに、「Are You Ready?」と綴られた上で『MONSTER baSH 2023』が8月19日(土)、20日(日)に開催されると発表された横断幕が掲げられているのも嬉しかった。それも公式発表の3月18日(土)昼12時になる前から、何食わぬ顔で掲げられているのも洒落ていた。
四星球 撮影=Hoshina Ogawa
初日の3月18日(土)朝11時。南部3町ドーム下の特設「786FM香川ステージ」にて、公開生放送特別番組『サヌキロックレディオ2023』がスタート。四星球のメンバー全員で開幕宣言を行うのだが、去年同様昼12時にはオリーブホールで四星球のライブがある。北島康雄(シンガー)は、「こんなんだったな。去年とは人の数が違う」とステージ前の観客と商店街の人通りを観て話す。『サヌキロック』盛り上げ事前番組も担当してきた高松在住のモリス(Dr)は、この2日間でバンドライブ2本含めて6ステージを担当するという。10分後にはfesthalle、オリーブホール、DIME、MONSTERでライブが本格的に始まる。全トップバッターは各ライブハウス推薦の四国のミュージシャンだというのも良い。11時10分に向けてカウントダウンをする四星球とMCの下舞春希(FM香川)。その直前、アーケードの上にあるドーム部分にいた鳩が観客にフンを落とすプチ騒ぎが起きる。「フン(運)がついた!」や「飛ぶ鳥を落とす勢い!」と喜ぶ四星球。去年は、どこまで楽しんでいいのかという緊張感があった開幕宣言だっただけに、今年の解放感は観ていても嬉しかった。
移動中の撮影は断念……楽屋裏での撮影に応えてくれた四星球 撮影=Hoshina Ogawa
公開生放送が終わり、四星球は昼12時オリーブホールのライブに向けて急いで移動する。去年は瓦町駅地下広場から商店街を抜けてと距離があったので移動中の四星球写真撮影に余裕があったのだが、今年はドーム下からオリーブホールまでは近距離の為、移動中の写真撮影をする前にメンバーが小屋入りしてしまう。急遽、オリーブホール楽屋での撮影に変更したが、これも嬉しい誤算であり、本来の姿に戻ってきたのだなと実感できた。ライブまで少し時間があったので、商店街をウロウロしていると、オリーブホールにて18時30分に出番のセックスマシーン!!のモーリーこと森田剛史(Vo.Key)と日野亮(Ba.Key.Cho)に出逢う。直前入りでも問題ないのに、しっかりと朝から現場の雰囲気を確かめているのは彼ららしいし、4年前に出演した時の商店街でのエピソードを嬉しそうに話してくれる。その後、四星球のライブを袖でずっと観ているモーリーも印象的だった。ライブは夜ながらも朝から入って気持ちを高めたくなるほど、『サヌキロック』は演者にとっても特別な祭なのだと再認識する事ができた。
四星球と楽屋挨拶に来た井川さん 撮影=アミノン
オリーブホールで四星球ライブを待ちながら、去年、康雄から教えてもらった元FM香川ディレクター兼パーソナリティで『サヌキロック』の立ち上げにも関わった井川達雄さんについて思い出していた。井川さんは昨年の復活を待たずに退職してしまっていただけに、本来の姿に戻りつつある今年の『サヌキロック』を見届けているのだろうかと勝手に思いを馳せていた。12時になり、康雄が袖から影アナで、現役を退いて2年の井川さんが何と楽屋挨拶に来てくれて、今、急遽お願いして何かひとこと喋ってもらうと説明する。本当に3分前に急遽突然お願いしたとの事。井川さんは『サヌキロック』が2010年に立ち上がった事を踏まえた上で、「四国が誇るスーパーコミックバンド! 笑いたいでしょ?! 泣き、たいでしょ?!」と観客を煽る。
「街とラジオと音楽と最高の2日間にしましょう!」
四星球 撮影=アミノン
この言葉は『サヌキロック』を端的に見事に表現しているし、2年ブランクがあって3分前に突然依頼された人が、凛とした声でこの言葉を語ったのには何とも言えなかった。思わぬ井川さんからの輝かしいスタート。2010年からの歴史を感じる事もできた。そして、何事も無かったかのように登場SEとして康雄が大好きなThe ピーズが鳴り響き、U太(Ba)、まさやん(Gt)、モリスが法被にブリーフの正装で登場。まさやんは突如「手品をしていいですか?」と言い出して、観客に4枚の大きなトランプカードから1枚を引いてもらう。後方の観客にハートのエースのカードを見せ、まさやんが「あなたが引いたカードは!」と言うと、真っ赤な全身タイツにハートの被り物をした康雄が「ハートのエース!」と言って登場!
四星球
後の3枚はアーノルド パーマー大好きでお馴染みのDUKE玉乃井欣樹社長という四国ならではの小ネタをはさみ、高揚感の為と急遽1曲目を用意していたものから変更して、四国のスーパー「マルナカ」の歌を歌い出す。まだモッシュやダイブは駄目だが、一緒に歌うのは大丈夫であり、「みなさんの声でモッシュダイブしてください!」と言う。関西在住の私はマルナカのテーマソング「ナカマカナ」を初めて聴いたが、しっかりと場内の幸福感だけは伝わってきた。康雄はスピーカーに登り、まさやんはギターを客席に放り投げ、気が付くと康雄はフラフープを回していて、そのフラフープも客席に投げられる。観客はみんなピースをしていて、何故だか、その光景に泣けてしまった……。確実にライブハウスの喧騒が戻ってきている。
四星球
2月23日(木・祝)の日比谷野外音楽堂初ワンマンライブ中に制作されて初披露された新曲「ふざけてナイト」。この曲はポップでキャッチーでパワーがあるメッセージソングであり、遂に完成したと興奮してしまうくらいのキラーチューン。ライブハウスでふざけるという当たり前の事ができずに、この3年は苦しかったので、「ふざけてナイト」には自由に解き放たってくれるエネルギーがあった。
「FM香川を50歳手前で退職されて、小学校の先生になられた井川さんの声が久しぶりに『サヌキロック』で聴けて嬉しかったです。井川さんが以前に話してくれた言葉で「人生は途中までカウントアップだけど、途中からはカウントダウンになる」というのが心に残っている。僕も来年40歳なので、いつまで色々な事をできるのか見届けて欲しいと思います」
四星球
康雄はライブに全身全霊で挑んでいるが、地元四国での『サヌキロック』でのライブは特別なのだろう。気合いが違う。でも、最後はまたマルナカの歌で締めるというのも良い。昔は時間を押していたのを、今は守るようになったという意味で丸くなったと表現していたが、それは円熟味が増したという意味合いであり、しっかりと尖がって攻めていた。最後、トランプカードでの「WE ♡ サヌキロック」のメッセージも粋だった。
Anly 撮影=Hoshina Ogawa
最高のスタートダッシュを飾れた。ここから色々と巡る事になるが、今回のラインナップを見た時、特に初日は女子が多い様に感じた。実際にFM香川ステージでは、カネヨリマサル、ヤユヨ、なきごとのボーカルたちによる『サヌキロック女子会』というトークライブも開催されていた。女子ボーカルあるあるといった話題も興味深かったし、DIMEでシンガーソングライターのAnlyがひとりアコギ1本で、ほとんど初めて観る人たちを喜ばしている姿も印象に残っている。
我儘ラキア 撮影=Hoshina Ogawa
初出場組でアイドルグループながら、生バンドを従えて力強く激しく歌って踊る我儘ラキア。MONSTERでも、全員が2000年代生まれのゆとり世代で紅一点ボーカルが歌うyutoriが初出場。カネヨリマサル、ヤユヨ、なきごと、Anlyのように来年以降も常連組として出場して欲しい。
ねぐせ。 撮影=アミノン
moon drop 撮影=アミノン
初出場組の男子だって負けてられない。初出場ながらねぐせ。はfesthalleにキャスティング。オリーブホールのmoon dropは超満杯であり、その期待の高さを知れた。今年新たに加わったTOONICEでは、Blue Mashやケプラも登場。いわゆる小バコのライブハウスであり、天井が狭く、舞台も近く、コンパクトながらインパクトのあるライブを感じられる本当にナイスなライブハウス。半地下のアンダーグラウンド感も良かったし、小バコのライブハウスならではの匂いも堪らない。出番前のヤユヨのリコがtoonice前のバス停で地元の女学生のように佇んでいるのも可愛らしかった。街とライブハウスとバンドマンが一体化している風景には心地好さしかない。
Blue Mash 撮影=Hoshina Ogawa
しかし、みんながみんな順風満帆に初出場ができるわけではない。新潟在住の終活クラブは『サヌキロック』初出場が叶わなかったものの、どうしても出たくて往復1,600キロかけて高松入りして、あくまで非公式イベントではあるが、『サヌキロック』終了後の夜21時過ぎからTOONICEでライブを組んだ。ところが出演辞退者が出た事で、2日前に繰り上げ当選では無いが、本編に夕方17時5分からTOONICEでの出演が決まった。また、大阪のラックライフは結成15周年の今年、遂に初出場を決めた。『サヌキロック』は色々な場所で色々なドラマが起きている。
自転車に乗って移動していた四星球 北島康雄 撮影=Hoshina Ogawa
次はどこに向かおうかと常磐町商店街を歩いていると、自転車に乗った康雄に出逢う。四星球の出番が終わり、明日の出番に向けて、ゆっくりしていてもいいものを自転車に乗ってまで色々なライブを観ようとする姿は、まさに誠実であった。これまた商店街に自然に溶け込んで馴染んでいる。井川さんには本当に急遽突然影アナで喋ってもらった事、マルナカの歌は四国の人みんなが歌える事も教えてくれる。2010年初年度から『サヌキロック』を知り尽くすミスターサヌキロックと別れて、また商店街を歩き出す。
D.W.ニコルズ 撮影=Hoshina Ogawa
到着したのはSUMUS café。ステージには2005年結成のD.W.ニコルズ。わたなべだいすけと鈴木健太がアコギとエレキで歌う。1曲目は「はるのうた」。ニコルズは春の歌が多いよなと思い出していたら、ふたりが話し出す。最初は4人組だったが、今は色々あってふたりであること、2010年の『サヌキロック』初年度に出場していたこと。当時は『road to MONSTER baSH』というサブタイトルも付けられていて、実際にニコルズも、その後『MONSTER baSH』に出場している。わたなべは「今回はオーバーエイジ枠!」と笑い飛ばしながら、2010年に出場して今年も出場しているのは自分らと四星球と明かす。
D.W.ニコルズ
「当時、俺ら以外で出てた人たちがどうなったかというと、売れたか辞めたか。俺らはどっちでもないけど戻ってきた!」
個人的に昔から知っているバンドであり、久しぶりに元気な顔をライブで観れたらなくらいの気持ちで向かっていただけに、この言葉はとにかく響いた。コロナ禍でライブが中々出来ない時期も長かったから、音楽を辞めないでやり続ける事の大変さはよくわかる。「フランスパンのうた」の<バランスが大切 人生は長いよ>という歌詞は、コミカルな曲調でありながらも沁みすぎて何故だか泣けてきた。この日festhalleのトリを務めるSHISHAMOが高校生の頃からニコルズが好きで、「春風」という曲を好きでいてくれた話や、まだ彼女たちが制服を着てライブをやっていた頃の話題にもなる。個人的にバンドマンシップの重要さを信じているだけに、ここからSHISHAMOのライブまでが初日のキーポイントになる気がした。
SHISHAMO 撮影=Hoshina Ogawa
すっかり夕方になり肌寒くなった夕方16時10分。FM香川ステージに、そのSHISHAMOが登場する。今年デビュー10周年を迎えた彼女たちは、今や『MONSTER baSH』やホールツアーでお馴染みだが、四国初ライブは2014年の『サヌキロック』でもあり、この10年の香川との密接な関係を振り返っていく。1時間前から並んでいた観客もおり、FM香川ステージとしては、この日一番の動員を記録した。『サヌキロック』の観客だけでなく、街行く普通の市民の方々も「あっ! SHISHAMO!」と足を止めていて、改めて全国区人気のバンドなんだなと感激する。
D.W.ニコルズ、浜端ヨウヘイ
大盛況で終わり、そこから徒歩2分のうどん屋、晴屋製麺所へと向かう。先程ライブを終えたばかりのニコルズが本日2本目のライブを行なっているからだ。SUMUS café出番を控えた浜端ヨウヘイも飛び入り参加して、先程話題に上がったばかりの「春風」を歌う。すると演奏中にも関わらず、わたなべが店内後方に向かって軽く手を振っている。曲終わり、「おー! SHISHAMO元気?!」とひとこと。そう、トークライブを終えたばかりのSHISHAMOが徒歩2分とはいえ、トリのライブ本番を控えているのに覗きに来たのだ。それも、SHISHAMOが高校時代に好きだった「春風」を歌っている時に到着するという思いがけない素敵なシーンに。わたなべは照れ隠しで「SHISHAMOと知り合いというのは本当だっただろ!?」と笑っていたが、その表情は本当に嬉しそうだったし、このバンドマンシップは美しかった。最後に「『MONSTER baSH』で逢いましょう!」と締めたが、諦めなかったら願いは必ず叶う。いつか『MONSTER baSH』で、ニコルズとSHISHAMOが同じ日に出演したら、それは本当に素晴らしすぎる。
四星球 モリス、古墳シスターズ 撮影=Hoshina Ogawa
時間は夕方17時。FM香川ステージでは、モリスと同じく高松市在住の古墳シスターズによる『ラジオお疲れ公開打ち上げ2023』も始まり、いよいよ初日終盤へ。
セックスマシーン!! 撮影=アミノン
セックスマシーン!!
オリーブホール18時半。すっかり外は真っ暗。朝から『サヌキロック』を隅々まで観て回っていたセックスマシーン!!がステージに立っていた。「始まってんぞ」と1曲目から歌うが、考えてみたら彼らの『サヌキロック』は朝から始まっていたわけで、この日に賭ける気迫を再度感じる。結成25周年でありながら、観客全員を出入り口扉へ向けて一緒に歌わせたりもする。その扉の向こうには今日来れなかった観客もいるから声を届けようという事なのだが、その向こう見ずな姿勢にはグッときてしまう。4月30日(日)にはPANとのスプリットツアーとして、瀬戸大橋記念公園マリンドームでライブを開催するというが、また『サヌキロック』の大きな会場でも彼らの雄姿を観てみたい。
Hump Back 撮影=アミノン
『サヌキロック』で一番大きな会場であるfesthalle。ラスト3連発のはちきれんばかりに集まった観客の多さは物凄かった。去年は人数規制があっただけに、より今年は観客の多さを体感できたし、超満杯のライブハウスが遂に戻ってきた感もあった。Hump Backはリハの段階から外には長蛇の列が出来ており、林萌々子(Vo.Gt)は「扉も開いているし、待ってくれてる人たち用のライブを!」と本番さながらにぶちかます。1曲目「拝啓、少年よ」から大盛り上がりで、MCで林は「サーキットイベントに気軽に呼べないバンドになって、何年ぶりか覚えてないけどDUKEが呼び戻してくれました!」と冗談交じりに話す。
ハルカミライ 撮影=Hoshina Ogawa
確かにラスト3連発Hump Back→ハルカミライ→SHISHAMOの流れは、近年サーキットイベントでは中々観る事ができない面子。ハルカミライもメンバー3人でリハをしている時から、Hump Back同様に大盛り上がりだが、赤髪のボーカル橋本学が上半身裸でライブをする爆発力はエグかった。今や日本武道館でもライブをするHump Backとハルカミライだが、主戦場はライブハウスであり、コロナ禍以前のライブハウスの日常を取り戻すライブだった。
SHISHAMO 撮影=Hoshina Ogawa
もはや大トリと言っても過言では無いだろうSHISHAMO。前2組の熱狂もあり、彼女たちを待ち望む観客の熱気は観ているだけで伝わりまくる。そんな中、3人は淡々と冷静に真剣にリハを行なっていく。野外フェスやホールワンマンと大きな会場でしか現在は基本出演していない彼女たちだけに、数百人規模のライブハウスで観られるのは貴重でしかない。今年1月に日本武道館、3月に大阪城ホールでライブをしたばかりの3人が今ライブハウスで音を鳴らしている。1曲目「恋する」からポップでキャッチ―でハッピーな空気が充分に届いた。続く「君と夏フェス」も爽やかな疾走感たっぷりのナンバーだが、いつも以上にしっかりと鋭い。これはライブハウスならではのプラスアルファなパワーなのかも知れないし、ステージと観客の近さも相まってか、ここでしか観られないライブだと噛みしめながら観る。トークライブでも話していたようにSHISHAMOと四国の始まりは『サヌキロック』と語り、「ちょっとは成長してか帰ってこれたのでは」と宮崎朝子(Vo.Gt)は話したが、ちょっとどころの話では無い成長の極みを見せつけてもらった。10月6日(金)には、松山市総合コミュニティセンターキャメリアホールでツアーライブを開催する事も発表された。ラストは「明日も」から「明日はない」という鉄板の畳みかけ。まだ20代とはいえ、デビュー10周年というキャリアだから成せる素晴らしきライブ。或る意味、横綱相撲だった……。興奮しきった観客たちは名残惜しそうにステージへ手を振っている。こうして初日は終わった。
SHISHAMO
2日目を控えた初日終了後の夜、四星球の康雄はオメでたい頭でなによりの赤飯(Vo)と近くのスタジオでトークライブを行ない、U太もセックスマシーン!!の日野、オメでたい頭でなによりのmao(Ba)、古墳シスターズ小幡隆志(Ba.Cho)と近くのバーでベーシストトークライブを行なっていた。また、MONSTERのケンタロック店長は、オメでたい頭でなにより赤飯らと近くのサウナで、音楽を爆音で浴びながら熱波も浴びて、その上、プロレスも観戦できるという謎のイベントを行なっている。出演者や会場スタッフたちが自発的にアフターパーティーを催すという事からも、どれだけ『サヌキロック』が愛されているかがわかった。ちなみにMONSTERでは冷え込む天候でもあった為、観客にうどんの温かい出汁が振舞われていたのも微笑ましかった。
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