「三人集まってパワーが何倍にも」山崎育三郎×明日海りお×古川雄大がつくりあげるミュージカル『昭和元禄落語心中』
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古川雄大、山崎育三郎、明日海りお 撮影=大橋祐希
落語界を舞台に、芸に打ち込む者たちの業や、絡み合う愛憎、因縁を骨太な人間ドラマで描くミュージカル『昭和元禄落語心中』が、2025年2月28日(金)に東京・東急シアターオーブにて開幕。3月29日(土)からは大阪のフェスティバルホール、4月14日(月)からは福岡市民ホール・大ホールでも上演される。
同作は、アニメ化、ドラマ化もされた雲田はるこの大ヒット漫画を原作に、山崎育三郎、明日海りお、古川雄大ら豪華キャストで立ち上げる新作オリジナルミュージカル。ドラマ版『昭和元禄落語心中』に出演した山崎がミュージカル化を提案し、同じ事務所で活躍する明日海、古川に声をかけたことで企画が実現した。互いに固い友情で結ばれた落語家・助六と菊比古(八雲)を山崎と古川が、その二人と懇意になる芸者・みよ吉を明日海が演じる。脚本・演出は三人とも縁の深い小池修一郎 (宝塚歌劇団)が務め、音楽や美術等、制作陣も一流のクリエイターが揃った。
高座をイメージしたセットの中、冒頭から落語が披露されるという粋な制作発表が行われたあとに、山崎、明日海、古川の三人に共演への思いと心境を聞いた。
山崎育三郎
■お互いに寄せる安心感と信頼感
―― それぞれに舞台やコンサートで共演はされてきていますが、一つの舞台作品で皆さんが揃われるのは今回が初めてになります。一緒に作品をつくってみていかがですか?
山崎育三郎(以下、山崎):何よりもまず、心強いです。自分が主演の作品では、一人で背負わなければいけない孤独な部分や、乗り越えていかなくてはいけない壁がありますが、二人とも主演という立場で同じような思いや経験をしてきているので、安心感と信頼感があり、強い気持ちで挑めています。三人集まったことでパワーが何倍にもなっている感じがします。
明日海りお(以下、明日海):育さま(山崎)が座長でいてくださっている安心感はとても大きいですね。そして猛スピードで古川さんが難しいお役を自分のものにされていて、どんどん前に進んでいかれるお二人を見て、「ああ、すごくいい作品になるだろうな」と感じています。自分も頑張らなくちゃと身が引き締まる思いです。舞台では助六と菊比古の幼少期から描かれますが、私が演じるみよ吉は、二人が大人になってから登場するので、その「後から出る」というプレッシャーにどう負けないようにするのかが……。
古川雄大(以下、古川):後から出るのって嫌ですよね(笑)。
明日海:そうなんですよ、幕開きから出る感覚とは全然違って。すでに空気感が出来上がっていて、お二人が盛り上がっている中に出ていくのが本当に……。
古川:いやいや、みんな「待ってました!」って感じですよ。
明日海:でも突然緊張した人間が登場するわけですから。浮ついたまま芝居を始めるのは嫌なので、本番までにどうにかします(笑)!
山崎:明日海さんはこう言っていますが、稽古場ではまったくそんなふうに見えないですからね。
古川:僕は今回冒頭から出番がありますが、落語から始まるので「絶対にミスできない」というプレッシャーや不安があります。でも、僕もお二人と一緒で、妙に安心してやれている感覚がありますね。制作発表の場ではいつも構えてしまうところがあるのですが、(取材前に行われた)今回は育三郎さんがドンと真ん中にいてくださるので、「なんとかなる!」という気持ちで臨むことができました。
明日海:(大きく頷く)
古川:この安心感と関係性のままで、舞台にも臨めたらと思っています。
■稽古場は天然対決!?
古川雄大
――お稽古場での印象深いエピソードなどがありましたら教えてください。
古川:まだそこまで芝居の稽古は重ねておらず、一幕を通した段階(取材時)ですが……何か面白いエピソードありましたっけ?
明日海:古川さんが新品の足袋を台紙ごと履いていたのとか(笑)。
一同:ハハハ(笑)。
古川:中の台紙も足袋の一部だと思ってしばらく履いていて。途中でこれは捨てるものなんだと気付きました(笑)。
山崎:ボロボロになった紙が出てきてね(笑)。雄大もだけど明日海さんも天然なところがあるので、僕としては二人の天然対決をずっと見ている感じです。今のところ、雄大の方がちょっと上かな(笑)。
明日海:(両手を挙げて)ヨシッ……!(笑)
――コンサートなどのステージで繰り広げられるお二人のトークも、どんなやり取りが飛び出すかわからない面白さがあって、引き込まれる魅力がありますよね。
古川:育さんも大変だと思います、天然二人に囲まれて(笑)。
山崎:ハハハ(笑)。でも二人ともマイペースでブレないし、自分らしくできる人たちですから。
■作中に散りばめたれた印象深い台詞たち
明日海りお
――原作やドラマ版では、落語の道を志して極めていく助六と菊比古、二人の芸事への思いや信念にまつわる台詞が印象的でした。フィールドは違いますが、同じ表現者としてご自身に響いたり、共感したりする台詞などはありましたか?
山崎:僕が演じる助六の台詞に、「落語は古典だけれども、時代とともに変わっていかなきゃいけない。今のお客さんにウケるものを俺は噺したいんだ」と語る一節があって、この台詞には僕自身もすごく共感するところがあります。時代の流れに合わせて、自分も柔軟に変化していかなければならないという考えを常に大切にしているので。「本当にその通りだな」と実感を持って言える台詞です。
――ミュージカルの革新を進めてきた山崎さんが発するからこそ、観る側も説得力を感じると思います。古川さんはいかがですか?
古川:まだ自分の落語を確立できていない菊比古が、「自分らしさを見つけなきゃいけない。お前にしかできないものが絶対にある」と言われる場面があるのですが、僕自身も「自分にしかできないものがある」という思いを常に持ち続けたいと思っているので、今の自分に響くものがありますね。
――ご自身にも重なる部分が。
古川:そうですね。菊比古も周囲のさまざまな人たちから掛けられる言葉によって変化していくので、自分が発するよりも、相手に言われる台詞の方が刺さるものが多いな、と。また、終盤に菊比古と助六が二人で面と向き合って「お前と高座にのぼる」と歌う場面があるのですが、そこは役の関係性を通してグッとくるところがあります。
――明日海さん演じるみよ吉は落語を生業にした人物でありませんが、印象的だなと感じる台詞はありますか?
明日海:みよ吉は二人とはまったく違う人生を歩んでいる女性で、彼女の台詞にはある種の怖さを感じるものがたくさんあります。その中でもとくに、「今度会うときは地獄ね」って菊比古に言う台詞があって、それがすごく印象的で。
山崎:たしかに怖いね。
明日海:地獄であっても、また菊比古は自分を追いかけてくるだろうと見透かしているようで、ゾゾゾっとくるものがありました。
■耳馴染みのいい、多彩な楽曲が集結。テーマ曲にも注目!
古川雄大
――ミュージカル化ということで、やはりどんな楽曲があるのか気になるところです。制作発表の会見でも、アップテンポな曲やタンゴ調にアレンジされた曲など、和風に留まらずさまざまなタイプの楽曲があると話されていましたね。
山崎:場面やキャラクターに合わせた、いろんなジャンルの楽曲が詰まっています。音楽を担当している小澤(時史)さんは、小池先生の歌詞を見ただけで、次々とメロディーが湧き上がると話されていました。本当に素晴らしい楽曲が揃っているのですが、小澤さんがこの作品を深く理解し、それぞれのキャラクターがどのような心情でいるのかをしっかり掴んでいるからこそ、演じる僕たちもしっくりきて歌えているのだと思います。
――その中でもとくにお好きなナンバーはありますか?
山崎:どの曲も耳馴染みがいいのですが、作品のテーマ曲でもある「落語心中」が好きですね。この曲は少年時代を演じる子供たちから引き継いで僕たちが歌うのですが、その流れもまた良くて。
古川:あれすごくいいシーンですよね。僕は小澤さんがつくる曲のBメロの部分が好きなんです。なので、「落語心中」もBメロで泣きそうになっちゃうんですよ。
山崎:これから稽古で歌っていく中で、好きな曲がもっと増えていきそうだよね。
■オリジナルミュージカルをつくるとしたら?
明日海りお
――この数年で、日本のオリジナルミュージカルの制作も活性化している印象がありますが、もしご自身が演出やプロデュ―スをするとしたら、どんなミュージカルをつくりたいですか?
山崎:実はそういう構想話はたくさんしているのですが、自分だったら子供たちがメインのミュージカルをつくってみたいです。自分が初めて出たミュージカル(『フラワー』)もそうでしたし、『アニー』みたく子供たちの登竜門となるような、いろんな子が活躍できるミュージカルがつくれたらいいですね。
明日海:ミュージカルは女性のお客さまが多いので、ファッショナブルな作品が良さそうですよね。なので、もし自分がつくる側になるとしたら、お衣装やセットなどに制作費をかけたいです。でも、男性のお客さまにも楽しんでもらうには……って考えるとやはり難しいので、自分にはやはり演出は無理だろうなと思います。お芝居の細かいところが気になりすぎて、口うるさくなってしまう気もしますし(笑)。
山崎:以前、ミヒャエル・クンツェさん(ウィーン・ミュージカルを代表する作家)が「女性が主役の方が書きやすい」とおっしゃっていました。男性はどちらかというと考えがシンプルだから、複雑なストーリーにしづらいんだそうです。その点、女性が主人公の場合は、考えや心情が多岐にわたり、人生に立ちはだかる壁があったりするので、物語として多様に展開しやすいと話されていました。
――たしかに、クンツェさんの作品は『エリザベート』『レベッカ』『レディ・べス』など、女性が主人公の作品が多いですよね。
古川:言われてみると、男性が主役のミュージカルってそんなに多くないかもしれないですね。例えば、(ハンス・アクセル・フォン・)フェルセンが主役の、ミュージカル『Fersen』とかあったらいいですよね。
山崎:なるほど、ルドルフ(『エリザベート』に登場する皇太子)が主役の『ルドルフ 〜ザ・ラスト・キス〜』みたいな感じでね。
――――ミュージカル『Fersen』、ぜひ実現してほしいですね。今後もさまざまなオリジナル作品が生まれると思いますが、「落語」という日本の大衆芸能が舞台となる本作がミュージカルとしてどんな新風を吹き込むのか、楽しみにしています!
山崎育三郎
取材・文=古内かほ 撮影=大橋祐希
公演情報
原作 :雲田はるこ「昭和元禄落語心中」(講談社「BE・LOVE」)
脚本・演出:小池修一郎(宝塚歌劇団)
出演
山崎育三郎 明日海りお 古川雄大
黒羽麻璃央 水谷果穂 金井勇太 中村梅雀
中桐光貴 西尾郁海 西岡寛修 廣瀬孝輔 門馬和樹
天路そら 奥切めぐみ 希良々うみ コイタ奈央美 柴田実奈 杉浦小百合
澄風なぎ 玉山珠里 傳法谷みずき 安岡千夏 横関咲栄
齋藤匠 豊田侑泉 長谷川悠大(トリプルキャスト)
大谷茉奈 須田麗央 光りな(トリプルキャスト)
<東京公演>
日程:2025 年2月28日(金)~3月22日(土) 全28回公演
会場:東急シアターオーブ
<大阪公演>
日程:2025 年3月29日(土)~4月7日(月) 全12回公演
会場:フェスティバルホール
<福岡公演>
日程:2025 年4月14日(月)~4月23日(水) 全12回公演
会場:福岡市民ホール・大ホール
※主催:博多座
(平日)S席16,500円/A席10,000円/B席5,500円
(土日・千穐楽)S席17,500円/A席11,000円/B席6,500円
【東京公演】
日程:2025年3月8日(土)18:00
会場:東急シアターオーブ
受付期間:完売
【大阪公演】(半館貸切)
日程:2025年3月31日(月)17:30
会場:フェスティバルホール
【手数料0円】座席選択販売
完売間近!この機会に
関東の貸切公演情報 @eplusplm_kanto
関西の貸切公演情報 @eplusplm_kansai