結成から光の速さで走り続ける、関西発の5人組バンド・ヨナツメ、彼らの始まりから今までを振り返るメンバー全員初インタビュー
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ヨナツメ 撮影=桃子
何気ない日常に寄り添った歌詞が光る楽曲が魅力の関西発の5人組バンド・ヨナツメ。2023年にバンドを結成すると、同年に行われた『GIANT LEAP AUDITION EXTRA 〜meets KANSAI LOVERS〜』のオーディションを華麗に勝ち抜き、 9月には大阪城音楽堂で開催された関西にゆかりのあるアーティストが顔を揃える野外音楽フェス『KANSAI LOVERS』のオープニングを飾った経歴の持ち主だ。驚くべきスピード感で自分たちの音を広げ続けているという印象の彼らは、美しい高音と透明感溢れる萩月美樹(Vo.Gt)の歌声と心をくすぐるエモーショナルなサウンドを聴かせてきた。だが、そういった音の印象はそのままながら作詞作曲を担う福屋礼央(Ag.Vo)の心情を赤裸々に吐露した新曲「やってらんねぇ」は、彼らの中に変化も感じられる1曲となっている。その新曲リリース直前、彼らの地元・大阪でバンド初のインタビューを行う好機を得た。5人全員が揃い、ヨナツメの始まりから新曲制作の舞台裏に至るまでのさまざまなエピソードが飛び出す貴重な機会となった。
萩月美樹(Vo.Gt)
個性豊かなメンバーが集った「ヨナツメ」の誕生秘話
ーー今日がヨナツメとしては、初めてのインタビューと伺っています。
笠置昂生(Dr):そうなんです。よろしくお願いします!
ーー今日は2月19日にリリースとなった6枚目のシングル「やってらんねぇ」をフックにしたインタビューなのですが、みなさんの初インタビューでもあります。ヨナツメとはどういうバンドなのかも含めて、この記事を元にWikipediaを作れるくらいの情報量を盛り込みたいという意気込みです。まずは基本情報からということで、1人ずつ自己紹介をお願いします。
萩月美樹(Vo.Gt):私からいきます!萩月美樹です。出身は大阪、ギターとボーカルを担当しています。8月22日生まれの獅子座です。週2〜3回マクドに行くほどフライドポテトが大好きです。
福屋礼央(Ag.Vo):次、僕いこうかな。1999年12月30日、大阪生まれの福屋礼央です。趣味は音楽、特技は照明です。
ーー照明? 舞台の照明ですか?
福屋:その照明です(笑)。自分たちの舞台でも照明を手がけたりしています。
福屋礼央(Ag.Vo)
ーー超本格的な特技じゃないですか! 次はどなた行きましょう?
たいが(Gt):ギターをやっています、たいがです。年齢は公開していないんですけど…
萩月:え? そうなん?
たいが:そうやねん。大阪生まれです。立ち飲みや居酒屋が好きで、ほぼ毎日家でもお酒を飲んでいます。
たいが(Gt)
atsuki(Ba):次は僕行きます。atsukiです。1997年10月28日の大阪生まれで、ベースを担当しています。最近はインテリアにハマっていて、毎日インスタとかでインテリアの画像を見てめっちゃ参考にしています。
atsuki(Ba)
ーーありがとうございます。では最後、トリを飾っていただきましょう。
笠置:ドラムの笠置昂生です。1996年6月28日生まれ、奈良県出身です。料理を作るのが趣味で、毎日3食のどこかでペペロンチーノを作って食べています。
ーー毎日!?
笠置:具材を変えながら毎日食べてます。
笠置昂生(Dr)
ーーいい趣味ですねぇ。こういった5人でヨナツメは結成された、と(笑)。みなさん関西出身なんですね。そもそもバンドが始まったキッカケは?
たいが:もともとみんな違うバンドで、対バンしたりはしていました。その中でお互いがバンドを辞めたタイミングが重なって、またバンドをやりたいなと僕が美樹ちゃんに声をかけたのがきっかけです。僕がとにかく美樹ちゃんの声と歌が好きで「一緒にバンドをやりたい」と伝えていたんです。
ーー萩月さんは別のバンドをやっている状況でたいがさんからのラブコールを受けていたんですか?
萩月:いや、バンドを辞めて2年くらいの頃でした。実はもう音楽はやらないと決めて、機材も売り払っていたのでバンドをやるつもりもなくて。でもたいがくんからのラブコールを1年間受け続けて……やろうかなと心が動きました。
ーーたいがさん粘り強い!
萩月:その時は自信を失っていた時期だったんですけど、こんなに自分の歌をいいと言ってくれる人がおるんやと気づいてやってみようかなって。
たいが:とにかくLINEで誘い続けていたら、ある日突然、「バンドがしたい」と返信が来てガッツポーツでした。ただ当初はバンドをやることに対して美樹ちゃんからは条件があって、作詞はしたくないと。じゃあメンバーに作詞作曲ができる人が必要だということで誘ったのが福屋です。
福屋:たいがくんとは同じ職場で働いていたり、同じ専門学校に通っていた縁もあったんです。
たいが:あ、めっちゃええ曲書くやつおる! と。
萩月:そこで私がバンドをやるならドラムは笠置がいい! って提案をしました。
ーー笠置さんはその時……。
笠置:空いてたんですよ(笑)。みんな似た感じで空いていたんだと思います。コロナ禍でバンドが脱退や解散が起こってゼロになっていた頃で。
ーーあぁ、なるほど。
たいが: atsukiが最後の加入になるんですけど、元々はサポートとして参加してもらっていたんです。『GIANT LEAP AUDITION EXTRA 〜meets KANSAI LOVERS〜』のオーディションの後に正式加入してもらいました。
ーーそういう流れがあったんですね。バンドのバイオグラフィーにある「1度音楽を諦めたメンバーが集まった」という一文はかなりインパクトがあります。
笠置:僕とatsukiは前のバンドが終わってそういう状況にあったなと思います。
福屋:僕も前のバンドが終わってからはPAの道に進んでいて、裏方として活動を始めていました。でも声がかかった時に遊びで作っていた曲を聴いてもらって、またバンドをやることになりました。
たいが:僕も前身のバンドで音楽をやることに疲れてしまって。でもギターを弾かなくなったことで、逆に音楽を続けたいという思いが湧いてきてやっぱりバンドがやりたいというふうに気持ちが変化していきました。
ーーいろんな事情や経験の後に集結したヨナツメは、どういう進み方をしていったのでしょうか。
笠置:最初はコピーからでした。フレンズの曲をやりましたね。
ーーフレンズ! 言われてみるとピッタリな感じがします。
笠置:萩月がボーカルだけど曲を作るのは礼央くんだし、彼が歌うこともあるのでなんとなくイメージに近い曲がフレンズにあったんです。フレンズから始まって、いろいろな曲をコピーしつつオリジナル曲も作り始めて……という感じで進んでいきました。
ーーちなみにメンバー共通のフェイバリットアーティストを挙げるとするとどなたでしょう?
笠置:一緒に活動してみてわかったけど、全員見事にバラバラなんですよ。
萩月:特に男性4人は音楽に詳しくてめちゃくちゃいろんなアーティストの話をしているんですけど、私は疎くて。
福屋:いや、僕らは主にFRUITS ZIPPERの話とかしてます! かわいいなぁって。
ーーあはは!
萩月:いやそれもあるけど、あぁまた展開の早い音楽の話をしてる! って横で見ています。
笠置:まあでも、自分たちの曲のアレンジの話が大半ですね。礼央くんがこのアーティストのこの感じがよかったとか、たいがくんがこういう音色でやりたいとかそういう感じで。
たいが:曲に関してはフレンズのコピーをしつつ福屋が作った曲にどんな曲調が合うか、萩月の声にどんなサウンドがマッチするか、探り探りやって来たら今の形に落ち着いたというのが正しいと思います。
笠置:当初はミドルテンポで歌を聴かせることを目的にしたアレンジが多かったですね。複雑なことはせず、シンプルに歌を聴かせることがヨナツメらしさというか。ただ福屋の作る曲がボカロチックだったり打ち込みだったりもするので、僕ららしさの軸ができたうえで新しいアプローチもヨナツメの曲に落とし込んでもいいと思えるタイミングがあったので、それに伴って曲も変化していきました。萩月のボーカルで歌えば全てヨナツメになるとわかってからは、いろいろな曲がやれるようになったと思います。
ーーふむふむ。……ちなみになのですが、ヨナツメというバンド名はどこから?
全員:ふふふふふ。
ーーあ、みんな笑ってる。
笠置:astukiが加入する前、4人で活動していたときはただただシンプルに曲を作ってみんなで合わせて楽しいねーで終わる感じでした。でもライブが決まったことで「バンド名がいるぞ!」と。それで急遽、言葉遊びを元にいろいろなバンド名を作ってみていたんですけど(ゴニョゴニョ)、それで残ったのが「ヨナツメ」でした。
オーディションを勝ち抜き、憧れの大阪城野音の舞台に
ーーヨナツメの歩みとしては、2023年に行われた『GIANT LEAP AUDITION EXTRA 〜meets KANSAI LOVERS〜』のオーディションに参加をしたということが大きい出来事だと思います。結果、見事勝ち抜いたわけですがこのオーディションへの参加の言い出しっぺというと?
笠置:これ、多分僕なんですよね。
萩月:えー、違うやんなぁ?
たいが:や、元々は美樹ちゃんが「野音で歌いたい」と。
福屋:『カンラバ(KANSAI LOVERS)』、見に行ってたんだよね?
萩月:そう。オーディションに出る2年前に観客として行きました。このライブハウスに立ちたい! なんて思ったことがなかったんですけど、大阪城野音はここで歌ってみたい! って強く思って。
笠置:萩月の「野音に立ちたい」っていう思いも知っていたので、僕はいろいろなところでオーディション情報を見ていたんですよ。そこで見つけたのが『GIANT LEAP AUDITION EXTRA 〜meets KANSAI LOVERS〜』で、参加方法もTikTokからだったこともあってすごく気楽でした。ヨナツメのTikTokを始めた頃で、ちょうどいいぞというのもあって。TikTokからの審査ならば普段ライブハウスに来ていない人の反応も得られるし、このオーディションのスタイルは自分たちに合いそうだと思えました。
ーーちなみにどの曲で挑んだのでしょう?
萩月:「最終電車に乗って」です。バンドを始める時に「作詞作曲はしない」と言ったし、なんなら曲の作り方も忘れていたんですけど……ライブを始めてみたら、あれ? 曲が作れそうと思ってできたのが「最終電車に乗って」でした。
ーー萩月さんに「曲は作らない」と言われていたたいがさんにとっては……。
たいが:作ってくれるんや! って。美樹ちゃんをバンドに誘った理由として、歌がいいというのは大前提で彼女の曲も好きだったんです。だから単純に曲を作ってくれたのは嬉しかったです。
ーーそれはバンドとしてもすごく大きな変化だし、その曲でオーディションを勝ち抜いたことも運命的に感じます。今振り返って、自分たちはなぜ勝ち抜けたんだと思いますか?
全員:えー、なんでだろ……。
笠置:でもライブの日は完全に「いけた!」と思いました。
福屋:うん、いったと思いました。
たいが:やったった感はすごかったですね。
萩月:私ももしこれで『カンラバ』決まらんくてもいいや、と思えました。
笠置:ありのままの自分たちをバーンと出せたので、伝わる人には伝わるなと。
ーーその時、atsukiさんはまだサポートメンバーだったわけですよね。
たいが:サポートやし、ヨナツメとしての初ライブだったよね?
atsuki:そうです。なので、もうドキドキしたことしか覚えていないです。
ーーでも初ライブでオーディションを通過して!
笠置:そういう縁もあって、正式加入の話になったというのもあります。
astuki:ちなみに正式加入後、バンドとして2回目のライブが大阪城野音でした。
ーーシンデレラボーイじゃないですか! すごい話ですねぇ。ちなみにオーディションを通過した時の一番率直な感想というと「やっぱりねー」ですか?
萩月:というよりもとにかく嬉しくて、お母さんにすぐ電話して泣きました。
ーーだって目標の舞台ですし! 2023年は結成して、割とすぐにオーディションに出て通過して『カンラバ』に出てと急展開を見せて、2024年には『Rockin'Radio!』やライブサーキットへの出演、あとはシングルやEPのリリースもありました。
笠置:ライブ自体そこまで数が多かったわけではないので、制作しつつリリースしつつライブに出てという1年でしたね。その中でも『Rockin'Radio!』は大きかったですね。同じ大阪城野音でも『カンラバ』の時は地に足がついていなかったけど、『Rockin'Radio!』はオープニングアクトとはいえメインアクトのみなさんとほぼ同じようにお客さんもたくさん入ってくださっていて、演者としてガツっとやれた感覚がありました。
福屋:めちゃめちゃ緊張はしていましたけど!
萩月:普段のライブハウスだとひとりひとりと目が合うけど、あれだけ大きなステージになると後方にいる人にどう届けるかが課題になるなと感じました。だからこそ、終わった時に「もっとできたんじゃないか」と思ったり。
挑戦を重ね、新作「やってらんねぇ」が完成。春には自主企画の開催も決定
ーー課題もしっかり見つかったとあれば、これからのヨナツメのパフォーマンスに活きてきそうです。そして“これから”といえば、2月19日にニューシングル「やってらんねぇ」がリリースになります。これまでの曲のタイトルはどこか文学的だなぁと思っていたので、えらく弾けたタイトルの曲が出てきたなと思いました。福屋さん、この曲が生まれた経緯を伺えますか?
福屋:そうですね、はい。やってらんねぇなと思って。
ーーあはは! リリース資料には「すべてのストレスから逃げる事すらできなくなり、 その鬱憤を諦めるために作った楽曲」とあります。
福屋:今まで作ってきた曲には主人公がいて、僕の中ではその主人公を助けたいというイメージのものが多かったんですけど、今回の主人公は完全に僕ですね。僕を助けるというか……完全に僕だけの物語で、僕が思っていることを書き綴った形です。
ーーこの曲を手にした時のメンバーのみなさんの感想は?
たいが:作りながらこれはどうなっていくんやろう? とは思いました。どういうアレンジがハマるんだろうということをすごく考えたというか。ただ歌詞は今までと違う世界観なのに、美樹ちゃんが歌うとヨナツメになるのは不思議でした。
ーー確かに歌詞の内容はトゲトゲした部分もありますけど、言葉遣いや言い回しでダークな世界一辺倒になっていないことにも驚きました。
笠置:この曲の大元はずっとあったんです。でもその頃はミドルテンポの曲を軸にやっていたし、この曲はヨナツメでできるのかという思いもあって。でもフレーズが僕はすごく好きで、気になってはいたんです。それが去年の3月に出した1st EP「bouquet」の中に「ブルベア」という曲があるんですけど、この曲がリリースできたことで置いていたあの曲も作り直せるんじゃない? と思えたのもきっかけでした。
ーーいろいろな経験を積み上げた今ならいけるかも、と。歌詞の中でいろいろキャッチーなワードが使われているのも印象的ですが、タイトルに次ぐパワーワードが「ダイダラボッチ」(日本各地に古くから伝わる巨人の妖怪)だと思います。福屋さんがこのワードに担わせたかったことは?
福屋:……ダイダラボッチは、僕なんです。
たいが:そうなんや……!
ーーメンバーも初耳(笑)。
福屋:や、ちょっと恥ずかしいです……。作る曲には言う側と言われる側、いつも絶対に2人の登場人物がいるんです。ただ「やってらんねぇ」に関しては、登場人物は僕だけ。ひとりしか出てこないというのも挑戦です。
ーー福屋さん自身を投影した感情が溢れる歌詞に対して、萩月さんの透明感ある声が軸に存在するとはいえ、サウンドによっては重い曲になるか軽やかな曲になるかが大きく左右される点だったのかなとも思いました。
笠置:この曲に関しては福屋がデモの段階でかなり作り込んでいたので、割とアレンジも含めてそのままの感じでいきました。それを軸にそれぞれのアレンジを少し加えているくらいのイメージですね。
ーー作った段階でのメロディーにおける工夫点を伺えますか?
福屋:実は曲中で僕が歌う部分があるんですけど、萩月が歌うところと僕が歌うところではメロディーの区切り方が違うんです。実は僕、結構ラップも好きなんですね。やっぱり今回は曲の中に自分が登場するので、その象徴としてラップっぽさを取り入れたり。
ーーそういった福屋さんの工夫に対して、萩月さんは歌い方で何か気にされた点はありましたか。
萩月:特に「やってらんねぇ」に関しては、自分がやったことがない音楽過ぎて歌い方もわからへん! ってなっていました。だからこそ語尾ひとつとっても「このニュアンスで合ってる?」「息継ぎはどこでやったらいい?」とか、細かいところまで礼央くんに相談しながら進めました。
ーー萩月さんは福屋さんの吐き出した感情を擬似体験しているようなものですし……。あ、福屋さん恥ずかしそう(笑)。
福屋:(照)。
萩月:礼央くんはどういう気持ちでどういう人が出てくるかというのを、曲ごとにきっちりみんなに説明してくれるんです。私が作ったわけではないけれど、お客さんには私が作っていないことが伝わらないように自分の中に落とし込んで歌うことをいつも心がけています。
ーーなるほど。新曲の「やってらんねぇ」を生で聴ける次の機会になるのが、4月に梅田Shangri-Laで開催予定の自主企画『帰路に花束 vol.2』ですね。
笠置:去年の3月にも同じタイトルでイベントを開催したんですが、僕らの音楽は“日常に寄り添う”ということを謳っていて、日常の中でも帰り道にフォーカスした曲が多いんです。帰り道は嬉しい帰り道も悲しい帰り道もあって、みんなそれぞれだと思うんです。そんな時に僕らの音楽が寄り添えたらという願いを込めたタイトルになっています。ゲストにomeme tentenとCAT ATE HOTDOGSの僕らが大好きなバンドを迎えてお届けします。
ーー昨年からEP、シングルリリースが続いて、ライブも精力的で……今後はアルバムのリリースにも期待したい気持ちです。
笠置:曲のストックはかなりあるので……、頑張りたいです!
取材・文=桃井麻依子 撮影=桃子
イベント情報
リリース情報
New Digital Single
「やってらんねぇ」
2025年2月19日(水)0:00 配信開始
萩月美樹(Vo.Gt):X_@miki_yonatsume/IG_@miki_yonatsume/
たいが(Gt):X_@tatata_0602/IG_@tatata_0602/
笠置昂生(Dr):X _@yagitatatan1/IG_@kasi6.28/
atsuki(Ba):X _@atsuki_s_1028/IG_@atsuki7971/