手塚まみが『X Games』に凱旋!「自分のこだわりとスタイル、かっこいい所を生で見てほしい」
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(C)齊藤 僚子
『X Games Chiba 2023』が5月12日(金)にZOZO マリンスタジアムで開幕する。その、女子スケートボードパークに、日本勢から手塚まみが出場する。
昨年の『X Games Chiba 2022』では女子スケートボードパークで3位となり、見事メダルを獲得した手塚まみ。朗らかな笑顔で周囲を明るく照らし、華やかな雰囲気を纏う一方で、その語り口には落ち着きがあり、スケーターとしての現在地を冷静に見つめている。世界を相手に活躍する彼女の矜持が感じられるが、そんな彼女の見据える先とは?
『X Games』では記憶に残る滑りを見せたい
――『X Games』の開催が間近に迫ってきました。まずは大会への意気込みをお聞かせください。
手塚まみ:日本で2回目の開催になるので、去年の上を行く大会になればいいなと思っています。
――昨年は3位で表彰台に上がりましたが、この結果については、今はどう捉えていますか?
手塚まみ:やりたい技はできたんですけど、本領を発揮できたかというと、やっぱり納得がいかない部分があったので、今年は納得がいく滑りをみなさんに見せられたらなと思います。
――その納得がいかない部分というのは?
手塚まみ:練習のときに踵を痛めてしまって。それで思ったような滑りができなかったんです。100%の状態で滑りたかったという部分で悔いが残っていますね。
――『X Games』は練習時間が短いと聞いたんですが、調整の難しさはありましたか?
手塚まみ:そうですね。去年は合計で1~2時間しか練習できなかったので、パークに慣れるとか、ウォームアップという部分では時間が足りない気がしました。その状態で、自分のやりたい技でしっかり攻められるかというと、そこはやっぱり難しい部分ですね。
――事前にパークについての情報はお持ちだったと思いますが、やっぱり実際に滑ってみないとわからないことも多いのでしょうか?
手塚まみ:実際に滑ってみないと、どこで漕いだらいいのか、どこでスピードを出したらいいのかがつかめませんし、他の人と被らないライン取りもしたいので、練習時間が少ないというのは、大会に臨む上でのキーポイントになってきますね。
――『X Games』への調整というのは、他の大会とは違うものになってきますか?
手塚まみ:違うものというよりも、時間が少ないので、いろいろな環境にすぐに慣れる力が試されますよね。いつも通りの滑り、いつも以上の滑りを見せるには、パークをつかむ速さが重要だなとは思います。
――トップのスケーターは、そういう部分も優れているんですね?
手塚まみ:そうですね。トップのスケーターは、やっぱりパークに慣れるのは速いです。だから、難易度の高い技も外さないんですよね。そういうスケーターはすごいなと思います。
――現在のコンディションとしてはいかがですか?
手塚まみ:去年の『X Games』から1年間、いろいろなところへ旅をして、行ったことのない場所で撮影をしたりしてきたので、すぐに環境に慣れて対応できる力というのはパワーアップしたと思います。
――では、去年を上回るパフォーマンスが期待できそうですね。
手塚まみ:そうですね(笑)。まあ、期待してもらってもいいかな(笑)。
(C)齊藤 僚子
――去年の試合後のインタビューで、「かっこいい姿が見せられたと思う」という趣旨の発言もされていました。競技をする上で、心がけていることは“かっこよさ”という部分なのでしょうか?
手塚まみ:自分のこだわりとスタイル、そしてかっこ良さはスケートボードをする上で大事なものだと思っています。そこを生で見てもらえるというのは、大会の醍醐味だと思います。
――勝ち負けを超えて、そこをアピールできることが重要ということでしょうか?
手塚まみ:その場にいる人みんなが盛り上がることが大事だと思います。みんなを興奮させることができればいいなと思ってやっていますね。
――大会ではどうしても順位をつけられてしまいますが、自分のやりたいことと、順位を上げるために必要なことの折り合いをつけるのは難しいのではありませんか?
手塚まみ:折り合いをつけるのは難しいですけど、私の場合は、自分のやりたいことをやります(笑)。自分が楽しく滑れれば、その場にいる人にもきっと楽しんでもらえるでしょうし。スケードボードの楽しさ、素晴らしさを伝えたいので、勝敗よりも自分のやりたいこと、何を見せたいのかを優先します。
――勝敗はあくまでも後から付いてくるものなんですね。
手塚まみ:記憶に残ることが大事だと思っています。そして、その空間をみんなで楽しみたいですね。
(C)齊藤 僚子
『X Games』では練習している姿にも注目
――『X Games』の雰囲気というのは、他の大会とは違いますか?
手塚まみ:違いますね。特設の会場ですし、いろいろな国からいろいろなスポーツの選手が集まるので、やっぱり特別な大会です。
――本国での『X Games』にも出場されていますが、日本での『X Games』とは雰囲気は違うものなんでしょうか?
手塚まみ:私が出場したときは、コロナ禍で無観客だったんです。なので、観客が多くいた日本の大会の方が楽しかったです(笑)。昨年は初めて日本で『X Games』が開催されて、予想していた以上に反響もありましたし、盛り上がったと思います。今年も楽しみです。
(C)齊藤 僚子
――今年の『X Games』では、どんなところを見てほしいと思っていますか?
手塚まみ:今年は去年よりも海外のスケーターがたくさん出場すると思うので、試合以外の部分……練習している姿とかも見てほしいです。それぞれのキャラクターが見えるので、面白いと思います。
――練習を見ていると、そのスケーターがどんな滑りをしたいのかが見えてきますか?
手塚まみ:そう思いますね。あと、スケートボードという競技は、出場するスケーターはみんな友達というような意識が強いんです。仲間とスケートボードを楽しんでいる雰囲気が伝わると思うので、練習では競技というより、文化としてのスケートボードが見られますよ。
――スケートボードでは、スケーター同士が勝負をするライバルというよりも、同じスケートボードを愛する仲間という雰囲気がありますよね。常にお互いを称え合う姿が印象的です。
手塚まみ:もちろんライバルなんですけど、それ以前に友達なんですよ。誰かがすごい技を決めたら、自分も嬉しいんです。そうやってリスペクトすることで、お互いを高め合っていくのがスケートボードの素晴らしいところだと思っています。
――相手にすごい技を決められて、悔しいという気持ちにはならないですか?
手塚まみ:悔しいというのは、自分に対しての感情ですね。他のスケーターには、リスペクトの気持ちの方が大きいです。
(C)齊藤 僚子
――手塚さんのパフォーマンスについてはいかがですか? ここを見てほしいという部分はありますか?
手塚まみ:他の選手とは違ったライン取りとか、技の完成度……そのくらいかな(笑)。あとは何があるかな……。私は、海外の選手と近い関係だと思うので、まずはみんなでスケートボードを楽しんでいる姿を見てもらえたらと思います。
――こんなパフォーマンスをやろうというプランはありますか?
手塚まみ:いつもノープランなんですよ。大会会場の写真を見たりはするんですけど、先ほども話したように、滑ってみないとわからないんで。会場ごとにコースが全然違うので、その会場でしかできないこと、その会場だからこそできることをやりたいんです。それを見つけ出すのが、私の中での楽しいポイントでもありますね。
――事前にあまり対策は練らないんですね。でも、不安になったりはしませんか?
手塚まみ:特に『X Games』は練習時間が短いので、そういう部分では不安ですけど、会場に行けばやりたいことっていっぱい出てくるんですよ。それをうまいこと組み合わせて滑るようにしています。
――心のおもむくままにという感じなんですね。
手塚まみ:そうですね。自分の感覚を頼りに、手探りでっていう感じです。
――千葉での『X Games』は屋外の会場ですが、天候によってもやりたいことは変わってきたりしますか?
手塚まみ:そういえばそうですね。天候については、考えたことがなかったです。でも、気分によって変える部分もあるので、天候が変わることで気分も変わりますから、影響がないとは言えないのかも(笑)。
(C)齊藤 僚子
勝敗を超えてスケートボードの魅力を伝えたい
――そもそも、スケートボードを始めたきっかけというのは?
手塚まみ:お父さんがやっていたので、常にスケートボードが家にあったんです。お父さんはあいた時間があれば乗るくらいだったんですけど、私が5歳の頃に、家族みんなで始めようということになったんですよ。
――スケートボードのどんなところに惹かれました?
手塚まみ:パークで滑っているスケーターが、すごくかっこ良く見えたんです。私もあんなふうになりたいなと思いました。そこが一番惹かれた部分だと思いますね。
――5歳で始めて、スケーターのかっこ良さに憧れてのめり込んでいったんですね。現在はいかがですか? どんなところに魅力を感じていますか?
手塚まみ:子どもの頃は1週間に1回か、2週間に1回、家族で滑るだけだったので、ここまで自分の人生に深く関わるものになるとは思っていませんでした。でも昔よりも今の方がスケートボードが好きです。どんどん好きになっていますね。今一番楽しいなと思う瞬間は、スケートボードで世界のいろいろな場所を旅しているときですね。一緒に旅をする友達も出来ましたし、スケートボードがいろいろな場所に連れていってくれて、いろいろな経験を持ってきてくれるんです。スケートボードをしていなかったら、見ることができなかった世界がたくさんあると思います。スケートボードで世界とつながれていますし、そうやって出来た友達はすごく大切です。スケートボードにすごく感謝していますね。
――愚問かもしれませんが、これまで嫌になってしまうことはありませんでしたか?
手塚まみ:スケートボードだけをしているわけではないので、他のことに熱中していることもあるんですけど、結局、スケートボードに戻ってくるんです。スケートボードが嫌いになったことは一度もないです。ケガをしたときでも、やっぱりスケートボードをやりたいなと思うんですよね……なんででしょうね(笑)。
――ピアノを演奏されたり、多くの趣味をお持ちだと聞きましたが、それでもやっぱりスケートボードに惹かれてしまうんですね?
手塚まみ:スケートボードが最優先ですね。スケートボードに乗る時間がないとか、状況的に1週間は乗れないなんてことになったら、たぶん病んでしまいます。
(C)齊藤 僚子
――では、手塚さんにとって、『X Games』はどういうものですか?
手塚まみ:小さい頃から見ていた大会で、敷居も高い大会なので、出場できるというのはすごく光栄です。また、今回は日本での開催なので、より思い入れもありますね。
――当面の目標は『X Games』で素晴らしいパフォーマンスを披露することだとは思いますが、手塚さんの将来的な目標はなんでしょうか? こんな選手になりたいといった将来像や、競技をもっと普及させたいなど、思い描いている未来像があれば教えてください。
手塚まみ:もっといろいろな世界を見たいです。そして、スケートボードの仲間を増やしたいです。そんなスケーターの仲間から、かっこ良いなと思われる存在になりたいですね。
――目標とされる存在になりたいということですか?
手塚まみ:目標とされるというよりは、もっとシンプルにかっこ良いと思ってもらいたいというか……スケーターとして尊敬される存在になれればいいですね。
――『X Games』で優勝したいとか、競技に関して目指すものはありますか?
手塚まみ:もちろん、勝敗も大事だと思いますし、優勝できれば嬉しいですけど、それだけを目標にはしていないですね。勝敗以上に大事なものがいっぱいありますし、もっともっとスケートボードの魅力を多くの人に広めていく……それが一番やりたいことですね。最初に話したように、大会でその場にいる人みんなの記憶に残ることができれば、勝敗を超えてスケートボードの魅力を伝えることができるんじゃないかなと思っています。
(C)齊藤 僚子
イベント情報
『X Games Chiba 2023』
日時:5月12日(金)予選日
5月13日(土)開場 11:00/閉場 21:00 ※予定
5月14日(日)開場 10:00/閉場 17:00 ※予定
場所:ZOZO マリンスタジアム(千葉県)