ブロードウェイ・ミュージカル『天使にラブ・ソングを…(シスター・アクト)』が開幕 客席も総立ちの盛り上がりとなった公演レポートと舞台写真が公開
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ブロードウェイ・ミュージカル『天使にラブ・ソングを…(シスター・アクト)』 撮影:渡部孝弘
2024年7月3日(水)東急シアターオーブにて、ブロードウェイ・ミュージカル『天使にラブ・ソングを…(シスター・アクト)』が開幕した。この度、会場の熱が伝わる公演レポートと、舞台写真が届いたので紹介する。
『天使にラブ・ソングを…』(1992年)の邦題で愛され続けるコメディ映画『Sister Act(シスター・アクト)』を原作に、映画で主演を務めたハリウッドスターのウーピー・ゴールドバーグ自身がプロデュースし、2009年にミュージカル化された。
撮影:渡部孝弘
撮影:渡部孝弘
観れば誰もが“ハッピー”になれるミュージカルである本作は、生き方が異なる女性たちが、歌と音楽を通じて友情を育む感動のストーリーは映画のまま、ミュージカルならではのエネルギッシュな生の歌声が物語のクライマックスに爽快感をプラスし、何度でも味わいたくなる劇場体験を与えてくれる。
撮影:渡部孝弘
撮影:渡部孝弘
2015年7月の初来日公演はソールドアウト、2017年の再来日公演も連日満員で盛り上がり、客席は笑顔と感動で包まれた。3度目の来日となる今回の公演は、過去2回の来日公演とは異なる新演出と、豪華にグレードアップした新しい舞台美術が特徴。おなじみのストーリーと音楽はそのままに、新たにバージョンアップしたブロードウェイ・ミュージカル『天使にラブ・ソングを…(シスター・アクト)』来日公演を堪能しよう。
撮影:渡部孝弘
撮影:渡部孝弘
ディスコフィーバー真っ盛りの1977年、クリスマスイヴ。
フィラデルフィアでスターを夢見るクラブ歌手・デロリスは殺人事件を目撃してしまう。
主犯である愛人のギャングに命を狙われ、修道院に逃げ込むことに……。
規律正しい生活に馴染めないデロリスだが、ある日、聖歌隊の特訓を任される。
聴くに堪えなかった聖歌隊は瞬く間に上達し、閉鎖危機にあった修道院は一気に注目の的に!
ところが、その噂はギャングの耳にまで届いてしまい……。
果たしてデロリスは、この危機を切り抜けることができるのか!?
開幕レポート
笑った、心踊った、満たされた!
7年ぶり、3度目の来日公演。7月3日の初日のカーテンコールの後、東急シアターオーブの客席は高揚感と多幸感に溢れていた。「楽しかった〜!」「最高すぎた」という声が聞こえてくる。日本でも上演されるたび、興奮が広がって連日満員の人気作だが、今回の新演出版は、あらためてこの作品のパワーを感じさせる仕上がりだ。
「豪華にショーアップした来日版史上最大のスケール」というのは今公演の謳い文句だが、幕開けからまさにそう。前奏と共に“SISTER ACT”のタイトルが描かれた大きな額縁が開くと、1977年のフィラデルフィアのナイトクラブに様変わり。コーラスを従えて歌うのはスターを夢見るクラブ歌手のデロリスだ。当時のナイトクラブの雰囲気を醸し出す電飾、ショーアップされたステージによって一気に物語に引き込まれる。デロリスが「何もかも手にいれる」という強気を全面に押し出した「Fabulous ,Baby!」のかっこよさに惚れ惚れしているうちに場面は変わり、彼女が愛人でギャングの親分カーティスの殺人現場を目撃し、子分たちに追われて警察へ。そこで同級生の「汗っかきエディ」と再会し、修道院に逃げ込むまでの流れ、場面転換の鮮やかさに驚かされるばかりだ。そして照明の豪華さ!歌われる曲に合わせ、吐露される心情に寄り添いながら、踊るように変化する光の使い方が斬新。グレードアップした舞台美術と映像を融合させた演出が、物語をわかりやすく届けてくれるだけでなく、デロリスとシスターたちの世界に「没入」させてくれる。
遊び心のある演出もあちこちに散りばめられている。中でも注目はシスター・メアリー・クラレンスとして修道院で暮らし始めたデロリスが、シスターたちと初めて食事を共にするシーン。ステージ上のパネルには世界的に有名なあの絵で、そこに「ええ!!」という仕掛けがあるのだが、ネタバレになるのでこれはぜひ劇場で目撃してほしい。また、エディのソロ「I Could Be That Guy」はどこか間抜けなエディが鮮やかに変身。劇場全体を照らすミラーボールとディスコサウンドな楽曲に、ミュージカルならではの高揚感を味わえるショーシーンだ。
撮影:渡部孝弘
撮影:渡部孝弘
撮影:渡部孝弘
エネルギッシュな歌唱に酔いしれる
オーディションを経て役を掴んだキャストはそれぞれの役にハマっている。日本にもルーツを持つニコール・ヴァネッサ・オーティスは、シスターたちと出会って変化しいくデロリスの気持ちを丁寧に演じて魅力的。パンチがある歌声の中に、優しさが垣間見えて誰もが共感したくなる。シスターたち全員が個性的でチャーミング。彼女たちがデロリスのリードで音楽の楽しさに目覚め、デロリスもまた。仲間たちと歌う歓びに魅せられていくのが「Raise Your Voice」から「Take Me to Heaven」へと続く1幕のクライマックス。自分を解放していくシスターたちの歌と踊りの楽しさに、舞台上と客席の一体感が増す。さらに2幕では、シスターたちのショーシーンの衣裳にも注目を。カラフルな衣裳とともに照明も踊り出すのだから。
撮影:渡部孝弘
撮影:渡部孝弘
撮影:渡部孝弘
アラン・メンケンの楽曲の良さ際立つ新演出
ディズニー作品で人気の高いアラン・メンケンによる楽曲は、ディスコやゴスペルのサウンドを取り入れながら、ブロードウェイミュージカルらしさもあり実に多彩。その楽曲の良さを舞台美術、照明、新たな衣裳でより際立たせているのが今回の新演出版だと言えるかもしれない。デロリスとシスターたちの友情、成長を描いた物語のあたたかさはそのまま、新鮮な印象を与えてくれる『天使にラブ・ソングを…(シスター・アクト)』の上演中、客席から手拍子が、歌い終わるとヒューという掛け声が湧き上がる。カーテンコールでは一斉に客席が立ち上がり、幕が下りた後も拍手は鳴り止まずデロリスと修道院長が飛び出してきては拍手に応えていた。何より子どもから大人まで幅広い客層が、みんな満たされた笑顔だというのが、この作品の力を証明している。ミュージカル初心者にも入りやすいだけでなく、ファンにとっても驚きがたくさんの新バージョン。最高にハッピーなミュージカルが暑さを吹き飛ばしてくれて、劇場を出る時に心は熱く、足取りは軽くなっていること間違いなしだ。
執筆:宇田夏苗
撮影:渡部孝弘
撮影:渡部孝弘
本公演は、7月21日(日)まで東京・東急シアターオーブ、その後、7月24日(水)~28日(日)大阪・オリックス劇場にて上演される。