台日を代表するバンドが競演、『RUSH BALL in 台湾』x FRIENDSHIP.がタッグーージャンルも国籍も超える音楽の力と新しい出会い

レポート
音楽
2024.1.10

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『RUSH BALL in 台湾 on the ROAD with FRIENDSHIP.』2023.12.15(FRI)台北・The Wall Live House

FM802 DJ 土井コマキ

FM802 DJ 土井コマキ

今年25周年を迎えた野外ロックイベント『RUSH BALL』が5年ぶりに台湾で開催された。今年は「on the ROAD」と題して、2023年12月13日(水)〜15日(金)の3日間に渡り、台中・台北のライブハウスで熱狂的なステージが繰り広げられた。今回SPICEでは、音楽やカルチャーの前線で活躍するキュレーターが厳選した音楽を配信するディストリビューションサービス「FRIENDSHIP.」とタッグを組んで、15日(金)の3日目に開催されたライブの模様をお届けする。

The Wall Live House 外観

The Wall Live House 外観

この日の会場となったのは、台北にあるライブハウス・The Wall Live House。5年前の『RUSH BALL』台湾公演の会場・台湾大学体育館のすぐ近くにあり、日本のバンドも多く出演してきた名物ライブハウスである。今回は「FRIENDSHIP.」とのタッグで開催されていることもあり、プレイリストが聴けるようにQRコードが掲示されていたり、前の2日間とは雰囲気もガラッと変わってリラックスしたムードでお酒を飲んだり音楽談義に花を咲かせている人が多かった。開演時間になると、MCを務める大阪のラジオ局・FM802のDJ 土井コマキが登場。台湾華語で挨拶をして、「一起嗨吧(イーチーハイパー/一緒に盛り上がろう!)」とバンドを呼び込み、ジャンルも様々な5組のライブがスタート!

FM802 DJ 土井コマキ

FM802 DJ 土井コマキ

TENDOUJI

TENDOUJI

TENDOUJI

トップバッターはTENDOUJI。すっかり寒くなった日本と違って、まだまだ半袖で過ごせるほど暖かかった台湾だが、とにかく現地の気候やムードがよく似合う。それでいて1曲目が、常夏アジア感がたっぷりの、疾走感あふれる「COCO」だから即効でブチ上がらないわけがない。心地よいグルーヴをキープしたまま「BIGLOVE」、「Young Love」へ。エモーショナルに掻き鳴らされる音を浴びて、オーディエンスの手が無数に上がる。どこまでもPOPだけど、どこか切ない楽曲に合わせて、みんなでシンガロングする時間はエバーグリーンに輝いていた。

TENDOUJI

TENDOUJI

地下のゴツゴツしたThe Wallにぴったりのロックナンバー「FIREBALL」をゴリゴリに打ち鳴らしたり、「HEART BEAT」でオーディエンスと一緒にこれでもかと会場を揺らしたり、誰よりもライブを楽しんでいるメンバーを見てこちらの心も弾む。「Killing Heads」からラスト「HATTRICK」のフロアの沸騰ぶりを見て、演奏の熱もさらにグングン上昇。最後まで熱気ムンムンでいて、とびきりハッピーな心地よさで満たされた。台湾のTENDOUJI、最高である。

TENDOUJI

TENDOUJI

TENDOUJI

TENDOUJI

東京初期衝動

東京初期衝動

東京初期衝動

『RUSH BALL』が台湾に初上陸した2018年に結成。キャリアでは今回の出演者の中で最も若手となるが、むろんそんなこともろともしない、鮮烈なライブでオーディエンスを釘付けにした東京初期衝動。1曲目から新曲で、<大きい音を鳴らしたい!>とライブバンドとしてステージに立つ気概を宣戦布告し、自身の存在を証明するような気迫を見せつける。

東京初期衝動

東京初期衝動

「高円寺ブス集合」では、力強く拳が突き上がるフロアにしーなちゃん(Gt.Vo)がダイブ! あさか(Ba)、なお(Dr)が打ち鳴らすリズムが鼓動を速め、「みんなでアイラブユーを叫びたいと思います!」(しーなちゃん)と「トラブルメイカーガール」、「恋セヨ乙女」をフルスロットルで畳み掛けていく。

東京初期衝動

東京初期衝動

希(Gt)のギターが冴えわたった「ベイビー・ドント・クライ」から「再生ボタン」、ラストの「兆楽」にいたるまで、衝動と激情が炸裂するステージングに興奮状態のフロア。混沌としているようで、激しさの中で光るグッドメロディーが手綱となり、一体感のある熱狂を生み出していたように思う。バンドの求心力がオーディエンスを未だ見ぬライブの境地へと牽引していく光景は、永遠と刹那の相反する美しさをまとっていた。

東京初期衝動

東京初期衝動

東京初期衝動

東京初期衝動

ゲシュタルト乙女

ゲシュタルト乙女

ゲシュタルト乙女

今最も台湾と日本の架け橋になっているバンドのひとつともいえる、ゲシュタルト乙女。「生まれ変わったら」でライブをスタートさせると、音に身を委ねてゆらゆらと揺れるオーディエンス。アットホームなムードだが、Mikan(Vo.Gt)の歌う歌詞は全て日本語。疾走感と焦燥感がエモーショナルに鳴らされた「空気」から、「憧れの『RUSH BALL』に出演できて嬉しい」と喜びを伝え、今年リリースのシングル「窓」を披露。ジリジリと熱を帯びる演奏でグッと引き込みながら、じっくりとオーディエンスの心を解放させていく。

ゲシュタルト乙女

ゲシュタルト乙女

MCでは日本語で、この日のステージへの感慨深さを語ったMikan。ホームだからこそカジュアルに語りかける関西弁がとてもチャーミングで、オーディエンスを気遣って台湾華語でバンドメンバーを巻き込みながら和気藹々とトークする。そんな何気ないMCからも、日本でのライブとはまた違った彼女の一面が垣間見れた気がして嬉しくなる。オーディエンスとの合唱も成功させた「Dreamaholic」で、ラストはギターをかき鳴らしドラマチックな余韻を残してステージを後にした。

ゲシュタルト乙女

ゲシュタルト乙女

ゲシュタルト乙女

ゲシュタルト乙女

粗大Band(Thick Big Band)

粗大Band(Thick Big Band)

粗大Band(Thick Big Band)

出演予定だった踊ってばかりの国が、メンバーの発熱のためやむなく急遽出演キャンセルに。彼らのバトンを受け取り、窮地を救いピンチをチャンスに変えたのが地元・台湾の粗大Band(Thick Big Band)だ。決して代打としてではなく、与えられた時間をいかにして自分たちにしかできないライブを見せつけようかと、登場から「告訴我」「就是現在」と矢継ぎ早に投下。性急なパンクチューンで瞬く間にフロアはもみくちゃに。

粗大Band(Thick Big Band)

粗大Band(Thick Big Band)

粗大Band(Thick Big Band)

粗大Band(Thick Big Band)

Daniel Lu(Gt.Vo)が扇動するアグレッシブなステージングに振り落とされまいと、食らいついていくオーディエンス。メロディックかつヘビーな楽曲を連発して、クラップ&ジャンプにヘドバンも続出する熱狂の渦に。MCでは、Luが台湾華語で話し、それを流星(Gt)が日本語で伝えるバイリンガルスタイル。「『RUSH BALL』最高!」「ありがとう! おおきに!」と喜びいっぱいに、「深呼吸」ではフロアの熱量をエネルギーに替えて飛び跳ねながらプレイしたり、「粗大Band」ではオーディエンスの頭上に飛び込んだり前のめりにぶつかっていく。ラスト「留下來陪我」まで休む間を与えない、全身全霊のステージで存在感をしっかりと示した。

粗大Band(Thick Big Band)

粗大Band(Thick Big Band)

粗大Band(Thick Big Band)

粗大Band(Thick Big Band)

LITE

LITE

LITE

MCの土井コマキに「日本が世界に誇るインストバンド!」と呼び込まれ、大トリを飾るLITEが登場。息をのむような少しの緊張感と期待感が入り混じった、これまでにない異様なムードが立ちこめる中、鳴らされたのは「Endless Blue」。きめ細やかでいてダイナミックな音が次々と重ねられ、全身で音を浴びながら一音一音をじっくりとキャッチオーディエンス。薄暗いライブハウスで音を頼りに視界が明るくなるような、それでいて物語や景色、感情といった温度までも感じることができる、LITEにしか作りえないライブ空間に変える。

LITE

LITE

LITE

LITE

「Ef」から「Breakout」と鳴らされあっという間に折り返し地点にきたところで、音が止み拍手喝采が止まず、ザワザワとするフロアを見ても興奮を抑えきれない様子。武田信幸(Gt.Vo)がオーディエンスへの感謝を伝え、ダンスパンク調の新曲「Deep Inside」。冒頭の「Endless Blue」と併せて、来年1月31日(水)に4年半ぶり7枚目となるアルバム『STRATA』に収録される楽曲だ。ここからさらに感覚が研ぎ澄まされ、「D」ではハイになって踊りまくるオーディエンス。ラストの「Infinite Mirror」では、雷のように降り注ぐライトでバキバキのバンドアンサンブルが打ち鳴らされ、しばし無我夢中で酔いしれる至極のひとときで締め括った。鳴り止まないオーディエンスの拍手に応えたアンコールが終わると、会場ではお酒を飲み交わしながら、目を輝かせて感想を語り合う人たちで大いに賑わっていた。

LITE

LITE

LITE

LITE

最後に、土井コマキがオーディエンスと「来年は大阪の『RUSH BALL』で!」と約束。この日をキッカケに出会うことができた人たち、新しい音楽とまた『RUSH BALL』で再会できることを願っている。

この日を含め、3日間の『RUSH BALL in 台湾』で、音楽はあらゆる垣根を超えることができること、そして場所や人が違えば全く違って聴こえることを改めて体感することができた。だからこそ、音源で聴いている台湾や海外のバンドのライブを日本でも観たいと思ったり、同時に海外まで日本のバンドを追いかけて観てみたいと心底思った。

そこでは知りえなかったバンドの一面が見ることができたり、新しい出会いや初めての体験が待っているはずだから。冷めやらぬ余韻の中で、そんな未来の出会いに期待を膨らませつつ、次の『RUSH BALL』を心待ちにしている。

取材・文=SPICE編集部(大西健斗) 写真=オフィシャル提供(撮影:Hung Hsu Chen)


本公演の模様が、メタバース空間「JYANNA WORLD 」から配信されることが決定。1月19日(金)20:00より配信がスタートされ、LITE、TENDOUJI、東京初期衝動の日本のアーティストに加えて、台湾のゲシュタルト乙女、粗大Bandの全5アーティストのライブよりそれぞれ3曲がセレクトされ配信される。

また配信スタートを記念して、初日の1月19日(金)19:00より、井澤惇(LITE)、アサノケンジ(TENDOUJI)、タイラダイスケ(FRIENDSHIP.)、鬼頭由芽(MC)が出演するプレミアトークも配信されるので要チェックだ。

>次のページでは……掲載しきれなかったライブ写真&セットリストを公開!

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