Bug Holic メンバーの個性をテクニックとともにポップなロックサウンドに落とし込んだ新作『共感覚』完成、進境著しいバンドの今現在を聞く

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Bug Holic

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バンド結成後、メンバーが揃い、さあライブを始めるぞと思った矢先、コロナ禍に見舞われ、いきなり活動が躓いてしまったものの、曲作りとレコーディングに専念することでバンドサウンドを磨き上げてきた。そして、2022年4月、ついにライブ活動を始めると、順調に動員を伸ばしてきたという。
そんな4人組ロックバンド、Bug Holic(以下、バグホリ)が前作『バグホ』から2年2ヵ月ぶりとなる2ndアルバム『共感覚』をリリースした。
メンバーそれぞれの個性を、ファンクやジャズにアプローチするテクニックとともにポップなロックサウンドに落とし込んだ『共感覚』の全11曲(CDバージョンはボーナストラックを1曲追加)。聴きどころはいろいろあると思うが、まずは彼らがそこで打ち出している新たなバンドサウンドに耳を傾けたい。
結成メンバーのふたりが元々、歌い手として活動していたことや“最強歌い手”と謳われるめいちゃんの「物の怪の類」にバンドとして参加したことから、ネット上のボカロPおよび歌い手界隈でも知られる彼らは、その新たなバンドサウンドとともに生身のロックバンドとして、さらに一皮剥けたいと考えているようだ。
結成時にまで遡ってバンドのバックグラウンドを聞かせてもらった上で、『共感覚』がどんなアルバムなのかメンバー4人に話を聞かせてもらった。ぜひ、彼らの発言から進境著しいバグホリの今現在を感じ取っていただきたい。

――バグホリがどんなバンドなのかというところからまず聞かせてください。大樹さんとYu-goさんが2018年にバンドを結成したことがそもそもの始まりだそうですが、それまで歌い手として活動していたおふたりがどんなふうに繋がって、なぜバンドを始めようということになったのかというところを詳しく教えていただけますか?

Yu-go(Vo):元々、そんなに仲が良かったわけではないんですよ。いや、悪かったわけではないんですけど、ネット上で繋がっているぐらいの関係だったんです。そもそも大樹は大阪でバンドをやっていて、僕もそれは知ってたけど、「そうなんだ。バンドやってるんだ」くらいの認識で。そしたら彼のバンドが活動休止というか、実質解散みたいな形になりまして。でも、彼は音楽を続けたいという意思はずっとあったみたいで、「新たにバンドをやるから一緒にやりたい」って急に声が掛かって。僕の歌を聴いて、やるなら僕とやりたいと言ってくれたんです。

――だったら一緒にやろうとYu-goさんも思ったわけですね?

Yu-go:そうですね。ただ、その時、僕はそこまで真剣に音楽をやってたわけではなくて、他にやりたいことがあるわけでもないから、せっかく声を掛けてもらったしやってみるのもいいんじゃないか、ぐらいの気持ちだったんですけど、大樹はすぐに大阪から東京に引っ越してきて。だから、バンド結成と友達として仲良くなるのが同時進行みたいな感じで始まったんです。

――大樹さんは大阪でやっていたバンドが活動休止してから歌い手として活動していたんですか?

大樹(Dr):そうです。でも、Yu-goよりももっと趣味の域でしたね。

――やっぱりバンドをやりたかった?

大樹:やりたかったです。いろいろなバンドから声を掛けてもらったんですけど、やりたいと思えるのがなくて。

――そんなとき、Yu-goさんとならできると思った。どんなところで彼とならと思えたんでしょうか?

大樹:歌声の魅力と歌唱力に尽きるんですけど、それに加えて、彼が作るメロディーがすごく刺さったんですよ。それが大きかったです。

Yu-go(Vo)

――その後、大樹さんの以前のバンドのファンだったという村上パシフィックカイ大空(Key)さん、村上さんと同じ大学に通っていたユーリさん、SNSにプレイ動画をアップしていたりゅーさんが加わって、2019年の夏にバンドとしてメンバーが揃いました。村上さんは2023年の秋に脱退してしまいましたが、ユーリさん、りゅーさんは、どんなところを認め合って、Yu-goさん、大樹さんと一緒にバンドをやりましょうとなったのでしょうか?

りゅー(Gt):僕は、いきなりすっごい長いメッセージとともにデモがSNSに送られてきたんです。

――それ以前に面識があったわけではないのに?

りゅー:そうです。で、そのデモを聴いたら、ボーカルのリズムの扱いが上手だったんですよ。そんなふうに音符で遊べるボーカルってあんまりいないから、へえって思って、その時、上京したてで友達がいなかったから、じゃあちょっと会ってみようかなって会ったのがきっかけでした。

――大樹さんとYu-goさんはなぜ、りゅーさんに連絡したんですか?

大樹:ぶっちゃけ、そこまでギターのことはわからないんですけど、わからないなりに、なんでこの人はネットに動画を上げてるだけなんだろうって思ったんですよ。ボカロの楽曲のギターカバーを上げてたんですけど、びっくりして。オリジナルと違うアレンジをしているんですけど、なんでその音を使うんだろう?みたいなのがいっぱいあって、めっちゃ惹かれました。実は、その日初めて動画を見て、連絡したんですよ。なんならギターを探し始めて、最初に見つけたのが彼だったんです。

――それぐらい惹かれた、と。りゅーさんはバンドはやっていなかったんですか?

りゅー:バグホリに出会うちょっと前まで地元の福岡でバンドをやってたんですけど、そのバンドをやめて、やることがなくなっちゃったからって東京に出てきたばかりの時、ちょうど誘われたんです。

――ユーリさんは村上さんに誘われたそうですが、どうしてバグホリに入ろうと思ったのでしょうか?

ユーリ(Ba):1回スタジオに入ってみないかみたいに言われて、曲を聴かせてもらったらけっこうかっこよかったんで、入ろうと思いました。

Yu-go:かっこよかったんだ(笑)。よかった。うちに入ってくれてありがとう。

大樹:「かっこいいと思った」っていうの初めて聞きました(笑)。

――こういう話、メンバー同士であまりしないと思うんですけど、おふたりはユーリさんのどんなところがいいと思ったんですか?

Yu-go:どこがいいも何も、正直、最初は村上が連れてきた子だからということぐらいしか思ってなかったというか、バンドの活動自体も今ほど明確になっていたわけじゃなくて、ほんとにこれからこのメンバーでどうやってバンドをやっていこうかって集まった中のひとりだったから。第一印象が云々よりもむしろ、今に至るまですごくがんばって、成長していることが僕らもうれしいし、そういうところをすごく尊敬しています。彼女はそういう素直なところがいいなって思います。

りゅー(Gt)

――メンバーを集めながら、大樹さんとYu-goさんはどんなバンドをやろうと考えていたんですか?

大樹:実は僕としてはヨルシカさんのようにテクニカルな女性ボーカルで、ボーカロイドが好きな人に刺さるような曲をやりたかったんですけど、Yu-goの歌を聴いたとき、男だとか女だとか関係なしに彼とやりたいと思ったので、「男性ボーカルのバンドと言えばバグホリ」って言われるようになってやろうと思ってました。

――なるほど。さて、ここからはメンバーそれぞれにどんな音楽に影響を受けてきたのか聞かせてもらえないでしょうか?

大樹:僕は音楽の入りはTHE BLUE HEARTSで、ドラマーとしてはUNISON SQUARE GARDEN。

――その後、聴く音楽の幅も広がっていったと思うのですが、ポイントポイントで影響を受けているバンドやアーティストもいるのではないでしょうか?

大樹:祖父の影響で子供の頃からクラシックを聴いてました。バンドはTHE BLUE HEARTS、あと、Yu-goと一緒なんですけど、GReeeeN(現GRe4N BOYZ)も聴きました。その後、高校時代にJanne Da Arc、Acid Black Cherryのyasuさんにめっちゃ影響を受けて、髪の毛を伸ばして歌ってました(笑)。

――Yu-goさんは?

Yu-go:僕は小学2年生の時、UVERworldをめっちゃ好きになりました。元々、アニメが好きなんですけど、UVERworldってアニソンをよくやられてるじゃないですか。アニメきっかけでUVERworldを知って、そこからUVERworldのアルバムも聴くようになって、中学生になる頃にはけっこう音楽を聴いてたんですけど、ミーハーだったから、みんなが知ってるバンドとかアーティストとかをずっと聴いてました。GReeeeNもそうだし、RADWIMPS、ONE OK ROCK、ELLEGARDEN。それこそACID BLACK CHERRYも聴きました。あと、MONKEY MAJIKもけっこう聴いてました。

――りゅーさんは?

りゅー:アジカンとTHE BACK HORNが大好きでした。中学生の時にラジオにハマるタイミングってたぶんあるじゃないですか? 周りのみんなが聴いてない音楽を聴いちゃってる、みたいな。そこでTHE BACK HORNを聴いて、次の日すぐにCDを買って聴いたらどハマりして。アジカンはアニメの主題歌で知ったんですけど。

――ギタリストとしては誰から影響を受けていますか?

りゅー:レッチリのジョン・フルシアンテです。いや、もう完全に憧れです。

ユーリ(Ba)

――最後にユーリさん、お願いします。

ユーリ:私はベースを弾き始めたのが大学に入ってからだったので、それまではボカロばっか聴いていて、バンドの音楽を聴いたり、好きと思うようになったのは、ボン・ジョヴィを聴き始めてからなんです。

――ベースを始めてから聴き始めたんですか?

ユーリ:いいえ、子供の頃から父の影響で聴いてはいたんですけど、ちっちゃい時と大人になった今とでは、やっぱり感性というか、気持ちも変わってくるので。もちろん好きで聴いてはいましたけど、改めてかっこいいなって思ったのは、やっぱりベースを始めてからでしたね。

――因みにベースを始めたきっかけは?

ユーリ:中学と高校で吹奏楽部だったんですけど、高校生の時、なんでかわからないですけど、コントラバスをやらされて。音大は三味線で行くつもりだったんですけど、将来、仕事にするなら三味線よりもベースだろうと思って、ベースを始めたんです。

――なるほど。ところで、今お話を聞きながらおもしろいと思ったのが、バグホリにはけっこうファンキーな曲が多いのに、ファンクを含め、ブラックミュージックを聴いてきたメンバーがレッチリのジョン・フルシアンテに影響を受けたとおっしゃっていたりゅうさん以外、いないということでした。

大樹:確かに。

――それなのに、なぜファンキーな曲が作れるんでしょう?

Yu-go:そこに明確な理由があるかと言われても正直、わからないです。

大樹:どうやって作っているのかという質問に答えるのは難しい。僕ら、曲によって作り方が本当にばらばらなんですよ。セッションからできる曲もあれば、りゅーちゃんがドラムまで一人で打ち込んでデモを作ることもあるので。でも、ファンクな曲が多いっていう自覚はないよね?

Yu-go:あー、1stアルバムの『バグホ』に入ってる「ハグレ」はそう?

 

――とか、新しいアルバムの1曲目の「TOXIC WONDER GIRL」とか、シティポップとも言える3曲目の「八月病」とかもそうだと思うんですけど。じゃあ、ファンキーな曲を演奏しているという意識はなくて、リズムアプローチやアレンジの一つとしてやっているという感覚なんでしょうか?

大樹:結果的にそうなったっていう。

大樹(Dr)

――なるほど。おもしろいです。さて、バンド結成直後にコロナ禍に見舞われたものの、コロナ禍が明けてからは精力的にライブ活動を行い、動員を伸ばしながら、2022年12月には前述の『バグホ』をリリース。順調に活動を続けてきたと思うのですが、2023年の秋に村上さんが脱退してしまいました。なぜ脱退したのかはさておき、村上さんのピアノがアンサンブルのウワモノとしてかなり活躍していたことを考えると、村上さんの脱退はバンドにとってけっこうピンチだったのでは? そのピンチをどうやって乗り越えてきたのか、今日はぜひ聞かせてほしいと思っていました。

大樹:どう言えばいいんだろう? もちろん、最初からいたメンバーがいなくなったわけですから、不安はめっちゃありましたよ。やっぱり、うちはギターが1本なんで。

――なるほど。そこで、「どうしよう?」と考えたわけですね?

大樹:どうしようっていうのはなかったです。いきなりやめちゃったわけではないので、メンバー全員、頭の片隅で彼がやめてからのことは考えていたと思うんですよ。特に、りゅーちゃんは「ピアノの穴は、俺が全部埋めてやる」みたいなことを言ってくれてたんですよ。

――そうそう。りゅーさんはけっこう大変だったというか、かなりがんばったんじゃないかって。

りゅー:いやー、でも、僕は僕で、こういうギターを弾いたらおもしろいだろうなとか、こういう曲に対してこういうアプローチしたら楽しいだろうなとか、ピアノがないならないで、そういうものとしていったん考えて、アレンジを投げたら、あとは大樹がなんかうまいことやってくれるだろうし、Yu-goもうまいこと歌ってくれるだろうって。で、それに対して、ユーリもがんばってくれるでしょうって、それぐらいの感じというか、みんなもそんな感じだった気がします。

――それぞれに臨機応変に対応していった、と。

大樹:そうですね。まさに。

――じゃあ、今回のアルバムはピアノが抜けた後の新しいバグホリのサウンドやアンサンブルをアピールするというテーマもあるわけですね? 

大樹:めちゃくちゃあります。

――では、ここからはそこを聞いていきたいんですけど、今回、新しいアルバムを作るにあたっては、どんな作品にしたいと考えていたのですか?

大樹:前作の『バグホ』の曲は、もちろん今聴いてもダサいとは思わないですけど、曲が完成して、「おっ、かっこいいな」って、ほぼ全曲そのままレコーディングしているんです。もちろん、どの曲もみんな大好きなんですけど、今回は曲が完成してから、何回も歌詞を見つめ直したり、アレンジを見つめ直したり、1曲1曲のクオリティをもっともっと高めようぜって作り上げたんです。その結果、めっちゃ変わったかどうかは僕らは客観的にはわからないですけど、明らかにそういうこだわりを持って作ったっていうのは前作とは全然違いましたね。

Yu-go:クオリティの底上げを目標にしてました。

――今回の曲は、『バグホ』のリリース後に作ったものばかりですか?

大樹:全曲そうですね。

――『バグホ』のリリースが2022年12月だから、それから2年ぐらいの間に順々に作ってきた曲が入っている、と。新しいアルバムを聴かせてもらって、前作よりもタフになったという印象がありました。ライブを意識しているのか、演奏の手数がちょっと減って、ライブでお客さんにがつんとぶつけられるサウンドになっているようにも感じました。

りゅー:それはめっちゃ話してました。

大樹:そうだね。それは作る前から言ってたね。

りゅー:ピアノが抜けるってなったぐらいから、ちょうどライブも忙しくなってきたんで、次からもうちょっとライブで演奏することも考えてギターのアレンジするわ、みたいな話はしてました。

――メンバーそれぞれのプレイは、Yu-goさんの歌を立てつつ、単なる歌の伴奏で終わらずにプレイヤーとしての個性や主張を、ちょうどいい塩梅で交えているところにセンスの良さを感じるのですが、今回、アレンジやプレイにおいては、どんなふうにアプローチしていったのか、パートごとに聞かせてもらえないでしょうか?

大樹:シンプルなプレイで歌を支えたり、わかる人にはわかってほしいと思って、めっちゃ変わったプレイをしたり、僕はその極端な差を楽しんでドラムを作ってるところがありますね。もちろん、聴いてきたバンドの影響も出ているとは思うんですけど、誰もまだ聴いたことがないフレーズって、たぶんもうないじゃないですか。でも、それができてたらうれしい、みたいなのはドラマーとしてちょっとあるんで。聴きながら「うん?」って、もう1回聴き直そうってなる人がいたらいいですね。僕自身がそういうドラムが好きなんだと思います。

――ドラムのプレイという意味で、この曲を聴いてほしいという推し曲はありますか?

大樹:2曲言ってもいいですか?

――もちろん、どうぞ。

大樹:5曲目の「ひねくれヒーロー」と10曲目の「冗談じゃない!」。この2曲のドラムのフレーズはかなりこだわって作ったんですよ。自分の手癖もふんだんに入れて、自分が好きだと思うドラムを叩いたり、逆に敢えてこれまでやったことがないフレーズをめっちゃ練習して入れたりしました。

 

――りゅーさんのギターは、さまざまなテクニックを閃かせながら、フレージングやプレイそのものはとてもエモーショナルで聴き応えがありました。

りゅー:曲を作る時はおおまかなコード進行だけ作って、Yu-goに渡しちゃって、彼からメロディーと歌詞が返ってきたら、それに対して細かく色づけしていくんですけど、自分としては、聴いている人が気づかないぐらいのギターを弾きたいと思っているんです。もちろん、ギターに耳を傾けたら聴こえるけど、それよりも曲全体として捉えてもらって、こういう物語の曲だったのかって、すっと聴き終わってほしいというか。プレイやフレーズを聴かせるのではなく、景色が見えるようなギターが弾きたいんです。

――でも、けっこう印象的なフレーズが多かったですけど。

りゅー:もちろん、出るところは出るんですけど。

――りゅーさんの推し曲は?

りゅー:「八月病」と「またね」ですね。

 

――「八月病」はワウを踏んだカッティングですか?

りゅー:そこも含め、この曲は割とシンプルなギターに徹しているんですけど、エンディングでアドリブでソロを弾いてフェードアウトするっていう、いかにもギターヒーローっぽいことをやらせてもらいました。あとシェーカーも振ったんですけど、それが大変だったという思い入れもあります(笑)。

――バラードの「またね」の聴きどころは?

りゅー:「またね」はそんなにギターを聴いてほしいところはなくて(笑)、この曲は僕の中で思い入れの強いエピソードを歌詞にしてもらったので。

――でも、ギターを泣かせまくっていますけど。

りゅー:あー、そうですね。自分を泣かすつもりで、風邪をひいた時に聴いたら泣いちゃうみたいなギターがいいのかなと思いながら弾きました。

――ユーリさんはどんなアプローチを?

ユーリ:前作から変わってないんですけど、誰の邪魔もしたくないというのが一貫してありましたね。歌は絶対邪魔したくないし、ギターとドラムの邪魔もしたくないから、とにかくシンプルでいきたかったです。前作はちょっと身の丈に合わないような演奏だったと思うんですけど、今回はけっこうシンプルに弾けたんじゃないかな。

――でも、フレーズが動く時はけっこう動いていますよね?

ユーリ:そうですね。でも、言われない限りは特に動きたくなくて、こうしてほしいって言われたことをやったら、結果、そうなったっていう。

――その動いているところとタイトにリズムを刻むところのコントラストがいいですよね。

ユーリ:ありがとうございます。でも、言われるまではほんとにシンプルで。

大樹:いや、ユーリが送ってくるデモのベースすごいよ。

ユーリ:そんなことないと思うよ。

 

――ベースソロを弾いている曲がありましたよね?

大樹:4曲目の「だからテルミー」ですね。

ユーリ:あー、それは初めて、自分からベースソロを弾いてもいいかなって言いました。

――なぜ、ベースソロを弾きたいと思ったんでしょう?

ユーリ:気持ちいいんじゃないかなって。聴く人たちももしかしたら心を動かされるんじゃないかなって、なんとなく思ったんですよ。

――じゃあ、ユーリさんの推し曲は「だからテルミー」ですか?

ユーリ:そうですね。それと「またね」と「冗談じゃない!」もです。その2曲はそんなに動かずにベースとして支えることに重きを置いているんですよ。だから、特に聴いてほしいってなったら、その3曲ですね。

 

――そして、Yu-goさんは今回、ボーカリストとしてどんなふうに取り組んだのでしょうか?

Yu-go:前作にひきつづきメロディーと歌詞を作らせてもらったんですけど、聴く人たちのことを意識するようになったのは、今回、だいぶ変わったところですね。前作の時は曲の作り方なんてわからなかったから、好き勝手にというか、僕の世界観は僕がわかっていればいいという気持ちだったんですけど、そこは180度変わったと思います。

――ライブを重ねる中で聴く人たちのことも意識するようになっていったんですか?

Yu-go:ライブも含め、いろいろなところで勉強させてもらってるうちに段々、そういう考えになってきました。今回のアルバムは前作と比べて、中の人の感情が見えるというか、より感情的な曲が多いという印象ですね。だから、親しみやすいアルバムになったと思います。前作の時は、「こいつら何者なの?」みたいな、いい意味でも悪い意味でも、ちょっと冷たい感じというか、寄り添ってるのか、突き放してるのか、あんまりわからないところがあって。そのミステリアスなところが良かったっていうのもあるんですけど、今回のアルバムは寄り添ってる感じがある。それは歌詞とメロディーが変わったからだと僕は思ってます。

――中の人が見えるというのは、歌詞の主人公のことですか、それとも歌詞を書いているYu-goさんのことですか?

Yu-go:曲によっては主人公の場合もあるし、そうじゃない場合もあるし。でも、いずれにせよ、これってどういう曲なんだろう?って一生懸命考えなくても、ああ、こういう曲なんだってわかると思います。今回のアルバムは、そういうところをけっこう意識してますね。

 

――そう言えば、さっき「またね」はりゅーさんの思い入れのあるエピソードを歌詞にしたという話が出ましたが。

Yu-go:きっかけはそうでした。そこに僕の実体験も織りまぜながら、主人公がりゅーちゃんでも僕でもない、これまでなかったような曲になったのかなって思います。

――「またね」は思いっきり歌い上げたエモーショナルな歌も聴きどころです。

Yu-go:自然とそんな感じになりました(笑)。

――今回、ボーカリストとしてはどんな成長がありましたか?

Yu-go:歌はそうだなぁ、いろいろなところで絆が感じられるアルバムになったのかな。前作の時は、プロデューサーさんもエンジニアさんもはじめましてで、いろいろ探り探りやってたんですけど、今回はエンジニアさんとも絆を感じられたというか。ずっとやってもらってるエンジニアさんにやってもらったんですけど、レコーディング中にボーカルプロデュースもやってもらって、言われたことに対して、ぱっと応えられるようになったのはすごい成長だと思いました。あと、自分が気持ちよく歌うことが大事ではあるんですけど、今回はそれだけじゃなくて、聴く人たちがどう感じるのかってことも考えて、テイクを選んだりもしました。

――そんなYu-goさんの推し曲は?

Yu-go:みんなと違う曲にしたいけど、いや、でも、「八月病」は個人的にすごく好きです。こういうゆったりしたメロディーって、うちには珍しいっていう意味で、「八月病」と「だからテルミー」にします。

――メランコリックな曲調が多い中で「だからテルミー」のような明るい曲は珍しいという認識がご自身でもあるわけですね?

Yu-go:前作の「だって」が似たような曲調ではあるんですけど、確かに珍しいと言えば珍しいというか、あんまりやらない感じだと思います。

――「だからテルミー」を聴いていると、ライブでお客さんがワイパーしている光景が浮かびます。

Yu-go:そうですね。「だって」よりはライブを意識していたというか、ライブを意識して作った「だって」みたいな位置付けになるのかな。ライブでやったら楽しいと思います。

――アルバムのリード曲は、すでにライブでもやっている「冗談じゃない!」ですか?

大樹:いや、「またね」です。

――バラードで聴かせる曲だから?

大樹:そういうことになるんでしょうけど、曲ができた時から、まだ全曲揃ってないにもかかわらず「またね」でしたね。

――確かに、そう思わせるだけのパワーがある曲だと思います。ところで、歌謡ロックなんて言ってみたい「冗談じゃない!」のイントロのギターリフは、誰が考えたんですか?

りゅー:僕です。

――キャッチーですごくいいですね。この間、ライブで初めて聴いたとき一発でやられました。

りゅう:ピアノが抜けてから、印象的なリフを作ることをめっちゃ意識してるんですけど、その成果が出ました。

 

――そして、7曲目のフォーキーなバラード「5月の餞~めいちゃんと全ての歌い手に捧ぐ」はバグホリがカバーした「妄想疾患■ガール」の作者である大柴広己さんとの共作です。

大樹:僕たちは大柴さんが歌い手のめいちゃんに提供した「物の怪の類」のアレンジと演奏を担当させてもらったんですけど、めいちゃんが活動休止することになったとき、何かお返しをしたいと思ったんです。もちろん、引退ではないから、前向きな活動休止だとは思うんですけど、活動休止を選んだのはやっぱり多少なりとも負の感情もあるんじゃないか、だったらなおさら何かしたいと思って、大柴さんに共作を提案したら、「俺もそう思ってたんだ」みたいに言っていただけて、今回の共作が実現しました。

――共作はどんなふうに?

大樹:2日間の出来事だったんですよ。

――え、2日間!? 曲のアイデアを持ってきて、一緒に作りあげていったみたいなことだったんですか?

Yu-go:そうです。もう現地で。

大樹:レコーディングしながら手を加えていくみたいな。場所は一つだったんですけど、大柴さんとYu-goが歌を、楽器隊がアレンジを、みたいに完全に役割分担して、たまに会議を挟みながら、1日目におおまかな方向性を固めて、2日目にレコーディングするっていう。

Yu-go:怒涛の2日間でした。

大樹:でも、それができたのは方向性がもうそれしかなかったというか、歌を届けたい人っていうのが明確すぎたんで、一直線にゴールまで行けた感じでした。

――さて、『共感覚』というアルバムタイトルはどんなところからつけたのでしょうか?

Yu-go:僕がいろいろなアイデアをぽんぽんと出していった中から、みんなで決めたんですけど、いろいろな意味が込められているアルバムでもあるし、聴く人たちにとってこのアルバムの意味を、それぞれに感じ取ってほしいという思いを込めて、このタイトルにしました。

――なるほど。虎が牙を剥いているジャケットの写真がこのアルバムに込めたみなさんの意気込みを物語っていると思うのですが、裏ジャケの鋭い目をした梟はバグホリの未来を見据えているようにも思えます。今現在、バンドはどんな目標を持っているんでしょうか?

大樹:Yu-goと僕が口癖にように言っているのが「アニソンやりたいね」なんですよ。

Yu-go:アニソンやりたいですね。

ユーリ:何かタイアップが取れたらいいな。

――なるほど。関係者が目にするかもしれないからしっかり書いておきましょう。りゅーさんはいかがですか?

りゅー:そうだなぁ。個人的な話になっちゃいますけど、僕のギターを聴いて、ギターを始めてくれる人がいる、みたいな存在になりたいって思います。

――ありがとうございます。最後に、4月12日に下北沢CLUB Queで開催する『共感覚』発売記念のワンマンライブ『LIVE共感覚』の意気込みを聞かせてください。

Yu-go:前回、2024年に開催したワンマンライブがターニングポイントだったというか、いろいろなことに気づけたライブだったんですよ。そこからライブに対する意識がけっこう変わってきたことも含め、いろいろな意味でのリベンジというか、成長した姿を見せられるかなっていうのはすごく思っています。正直、前回はけっこう悔しい思いをしたんです、個人的に。だからこそ、今度のワンマンは見にきてくれた人全員に「歌ってるんだぞ!」「やってるんだぞ!」っていうのを絶対に見せたいと思ってます。

取材・文=山口智男
 

ライブ情報

LIVE共感覚
2025年4月12日 (土)下北沢CLUB Que
開場:18:00 / 開演:18:45

【出演】
Bug Holic
 
【Ticket】
一般:前売 ¥3,500 / 当日 ¥4,000(+ドリンク別¥600)
Teenager割引(20歳未満):前売 ¥2,000 / 当日 ¥2,500(+ドリンク別¥600)
※価格表示は全て税込み
※Teenager割引は公式HPからの予約のみとなります。当日会場のバンド受付にて身分証明書を提示ください。

【発売日】
CLUB Que店頭先行販売(16:00〜21:00):1月31日(金)〜
イープラス:2月1日(土)〜 https://eplus.jp/sf/detail/4262820001-P0030001
Bug Holic予約:2月1日(土)〜 CONTACTフォームのお問い合わせ内容に「4/12 」と希望枚数を必ず記入いただき、送信してください
【お問い合わせ】
OFFICEQUE:03-5433-2500

リリース情報

アルバム『共感覚』
2025年2月19日発売
Streaming & Download
EDCE-1047 ¥3,000(税抜¥2,727)
<収録曲>
01.TOXIC WONDER GIRL
02.BADDAY
03.八月病
04.だからテルミー
05.ひねくれヒーロー
06.またね
07.五月の餞~めいちゃんと全ての歌い手に捧ぐ
08.シトラス
09.イヤイヤ
10.冗談じゃない!
11.不完全ランデブー
<CD Only Bonus track> 
12.音楽少女バグキュア 
  • イープラス
  • Bug Holic
  • Bug Holic メンバーの個性をテクニックとともにポップなロックサウンドに落とし込んだ新作『共感覚』完成、進境著しいバンドの今現在を聞く