「シリーズを取り巻く”運命”にカタルシスがある」~舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』ロン役・石垣佑磨を2人の大学生が直撃!〈レポート第2弾〉
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東京・TBS赤坂ACTシアターにて2022年7月よりロングラン上演中の舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』。小説『ハリー・ポッター』シリーズのその後を描いた本作は、初めて”舞台”という手法を使って描かれたハリー・ポッターの新たな物語で、これまでに世界中の演劇賞を受賞。ロンドン、ニューヨーク、サンフランシスコ、オーストラリア、ドイツ、カナダで開幕、この東京公演はアジアとしては初、世界では7番目の上演となります。
SPICEでは、現役大学生の小平実穂さん、坂野桜香さんがレポーターとなって、舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』にまつわる取材を決行。公開中の【第1弾】ではグッズショップ『ハリー・ポッター マホウドコロ』、『ハリー・ポッターと呪いの子』観劇、『Harry Potter Cafe』のレポートをお届けしました。【第2弾】となる今回は、舞台で2023年8月からロン・ウィーズリーを演じる石垣佑磨さんに、小平さんと坂野さんが直撃インタビューを実施しました!(※小平さんと坂野さんのプロフィールは《第1弾記事》をご覧ください)
Q:なぜオーディションを受けたのですか?(小平)
小平:石垣さんはどうして『ハリー・ポッターと呪いの子』のオーディションを受けられたのですか? 私たちはこの春大学3年生になって、これから就職活動も始まるので、伺ってみたくて。
石垣:それは僕の俳優デビューから話したほうがいいかもしれない(笑)。高校2年生の時に遊びに来た友達が冗談で親にホリプロのオーディションを勧めて、僕の知らないところで応募していたんですよ。そしたら一次選考に受かってしまったらしく、父親から「話がある。1万円あげるからオーディションを受けてくれ」と言われて(笑)。優勝賞金が100万円だったので、僕は「ということは全部で101万円になる!」と思って受けに行きました(笑)。正直、受かるわけないと思っていたんですけど、なんと2位をいただきデビューしました。なぜ今、この話をしたかというと、その時に100万円をゲットしたのが、ドラコ・マルフォイ役の内田朝陽なんですよ。
坂野:ええ!
小平:運命ですね!
石垣:そうなんです。この作品のオーディションも、まさか自分が受けることになるとは思ってもみなかったんですが、ご縁がありチャレンジさせていただいて。受かったのはちょうど我が子が生まれたタイミングでした。だから子供が幸せを運んでくれたんじゃないかと思ったし、いま思えばホリプロに入ったのもふとしたきっかけで、あの日出会った朝陽と25年くらい経ってこうやって同級生の役をやるというのも不思議で。そういうことはこの作品自体のテーマと重なるなと感じました。
Q:お芝居は公演を重ねるごとに良くなるものですか?(坂野)
坂野:すべての役が複数キャストになっていますが、役者が違うと息の合わせ方も変わったりしますか?
石垣:全然違いますね。例えばハリー・ポッター役なら、僕は藤木直人さんと大貫勇輔さんとは一緒に稽古する時間があったのですが、藤原竜也さんと石丸幹二さんは本番でほぼ初めて合わせたんですよ。
小平:え、すごい……。
坂野:息を合わせられるものなんですか?
石垣:なんか合うんです、要所要所は決まっているので。もちろん、回を重ねて埋まっていく部分もあるんですけどね。
坂野:やっぱり回を重ねたほうがよくなるものですか?
石垣:よくなる部分もあるし、逆に新鮮さが失われる部分もあります。例えば「ポリジュース薬(別の生物の外見に変身する魔法薬)」のシーンなんかは、僕らも訓練をしたんですよ。だけど訓練をずっとしていると、慣れてくるんですよね。そうなると「自分が変身した」という衝撃が薄れていったりするので。そういう意味では、ロングラン公演だからこそ「完成させない」ほうがいいのかなとも思っています。僕は今日で131回目の公演だったんですけど、今でも発見はありますしね。
坂野:例えばどんなことですか?
石垣:劇中で、ハーマイオニーに「ロン?」と言われて、僕が「サプラーイズ!」と返すシーンがあるんですけど、ある時たまたまハーマイオニーの声が聞こえなかったんですね。あれ?と思いつつ、しょうがないから自分のタイミングで「サプラーイズ!」って言ったら、お客さんがめっちゃウケたことがあって。演出で細かく決められていたシーンではないので、こういうパターンもあるんだと気付かせてもらいました。ロンは臨機応変な部分がけっこうある役だから、そういう偶然の中での気づきや学びが毎回のようにあります。
小平:お客さんの反応から気付くというのは、舞台ならではな感じがしますね。
石垣:そうですね。やはり舞台上にいると感じることはたくさんありますね。だからお客さんにはぜひ、笑いたいところで笑って、泣きたいところで泣いてほしいです。
坂野:ロンだからこそ難しいこともありますか?
石垣:ロンはわざとおもしろいことを言っている、というところかな。彼はボケてておもしろいヤツではなくて、苦しい時こそおかしなことを言ったりしている。計算をしたうえでの言動なんですよね。そういう部分は常に忘れないようにしています。「笑わせている」のであって「笑われている」のではない。頭の回転が早い人だということは、演出家からもすごく言われていました。
Q:原作はどのくらい参考にしましたか?(坂野)
坂野:原作はもともとお好きだったのですか?
石垣:まだ出演予定がなかった頃に、観客としてこの舞台のゲネプロ(リハーサル)を観たんですけど、その時点ではあまり詳しくありませんでした。もちろん映画の『ハリー・ポッター』シリーズは公開当時に観ましたが、それから時間も経っていたので細かい部分は覚えていなくて。なので最初にこの舞台を観た時には、小説や映画をもとにした伏線はちゃんとキャッチできなかった部分も多かったと思います。ただそれでも、とにかく魔法がすごかったしお話もしっかり楽しめました。
その後実際に出演することになって、改めて映画を観て。その時に印象的だったのが、なにかをしながら観る、いわゆる「ながら観」ができないんですよ! 当たり前っちゃ当たり前なんですけどね(笑)。ガッツリ観ないとついていけない、それほどの深さがあるから。この舞台は、その深さがさらに凝縮されたものだと思います。それぞれの物語と繋がっているから。
小平:そうですね。
石垣:もちろん映画を観てこの舞台を観ればさらにおもしろくなると思うんですが、舞台を観てから映画を観てもおもしろいと思う。ってちょっと営業っぽいこと言っちゃってますけど(笑)、本当にそう思って言っています。『ハリー・ポッター』シリーズのように長く続く、歴史に残る作品って、『スター・ウォーズ』も『アベンジャーズ』もそうだけど、単独の作品でも成り立ちながら、必ず物語が繋がっているんですよね。そういう作品だと思います。
小平:映画を観返したうえで今作に参加して、物語として感動したところはどこですか?
石垣:『呪いの子』は世代交代の物語で、過去に戦ってきた英雄たちがどうやって子供を育てるのかを描くんですけど、そこにある「運命」というようなものにカタルシスがあるんじゃないかと思います。よく「歴史は繰り返される」と言いますが、この作品もそういうものだと思うし、それは『ハリー・ポッター』シリーズの持つ深みでもあると思う。2026年に『ハリー・ポッター』のドラマ版が配信されますけど、そこでまた新しい世代がこのシリーズを観て、そしたらその子たちがこの舞台を観に来るかもしれない。そうやってグルグル回っていくような作品だし、そこにおもしろさがあると思います。だからこそこの舞台を観に来てほしいなと思うんです。舞台はこの劇場でしか観られないものだから。
Q:プライベートがお芝居に影響することはありますか?(小平)
小平:出演が決まった時にお子さんが生まれたとおっしゃっていましたが、この舞台では親子の絆が描かれていて、そういうプライベートの経験がお芝居と結び付くことはありますか?
石垣:それはあります。それに僕自身、もし自分が子供とうまくいかない時がきたら、この舞台のラストシーンを思い出すと思うんです。子供とどう接していいかわからない天才魔法使いの葛藤の話ですからね。きっとどんな立場の人もそれぞれに響く台詞やシーンがあるんじゃないかなと思います。ハリーたちは魔法使いだけど人間で、もちろん魔法を使う場面もおもしろいんだけど、ラストはただただ人間を描いているので。だからこそラストシーンが素敵なんだと思いますし。
坂野:そういう感想みたいなものは、役者さん同士で共有したりされるんですか?
石垣:それはないです、ないです。
小平:そうなんですか!
石垣:内面的なことを語り合うことは、実はもう稽古の中でやってるんですよね。稽古の序盤は本読みをしながら、キャスト・スタッフみんなで「ここをどう思う?」「ここはこうだと思う」というセッションをしました。そういう時間をすごく大切にする稽古で、そこでそれぞれが自分の言いづらいことも語り合ったんです。だから逆に楽屋では芝居の話はあまりしないんですよね。
小平:最後に読者のみなさん、特に私たちのような学生にメッセージをお願いします。
石垣:学生さんと言えば、校外学習なのかな、ときどき団体で観に来てくださるんですけど、「大人しく観なくていいんです!」ということをね、僕は伝えておきたいんです(笑)。きっと事前に「静かに観なさい」って言われているんだと思うんですよ。だけど、かしこまって観なくて大丈夫です! 笑いたい時に笑って、泣きたい時に泣いて観ていただきたい作品なんです。好きなように観ていただくのがいい。ただ、スマホの電源だけオフにしておいてくれたら(笑)。あとは皆さんそれぞれ、自由に楽しんでいただけたらいいなと思います!
坂野・小平:今日はありがとうございました。
石垣:いえいえ、こちらこそありがとうございます。
坂野:どんな方なんだろうってすごく緊張していたんですけど、
小平:すごく楽しかったです。
坂野:私も楽しかったです。
石垣:いろいろ質問も考えて来てくれてありがとうございました。ぜひまた観に来てくださいね。
取材・文=中川實穂 撮影=荒川潤
公演情報
<受付期間>4月12日(金)10:00~5月16日(木)20:00