野澤祐樹(ジャニーズ Jr.)ら23名のキャストが本番中に2つの劇場を行き来しながらひとつのストーリーを描く 『ダブルブッキング!』-2023-が開幕
『ダブルブッキング!』-2023- 囲み会見より
紀伊國屋ホールと新宿シアタートップスの2劇場で起きる出来事を、実際に2劇場使って上演する『ダブルブッキング!』-2023-が、2023年7月13日(木)にて開幕した。
本作は、紀伊國屋ホールで公演を行う「天空旅団」と新宿シアタートップスで上演する演劇ユニット「デニスホッパーズ」、それぞれの初日の幕が開く2時間前という設定で、23名のキャストが本番中に劇場を行き来しながらひとつのストーリーを描き出すという前代未聞の公演。
初日に先駆けて、野澤祐樹、久保田秀敏、佐伯亮、水谷あつしによる囲み会見とゲネプロが行われた。
2つの劇場を行き来しながら進むストーリーということで、稽古場も2つ借りて移動しながら稽古を行ったという。佐伯は「本番を想定して稽古をしました。稽古期間が3週間程度しかなくてすごく大変な作業でしたが、仲が良くていい雰囲気のカンパニーです」と語り、野澤も「短い稽古期間でも皆さんとの距離をすぐに縮められた現場でした」とカンパニーの空気感の良さをアピールした。
久保田は「稽古期間が短くて、台本とも時間とも同時に向き合う必要がある。2作品同時上演でしかも行き来するので、頭の中でタイムを図りつつ色々考えながら作りました」と語り、水谷は「とにかく暑い中で稽古をしました。でも大変なのにみんな笑顔なのが素敵だったし、初日から台本を置いて挑んでいる姿が美しかった。初演から僕が最年長だけど、今の人はみんなしっかりしてますよね。安心してみんなのお芝居を見ながら昔を思い出し、俺も楽しんでいいやって気持ちになれました」と太鼓判を押す。
また、移動時間を緻密に計算して稽古を重ねてきたが、劇場を実際に行き来するのはゲネプロが初だと明かし、「稽古を信じてやるだけ。間に合うのを信じて、来なかったら繋いでもらって」と、カンパニーのチームワークで挑むと語る野澤・佐伯・久保田。初演から本作に出演している水谷は「芝居中に外の景色を見たり空気を吸ったりすることって中々ない。だから劇場を行き来する時に1回頭が真っ白になるんですよ。階段を上がりながらまた役を作って飛び出すみたいな。変な感情が生まれたりするから気をつけて」とアドバイスを送った。この暑さの中、階段で行き来することもあって、劇場ロビーには給水所も。4人は「この作品はスポーツです!」と真剣に語った。
さらに、野澤演じる柏木幸太郎の幼馴染役の竹尾一真が囲み取材に紛れ込み、「それぞれのバージョンを果物に例えると?」と質問を投げかける。佐伯が答えようと頭を捻るが回答が出ず、「楽屋でお願いします」と流されてしまう。
最後に野澤が「いろいろな舞台がありますが、ちょっとイレギュラーな作品です。役者23人が本当に命を削って挑む作品なので、皆様応援のほどよろしくお願いします。必ず最後まで走り切りたいと思います」と締め括った。
オフィシャルレポート
“キャストが2つの劇場を行き来してひとつのストーリーを作り上げる”
演劇好きならワクワクすること間違いなしだが、同時に「どっちから見たらいいの?」「片方だけ見ても分かるの?」といった疑問も湧いてくるだろう。だが、いざ芝居が始まってみると、そんな疑問や不安はすぐに吹き飛んでしまう。片方だけでもストーリーは把握でき、どちらから見ても大丈夫な作りになっているのでご安心を。
とはいえ、両方の公演を見るとより詳しい人間関係や背景を知ることができるのは確かだ。また、キャラクターによってそれぞれの劇場に出演する割合が違うのだが、全員キャラが濃いため、「この人はもう片方 の劇場でどんなことをしているんだろう?」と気になってしまう。両方見たくなること請け合いだ。
元々ステージと客席の距離が近いが、通路での芝居が多いこともあってより間近でキャスト陣の熱演を見られるのも大きな魅力。開場前の劇場にこっそり忍び込んで、カンパニーの裏事情を覗き見ているような気分になる。
今回、公開されたのは紀伊国屋ホール ver.のゲネプロ。物語は「天空旅団」の公演のゲネプロのラストシーンからスタートする。傾奇者、中世の貴族やナースに医者と統一感が全くないビジュアルの役者たちと、千秋楽かと思うほど枯れた声。アングラな雰囲気に度肝を抜かれつつ、泥臭さとクセの強さにワクワクする。古株と新人たちの温度差を感じる中で目を引くのが、この一連の物語を巻き起こす張本人・星川 光(柏木幸太郎)だ。野澤は身勝手だが才能と勢いのある柏木を実に魅力的に演じている。
天空旅団で主演を務める武田役の佐伯は、芝居に対する悩みやドロドロした人間関係を情けなくも可愛らしく表現。久保田が演じるのは、元天空旅団の劇団員で現在はドラマや映画に引っ張りだこの藤崎。どこか冷めたような雰囲気だった彼の変化に惹きつけられる。天空旅団の座長代理・チャーリー若松役の水谷は、古臭さとベテランの矜持を絶妙なバランスで魅せ、貫禄を漂わせている。
その他のキャストたちも個性豊かな役者や関係者をイキイキと演じ、見応えたっぷりな芝居を作り上げている。2つのカンパニーの役者たちはバチバチしている一方、彼らを支える裏方スタッフたちは振り回されながらも「仕方ないなあ」という雰囲気。なかなか表舞台には出てこない彼らの物語にもグッとくる。
本来ならば起こることのないダブルブッキングによって次々にトラブルが起き、キャストたちは何度も劇場 間を往復する。その中で本来は起こるはずがなかったちょっとした奇跡が起きていく本作。決して美しいものや演劇の素晴らしさだけが描かれているわけではなく、いろいろなことが赤裸々に語られる。だが、がむしゃらな姿に、「演劇っていいな」と再確認させられる。
果たして柏木(星川)の目論見は成功し、2つの公演は無事に幕が開くのか。ドタバタではちゃめちゃで、演劇に対する熱がたっぷり詰まった物語と役者たちの熱演を観に、紀伊国屋ホールと新宿シアタートップスに足を運んでほしい。
本作は7月13日(木)より23日(日)まで、紀伊国屋ホールと新宿シアタートップスで上演される。
演劇ユニット「デニスホッパーズ」新宿シアタートップス
ある日、ネットに「天空旅団」の星川光という役者が演劇ユニット「デニスホッパーズ」の主宰・柏木幸太郎だという書き込みがされる。それにより、両公演へのダブルブッキングが発覚。当然、デニスホッパーズの役者たちは怒って帰ってしまう。セットがバラされてがらんとした舞台上で、柏木は「公演はやる!」と宣言。天空旅団の新人女優・柴と花屋の安藤を連れて帰ってくる。天空旅団の上谷は柴を追って来て、さら にベテランたちが乗り込んできて柏木を非難し始める。そこに柏木とともにユニットを立ち上げ、公私共に 支えてきて、スタッフやキャストからの信頼も厚い主演女優・豊原が現れて「天空旅団の公演を降りるなら役者たちを連れ戻す」と条件を出す——。
劇団「天空旅団」紀伊國屋ホール
結成22年を迎える老舗劇団「天空旅団」。主宰の雨宮が他界して3年、動員数が伸び悩んでおり、雨宮を慕っていた看板俳優も劇団を去った。最後の追悼公演で、一人の若者がオーディションに合格する。だが、その新人・星川光は演劇ユニット「デニスホッパーズ」主宰の柏木幸太郎だった。星川(柏木)がダブルブッキングを承知で公演に参加していると知ったデニスホッパーズの役者たちはゲネプロをボイコット。
天空旅団の俳優たちは「芝居をナメるな!」と激怒する。しかし柏木は、憧れの紀伊國屋ホールに立ち、どちらの公演も成功させたいと強気な態度を崩さず——。
公演情報
日程:2023年7月13日(木)~7月23日(日)
会場:新宿シアタートップス
会場:紀伊國屋ホール
※2劇場同時上演
野澤祐樹(ジャニーズ Jr.) / 佐伯亮 中山義紘 芹沢尚哉 堀田怜央 /
里内伽奈 関根優那 糸原舞 高橋紗良 /
チャン・ユジュン 渡部将之 竹尾一真 菊池泰生/水谷あつし/
山岡三四郎 海老澤英紀 小林祐真 小林和也/
竹本かすみ 堀江あや子 磯崎美穂 美波花音/久保田秀敏
シアタートップス 8,000円
紀伊國屋ホール S席7,000円 A席5,500円
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