「自分には音楽しかない」変態紳士クラブ・VIGORMANが直接リスナーに想いを伝えた約30分間のライブをレポート

2023.5.25
レポート
音楽

VIGORMAN

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VIGORMAN
2023.5.19 東京・Spotify O-EAST

5月19日に東京・Spotify O-EAST、24日に大阪・なんばHatchで開催される予定だったワンマンライブ『LIVE JUNKIE“ライブジャンキー”』は、VIGORMANが大麻取締法違反容疑で4月に逮捕されたことにより延期。しかしの購入者に全額返金、を持っていない人の抽選を行った上で、「リスナーの皆様に直接お伝えしたいこと」を表する無料の場を2公演の同日同会場で設ける旨が、5月12日に発表された。「口頭と歌唱をもって皆様と向き合いたい」「所要時間は30分ほど」「演出や特別な機材はなく、“ワンマンライブ”とは性質が異なる」という旨も事前告知して行われた5月19日・東京・Spotify O-EASTの模様をレポートする。

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スタート時間となり、簡素なライティングで照らされたステージ。センターに置かれたスタンドマイクへと歩いて行ったVIGORMANを「おかえり!」という声が出迎える。深々とお辞儀をした彼が最初に歌ったのは「ろくでなしの唄」。マイクを両掌でしっかりと掴み、一心に響かせていた歌声を受け止めた観客。そして歌い終えた後に彼から届けられた言葉は、次のようなものだった。「いつも自分を支えてくれるみなさん、曲を聴いてくれてるみなさん、今日を楽しみにして予定を空けてくれてたみなさんに心配をかけたことに対して、自分の口から謝らせてください。心配かけてすみませんでした。今日までSNSで何も発言しなかった理由は、みなさんの目の前に立って自分の口から出る言葉で胸の内を語りたかったからです。(事件に関しては全部自分のものであったのは事実で、これまでの歌詞でも歌ってきたように)自分の生活の中に大麻があったのは事実です。ただ、一部の報道にあった営利目的で所持していたということに関しては、事実ではないということをみなさんの目の前で断言させていただきます」。

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「こんな自分が、みなさんにお返しできることは何かないか?と考えた結果、やっぱりどれだけ考えても自分には音楽しかないので。音楽家の端くれとしてSNSで胸の内を語るのはどうしても性に合わないので、今の自分の心境をそのまま歌詞にした新曲を持ってきました」と語ってから歌った「音返し」は、“音楽でしかお返しできない”という想いをまさしく伝えてくれる曲だった。《初めて自分の書いた歌詞に救われたこと想い出してる 「失敗すらいつかDigest」だよな?》――変態紳士クラブの「YOKAZE」の歌詞を引用した一節が、印象深かった部分として思い出される。過去は覆しようがないが、反省を未来へと繋げていくことを誓う気持ちが刻まれているのを感じた。

「賛否両論は覚悟の上です。もう人前で歌うのか?とか、いろいろな世間のみなさんの声はあると思いますが、何度考えても自分はワンマンライブを楽しみにしてくれていた方々や応援してくれているみなさんに寄り添うのが自分の最大の使命であり、全うするべき使命であり、自分のやりたいことであるという結論です」というMCを経てさらに届けられたのは、最新アルバム『FULL COURSE』の収録曲「Wonder Land」。続いて、彼が15歳の頃に書いた「大人が言う」を歌ったのは、初心に立ち還る決意の表れだったのだろう。そしてラストの曲のイントロが始まった瞬間、観客の間から歓声が上がった。歌い始めたのは「YOKAZE」。突然ステージに現れたWILYWNKAとGeGがVIGORMANとハグを交わし、“feat. 変態紳士クラブ”という形で披露されたこの曲に、観客の歌声も加わっていった。素敵な人たちに支えられているのをまざまざと実感したのは、VIGORMANの反省と今後の行動に繋がる大きな力となるのではないだろうか。

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「頂いた激励の言葉を無駄にすることなく、全てを音楽に昇華してまたみなさんのもとに届けることを約束します。今日は来ていただき、ありがとうございました!」。集まった観客に改めて感謝し、ステージを後にしたVIGORMAN。事前に予告されていた通り30分ほどのライブだったが、今の彼が伝えたい想いは受け止めることができた。

終演後、バックステージでGeGに会った。「あいつが勾留中に思ってたことを曲にしたんです。5月26日にインディーズで配信するんですけど、ライブの準備をしてくれてたバンドのみんな、関わってくれたスタッフ、今日のために力を貸してくれた人たちに印税は全部分配するって言ってました」と、彼が新曲「音返し」について付け加えてくれたことを、この記事を読んでいる方々にはお伝えしておきたい。VIGORMANの犯した罪は非難されて当然であり、法の裁きを受けることにもなる。しかし今できる限りの行動で償おうとしているのは、今回のステージから伝わってきた。観客に表明した気持ちに偽りがないことを、今後の活動によって証明していって欲しい。

取材・文=田中 大

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