山崎育三郎が30代最後に挑むコンサートへ込めた想い「エレガントな空間をみんなで一緒に楽しみたい」
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山崎育三郎
山崎育三郎が30代最後の年に、自身の集大成とも言えるフルオーケストラコンサートを開催する。『billboard classics 山崎育三郎 Premium Symphonic Concert Tour 2025 ~Eleganza~』と銘打ち、美しさと品格をまとう優雅な音楽会がテーマ。東京・サントリーホールを皮切りに、大阪、静岡、北海道、岡山と全国を巡りながら、これまでの感謝を伝えるツアーとなる。
自身が企画から携わったオリジナルミュージカル『昭和元禄落語心中』に出演中の山崎に、公演の合間を縫って話を聞くことができた。山崎はミュージカルからテレビの世界へ飛び込んだ激動の日々を振り返りながら、30代の締めくくりとなるコンサートへの想いを終始穏やかに語ってくれた。
■「日本のミュージカルの新しい扉を開くことができると信じていた」
――「オリジナルミュージカルを作りたい」という夢を持っていた山崎さんですが、今まさにミュージカル『昭和元禄落語心中』でその夢を実現しています。どんな気持ちですか?
ずっと昔からの夢だったので、とても不思議な感覚です。20代前半の頃に、韓国発のオリジナルミュージカル『サ・ビ・タ』に出演させていただきました。韓国で製作発表があったのですが、そこで韓国のクリエイターのみなさんが「僕たちはブロードウェイ、ウエストエンド、ウィーンなどで生まれた西洋のミュージカルも好きだけれど、韓国のオリジナルミュージカルを世界へ発信したいんだ」と話していたんです。彼らの熱意に圧倒されました。
僕も日本でオリジナルミュージカルを作りたいという想いはありましたが、ミュージカルを作るには大勢の人の協力が必要です。当時の僕はまだまだ若手で、とても実現することはできませんでした。なので、まずは自分自身が頑張って、いざミュージカルを作ろうと思ったときに協力してもらえるような状況を作っていこうと思ったんです。20代はミュージカル、29歳からはテレビの世界へ飛び込み、いろいろな出会いや経験を積み重ねてきました。それらが今ようやく奇跡的に結びつき、たくさんの方の協力を得て、ミュージカル『昭和元禄落語心中』のロングラン公演を大劇場で実現することができたんです。
――ミュージカル『昭和元禄落語心中』は、山崎さんが2018年にドラマ版に出演したことがきっかけとなってミュージカル化に至ったそうですね。
ドラマ版に出演したときに、これはミュージカルでも絶対にうまくいくという直感があったんです。同時に、同じ事務所の古川雄大と明日海りおさんの三人でミュージカルをやりたいという企画もありました。二人がこの作品の役にきっとハマるはずだと確信していたので、ぜひやってもらいたいと話をさせてもらったんです。ありがたいことに、自分の想像以上の公演が今できています。
――ミュージカル『昭和元禄落語心中』の初日は、建て替えのため一時休館する現・帝国劇場にとっての最後の日(2025年2月28日)でもありました。
すごく運命を感じましたね。帝国劇場は僕にとって子どもの頃からの憧れの場所で、俳優として育ててもらった場所でもあります。そんな大事な場所の最後の日に、自分の新しいスタートを切れたことに感動しました。まだ公演中でその最中にいるのですが、今でもその感動がずっと続いているんですよ。
――オリジナルミュージカルを作るにあたって、どんなことにこだわりましたか?
特にこだわったのは、僕たち日本人にしかできないミュージカルを作ることです。今まで海外からの輸入ミュージカル作品にたくさん出演させていただいた経験があるからこそ、そこを大事にしました。日本人がミュージカルを作る意味を改めて考えたんです。日本を題材にしたミュージカルはうまくいかないと言われることも少なくありません。でも、そこでいい作品を作ることができれば大きな意味があると思いましたし、日本ならではのミュージカルが広がっていくきっかけになるかもしれないと思いました。僕と(古川)雄大と明日海(りお)さんの三人ならば、西洋の題材のほうが誰もがイメージしやすく、「いいね」と思ってもらえる作品を作れるだろうなとは思いました。でも、だからといってそうはしたくなかったんです。失敗する可能性もあるかもしれないけれど、落語×ミュージカルというみんなの想像を超える作品だからこそ、日本のミュージカルの新しい扉を開くことができると信じていました。幕が開くまでは不安もありましたが、そこに飛び込まない限り僕たちが挑戦する意味もないですし、ワクワクしないなと思ったんです。
――結果、連日満席の大成功を収めています。山崎さんはいつも“ワクワク”することを大事にされていますが、日々どんなことにワクワクしますか?
こんなことをしたらみなさんが喜んでくれるんじゃないかな、と考えている時間が一番好きですし、ワクワクします。自分の中でアイディアがパッと閃いたときに、心が動いてドキドキするんです。そういう瞬間を常に探しているのかもしれません。『昭和元禄落語心中』をミュージカルにしようと閃いたときも、最初は「やめたほうがいい」という周りからの声もありましたが、だからこそワクワクしました。反対の声があればあるほど、「これは面白いミュージカルが作れるぞ」と思ったんです。
日々の仕事を振り返ってみると、予定調和じゃない出来事にワクワクしているのかもしれません。今はミュージカルに出演している日々ですが、本当に一度たりとも同じ公演にはならないんです。例えば、客席に笑い声が大きいお客様が数名いるだけで、1000人以上のお客様全員が引っ張られてドッカンドッカンと笑いが生まれるんです。でも、たまたま大声で笑う方が客席にいない公演だと、同じシーンなのにまったく笑いが起こらないときもあります。演じているこちらは特別何かを変えたつもりがなくても、ほんの数人のお客様のテンションの違いで客席全体の受け止め方が変わるので、演じていてすごく新鮮で面白いんです。舞台上でのお芝居のやり取りも毎公演違っていて、「雄大、今日はこうきたな」「明日海さん、今日はこっちなんだ」と、お互いに集中して今この瞬間を役として生きています。そういう場所にいられることが本当に楽しいんです。僕がMCを務めているテレビ番組『おしゃれクリップ』では、毎回違うゲストの方が来て話をするのですが、常にワクワクしかありません。台本ではなく、自分が心から興味を持ったことを聞いたときに生まれる会話は本当に楽しいんです。今この瞬間に目の前で何が起きるのかということに、常に敏感な人でありたいなと思います。
■「エレガントな空間をみんなで一緒に楽しみたい」
――公演で落語漬けの日々を送っている山崎さんですが、5月からはフルオーケストラコンサートが控えています。やはり落語を話す感覚とオーケストラで歌う感覚はまったく違うのでしょうか?
落語と歌には意外と通ずる感覚があるなと感じています。歌を歌うときは、音楽が鳴った瞬間から細い糸がピーンと伸び始めるイメージが僕にはあるんです。とても細くて繊細な糸が切れないように、ずっと緊張感を保ったまま歌い続けるんですね。ときにはそれがドラマチックになったり、音が小さくなったり、糸自体は変化していくけれども絶対に切れさせない。糸が切れると、聴いている人の集中が途切れて歌の世界から外れてしまうんです。本当に歌がうまい人は、この見えない糸がずっと繋がっているんですよ。
オーケストラをバックに歌うときは、オーケストラ奏者のみなさんと指揮者の方と一緒に糸を紡いで波に乗っていく感覚があるんです。ドラムのリズムに合わせて歌うのとは違い、オーケストラのときは音そのものが揺れて動くイメージがあって、お客様と空間を共有しながら自分で空気を動かしていくんです。落語もこれと同じ感覚です。喋り始めたらどんどん糸が伸びていって、決められたリズムではなく自分の感情のリズムで喋るところが、オーケストラで歌う感覚と似ていますね。
――コンサートのサブタイトル『Eleganza』(エレガンツァ)には、どのような想いを込めましたか?
今年は僕にとって30代最後なので、これまでの経験が滲み出るようなエレガントな存在でありたいという想いがあり、「Eleganza」という言葉に繋がりました。品格や自信があって背筋が伸びている大人って、かっこいいですよね。フルオーケストラコンサートのエレガントな空間でみなさんに会いたいという想いもあります。タキシードやドレスを身に纏ったオーケストラのみなさんがいて、そこに来るみなさんもエレガントな装いで、一緒にその空間を楽しみたいんです。
――コンサートのセットリストはどんなものになりそうですか?
2025年は帝国劇場のクローズという大きな出来事があったので、『レ・ミゼラブル』『モーツァルト!』『エリザベート』といった、僕が帝劇で立ってきた作品をみんなで一緒に思い出していきたいなと構想しています。『昭和元禄落語心中』『トッツィー』『ファインディング・ネバーランド』など、近年出演したミュージカル作品のナンバーはもちろん、自分が出演したことがないミュージカル作品からも選曲したいです。どんなステージでもひとつは今までにない何かを届けたいと思っているので、今回は英語での歌唱に挑戦しようと考えています。他にもフルオーケストラならではのナンバーや、僕のオリジナル曲、自分の原点でもあるディズニー作品の楽曲もお届けする予定です。僕のコンサートはお子さんを連れて家族で来てくださる方も多いので、幅広い世代の方に楽しんでもらえたら嬉しいです。
――山崎さんのコンサートは、未就学児入場可※(3歳以上
そうですね。子どもがいるパパやママにも、エンターテインメントを楽しんでもらいたいんです。今回のコンサートに限らず、僕のコンサートでは子どもの入場は常にできるようにしてもらっています。子どもたちにも本物のライブエンターテインメントに触れてほしいですしね。自分自身も小さいときから様々なコンサートやミュージカルへ連れて行ってもらいました。それらが今の僕を作っていますし、自分の中ですごく大きな経験になっているんです。
――ご自身のコンサートで、舞台上から小さなお子さんの姿はよく見かけますか?
何度もありますよ。子どもですから、どうしても泣いてしまうこともあります。そういうときはMCで積極的に絡んでいくんです(笑)。子どもたちが大好きな曲「にじ」を歌ってみたり、「大丈夫だよ~」と声をかけたり。今までいろんなエンターテインメントをやってきましたが、どんなところでも子どもの存在は大事にしていきたいなと思うんです。僕のコンサートに子どもたちが来たときは、会場のみんなで彼らを見守って、彼らが自由に存在できるようなあたたかい空間を作っていきたいですね。
――今回のコンサートは、30代最後を締めくくるのにふさわしいものになりそうですね。
30代はノンストップで走り抜けた激動の10年だったので、その集大成のようなコンサートになると思います。ミュージカルの世界からテレビの世界へ飛び込んだときに「ミュージカルがお茶の間に広がったらいいな」「ミュージカルの仲間たちがテレビでも活躍できる環境を作りたいな」と思っていたことが、10年経ってようやく実を結んだ感覚があるんです。先日、現・帝国劇場の最後の日を追った番組(日本テレビ『さよなら帝国劇場 最後の1日 THE ミュージカルデイ』)の放送がありましたが、地上波でミュージカルの生放送番組を作ってもらえるなんて、僕からしたら本当に大感動なんですよ。それはもちろん僕だけじゃなくて、(井上)芳雄さんをはじめとするミュージカル界のみんなが頑張ってきた成果だと思います。この10年、自分が想像できなかったような景色をたくさん見せていただきました。長年ずっとついてきてくださったファンの方、ミュージカルで出会った方、テレビの世界で出会った方、いろんな方との出会いもありました。だから今回は、僕を応援してくださっているみなさんに対して「ありがとう」の気持ちを伝えていけるコンサートにしたいなと思っています。
取材・文 = 松村 蘭(らんねえ) 撮影=石阪大輔
ライブ情報
[読み]Eleganza:エレガンツァ
<開催日時・会場>
1 【東京】2025 年 5 月 30 日(金) サントリーホール 大ホール 開場 17:30 開演 18:30
2 【大阪】2025 年 6 月 10 日(火) フェスティバルホール 開場 17:30 開演 18:30
3 【静岡】2025 年 6 月 20 日(金) アクトシティ浜松 大ホール 開場 17:30 開演 18:30
4 【北海道】2025 年 7 月 2 日(水) 札幌文化芸術劇場 hitaru 開場 17:30 開演 18:30
5 【岡山】2025 年 7 月 11 日(金) 岡山芸術創造劇場ハレノワ 大劇場 開場 17:30 開演 18:30
<出演>
山崎育三郎
音楽監修・ピアノ:宗本康兵
編曲監修:山下康介
指揮・管弦楽:
1 【東京】指揮:田中祐子 管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
2 【大阪】指揮:田中祐子 管弦楽:大阪交響楽団
3 【静岡】指揮:田中祐子 管弦楽:中部フィルハーモニー交響楽団
4 【北海道】指揮:栗田博文 管弦楽:札幌交響楽団
5 【岡山】指揮:栗田博文 管弦楽:岡山フィルハーモニック管弦楽団
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全席指定 13,000 円(税込)
主催:ビルボードジャパン(阪神コンテンツリンク)、【北海道】道新文化事業社
企画制作:ビルボードジャパン
後援:米国ビルボード
公演情報
※終了公演は割愛
<福岡公演>
日程:2025 年4月14日(月)~4月23日(水) 全12回公演
会場:福岡市民ホール・大ホール
※主催:博多座
料金(税込/東京・大阪公演共通)
(平日)S席16,500円/A席10,000円/B席5,500円
(土日・千穐楽)S席17,500円/A席11,000円/B席6,500円