『スター・ウォーズ』メドレーでバズった826aska、100会場目の記念すべきステージへ「エレクトーンの可能性を感じてもらいたい」

インタビュー
音楽
2025.3.21
826aska 撮影=浜村晴奈

826aska 撮影=浜村晴奈

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欧米のオルガン文化を吸収し、ヤマハが独自に開発・発展させた日本生まれの鍵盤楽器・エレクトーン。そんなエレクトーンを操るアーティストとして、いま注目を集めるのが23歳の若きプレイヤー・826aska(ハチニイロクアスカ)だ。2015年、14歳のときにYouTubeにアップした映画『スター・ウォーズ』メドレーの演奏動画が海外で話題となった彼女は、現役高校生だった2019年にメジャーデビュー。昨年には5周年を迎え、その集大成として『826aska Live at Major Debut 5th Anniversary』と題した東阪でのスペシャルライブを開催することに。去る3月1日(土)には東京・日本教育会館一ツ橋ホール公演を盛況に締めくくり、3月23日(日)には大阪・松下IMPホール公演が間近に迫る。しかも、大阪公演は100会場目のライブというおめでた尽くしの中、SPICEでのインタビュー初登場! 等身大の愛らしいキャラクターの内ににじむ、ステージへの揺るぎない思いを聞いた。

826aska

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●たくさんの音色を出せることが本当に楽しかった

――5歳からピアノを、8歳からは並行してエレクトーンを習い始めることになったと。お母様が演奏されていたことで、エレクトーンにも興味が向いたんですね。

その後、ピアノの先生が変わったことをきっかけにエレクトーン1本に絞ることになって。ピアノは趣味で続けています。

――鍵盤楽器というカテゴリーでも、エレクトーンはかなり特殊。上段の鍵盤と下段の鍵盤、さらにペダル鍵盤で演奏する独特のスタイルで、大変な楽器とも思えますが、どういった魅力を感じられますか?

ピアノからエレクトーンを習い始めた当初は、たくさんの音色を出せることが本当に楽しくて! 約1,000種類の音色を表現できるので、自分の好きな楽曲を原曲と同じように再現できるのが面白かったですね。また、エレクトーンは自分でさまざまな音色を組み合わせて、オリジナルのデータにできる「レジストレーション」という演奏スタイルがかなうことも大きな魅力です。

――8歳頃からエレクトーンを弾く様子をYouTubeへ投稿し始めていたところ、14歳のときにアップした『スター・ウォーズ』メドレーの演奏動画が世界的な注目を集めたことが活動のきっかけの一つですよね。演奏にはどのような準備が必要なんでしょうか。

『スター・ウォーズ』は楽譜やレジストレーションデータが販売されていたので、当時はそれを使って練習するという作業だったんですけど。(プロである)今はどうだろう……。本当に曲によって違うんですが、2日間の作業でできちゃった曲もありますね。

――スゴイ!

例えば、「ビッグブリッヂの死闘」(ゲーム『FINAL FANTASY V』のBGM)は、短めの楽曲なんですが、耳コピから練習も含めて2日間くらいだったかな。逆に映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』の「彼こそが海賊」だと、1カ月くらいじっくり考えながら作りました。オーケストラ・サウンドなので、音色もたくさん使いましたしね。

――確かに! 聴いていても非常に複雑さを感じられます。カバーはそういった流れを踏む一方、826askaさんのキャリアを語るにはオリジナル曲も外せません。意外にも鼻歌から作られるそうで。

そうなんですよ。こういう音にしたいなというイメージを元に、鼻歌を鍵盤の楽譜に起こして、想像しながら音色をセレクトしていく感じです。

――出来上がったら、意外な形になることも。

あります、あります! もう、そんなことばっかり。

●どんな道に進んでも、エレクトーンは続けていきたいと思っていた

826aska

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――中学時代には吹奏楽部に入られていたそうで、そこでさまざまな楽器と触れ合ったことも基板にあるんだろうなと感じました。

兄が吹奏楽で打楽器をやっていたのでかっこいいなと思って、私も同じく打楽器を担当していました。そのときに、本物のいろんな楽器の音色に触れたことは、エレクトーンでの表現にも生かせていると思います。タッチの仕方や弾き方について、その楽器の生音を意識することもありますね。

――エレクトーンのような単独演奏、吹奏楽のようなみんなで演奏するスタイルと、そのどちらも知っているというのは、かなり強みなんじゃないでしょうか。

確かに。エレクトーンは一人でやるのでちょっと寂しいんですけど、合奏はみんなで協力してやるのが楽しかったな……とかも思いながら(笑)。『スター・ウォーズ』で注目していただいたのが中2、初めての単独ライブが中3の春だったので、いろいろと活動する中で時間が限られることもあって。高校からは部活には入らず、エレクトーン1本に絞ろうと。

――実際、その頃は将来……今の自分の姿はイメージしていましたか?

どうだろう……。正直に言うとプロになりたいとか、強く志を持っていたわけではなくて。ただ、楽しくて弾いていただけなんです。例えば、音楽とは違う道に進んだり就職したりしても、エレクトーンは続けていきたいなと、そういうビジョンでやっていましたね。

――そんな中、2019年の高校2年生のときにメジャーデビューが決まって。当時は「現役高校生エレクトーン・プレイヤー」という、あまり聞き馴染みのないキャッチフレーズがついて。日本初じゃないでしょうか。

「現役高校生YouTuberエレクトーン・プレイヤー」……みたいなフレーズだった気がします。私って、YouTuberなんだ!? みたいな(笑)。

826aska

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――初期の動画では、ぬいぐるみを傍らに置きながら「となりのトトロ」を演奏している姿がめちゃくちゃかわいかったですが、近年だと、ドラマ『半沢直樹』のテーマではスーツを着ていたり、アニメ『進撃の巨人』での衣装が世界観とマッチしていたりと、聴くだけでなく観るのも楽しいです。

YouTubeを始めた当時は、定点カメラだけだったんですが、今では機材もかなり増えたので、カメラのアングルにも変化をつけられたりしています。

――そもそも『スター・ウォーズ』で注目を集めた2015年当時は、YouTubeのフォーマットはあったものの、まだ今ほど一般的じゃなかったというか。世界にまで広がるなんて! という感じですよね。

あの頃はそうでしたね。自分も携帯電話を持ってる年齢じゃなく、SNSも見ていませんでしたし。母に、「こんなに盛り上がってるよ!」って見せてもらって、驚いたくらいで。

――YouTube発のアーティストで言うと、かなり先駆けですね。

●ライブに来てくれるお客さんと向き合ったとき、意識が変わった

826aska

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――デビュー前の2018年からは、すでに本格的なコンサートツアーを行っていましたが、以降も毎年たくさんのステージに出演し、ツアーも途切れていません。パフォーマンスにおけるこだわりもあるんだろうなと。衣装についても印象的です。

足元がスッキリ見えるようには意識していますね。フロントがミニ丈で後ろが長めのスカートなんかがお気に入りで。ペダル部分の動きが分かりやすいだけでなく、体全体を大きく見せられるんですよ。

――実際は小柄な826askaさんですが、パフォーマンス中の躍動感を感じさせるのは、そういったディテールを大切にされているからなんですね。

エレクトーンって、どこかクラシカルなカチッと聴くイメージがあるかもしれないんですが、気取らず楽しんでほしいという思いがあるので、衣装にはキラキラした素材を取り入れるなど、エンターテイナーであることを目指しています。エレクトーンをやっているお子さんにも、あんなふうにステージに立ちたいって感じてもらいたいなと思っていて。

――まさに、実際そういったお声が上がってますしね。ところで、学生時代のライブ映像の中で、「練習が苦手だ」と話しておられて。

特に、習い始めた8歳頃が最も練習したくない時期だったな(笑)。

――遊びたいとか、他にも夢中なことはたくさんある年齢ですよね。そもそも826askaさんのご家族がスタッフもされているとのことで、正直オンもオフも全てがバレているわけじゃないですか(笑)。「練習しなくていいの?」とか。

言われてましたね〜(笑)。

――でも、今の826askaさん……例えばライブDVDの特典映像などにある、楽屋でのストイックな様子を垣間見ると、もう練習嫌いな姿は全く感じられない。

メジャーデビューを機に、いや、ライブを機にかな。意識が変わったのかなと思いますね。自分のために時間を割いて、遠方からも来てくださる方を見て、もう練習嫌いとか言ってられないやという気持ちになって。

――自身で切り替えて成長されていったのはすごいことです。

でも、言われて気付くこともたくさんありましたね。一番理解してくれて、信頼している家族のサポートがあったからこそです。今はもう不安で、とても練習なしではいられないですね(笑)。本番ギリギリまでずっと確認してます。

――その結晶がステージに詰まっているんですね。

●客席のみんなと一体になって楽しみたいから

826aska

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――あるライブ映像では、826askaさんが音出ししつつもエレクトーンから離れて、クラップで客席を盛り上げている姿を見て、新しいエレクトーンの使い方だ!と思いました。

うれしい! 最初はあまりそういうことはしてなかったんですよ。ただ演奏しておしゃべりして……だったんですけど、弾いてるとその場からは動けない。みんなのところへ行きたいのに。すごくもどかしい気持ちがあって。やっぱり会場と一体になって楽しみたい。面白かったなと思ってもらいたいので。ライブを重ねていくうちにそういうスタイルになりましたね。

――そうやって使い手によって新しい魅力が出せるんですね。では、3月1日(土)に終えられた東京・日本教育会館一ツ橋ホール公演についても伺えれば。5周年ライブ、いかがでしたか?

すごく盛り上がりました! 皆さんお祝いムードいっぱいで来てくださって。ライブのあとには、ツーショット撮影会も企画したんですが、「おめでとう!」とか「楽しかったよ」と言ってもらえるのがすごくうれしかったな。5周年を機に久しぶりにライブへ来てくれた方とかもいらっしゃって。

――何やら、ハプニングもあったそうで。

この日、なぜか1曲目から、私が音を確認するための足元のスピーカーが鳴らなかったんです。私だけ音が聴こえない状態。2曲演奏してから、ようやく「音を上げてもらえますか?」と言って。皆さん笑ってくださってよかった(笑)! エレクトーンからも音は出てるんですけど、ステージが広いし、手拍子とかもあるので全然負けちゃう。客席側のスピーカーだけを頼りに演奏しました。初めてでワクワクしちゃいましたね。いろんなアーティストさんが、PAさんへ「音を上げてください」って言う、あの感覚がコレなのかと。楽しんでやってました(笑)。

――何でもポジティブに変換! さすが、たくさんの場数を踏まれているのを感じます。ちなみにライブ自体はこれまでの道程をたどるような感じに? 3月23日(日)の大阪・松下IMPホール公演に向けて、少しネタバレをもらえますか?

2時間にわたって今までのアルバムの中からも演奏します。大阪でも『パイレーツ・オブ・カリビアン』はやりたいな。自分でも好きな曲ですし、弾いていてもかっこいいなと思いますね。

――それは喜ばれます! 一人で演奏されている以上の厚みを感じるというか。自信作の一つですよね。また、これまでも大阪でのライブはたくさんありましたが、何か大阪ならではの、その土地のカラーなんかは感じられますか?

ありますね。やっぱり大阪は濃い! 盛り上げ上手で明るいなと感じます。ナニワやな〜って(笑)! 地域によって、それぞれの色がありますよね。

――最後に、当日来てくださるお客様へメッセージをお願いします。

どの世代の方でも楽しんでいただけるよう、必ず知ってる曲があるように……そんなセットリストを考えています。たくさん演奏しますので、エレクトーンの可能性を感じてもらえるようなライブにしたいですね。魂を込めて、曲に思いを込めてお届けしますので、ぜひ遊びに来てください。エレクトーンの迫力を体感してもらえたらなと思います。

――5月18日(日)には、沖縄・桜坂セントラルにて『826aska 100ヵ所達成記念LIVE~記念にみんなでお疲れ打ち上げ!~』も控えています。記念すべき100会場目のステージ、そして打ち上げともに楽しみにしております!

826aska

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取材・文=後藤愛 撮影=浜村晴奈

公演情報

メジャーデビュー 5周年記念 ライブ
『Live at Major Debut 5th Anniversary』
日程:2025年3月23日(日)
会場:松下IMPホール
 〒540-6301 大阪府大阪市中央区城見1丁目3-7
:プレミアム席 8,260円、指定席 6,000円
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