台湾にアレキ、クリーピー、バニラズ、サウシーが豪華集結ーー音楽で25周年の想いを繋ぐ『RUSH BALL in 台湾』現地レポート
『RUSH BALL in 台湾 on the ROAD ~RUSH BALL 25years Goes On!~』2024.12.14(THU)Zepp New Taipei
今年25周年を迎えた野外ロックイベント『RUSH BALL』が5年ぶりに台湾で開催された。今年は「on the ROAD」と題して、2023年12月13日(水)〜15日(金)の3日間に渡り、台中・台北のライブハウスで熱狂的なステージが繰り広げられた。今回SPICEでは、[Alexandros]、Creepy Nuts、go!go!vanillas、Saucy Dogの4組が出演した14日(木)Zepp New Taipeiの当日の模様をレポートする。
台中・Legacy Taichung 傳 音樂展演空間 写真=撮影STAFF
ちなみに、せっかくの台湾公演だからと、仕事や学校を休んで旅行を兼ねて訪れた人も多いようで、SNSでは周辺の台湾グルメや観光地を巡っている人も見かけた。台湾の町の雰囲気については、5年前の『RUSH BALL in 台湾』の記事をぜひ参照してみてほしい(5年経っても、変わらない昔ながらの町の魅力が今も台湾には残っている)。
ライブ前に成功を祈るご祈祷の様子(Legacy Taichung 傳 音樂展演空間) 写真=撮影STAFF
日本と異なる文化を感じたのは、開演前のバックヤードでの風習。台湾では、出演者やスタッフと公演の成功を祈ってご祈祷をする文化があるのだそう。リハーサル終わりのアーティストやスタッフの面々が集まっては、お線香を持って祈りを捧げることで、イベントを成功させようとより一丸となって取り組むことができた。
Zepp New Taipei のエントランス 写真=STAFF撮影
今回レポートする2日目、14日(木)の会場は、日本でも馴染みのある「Zepp」だ。商業施設・宏匯廣場HONHUI PLAZAの8階にあり、会場内のモニターには出演アーティストや『RUSH BALL』の開催地である大阪・泉大津市長からのメッセージコメントが放映されていた。
「フテネコ」でお馴染みの芦沢ムネト氏によるライブペイント(Zepp New Taipei) 写真=撮影STAFF
また、会場内では『RUSH BALL』とも馴染み深い「フテネコ」でお馴染みの芦沢ムネトによるライブペイントのほか、入場待機中に本公演のロゴ・グッズなどを担当したハンサム デザインのステッカーをみんなで貼り付ける参加型インスタレーション企画など、待ち時間も楽しめる企画も賑わいをみせていた。
『RUSH BALL in 台湾』ロゴを担当したハンサム デザインの企画(Zepp New Taipei) 写真=撮影STAFF
さて、台中のLegacy Taichung 傳 音樂展演空間では、オーディエンスとも距離が近いライブハウスならではのぶつかり合うようなライブを繰り広げた4組だが、Zepp New Taipeiではより音を、想いをしっかりと届けるようなステージングだった。2日間で、それぞれのライブの違いを見比べることができるのもまた貴重な機会だったのではないだろうか。とにかくリアクションも歓声も特大の台湾のオーディエンスと作り上げたライブの模様を、たっぷりの写真と共に紹介!
多くの人が記念撮影をしていた出演者サイン入りフラッグ 写真=撮影STAFF
Creepy Nuts
ボルテージの高まりきったZepp New Taipeiに、トップバッターのCreepy Nutsが登場。割れるような声援と拍手に迎えられ、台湾華語で挨拶。「よふかしのうた」で2日目の『RUSH BALL in 台湾』の幕は開けた。R-指定のリリックを捉えて呼応するように声を挙げ、DJ松永の超絶スクラッチにゴンフィンガーを突き上げるオーディエンスたち。そのまま「堕天」「2way nice guy」と畳みかけられ、Creepy Nutsがアゲればアゲていくほど天井知らずに熱を帯びていく。その様に、いかにこの日、この瞬間をみんなが待ちわびていたのかが伝わってきた。
台湾華語での自己紹介から、「日本語が伝わると聞いて……」といつも通り日本語でのMCを始めたR-指定。日本語MCでもしっかりと笑いをとりつつ、「今回の『RUSH BALL in 台湾』が初めての海外ライブです。俺たちが日本からきたどんな奴らか知って欲しい……俺が、日本で一番ラップが上手い男です。そして、奴(松永)が世界で一番DJが上手い男です!」と胸を張り、「そんな俺たちのラップとDJのスキルをたんまりとお届けするので、自由に楽しんでください!」と「耳無し芳一Style」から松永のルーティーンを披露。日本語にこだわり、それぞれのスキルをこれでもかと詰め込んだステージングの凄まじさは鳥肌もの。
追い討ちをかけるように、新曲「ビリケン」で高次元なラップと中毒性の高いトラックを受けて揺れるフロア。「合法的トビ方ノススメ」でさらに会場を踊らせ、あまりの盛り上がりに、思わずふたりは「めちゃくちゃ気持ちいい!」と笑顔を見せる。初めての台湾だが、何度も来たことのあるホームのように感じると胸いっぱいの想いを伝えて、ラストは「のびしろ」で完璧なまでにコール&レスポンスも決まった痛快なステージだった。
Saucy Dog
2番手はSaucy Dog。石原慎也(Vo.Gt)、秋澤和貴(Ba)、せとゆいか(Dr.Cho)が円陣を組んで気合いを入れる。石原のギターから始まり、イントロで大歓声が巻き起こった「シンデレラボーイ」でライブはスタート。そのまま「優しさに溢れた世界で」が届けられると自然とクラップが鳴り、早くもシンガロングが巻き起こって、会場はみるみる温もりに溢れた一体感で包み込まれた。
MCに入ると、メンバーの名前や思い思いの言葉があちらこちらから飛び交う。Saucy Dogにとっても今回が初めての海外公演。せとは「最高です!」と喜びいっぱいの表情のまま、「日本で流行ってる言葉を教えます……リピートアフターミー……「ゆいかちゃん可愛い!」」と切り出すと、それに応えて会場から黄色い声が飛ぶ。満足げなせとに、ツッコむ石原。なんともほっこりする展開から、今度は秋澤のベースから「雷に打たれて」へ。石原と秋澤はステージの最前に身を乗り出して、オーディエンスと会話するように、歌い、プレイする。そのまま石原が「ここにいる、あなたに。ひとりひとりに向けて」と伝え、「現在を生きるのだ。」へ。背中を押してくれる楽曲の力強さと優しさを、全身で受け止めるオーディエンスたち。
今度のMCでは、石原が台湾華語を駆使してMC。あまりに流暢に話せていて驚いた。めちゃくちゃ盛り上がっているし、めちゃくちゃウケていた。石原は移動中もバックヤードでも通訳さんを捕まえては、熱心に勉強していたというからその努力の賜物だろう。初めての台湾、海外公演だからこそ楽しい時間にしたくて、という想いがひしひしと伝わってくる。そんな彼らの誠実な姿勢が、ステージに懸ける想いの強さが、より胸を打ったラストは「いつか」。また台湾に来たい、いつかワンマンライブをしたいという思いの丈を語り、歌われたこの約束の歌がまた台湾で聴きたいと、そう心底思わせてくれる余韻で満ちていた。
go!go!vanillas
登場するやいなや勢いよく登場したメンバーが、最前のオーディエンスにハイタッチ。終始、ぶっ続けでアグレッシブにロックンロールをぶつけたのは、go!go!vanillas。「青いの。」から牧 達弥(Vo.Gt)がハンドマイクで縦横無尽にステージをめいっぱい使って歌うと、その姿を追いかけ手を挙げて応えるオーディエンスたち。そのまま「サイシンサイコウ」へとなだれ込むと、フロアの熱気はみるみる上昇。音に身を任せて、自由に楽しむオーディエンスたち。心地良さそうに揺れては弾むフロア。「平成ペイン」と続き、カラフルでご機嫌なロックンロールが連発されると前半からこれでもかというほどの盛り上がりをみせる。
5年前の『RUSH BALL in 台湾』にも出演していたバニラズ。メンバーそれぞれ台湾華語で自己紹介をして(ジェットセイヤ(Dr)のみ日本語でシャウト!)「5年ぶりに帰ってきたぞー!」と再来と再会の喜びいっぱいのまま「エマ」へ。長谷川プリティ敬祐(Ba)の振り付けに合わせて、「E・M・A」のジェスチャー&コールアンドレスポンスも成功。柳沢進太郎(Gt)のギターがソリッドに鳴り響き、セイヤも立ち上がってはスティックを放り投げたりと爆発するような演奏をみせる。
MCはほとんど挟まず、楽曲でとびきりの想いを伝え、気持ちをひとつにするようなストロングスタイルで、これでもかと持ち時間いっぱいに音を鳴らしたバニラズ。「カウンターアクション」からラスト「コンビニエンスラブ」に至るまで、揺れっぱなしのフロア。こんなにも楽しい時間が続いていいのかと思うほど、30分という短い時間ながらに聴きごたえとハイライトばかりのステージング。飛び跳ねては踊るオーディエンスたちの表情がキラキラしていて印象的だった。
[Alexandros]
トリを飾ったのは、[Alexandros]。川上洋平(Vo.Gt)、磯部寛之(Ba.Cho)、白井眞輝(Gt)、リアド偉武(Dr)に加えて、サポートギターとキーボードを迎えた6人編成で登場。楽曲に合わせて立ち替わり入れ替わりで編成を変え、30分のステージながら楽曲の奥行きがじっくりと堪能できるようなセットに。1曲目「Dracula La」から凄まじい気迫とフロアの興奮が混ざり合った異様な空気となり、「Baby’s Alright」、「make some noise!」と川上のシャウトから鳴らされた「無心拍数」と続き、圧巻のステージングでオーディエンスを釘付けに。
MCは、川上が全て英語で想いを伝える。台湾のオーディエンスは、日本語だけでなく英語も堪能なため、川上の言葉を一言、一言しっかりと受け止めては歓声やクラップで応えていた。川上は4年ぶりの台湾公演であることの喜びを伝えつつ、「ここは職場でも学校でもないライブ会場だぞ。俺はみんなの上司でも先生でもないから。「I'm your KING」!」と言い放ち、「叫んでくれ!」と煽ってからの「Starrrrrrr」の歓声の大きさ、そこからさらに強固に繋がったフロアの一体感たるや。
再びMCでは、イヤモニを外してコロナが明けたからこそ聞けるようになったオーディエンスの声を聞きたいと投げかけ、川上の弾き語りから「Adventure」では特大のシンガロングが巻き起こり、エモーショナルな光景が広がった場面も。そして『RUSH BALL』と主催・GREENSに賛辞を送り、この一夜だけで決して終わらせることなくまた一緒に音楽ができるように、来年もまた台湾に訪れると宣言。そして「ワタリドリ」ではオーディエンスが飛び跳ねて、拳が突き上がる大熱狂に。名残惜しさを拭って、未来へと想いを繋げるようにしてラストは「閃光」で大団円を迎えた。
暗転してもフロアにはアレキはもちろんそれぞれ想い想いのタオルが掲げられ、拍手喝采と「ワンモア!」の声がしばらく鳴り止むことはなかった……。
こうして、4組による2日間の『RUSH BALL in 台湾 on the ROAD ~RUSH BALL 25years Goes On!~』は幕を閉じた。今回、この2日間のライブを通して、音楽は年齢や国籍、言葉を超えて想いをひとつにすることができるということを、集まったひとりひとりの表情、歓声の大きさ、そして会場の熱気が証明していたと思う。
それから、転換中に台湾のファンと日本から来たファンが、お酒を飲み交わしながら好きなアーティストの話で盛り上がったり、感想を語りあっている場面を見かけた。5年前の『RUSH BALL in 台湾』に遊びに来ていた人たちもいて、あの時と同じように「台湾で会えて嬉しい」「台湾に来てくれてありがとう」と話していたことが印象的だった。今回の『RUSH BALL』も、音楽を通して台湾と日本を繋ぐキッカケになったに違いない。だからこそ今度は、夏の泉大津で「日本に来てくれてありがとう」と伝えたい。台湾と日本のみんなが肩を組んだり、感想を語り合っている光景が広がっていることを思い描いて、次の夏を待ちたい。その日まで、再見(サイツェン)!
取材・文=SPICE編集部(大西健斗) 撮影=オフィシャル提供(撮影:羅紹文/ Swen Lo)
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