浦島坂田船 「歌ってみた」にリスペクトを捧げ、原点に立ち返った2日間ーー『歌ってみた祭り!』LaLa arena TOKYO-BAY公演をレポート
-
ポスト -
シェア - 送る
浦島坂田船
浦島坂田船~歌ってみた祭り!~
2025.2.14-15 LaLa arena TOKYO-BAY
うらたぬき、志麻、となりの坂田。、センラの4人からなるボーカルユニット・浦島坂田船。うらたぬきとあほの坂田。、志麻とセンラがタッグを組んだ『TAG LIVE』やそれぞれがソロアーティストとして火花を散らした『ソロフェス』など、ライブ活動においても新たな挑戦を続けてきた4人が、2025年2月14日&15日に千葉・LaLa arena TOKYO-BAYで『浦島坂田船~歌ってみた祭り!~』を開催。基本軸は同じく各日にその日だけの歌唱曲もちりばめた構成で、4人の歌い手としての原点に立ち返った「歌ってみた」しばりの特別な2日間の模様をお伝えする。
浦島坂田船
個人としてもグループとしても数多の「歌ってみた」を投稿してきた4人の歩みがギュっと詰まったオープニング映像(画面を埋め尽くす弾幕コメントにもテンションが上がる!)があけ、ライトに照らされたステージ。それぞれの2024年ワンマンツアー衣装をまとい、4人が<一等星>を指さして歌い始めた1曲目は「太陽系デスコ」だ。息の合ったコール&レスポンスが響いて、みるみる一体感が高まっていく。
続けざま、意表を突いたのはうらたぬきのソロ歌唱。しかも、動画未投稿の「ロミオとシンデレラ」を持ってくるとは! 美声を響かせ、メインステージ中央から延びる花道を通ってセンターステージへと進むいきなりのファンサにも大歓声が上がる。
うらたぬき
その大歓声が悲鳴に変わったのは志麻×となりの坂田。による久々の「magnet」。至近距離で向き合うイントロから、恋人つなぎ、キス寸前の抱擁、見つめ合い絡まる熱視線……3曲目にしてあまりに煽情的すぎはしないだろうか。
となりの坂田。、志麻
1日目に「ハッピーバレンタイン!」と笑顔で登場、センラが難解なリズムも軽やかに乗りこなして歌ったのは、これも動画未投稿の「エンヴィキャットウォーク」。2日目に歌ったのは、約10年前に動画投稿した「恋愛裁判」。恋愛沼に溺れる主人公の歌が、センラには本当によく似合う。
センラ
1日目に「林檎売りの泡沫少女」を、2日目に「Just Be Friends(WANKO ver)」と、いずれも10年以上前のナンバーを歌ったのはとなりの坂田。。切なさや儚さをたたえた歌声に、涙腺が緩む。
となりの坂田。
「独りんぼエンヴィー」の物憂げで愁い色を漂わせた歌声と<こっちおいで>でがっちりcrew(浦島坂田船ファンの呼称)の心を掴んだ志麻が、そのままセンターステージで歌い始め、センターステージにうらたぬきが、メインステージにとなりの坂田。とセンラが現れたのは「アイのシナリオ」。“U” “S” “S” “S” とそれぞれの名前の頭文字の電飾が輝くトロッコに乗り込み、アリーナ客席通路へ。ただでさえエモーショナルなナンバーが、ドラマティックな演出でよりいっそう輝きを増していく。
志麻
一転、4人がラフなモードでトロッコタイムを楽しんだ「ベノム」では、1日目はうらたぬきが、2日目はセンラが指で“メ”ダンスを主導。そのままなだれ込んだMCタイム、特に2日目の自己紹介では笑ってしまうくらい寄り道しすぎて、そんな自由すぎる浦島坂田船がやっぱり愛おしい。
1日目は4人で歌うのは久々、「解散の危機もあった」ととなりの坂田。が間奏で明かした「Calc.」。2日目は活動10年を超える浦島坂田船とcrewの関係性も歌詞に重なった「しわ」。4人の比類なきハーモニーが永遠であれ、とあらためて思ったりもした。
2日目には「この時間を大事にしようね」と前置きして「サリシノハラ」を歌ったとなりの坂田。。1日目は「心做し」でハイタッチしてとなりの坂田。のあとを継ぎ、2日目は「みなさんの声が力になります!」と「ピエロ」で笑顔を見せたうらたぬき。「夕立のりぼん」で伸びやかなファルセットでも圧倒したセンラ。1日目の「命に嫌われている。」、2日目の「HEAVEN」で生と死と愛に向き合った志麻。感情爆弾と化した4人の歌声に、どうしたって心が動く。
それぞれスタジアムジャンパーに着替え、となりの坂田。とセンラが5年以上ぶりの「ウミユリ海底譚」でおどけながらダンスをしたり。「天ノ弱」ではうらたぬきがセンターステージで澄んだハイトーンを響かせ、メインステージの志麻が鋭いラップを重ねたり。坂セン、うら志麻の組み合わせもまた、至極よい。
センラ、となりの坂田。
うらたぬき、志麻
4人そろい、1日目は「懐かしいね」と4人で笑い合ってcrewもぐいぐい巻き込んでいった「メルト」、2日目はハイテンションに突き抜けた「カゲロウデイズ」へ。「歌ってみた」とともに歩んできた4人が歌うレジェンド的なボカロ曲は強い、強すぎる。
動画投稿をし始めたころや過去のライブを振り返っての思い出話に花を咲かせた4人、2日目は突然のフリースタイルラップでお互いの微笑ましい素行を暴露(!?)する場面も。長く一緒にいても、いや一緒にいればいるほど仲睦まじい4人の言葉のキャッチボール、いつまででも見ていられる。
「チャンカパーナ」では、振り向きざまからの連なりダンス、マイクスタンドを前に歌って踊って魅せた4人。ゴージャスなファンキーアイドルポップもこなしてしまうのが今の浦島坂田船だ。
うらたぬき
志麻
となりの坂田。
センラ
軽やかな足取りで「シャルル」の高低差あるメロディをさらりとなぞった志麻。1日目は「恋愛裁判」、2日目は「初めての恋が終わる時」と恋愛にまつわる揺れる心の機微をていねいに繊細に描いたセンラ。「SNOBBISM」で<喧嘩しようぜ>と治安悪めな歌でアオったとなりの坂田。「ローリンガール」で「もっと騒ごうぜ!」と呼びかけ、迫真のがなりボイスでもますますcrewを焚きつけたうらたぬき。一緒に口ずさむ人多数の客席、その熱量上昇は天井知らずだ。
「ラストスパートついてこられますか!?」とうらたぬきとセンラがそろったのは「リンカーネイション」。センターステージで背中を預け合うふたり、ラストのグータッチにも信頼感がにじむ。センターステージに立ち、「極楽浄土」で息ぴったりに歌い踊り、ラストポーズもばっちりきめた志麻とセンラ。カオスな「脳漿炸裂ガール」を歌ううらたぬきととなりの坂田。は、どんなアドリブを差し込んでもお互いに打ち返すという特殊スキルを両日で発揮。浦島坂田船の4人は、どんな組み合わせでもそれぞれの味わいと絶妙なコンビネーションが目にも耳にも心地よい。
うらたぬき、センラ
志麻、センラ
うらたぬき、となりの坂田。
再び、それぞれトロッコに乗り込んでアリーナ客席通路を進んだ4人。1日目は、うらたぬきの「青春しようぜ」という言葉から「ヤキモチの答え」を。2日目は、余裕の歌詞アレンジでも沸かせた「ロキ」を。そろそろライブの終わりが見えてきたところで、2日目にはあまりの名残惜しさにうらたぬきが「もう一度最初からやろう!」と言い出し、さすが臨機応変なバンドメンバーのおかげもあって「太陽系デスコ」を途中まで再披露することに。両日ともにそれぞれが思うかっこいいポージングからの本編ラストは、4人がアドリブも含め全力でみせきった「厨病激発ボーイ」だった。crewのことも目いっぱい楽しませたい、という気持ちを何年経とうといつだって行動で示してくれる浦島坂田船だから、crewは彼らを信じられるし全力で推せるのだろう。
浦島坂田船
浦島坂田船
アンコール1曲目は、1日目がcrewとのかけ合いにもグっときてしまった「Fire◎Flower」、2日目が「みなさんと一緒にいい年の重ね方をしていると思います。これからもよろしくお願いします!」とあらためてうらたぬきがメンバーの総意を口にした「地球最後の告白を」。そして、「歌ってみた」ライブ最後を飾ったのは、4人そろっての歌いだしからcrewの歓びの声が上がり、おどけながらもギュッと4人が寄り添って歌ったり、お互いの顔を見合わせたりしながら心を込めて歌った「Blessing」。浦島坂田船とcrewなら、<来世も>きっと恋し合ったままいられるはずだ。
オリジナルソングを歌うようになっても変わらずに原点を忘れず「歌ってみた」にリスペクトを捧げ、crewにもボカロPにも愛され続ける4人は、これからも一心に歌と想いをつないでいくに違いない。
浦島坂田船
浦島坂田船
文=杉江優花
撮影=小松陽祐(ODD JOB)、加藤千絵(CAPS)
セットリスト
2025.2.14-15 LaLa arena TOKYO-BAY
01. 太陽系デスコ
02. ロミオとシンデレラ
03. magnet
04. -DAY1 エンヴィキャットウォーク
-DAY2 恋愛裁判
05. -DAY1 林檎売りの泡沫少女
-DAY2 Just Be Friends(WANKO ver)
06. 独りんぼエンヴィー
07. アイのシナリオ
08. ベノム
09. -DAY1 Calc.
-DAY2 しわ
10. サリシノハラ
11. -DAY1 心做し
-DAY2 ピエロ
12. 夕立のりぼん
13. -DAY1 命に嫌われている。
-DAY2 HEAVEN
14. ウミユリ海底譚
15. 天ノ弱
16. -DAY1 メルト
-DAY2 カゲロウデイズ
17. チャンカパーナ
18. シャルル
19. -DAY1 恋愛裁判
-DAY2 初めての恋が終わる時
20. SNOBBISM
21. ローリンガール
22. リンカーネイション
23. 極楽浄土
24. 脳漿炸裂ガール
25. -DAY1 ヤキモチの答え
-DAY2 ロキ
26. 厨病激発ボーイ
[ENCORE]
27. -DAY1 Fire◎Flower
-DAY2 地球最後の告白を
28. Blessing