7回目の開催を迎え、初の2日間開催「これぞロックンロールの出初式」ーー『ロックンロールサーカス2025』初日を振り返る
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『ロックンロールサーカス2025』2025.1.11(SAT)神戸・三宮周辺
神戸にあるライブハウス、神戸VARIT.を中心としたサーキット型ライブイベント『ロックンロールサーカス2025』(以下、ロックンロールサーカス)が、1月11日(土)・12日(日)の2日間にわたって開催された。2019年の開催から今年で7回目の開催を迎え、「ロックンロールの年初め」として関西はもちろん、全国からロックンロール好きが集まる名物イベントとして人気を集めている。今年もSPICE編集部では本イベントの模様をお伝えしたい。
と、その前に。前回、前々回でもイベントレポートを担当(https://spice.eplus.jp/articles/325690)させてもらっていたので、主催者である神戸VARIT.の店長・南出氏の意気込みの強さを多少なりとも知っているつもりではあったが、今年は例年以上の熱量だった。『ロックンロールサーカス』本番に向け、前夜祭、前々夜祭を開催。さらに出演枠を懸けたオーディションイベントの開催や、神戸を飛び出し、東京でも関連イベントを実施するなど、一年を通して『ロックンロールサーカス』に向けた展開が繰り広げられていた。
そして挑んだ今年の『ロックンロールサーカス』はなんと、初の2日間開催! しかも会場も前年の5か所から6か所へ増設し、それに伴い、総勢85組ものアーティストが出演。もちろん今年もいつもの通り、“クセ強”なアーティストが集結。今年も出演者の名前を一覧で記しておきたい。
イヌガヨ、ワタナベフラワー、THE BOHEMIANS、鶴、SCOOBIE DO、STANCEPUNKS、SA、ギターウルフ、Kensuke Sudo、THE BLACK DOLPHINS、ザ・サイクロンズ、(The)SEGARE KIDS、フー・ドゥー・ユー・ラブ、ADDICTION、hotspring、フーテン族、AKOGARE、ウルフルケイスケwith 空団地、IGUWANNAS、THE HillAndon、KING BROTHERS、THE DO DO DO‘S、Nevera、奏人心、モテギスミスバンド、もえ子、タバタヒナ、テトラポット、オータムス2、百回中百回、ザ・タペタムズ、ゆうやけしはす&すうらばあず、50/50’s、THE S.O.S、UNCLE JOHN、THE NUGGETS、ズボンズ、ガガガSP、YAPOOL、The Songbards、THE BAWDIES、The howlin’ dogs、THE NEATBEATS、セックスマシーン!!、水平線、ザ・キャプテンズ、THE PRIVATES、the Tiger、THE GROOVERS、the myeahns、KiNGONS、THE こうがんず、赤いくらげ、ムステインズ、ひょうへんクラブ、ネモトラボルタ、まなつ、騒音寺、The Amaretts、Mr.ワリコメッツ、Muddy Jackets、THE HOLDENS、wilberry、超右腕、寝たふりナッパーズ、Dirty Rogues、THE NAIVE BOYS、The Slumbers、the imitation hearts、B.I.B.S.、puggs、福、円盤少女、千年メモリーズ、虎の子ラミー、THE LET’S GO’S、THE PERRY、サテライト、蟹光船、ザ50回転ズ、Johnny Pandora、黒猫CHELSEA、忘れてモーテルズ、おとぼけビ~バ~、キノコホテル。バンドを始めてまだ数年といった若手から、「サーキット型イベントに出てくれるの!?」と驚くほどのレジェンド級アーティストまで、今回もロックンロールを軸にしつつも、“ロック魂”溢れる個性ある面々がそろった。
これだけのアーティストが揃うとなると、ライブレポートをするには体ひとつじゃ足りないが、南出氏からは今年も「お好きなように観てください!」と嬉しい反面、プレッシャーになるメッセージが……。「南出氏とロックンロールに殺される……」とおののきつつ、今年も美味しいとこ取り、欲望のままにワガママにやってやろうじゃないか!と、いざ『ロックンロールサーカス2025』へ。今回のレポートもこれまでと同様、「ロックンロール」の言葉をとにかく多用しています。だってイベント名が『ロックンロールサーカス』だし、出演者もロックンロールバンドばかりだし、観客もスタッフもみんなロックンロールが大好きだから。このレポートの最後、ロックンロールの言葉がいくつ出たのか、書いている自分が楽しみです。この時点で15回も出てますからね。
会場に到着したら、まずはVARIT.へ。前年は入場用のリストバンド交換のために長蛇の列ができていたが、今年は驚くほどスムーズに。回数を重ねるたび、快適にイベントが楽しめるようになっているかは観客にとってかなり重要。さらに、受付ではタイムテーブルが記載されたパンフレットが配られていたのだが、裏面には会場マップだけでなく、会場周辺の飲食店やホテル、駐車場などのポイントも記されていた。しかも餃子、ピザ、ハンバーグなど飲食店のジャンルまで記載。全国からファンが集まる『ロックンロールサーカス』。イベント前後にも神戸の街を存分に楽しんでほしい、そんな心遣いがたまらなく素敵だ。
『ロックンロールサーカス』の始まりはVARIT.から!
イヌガヨ
開演時間前には、タイムテーブルを片手に会場の下見へ。今年の会場はVARIT.、THE CASTLE、STARTING OVER、BLUE PORT、CHICKEN GEORGEに加え、新たにRINKAITENが加わり6カ所に。神戸の街のど真ん中で開催されている『ロックンロールサーカス』だが、爆音のロックンロールを鳴らせる会場を増やせることに驚いた。たくさんのアーティストが出演するサーキット型ライブイベント、1発目に誰を観るかでその日のテンションも変わる。が、今年の『ロックンロールサーカス』の始まりもやっぱりイヌガヨ!
「今年もやってまいりました『ロックンロールサーカス』‼ 堺、イヌガヨ、どうぞよろしく!」、その言葉を聞くだけで妙にほっとするようになってしまったのは『ロックンロールサーカス』マジックか。「ロードムービー2」など、これから始まるステージの数々にワクワクさせる、エンジンを噴かすような気合の入るセレクトでイベントの開幕を祝う。
THE BOHEMIANS
THE BOHEMIAINSは「お好きなようにお騒ぎください!」と、「That Is Rock And Roll」で名前のまんま、ご機嫌な音を鳴らしてフロアを揺さぶっていく。VARIT.のフロアにはアリーナクラスの会場よろしく、花道が作られているのだけど、これがまた彼らのライブにぴったり映えていた。「面白いものは東京にあると思っていたけど、神戸にある!」の言葉の通り、『ロックンロールサーカス』が全国のロックバンド、ロックファンの興味を奪う存在になっているかがよく分かる。
SCOOBIE DO
7回目、そして2日間での開催ともなると、初出演となるアーティストが数多いが、まさかロックンロールチャンプなSCOOBIE DOが出演するとは! 「一番好きなやり方で楽しんでってくれ!」と「真夜中のダンスホール」など、アウェイを一気にホームに換えてしまう極上のバンドサウンドを響かせる。いつだって頂点を更新していく彼らのライブ、年明けから縁起の良いものを観させてもらった!
SA
レジェンドクラスのアーティストも数多く出演する『ロックンロールサーカス』だが、SAの登場にも驚かされた人も多いだろう。TAISEIが「HAPPY NEW YEAR! 神戸、かかってこいや!」と吠えた途端、その存在感、音の圧に気圧されそうになってしまう。「パンクの大御所!? 関係ねーよ! 16歳のあのまんまの気持ちでいきましょう!」と、「GET UP! WARRIORS」など年齢もジャンルの垣根も超え、さらりと『ロックンロールサーカス』に馴染んでしまうのはさすが!
ダイニングバーでロックンロールが鳴り響く、THE CASTLE
前回から会場として参加しているTHE CASTLEは雑居ビルにある隠れ家的なダイニングバー。ライブが始まるたび、道行く人が「近くにライブバーでもある?」「いまから入れますか?」と、ふらりと立ち寄ろうとする人もいたりと、街なか感の強い会場だ。
フーテン族
アングラ感漂う風貌で、真っ昼間から妖しい雰囲気を漂わせていたフーテン族。タイムスリップでもしたのかなってくらい、会場の雰囲気は昭和の香りが漂っていたんだけど、ベースラインを利かせたサウンドは心地よくて、じっと見入ってしまった。続くAKOGAREは「AKOGAREです、よろしく!」、そのセリフだけでもう勝ったも同然じゃなかろうか。「暴走族」での雄叫びにも似たシャウトが観客の視線を奪い、ぐんぐんと加速していくバンドのエネルギーで観客を引き込んでいく。
AKOGARE
3年振りの出演となったウルフルケイスケは空団地とともに。「ロックンロールの真っ最中」でライブ初めができるなんて景気が良い。ベテランだっていつまでもロックンロールの虜だということが一瞬で伝わってくるステージ。ニコニコの笑顔で最高の音を奏でる姿を見るだけでも、今年一年良いことがありそうだと思えてしまう。
ウルフルケイスケ with 空団地
KING BROTHERSのステージは今年もカオスの極み! ライブ前から入場規制で長蛇の列ができていたが、「Doo Doo Scratch」をはじめ、「ロックの準備はいいですか!」のひと声で会場の床が抜けるんじゃ……と思うくらいにフロアが揺れる。「入場規制はお前らのせいちゃうん!? 一歩前へ詰めろ!!」とマーヤが叫んだ途端、会場の隅でライブを観ていた南出氏の「もっと(お客さん)入れたろ!」のひと声で会場はさらにすし詰め状態&興奮度合いもアップ!
STARTING OVER、BLUEPORT、RINKAITENで気になるアーティストをチェック!
生田新道の南側に位置するSTARTING OVERは『ロックンロールサーカス』の会場内で一番小さなライブハウス。このステージで初めてライブを観るというアーティストも多く、サーキット型ライブイベントならではの出会いに満ちた会場でもある。
Nevera
トップバッターの東京発、4人組のNeveraもそんなバンドのひとつ。東京での『ロックンロールサーカス』のオーディション企画で出演枠を勝ち取り、この日が神戸での初ライブ。「17」など、しなやかな歌声に魅せられたと思えば、楽器隊の打ち出すサウンドも演奏力だけでなく、歌声を引き立たせる表現力も素晴らしく、しばし放心状態で魅入ってしまった。
テトラポット
ブルーグラスバンドのテトラポットはこの日も「どうしょーもない」など、美しい音色を響かせていた。メンバーが社会人となったことで『ロックンロールサーカス』では久しぶりのオリジナル編成でのライブに。メンバー自身も久しぶりの4人編成でのステージが嬉しいと、終始笑顔。激しいステージも良いけれど、ほっこりとしたサウンドも捨てがたい。
三ノ宮の街の中心にぎゅっと会場が集まっている『ロックンロールサーカス』だが、BLUEPORTは少しばかり遠い距離にある。神戸で一番駅に近いライブハウスだが、VARIT.からだと徒歩約10分。会場をハシゴしまくるサーキット型ライブイベントにおいて、この距離感はどうしてもネックになってしまうのが正直なところ……。が、めちゃくちゃ素敵なアーティストが顔をそろえているもんだから、何度も足を運んでしまう。
百回中百回、会場の扉を開けた瞬間のドカンと体にぶつかるインパクトがすごかった。「やさしくなる」のご機嫌なメロに夢中になったかと思えば、「オマエラ、何回中何回? オレら、百回中百回!」なんて、バンド名も掛け声も百点すぎ! この日が一回目の百回中百回だったけど、早くも2回目を決めこみたくなったのは言うまでもない。
50/50's
ほかにも、50/50’sは今年もやっぱり外せなかったし、ズボンズのステージも見逃せなかった。タイムテーブルと体力のせめぎあいが続くが、観たいと思ったら観ておかないと! これが最後かも……と思ったら自然と足が向いてしまうのは誰もがきっと同じはず。
ザ・サイクロンズ
『ロックンロールサーカス』の新しいステージ、RINKAITENはVARIT.から徒歩すぐ、雑居ビルの3階にあるミュージックスぺースだ。入口から奥に向かってステージがあるので、ついつい扉で人がたむろしてしまいがちになるなか、ザ・サイクロンズはさすが結成26年目のベテランGSフォロワーバンド。観客を動かすのも容易く、「もっと入ってこーい!」とフロアを煽りつつ、ご機嫌なGSサウンドで観客を躍らせる。
最大キャパでも入場規制連発! CHICKEN GEORGE
THE NUGGETS
「楽しい2日間にしよーな! 今日はオレのおごりだ!」、THE NUGGETSはいつものようにフロアでビールを大盤振る舞い。もちろん、それを受け取ったからにはライブを大いに堪能しないと! 「ハートビートナイター」「俺のおごりだ!」で歌って踊って笑っての連続。心をヒリヒリとさせるロックンロールも良いけれど、誰もが笑顔になれるロックンロールも最高! この日も革ジャンにモッズコート、リーゼントにスパイキーヘアまで、色んなロック好きをまとめてハッピーにしてくれた。
ガガガSP
いつだって無条件に青春時代に引き戻されてしまうのがガガガSP。「今年一発目のライブ? 思っくそやろうじゃありませんか!」と、「これでいいのだ」で拳を突き上げて涙して、「青春狂時代」「青春時代」の流れでまた涙して、感情大忙しだ。おっさんもおばちゃんもチビっこも、世代を飛び越えみんなが真剣な表情でステージを食い入るように見つめている。
YAPOOL
YAPOOLは昨年のBLUE PORTから一気に飛躍し、CHICKEN GEORGEのステージへ。「レイトショー」は昨年も披露した曲だけれど、存在感が格段に違っていたし、「産声」のガシっと硬度を上げたバンドサウンドにも心惹かれてしまう。群雄割拠な『ロックンロールサーカス』で若手アーティストがハイスピードで成長した姿を見せてくれるのはなんとも心強い。
THE BAWDIES
「ロックンロールのお祭り番長」こと、THE BAWDIESも『ロックンロールサーカス』初登場。「知らない曲でも歌える、それがロックンロールじゃないですか?」と「HOT DOG」や「SUGAR PUFF」など、新旧のこれぞ!なナンバーの連発で躍らせる。結成21年目を迎え、気付けば彼らもベテランの域。「”THE”がつくバンドはオレらしかいないと思っていた」と、冗談を飛ばしていたけれど、『ロックンロールサーカス』にはロックンロールなアーティストしか出演していない。”THE”も”the”も”ザ”も含め、なんと27アーティストも出演していたのだ。出演者の1/3に”ザ”が付いているって、さすがに多すぎて笑ってしまったけれど、それはそれで嬉しいのは私だけじゃないはず。
THE NEATBEATS
”THE”が付くバンドは多いけれど、『ロックンロールサーカス』といえばやっぱりTHE NEATBEATS。2日連続出演なうえ、Mr.PAN(Vo.Gt)はトークイベントにも出演するなど大忙し。「YAH! YAH! YAH!」「ハートを渡そう」と、バンドが最高のプレイを見せれば、観客が踊り騒いでの応酬が続いていく。無条件降伏ならぬ”幸福”なステージだけじゃなく、この日もロックンロール小噺が止まらない! 観客のダンスも歓声も笑いも手中に収め、CHICKEN GEORGEのトリをご機嫌に〆てくれた。
ちなみに、『ロックンロールサーカス』では毎年、会場内で神戸の人気カレー店などが出店し、観客の心もお腹も満たしてくれるのだが、今年はなんとTHE NEATBEATSが運営する東京・荻窪のライブハウス「TOP BEAT CLUB」が出店。名物の「ファンキーチキンブラウン」が神戸でも食べられるとあって、連日大盛況。しかもこれがビールに合う! ライブを楽しみながら、お腹も満たせるなんて最高!
ギターウルフ
『ロックンロールサーカス2025』、初日もいよいよ最後。大トリは昨年に続き、ロックンロールレジェンド・ギターウルフ! 観客はもちろん、ステージを終えたアーティストたちが続々と集まるなか、今年も”ジェット”書初めで描き上げた「2025 HAPPY NEW YEAR 蛇 今年もニョロしく!!」(原文ママ)を突き破り、ライブスタート!
「オールナイトでぶっとばせ!!」から花道にマイクスタンドを突き立て、フロアと2階席の境界線を無くすような迫力あるパフォーマンスで観客を圧倒! 「変な新曲を作ってしまったーー!」と叫びながらまだ音源化されていない新曲「シーラカンスギャラクシー」を披露。「シーラカンス」を連呼しまくるハチャメチャな楽曲なのにどうにもこうにもカッコイイもんだから、ゲン担ぎよろしく、みんな汗だくになりながら大喜びで拳を突き上げ叫んでいる。一年の始まりがここで良かった、心底そう思える爽快で、爆音が気持ち良い、最高のステージで初日の幕は閉じた。
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「ロックンロールサーカス2025」開催からしばらく。2月5日にガガガSPのベーシスト・桑原康伸さんのご逝去の報がバンドから届けられました。これまでの素晴らしいステージの数々に感謝の意を伝えつつ、心よりご冥福をお祈りいたします。
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取材・文=黒田奈保子 撮影=オフィシャル写真(撮影:ハヤシマコ・おはな・坂元佑将・るか・ヤナギ・山田雅子・mari_・瑞希・ことは・松原弘樹・河戸直樹)
■2日目のレポートはこちら
総勢85組ものアーティストが神戸に集結、ロックンロールはいつだって右上がり!
ーー『ロックンロールサーカス2025』2日目を振り返る