井上京子特別インタビュー!ワールド女子プロレス・ディアナ4.29後楽園でウナギ・サヤカと大注目の一騎打ち!
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女子プロレス界のレジェンドのひとり、井上京子は今年がデビュー35周年。全日本女子プロレスから始まり、ネオ・レディース、NEOでトップを張り続け、2011年にはディアナを旗揚げ。現在もディアナの象徴であると同時に、ここ数年は若手の成長も著しくなってきた。
そして迎える4・29後楽園ホール大会で、京子はウナギ・サヤカとシングルマッチで対戦する。スターダムを飛び出し男女問わず様々な団体にケンカを売っているウナギだが、京子との一戦は彼女のキャリアにとっても大きな意味を持つ闘いとなることは間違いない。大注目のウナギ戦を前に京子はいまなにを考えているのか、話を聞いた。
――前回のディアナ後楽園ホールは昨年10月16日でした。4・29はそのとき以来の後楽園大会になります。後楽園は京子選手にとってデビューの地でもありますが、この会場にはどんな思いがありますか。
「ウチ(ディアナ)は年に2回の後楽園大会を開催しています。4月が旗揚げ周年興行の形でやっていて、10月10日が私のデビュー記念日なので、10月がデビュー記念。今年は10月8日、井上京子35周年としてやらせていただきます。デビューした場所ですからね、後楽園は一番思い入れがある場所ですね」
――やはり、デビューの地には特別な意味がありますか。
「もちろん。井上貴子選手とのデビュー戦のこともおぼえてます。そのときはもう緊張しかなくて、ただドロップキックして押さえ込むだけのような試合でしたね。その試合後、長与(千種)さんと(ライオネス)飛鳥さんに試合の反省を聞きにいった記憶がありますね。評価してもらえるような試合ではなかったんですけど、そのときに『頑張れよ』って言っていただきました。あとは、朝起きられないくらいに腰が痛いときがあって、その日の後楽園で豊田(真奈美)さんと60分ドローというのもありました。あと、一日で3連勝して優勝したジャパングランプリですね。自分にとって、その3つがとくに思い出深い後楽園での試合です」
――京子選手は、今年35周年ということですが。
「かつては女子プロレスラー25歳定年というのがあって、もうあと何年かしかプロレスできないんだなと思ってた中で、ブル中野さんが定年制を撤回してくれました。当時は、大好きなプロレスをこんなに長く続けられるとは思ってなかったし、いまでもこうやって続けさせてもらえるのはファンのみなさんに感謝しかないですよね。歳とってケガすることも多くなりましたけど、リングに上がり続けられることは幸せですよ」
――もし定年制が続いていたとしたら、まったく違う人生になっていたと思いますが。
「そう思うとねえ、どうなってましたかね(苦笑)。もう、感謝しかないですよ」
――4・29後楽園ホールではウナギ・サヤカ選手とシングルマッチです。非常に注目度の高いカードですが。
「ウナギ・サヤカってどんな選手なんだろうといろいろ想像したんですけどね、『さん付けしろよ!』とか、『ホントにコイツ礼儀知らねえな』『口の利き方知らねえな』という感じで、いまでもいい印象はホントにないんですよ。ないんですけど、正直悔しいですけども、いまの女子プロ界を一番盛り上げてるのってウナギ・サヤカ選手だと思うんです。それは私から見てもそうだし、ファンの方から見てもそうだと思いますよ。その選手とシングルでやるということで、自分もメッチャ楽しみにしていますね。口だけじゃなく、どのくらいできるだろうという興味もあるし、もちろん負けないです。負けないですけども、胸を貸すというのともまた違うんですよね。あの子がいままでやってきたことを自分で見てみたいなというか、身体で確かめたい、感じてみたいというのがあります」
――いろいろな団体を荒らしまくっているウナギ・サヤカを感じてみたいと。
「そうです、そうです」
――前回の後楽園では8人タッグマッチで初対戦。このとき、京子選手はウナギ選手と握手をかわしました。以来、シングルが決まってから前哨戦もありました。いい印象はないとのことですが、最初の印象から変わった部分はありますか。
「10月にゼロワンの熊本で対戦してますし、そのときはダブル井上で私たちのチームが勝ちました。そのときにけっこうガンガン来て自分をカチンとさせたんですよ。それでおもいっきりスリーパーで落としたんです。が、ああ見えて意外に力あったりするんですよね。私、持ち上げられたりしましたから。チャラチャラしてるだけじゃないんだなって。しっかり技もあるんだな、おもしろい選手だなという印象にもなりましたね」
――このカードが決まってからの反応はいかがですか。
「いろいろ言われますよ。『アイツ生意気だから潰してくれ』って。もちろん私のファンの人の声ですけど(笑)。『ホントに楽しみです』という声を多く聞きます」
――今年の女子プロ界でも、最重要カードのひとつではないかと思います。
「ファンの人からすると、私がどうするのか楽しみらしいですね。私が潰して終わるのか、付き合うのか。『井上京子どうすんの?』みたいな」
――異次元の遭遇で予想が難しい。逆に食われる可能性もありますが。
「そうなんですよねえ。そのとき私がどうなるのか」
――ところで、当日のメインはWWWD世界シングル王座戦、佐藤綾子選手に梅咲遥選手が挑みます。
「ここもまたおもしろいところですね。私的には、梅咲遥が勝たなきゃダメだなって思ってるんですよ。Sareeeが私からベルトを取ったときのように、勢いで取っちゃわないと。ベルトの重みとかはあとで知るでいいので。いまはとにかく勝って、ベルト取っちゃいなよって。そのあといろんな試合して、実力もついてきてベルトが似合う選手になっていけばいいんだから。だから、とりあえず取っちゃえって思います。じゃないと、いろいろ変わらないと思います」
――いまSareee選手の名前が出ました。Sareee選手がWWEから帰ってきて日本での活動を再開させようというところで、梅咲選手がディアナ最高峰のベルトに挑戦。そこに意味がありますね。
「そうなんですよね。これもまたおもしろいですよ。Sareeeがいなくなって、梅咲遥も頑張ってディアナを支えてきてる。ここでベルト取る流れになれば、おもしろい」
――Sareee選手がいた頃のディアナは、なかなか若手がいなかったじゃないですか。しかし、ここ数年でずいぶん若手が増えてきています。
「そうなんですよ!」
――言い方はおかしいですけど、どうして若手が増えてきたのですか。いままでほとんどいなかったのに…。
「(笑)。まあ、考え方を一応いろいろ変えたりとか。旗揚げ当初から掲げている『本物のプロレス』『本気のプロレス』みたいなものはずっと信念としてあるんですけど、時代に応じていろいろ変えていかないと人は残らないし、集まらないと思ったんです。その(古い)考え方についていけない人もいるだろうし、だったら自分がやりたいところに行けばいいことだし。それでいま残ってるのがこの人たち(所属選手)だと。これ、カッコ悪いかカッコいいかわからないんですけど、自分、こだわりがないのがこだわりなんですよ。いいなと思ったことはすぐ取り入れたいし、ある意味でチャラくて、ある意味で頑固というか。なので、昔と今とでは後輩に接する態度とか、まったく違うと思います。たとえばNEO時代の後輩に会うと、『京子さんにそんな言葉遣いするの?』『そんなにフレンドリーでいいの?』とか、後輩の私との接し方にビックリしますね(笑)」
――でも京子選手は、それでOKだと。
「私は全然OKだし、そうじゃないとホントに人は残らない。確かに、親くらい年齢が離れてるので、なかなか話しかけられないところもありますよ。それでも、なるべく距離を縮めたいといつも思ってはいます。それに、いますごくいっぱい練習生がいるんですよ」
――デビューを待つ練習生が何人もいる?
「ハイ。小学4年生、6年生、中3、高1、20歳代。5人くらいいますね」
――ここ数年で、ななみ選手、美蘭選手、Himiko選手らがデビューしましたが、今後さらに増えると。
「そうです。今年10月の後楽園に間に合えば、そこでデビューできそうな子もいます」
――旗揚げから数年のディアナでは考えられないくらいに若い選手が増えてますね。
「そうなんですよ。それに今年、寮を完備することになって、来月(5月)くらいにはできるので、遠くから通ってた練習生には住み込みでできることになります。それでまた幅が広がると思いますよ。地方の子も入ってこれますし、もっと集められると思います」
――若手がSareee選手のみという時代がウソのようです。そんなディアナは今年で旗揚げ12年を迎えました。京子選手は全女でデビューし、ネオ・レディース、NEO、そしてディアナで活動。ずっと現役として闘っています。
「NEOの時代もそうですけど、ディアナでもホントに辛い時期がありました。それでも全女10年、NEO10年、ディアナで12年やってます。気づいたらディアナが一番長く続いているんですよね」
――確かにそうですね。ディアナでのキャリアが一番長くなりました。
「こんなにお金の勘定ができない人がトップに立っちゃって、私も全然学習しないなっていう感じですけど(笑)。まあとりあえず、私はもうどこにも行くことなくディアナで引退するんだろうなって思います。もちろんそう決めてますし、いまはディアナでどんどん人を残していかないといけないなというのがありますね」
――35周年イヤーを迎えるにあたり、前回の後楽園で「残されたプロレスライフをぜひ応援しに来てください」とのアピールがありました。ちょっと意味深にも聞こえるのですが。
「いつやめるか決めて引退する選手って多いじゃないですか」
――ふつう、そうですね。
「いままで応援してくれたファンの人たちにそれを言ってあげた方がいいのか迷ってるんですよ。私だと、例えば試合中に、『これできなかったらプロレスラーじゃねえわ』『もう無理だわ』ってなったら、どこかの町の体育館であっても突然『やめます』って言うかもしれないし」
――町の体育館は極端かもしれませんけど、京子選手の場合、後楽園の試合後に突然マイクを握り、『今日で引退します』と言ってリングを下りても不思議ではない気がします。
「言いそうじゃない!? 私っていろんな突拍子もないことやってきたからね、言いそうなんですよ、それ(笑)。サプライズでやめるのが一番怖いってまわりからも言われてる(笑)。ディアナのフロントからも『それだけは絶対にやめてくださいね』って(笑)。ただ、私としては三角飛びができなくなったらやめようとか、自分でいろいろ決めてたことがありました。でもいまこうしてプロレス界に残らせてもらって試合をさせてもらって、正直、自分より強い選手にまだ出会ってないんですよ!」
――京子選手より強い選手と闘っていない?
「そう。シングルで闘ってホントにコテンパンにされて、『もうダメだ』『コイツ、私より強え』って選手が出てきたら、いつでもやめられるんですよ」
――そういう選手が出てきたら、リングを去るときだと。
「そう思ってる。でも、やっぱりまだ思えてないんですよ。実際には、コイツとのシングルだったらまだ勝てるなって思えてる自分がいるんです。そう思うとやめられなくてね。ここがなんかすごく気持ち悪いというか。『なに言ってんだ、このオバサン』って思われるかもしれないんですけどね(笑)」
――最後は誰かに介錯してほしいと思ってる?
「そうかもしれない。自分では全然そうは思ってないけど大御所として括られちゃう部分もある。でも私は、どこのチャンピオンでもシングルでやりたいと思ってるんですよ」
――そう考えると、4・29後楽園でのウナギ戦がさらに見逃せなくなりますね。ウナギ選手が京子選手の待っている『私より強い選手』となる可能性もあります。
「もしかしたら私のライバルになるかもしれないし、そうなんですよ。若い子と試合してすごいなと思ったら、年齢とか関係なくライバルだなと思えるし、またコイツとやってみたいと思えるし、やり残したことがあるとしたら、そういう選手に出逢うことだと思うんですよね。なので、お互いがシングルでやるとOKしたんだから、ウナギ・サヤカ選手にはババア相手に遠慮しないできてもらいたい。オマエがやる気ならこっちも100%でいくよって」
――その試合で京子選手が何を感じ、どう思うか。そこからまた新しい物語が始まるかもしれないですね。
「そうですね。それか、ドーンとやっつけて『オマエなんかまだまだだよ』『あとはメイン見てくれ』と言って終わるかもしれないし(笑)。どうなるか知らないよ(笑)」
(聞き手:新井宏)