前田公輝「韓国と日本のクリエイティブの魅力を組み合わせて作りたい」~世界初演ミュージカル『ミセン』歌唱披露レポート
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新作ミュージカル『ミセン』稽古場取材より
韓国で社会現象を書き起こした大ヒットウェブ漫画『ミセン』。囲碁のプロ棋士という夢を断たれた主人公チャン・グレが大手貿易会社のインターンシップに参加し、同期と共に成長していく姿を描いた物語だ。2014年には韓国内のドラマ賞を総なめにし、日本でも2016年にピッコマでの連載とリメイクドラマ『HOPE〜期待ゼロの新入社員〜』の放送が行われた。今回脚本・歌詞にパク・ヘリム、音楽にチェ・ジョンユン、演出にオ・ルピナを迎え、ホリプロが世界初のミュージカル化を行う。
公開まで約2ヶ月というタイミングで、前田公輝、橋本じゅん、清水くるみ、内海啓貴、糸川耀士郎、中井智彦、あべこうじ、東山光明、石川禅、安蘭けいをはじめとするオールキャストによる稽古場取材会が行われた。
まず披露されたのは、チャン・グレ(前田公輝)やアン・ヨンイ(清水くるみ)、ハン・ソギュル(内海啓貴)、チャン・ベッキ(糸川耀士郎)たちインターン生が夢への一歩を踏み出すオープニングナンバー。希望と自信、少しの不安を抱えて配属先に向かう、若者らしい勢いに満ちた清水、内海、糸川と、戸惑っているように周囲を伺う前田の対比が印象的なシーンだ。全キャストが参加し、歌とダンスでオフィスの活気を作り上げる。歌唱披露が終わると演出のオ・ルピナから「ここでは疲れた・大変というのは出さず、パワフルに。会社の人たちにとっては日常だけど、インターン生にとっては初めての出来事ですから、その差も意識してください」と指摘が入り、キャスト陣も頷きながら和気藹々とした雰囲気で稽古が進む。
続いては、正社員採用のための試験に向け、ペアを組む相手を探すインターン生たちのシーンが行われた。前田はグレの不器用さや鈍臭さを絶妙なバランスで演じ、引き立て役としてペアに誘う周囲との温度感の差を見せる。正社員を目指すインターン生たちの駆け引きや計算がユーモラスに表現されており、ハラハラしながらも楽しく見入ってしまうナンバーだ。
さらに、理想と現実のギャップに打ちのめされたインターン生たちが居酒屋で偶然鉢合わせて徐々に打ち解けたところから、グレとソギュルがプレゼンでお互いの主張をぶつけ合う場面までが通しで披露された。能力や経験に自信を持っていたエリート3人が壁にぶつかる姿を、清水、内海、糸川は等身大の芝居で表現。優秀で意欲もあるが社会人としてはまだまだな彼らの苦悩を瑞々しく描き出した。一方前田は、頼りなかったグレが少しずつ社会人として成長していることを伝える。明るく気のいい店主(東山光明)のもと、お酒を飲んで同期との距離を縮めていく様子は、多くの方が共感できるのではないだろうか。
生意気とも言える強気さで現場の厳しさや努力を伝えるソギュルと、オフィスならではの大変さを伝えるグレのプレゼンテーションは、2人の熱さに聞いているこちらまで熱くなる。お互いを理解・リスペクトしあって絆が生まれる様子はもちろん、プレゼンに笑顔で頷くオ課長(橋本じゅん)とキム課長代理(あべこうじ)、インターン生の頼もしい姿を厳しくもあたたかく見守るチェ専務(石川禅)といった上司たちも魅力的だ。
続いては、大きなプロジェクトに挑むグレが商社で必要なスキルを学びながらヨルダン事業のプレゼンに向けて市場調査を進めるナンバー。異国情緒溢れるダンスナンバーで、アクロバットも交えた華やかなパフォーマンスが楽しい。インターンを始めた頃は頼りなかったグレが自らの考えで道を切り拓き、イキイキと仕事に打ち込んでいる様子も見どころといえるだろう。
最後はソン次長(安蘭けい)をはじめとする女性社員たちが、思い悩むアンを励ます楽曲。男尊女卑、結婚や出産による働き方の変化といった様々な問題に直面し、葛藤しながらも未来を見据えて力強く進んでいく女性たちの力強さが胸に響く。
現時点でもワクワクするような楽曲とダンス、誰もが共感できる普遍的なメッセージに引き込まれた。ここからブラッシュアップを重ねた完成版に大いに期待したい。
続いて、メインキャストと演出のオ・ルピナによるコメントとフォトセッションが行われた。
東山:僕が演じるのは、舞台の中でクスッと笑ってもらえる役回り。ですが、稽古場披露で最後に歌ったなど曲はすごく泣けます。緩急がすごくついた作品、しっかり仕上げていきたいです。
あべ:歌のリズムをとるのが難しくて、袖を見るとみんなが手拍子をしてくれています。本番でもそういう人が客席にいたらいいなと思っています(笑)。
中井:セクハラとパワハラの代名詞という役です。普段、ミュージカルを見終わった後に何が心に残るかなと思いながら観劇していますが、この作品は何が正解で何が不正解か本当にわからない。会社と社会がここまでクローズアップされ、自由に受け取ってほしいと投げかける作品は珍しいと思います。だからこそ会社で働いている皆さんに見てほしいし、10年前の韓国社会と今の日本の会社を比べて、変化や変わっていない部分を見てほしいです。
石川:喋りたいことは中井さんが全部喋ってくれました(笑)。社長が登場せず、会社の中で一番偉い役なのでいろいろ頑張っています。韓国の作品を韓国のクリエイターが作り、日本で初演するというのは初めての試み。韓国が大変な状況の中でプレゼントしてくれたものを受け取り、大事に作っていきたいです。これから成長していく作品なので、ぜひ見に来てください。
糸川:性別や年齢問わず、見てくださる方一人ひとりが共感でき、刺さる部分がある作品になっていると思います。劇場全体でこの作品を感じ、いい空間にできたらいいなと思いながら本番まで作り込んでいきます。
内海:日本初演に携わることができ、すごくワクワクしています。稽古を始めるときに、ルピナさんがこの作品のテーマを「一人ではない」ことだとおっしゃっていました。それを自分の中でもテーマに、お客様が見終わった時に、家族や友達、恋人に連絡をとりたくなるような、心温まる作品を届けていきたいと思います。
清水:元々ドラマファンなので、出演できるのが嬉しいです。ドラマのファンである私から見ても、すごく満足できるミュージカル作品。素晴らしい演出、ダンス、楽曲によってとても素敵なミュージカルになっていて、働く人に響く、皆さんの心に寄り添う作品になっていると思いますので、ぜひ見に来てください。
安蘭:2役演じますが、どちらも若い子を支える温かく包容力のある女性。私にぴったりな役だと思います(笑)。昨日チャン・グレと母親のシーンを演出していただきましたが、ルピナさんが涙を流しているのを見て、ルピナさん自身のあたたかさと愛情も感じました。とてもいい作品になるだろうなと思っています。
橋本:このミュージカルをきっかけに『ミセン』を見ましたが、本当に面白くて度肝を抜かれました。この作品に出会えたことが幸せすぎて「え、オ課長を俺がやるの?」というのが後から来ました。でも、劇中でオ課長が言う「踏ん張るんだ」が刺さり、私たちも踏ん張って作品を作ろうと思いましたし、見てくださった方々に勇気を受け取ってもらえたらいいなと思っています。
前田:稽古場披露は初めての経験ですが、初日前に披露する緊張感、振り返りの時間を作ることができてよかったなと思っています。この作品は希望や幸せを生み出せる気がしますが、世の中的に一歩踏み出すのは簡単ではないと思います。でも、信念を持ちながら一手ずつ進んで幸せを掴むというメッセージを持ちつつ、韓国クリエイターチームの引き寄せる力、日本のリアリティ、ミュージカルというエンターテインメントを組み合わせて新しい舞台になればいいなと思っています。
ル・オピナ:素晴らしい俳優・スタッフの皆さんと共に、日本の素敵な環境下で初演を作れるのが嬉しいです。『ミセン』は会社員の物語ですが、会社員に限らず、世の中で生きている私たちのお話になるように作っています。皆さんに感動を与えられるよう、一生懸命稽古をしています。国や時代を越える作品だと思うので、ぜひ劇場にいらして素敵な時間をお過ごしください。
本作は2025年1月10日(金)〜14日(火)に大阪・新歌舞伎座、2月1日(土)・2日(日)に愛知・愛知県芸術劇場 大ホール、2月6日(木)〜11日(火・祝)に東京・めぐろパーシモンホール 大ホールにて公演が行われる。
取材・文・撮影=吉田沙奈
公演情報
<大阪公演>
日程:
プレビュー公演=2025年1月10日(金)
本公演=2025年1月11日(土)~14日(火)
会場:新歌舞伎座
【アフタートークイベント】
1月13日(月・祝)17:30
登壇者:前田公輝、橋本じゅん、あべこうじ
【世界初演記念 スペシャル企画】
対象公演:
1月10日(金)13:00(プレビュー公演)
1月11日(土)17:30(初日公演)
◉来場者プレゼント:オリジナルステッカー
◉カーテンコール一部撮影OK!※大阪公演限定
料金:
・S席(1・2階中央) 14,000円
・A席(2階左右) 13,000円
・B席(3階) 9,000円
・特別席 15,000円
主催:新歌舞伎座
お問い合わせ:新歌舞伎座テレホン予約センター 06-7730-2222(11:00~16:00)
URL: https://www.shinkabukiza.co.jp/
日程:2025年2月1日(土)~2日(日)
会場:愛知県芸術劇場大ホール
【アフタートークイベント】
2月1日(土)14:00
登壇者:前田公輝、清水くるみ、内海啓貴、糸川耀士郎
お問い合わせ:中京テレビクリエイション052-588-4477 (平日11:00~17:00)
料金:
・S席 13,500円(税込)
・A席 11,000円(税込)
URL:https://cte.jp/event/misaeng2025/
日程:2025年2月6日(木)~2月11日(火・祝)
会場:めぐろパーシモンホール 大ホール
【アフタートークイベント】
2月10日(月)18:30
登壇者:清水くるみ、内海啓貴、糸川耀士郎
料金:
・エグゼクティブシート:16,000円(優先入場ほか特典付)
・S席 13,500円
・A席 11,000円
・U-25 7,500円
原作著者:ユン・テホ
著作権者:SUPERCOMIX STUDIO
脚本・歌詞:パク・ヘリム
音楽:チェ・ジョンユン
翻訳・訳詞:高橋亜子
演出:オ・ルピナ
振付・ステージング:KAORIalive
音楽監督・編曲:前嶋康明
ボーカルアレンジ:イ・ミンヒ
美術:石原敬
照明:齋藤茂雄
音響:山本浩一
映像:上田大樹
衣裳:尾崎由佳子
ヘアメイク:宮内宏明
声楽指導:長谷川開
演出助手:元吉庸泰
舞台監督:加藤高
下訳:キム・テイ
稽古ピアノ:野口彰子/石川花蓮
主催・企画制作:ホリプロ
共催:公益財団法人目黒区芸術文化振興財団
後援:目黒区
(C) Yoon, Tae Ho / SUPERCOMIX STUDIO Corp.
<キャスト>
チャン・グレ:前田公輝
オ・サンシク課長:橋本じゅん
アン・ヨンイ:清水くるみ
ハン・ソギュル:内海啓貴
チャン・ベッキ:糸川耀士郎
パク・ジョンシク課長:中井智彦
キム・ドンシク課長代理:あべこうじ
居酒屋店長/協力会社社長:東山光明
チェ・ヨンフ専務:石川禅
ソン・ジヨン次長/チャン・グレの母:安蘭けい
伊藤かの子、岡田治己、加賀谷真聡、加藤さや香、工藤彩、熊澤沙穂、田村雄一、俵和也、照井裕隆、永松樹、早川一矢、MAOTO、加藤文華(スウィング)、りんたろう(スウィング)
公式HP= https://horipro-stage.jp/stage/misaeng2025/
公式X= https://x.com/misaengmusical
公式Instagram= https://www.instagram.com/misaengmusical/