ACIDMAN『RUSH BALL 2023』ライブレポートーー優々たるロックサウンドが泉大津の空を彩る
ACIDMAN 撮影=河上良
『RUSH BALL 2023』ACIDMAN
オープニングSEであるインスト曲「最後の国」が鳴り、盛大なクラップが沸き起こるなかをゆっくりとステージインするメンバーたち。この日1曲目に選んだのは、21年前にメジャー1stシングルとして発表された「造花が笑う」。浦山一悟(Dr)のビートがぐっと空気を引き締めると、佐藤雅俊(Ba)の打ち出すグルーヴがいつも以上にくっきりとした輪郭を見せる。大木伸夫(Vo.Gt)はまっすぐと前を見据えて、言葉を紡いでいく。先出の9mm Parabellum Bulletに続き、ACIDMANも2004年の初出演以降、『RUSH BALL』を盛り上げてきたバンドのひとつ。観客はみな、ここから始まる美しい世界の音を知り尽くしていることもあって、3人が打ち出す音に俊敏に反応していく。たった1曲で、この日のステージへの期待値はものすごく大きくなっているのを感じる。
ACIDMAN
「盛り上がっていくぞ!」、大木の叫びで「アイソトープ」へ。ギターのカッティング、佐藤がアジテートしていくリズム。オーディエンスの感情を高みへ連れていくというより、3人の音で広い宇宙の中に一本の道を開き、そこに導くような……。何ともいえない高揚感と安心感で心が満ちていく。次曲「夜のために」も、じわじわと熱を孕んでいく感覚が心地よくてたまらない。ロックバンドのライブで「爆ぜる」ものはサウンドや感情、色々な形があるけれど、彼らの音は星の瞬きに似た爆ぜ方をしている。心情をしっかりとつかむと、3ピースバンドのシンプルで美しいロックサウンドが日が沈みだした高い空の下を翔けていく。
「このフェスが大好きで。デビューした頃から出演したいと言い続けて出させてもらった思い出がある。そこから色々な思い出を刻ませてもらった」と、イベントへの想いを語る大木。『RUSH BALL』だからこそワガママがいえる、夏フェスにふさわしくない曲をと披露したのは「風追い人(前編)」。今年3月に逝去した坂本龍一がピアノで参加したインストゥルメンタル曲。時折涼しげな風が吹くなか、煌々と光る照明を背に美しい音世界で観客を心酔させる。
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「どんなステージに立っても、栄光やお金があってもいつか人は死ぬ。ボロボロになっても最後まで生き抜くことが美しい。そう思えるよう、これからも歌っていきたい」と、バンドに掛ける想いを語り、「ALMA」へ。爪弾くギターの音色は美しく、ベースのリズムが鼓動を打ち、ビートが歩みに代わる。生きる生命力を音楽に代えるべく3人は渾身の音を鳴らす。
ラストは「もう一個上へいきましょう! 声出していくぞ!」と「ある証明」へ。イントロだけでもう観客は大盛り上がりで、声を上げ、拳を突き上げ、メンバー3人が打ち出す音に最後まで共鳴し合う姿が印象的だった。
取材・文=黒田奈保子 撮影=河上良
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