えんぷてい 「心からやりたい2マンを」、Laura day romanceをゲストに迎えた主催イベント『SESSIONS』東京編第1回をレポート

2024.12.7
レポート
音楽

えんぷてい×Laura day romance

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えんぷていpre.『SESSIONS』東京
2024.11.26 Shibuya WWW

2020年の結成から4年。タイムレスな輝きを放つ楽曲たちが多くのリスナーのハートを鷲掴みにしていると、いつしか注目を集めはじめた5人組、えんぷていが自主イベント『SESSIONS』をスタートさせ、その東京編第1回目が11月26日、東京・渋谷WWWで開催された。

その終盤、えんぷていのフロントマン、奥中康一郎(Vo, Gt)は『SESSIONS』の第2回を来年2月16日に今回と同じWWWで開催することを発表。「心からやりたい2マンを今後もやっていきたい」と語ったのだが、単なる2マンライブではなく、心から一緒にやりたいと思えるバンドを迎えることにこそ意味があるようだ。12月中旬に対バンが発表されるという2回目以降も第1回同様、対バンとの関係性や、そこから生まれる物語も楽しませてもらえるんじゃないかと大いに期待している。

Laura day romance

そんな『SESSIONS』の記念すべき第1回目に迎えられたのは、2017年結成の男女3人組、Laura day romanceだった。後述するように“相思相愛”の関係にある2組による2マンライブは、だからこその交歓も含め、見どころ満載のイベントとなった。

サポートメンバーを加えた6人編成でオンステージしたLaura day romanceの演奏は、礒本雄太(Dr)の軽やかなドラムプレイがジャジーな「little dancer | リトルダンサー」からスタート。途中、「えんぷていと2マンできるなんてとても感慨深いです。奥中は女友達みたいですごく喋りやすい(笑)。私たちが一番大変な時にサポートメンバーとして入ってくれて、とても頼りになりました」と井上花月(Vo)がえんぷてい(と言うか、奥中)との関係性を語りながら、陰影を生かしたライティングが作るムーディーな世界観の中、淡々と、しかし、しっかりと感情の起伏も落とし込みながら新旧織りまぜたレパートリーを披露。井上の歌声が持つピュアな魅力とともに彼らを語る時に使われることが多いネオアコだけにとどまらないバンドサウンドでも観客を魅了していった。

Laura day romance

王道のネオアコを思わせる「sweet vertigo」のような曲がある一方で、跳ねるリズムがスタンディングのフロアを揺らした「透明」は、鈴木迅(Gt)とサポートギタリストによる2本のギターのアンサンブルがルースなロックンロールを思わせるところが個人的にはツボだった。また、じっくりと聴かせたバラード「Young Life」から繋げたエモい魅力もあるパワーポップナンバー「brighter brighter」では、その2本のギターがグランジィに鳴る。

「せっかくの2マンなのでコラボします。サポートで入ってもらったとき、奥中のコーラスが歌いやすくてうれしかった」というエピソードを井上が語ってから奥中とデュエットした「lovers」はノスタルジックなメロディとガレージロック風のギターの組み合わせもさることながら、サポートベーシストがそこに加えるファンキーなベースリフも聴きどころ。声を張り上げる奥中の熱唱と、それに応えるバンドの熱演に客席から声が上がる。

そこに繋げた「リグレットベイビー」もネオアコ調のレトロなポップナンバーと思わせ、2本のギターが緊張感を孕みながらソニック・ユース(Sonic Youth)ばりにフリーキーに鳴る。熱を放ちながらフレーズを泣かせる鈴木のギターソロに観客が拍手を送る。そして、オルタナティブな音像をダイナミックな見せつけ、「渚で会いましょう」でエンディング。

Laura day romance

Laura day romanceならではと言える世界観とともに1曲1曲の振り幅も楽しませた全9曲。彼らのライブをこの日初めて見た筆者は、彼らは他にどんなレパートリーを持っているのだろうと興味が湧いたのだった。

えんぷてい

対するえんぷていは神谷幸宏(Dr)が軽やかに鳴らすマーチ風のドラムにメンバーたちが音を重ね、短いセッションから1曲目の「ハイウェイ」になだれこむ。跳ねるリズムが心地いいポップナンバー。シティポップなんて言葉も思い浮かぶ。比志島國和(Gt)が空間系の音色で奏でるリフも印象的だ。

比志島と神谷が掛け合いながら「ハイウェイ」からノンストップで繋げた「微睡」はサイケデリックなポップナンバーながら、リズムをためた赤塚舜(Ba)のベースプレイで差を付ける。比志島が空間系に歪みを加えた音色で奏でたソロは、フレーズがフュージョンっぽくておもしろい。

えんぷてい:奥中康一郎(Vo & Gt)

「新曲やります」と奥中が言い、赤塚がベースをスラップしながらなだれこんだ「ステラ」は、新境地のファンクナンバー。ファルセットも交えながら奥中がハイトーンボイスで歌い上げる。続く「秘密」はチルなポップナンバー。比志島以外の3人が重ねるハーモニーも聴きどころだ。

「大学時代、Laura day romanceのコピーバンドやってました。それぐらい好きなバンドです。ただのファンだった大学生がその後、サポートメンバーとして同じにステージに立たせてもらい、そして、ついに2マンです! 感激してます!」

とあるイベントで初めて共演してから3年を経て、自主企画の2マンライブにLaura day romanceを迎えることができた感激を、奥中は言葉にするだけでは足りなかったのか、ライブの中盤、バンドメンバーも巻き込んでLaura day romanceのバラード「waltz」のカバーを披露。比志島がオマージュを捧げるように轟音のギターソロを再現する。

えんぷてい:比志島國和(Gt)

この日しかありえない選曲という意味ではハイライトの一つだったと言ってもいいと思うが、そのアウトロにメンバー全員で鳴らすキメと大胆な転調を加え、ノンストップで「煙」に繋げるというある意味の演出は、そのハイライトをより一層、印象に残るものにしたはずだ。

その「煙」は比志島が奏でる泣きのリードギターも含め、ノスタルジックな魅力もあるポップナンバーだ。音数を詰めず、敢えて作ったと思しき隙間を、メンバーたちが交互に埋めていくアンサンブルが心憎い。アウトロで比志島が閃かせた長尺のギターソロと、その後ろで白熱していった比志島以外の4人の演奏に観客が大きな拍手を送る。その熱気をさらに大きなものにしたのが、石嶋一貴(Key)のピアノソロのライブアレンジから始まるバラード「Pale Talk」。どこか80年代のニューミュージックを連想させるようなところが、えんぷていがタイムレスと言われる所以なのだと思う。えんぷていの5人はそういう楽曲にメンバー全員でリズムを刻むパーカッシブなアレンジやジャズセッション風のパートを加えながら、激しい感情を迸らせ、観客からは声が上がる。

えんぷてい:赤塚舜(Ba)

9月18日にリリースした「夏よ」の前には、ステージ後方に設置されたレコードプレイヤーに赤塚が針を落とす演出があり、美しいストリングスの調べが会場を包み込んだ。印象的なピアノから始まった「夏よ」は、フィルインも含め、フロアタムを巧みに使った手数の多い神谷のジャズっぽいドラムプレイも聴きどころ。その「夏よ」はメランコリックでノスタルジックなバラードなのだが、「Pale Talk」に感じた80年代のニューミュージックからさらに遡って、洋楽の影響を消化しながら日本語のロック/ポップスを作ることに挑戦していた70年代のバンドを連想させるところが、タイムレスと謳われるえんぷていのユニークさをひと際立たせていたように感じられた。

えんぷてい:石嶋一貴(Key)

シティポップをバックボーンとしているようにも思えるが、近頃多いアーバンなバンドとはひと味違うと思わせるところがえんぷていならでは。そんなふうに思い始めていた筆者を驚かせたのが、「Sweet Child」からの終盤の3曲だった。その「Sweet Child」は比志島がパワーコードのリフを奏で、奥中が轟音でギターを掻き鳴らすストレートなギターポップナンバー。続く「舷窓」もギターが轟音で鳴るオルタナロック。奥中がコードを掻き鳴らしながらバンドの演奏はテンポアップ。そして、演奏が白熱したところに繋げた本編最後の「あなたの全て」もまた、奥中と比志島がコードリフをユニゾンで奏でながら、メンバー全員が一丸となって、熱い演奏を繰り広げるギターロックナンバーだった。ロックバラード、あるいはアンセムとも言える曲調や、サビを歌い上げる奥中のエモい歌声はラストナンバーにふさわしかったと思う。前述したアーバンなバンドに、さらに差を付ける終盤の3曲を聴き、えんぷていというバンドに対して、ますます興味が湧いてきた。

えんぷてい:神谷幸宏(Dr)

アンコールでは「TAPIR」を演奏して、今一度、バックグラウンドにあるシティポップやフュージョンの影響を印象づけたが、「(イベントのタイトルが)『SESSIONS』なので、セッションして終わりたいと思います」という奥中の言葉通り「TAPIR」になだれこむ前に繰り広げた短いセッションも、えんぷていの持ち味だ。それができるのは、メンバーそれぞれに演奏スキルを持っているからこそ。その彼らがこの日、幾度となく演奏に加えたセッションからは、音源とは一味違うライブを楽しんでもらいたいという、えんぷていの矜持が感じられたのだった。

えんぷてい

取材・文=山口智男 撮影=kokoro

ライブ情報

えんぷてい presents「SESSIONS」
2025.02.16(日)渋谷 WWW
OPEN 16:30 / START 17:30

<出演>
えんぷてい
+ Guest

前売り¥4,000 学割 ¥3,000
▼オフィシャル 1 次先行(抽選)
【受付期間】11/26(火)22:00 ~ 12/08(日)23:59
▼オフィシャル 2 次先行(抽選)
【受付期間】12/13(金) 18:00 ~ 12/22(日)23:59
△一般発売:2025/01/18(土)10:00 ~
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