ロングラン4年目突入! 舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』新ハリー・ポッター役の平岡祐太が語る、シリーズの魅力&意気込みとは

2025.4.18
インタビュー
舞台

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小説、映画と世界的に多くのファンを持つ『ハリー・ポッター』シリーズ。その魔法の世界がリアルに観客の目の前に出現するのが舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』だ。小説の最終巻から19年後の世界で、父親になった37歳のハリーが、ホグワーツに入学した次男アルバスが起こす騒動に端を発する大事件に巻き込まれていく物語。“ハリポタ”らしい大冒険と、ハーマイオニーやロンとの変わらぬ友情やドラコとのライバル関係、さらに身近で親近感のわく家庭の悩みが同時進行で描かれる秀逸な物語は、世界中で多くの演劇賞を獲得している。

2022年に開幕した日本公演は異例のロングラン公演となり、7月には4年目に突入。ハリー・ポッター役はこれまで(※2025年4月時点)8人の俳優が演じてきたが、8月より新ハリー・ポッター役として本作に初出演するのが、これまで数多くの大ヒット映画・ドラマに出演している平岡祐太だ。平岡に意気込みを聞いた。

――もともと『ハリー・ポッター』シリーズがお好きだったとか。

はい。映画も1作目から観ています。20代の時には、『ハリー・ポッター』の世界を見てみたくて、一人でオックスフォードに旅行したほどです。世界中に『ハリー・ポッター』ブームが来ていた時でした。もともとUKロックきっかけで、イギリス好きだったというのもあるのですが。もういい大人でしたから、ハリーの魔法の世界にワクワク……というようなハマり方ではなかったのですが、あのブラックなファンタジーの世界にとても惹かれました。

――ブラックなファンタジー、ですか。

もともと児童書ですが、内容はやけに大人な世界じゃないですか? 特にディメンター が出てくるあたりから急に怖くなるし。そんな雰囲気もカッコいい。メルヘンではなく、怖いものは本当に怖いところが好きです。あと、ハリーが僕の目には“普通の人”に見えたんです。普通の子が、ヒーローになっていく。僕も特殊な能力を持った――特に何かに秀でた人間ではなかったので、そこに共感しました。アベンジャーズとは違うヒーロー観に惹かれたんです。

――出演決定時のコメントには、舞台版も「元々一観客として観ていた」とありました。ご覧になったのはどこの公演ですか?

日本版です。吉沢悠さんのハリーを観ました。観終わったあとに、ものすごい感動が押し寄せて。最初は『ハリー・ポッター』ってこういう世界観だったな……と懐かしがりながら観ていたんですよ。でもだんだん、映画と繋がる緻密な伏線などに興奮し、最後は父子の物語に感動し……。さらに「この魔法、どうなっているのだろう!?」と驚いて。物語としてもですが、エンターテインメントとしてもすごく感動しました。それで「これだ!」と思ったんです。「『ハリー・ポッター』がやりたい!!」と。

――それで、オーディションを受けられた。

はい。友人から「オーディションをやっているらしい」という噂を聞いて、事務所に「オーディションをやっているそうなのですが、僕も参加することはできませんか」と連絡しました。

――普段から「この役をやりたい、この作品に出たい」とご自分から言っていくタイプなんですか?

いや、僕がこんなことを言うなんて珍しいです。たぶん、今までほとんど言ったことないと思う。それだけ突き動かされたものがありました。

――オーディションはどんな意気込みで挑みましたか。

2シーンの課題が出されたのですが、事前にアクティングコーチにお願いし、オーディションのための稽古もしました。僕も劇場で観ていたので、そのシーンを思い出して分析し、コーチと「このシーンのハリーはどういう気持ちか」「シーンが持つエネルギーの構造とは」というようなことをディスカッションしながら役を作って、オーディションに挑みました。実際のオーディションでは演出補の方から「もう少しここはこういう方向で演じてみてください」といったような演出がその場でつけられて、そこに対応して……というようなことをやり、その映像をイギリスに送って審査してもらう、という形でした。

――映像審査だったんですね。お返事が来るまでドキドキですね。

そうなんですよ。しかも年末年始をまたいでいたのでなかなか返事が来ず(苦笑)。「『ハリー・ポッター』はどうなったんだろう……」と、気が気でなかったです。なので合格のお知らせが来た時は、事務所の方々や家族とみんなで喜びました。芸能の世界って、自分がやりたいといってできるものではなかなかない。特に僕の場合、自分から挑戦してみたいと言ってオーディションを受けたことがなかったので、嬉しさはひとしおでしたし、自分がやりたい役をできるなんて、こんな幸せなことはないなと思いました。……直後に「大変なことになるな」とも思ったのですが。

――プレッシャーが。

はい。オファーされて受ける役というのも光栄なことではありますし、もちろん頑張るのですが、やっぱり自分からやりたいと言った分、責任は大きい。プレッシャーがのしかかりました。

――合格の喜びからプレッシャーへの気持ちの変化は、どのくらいの時間差でしたか?

次の日ですね(笑)。「あれ、ちょっと待てよ? ……大変なことになったぞ」と。僕は多分、皆さんの認識としては“映像の人”だと思いますし、舞台でこれだけの大役は大抜擢だと思うんです。「本当に舞台でできるの?」と思われているかもしれません。その重圧はすごく感じました。正直、何日か寝込みました(笑)。

でも、いったんその重圧をとことん感じたので、そこからは「何をしたら自分の自信になるか」を考えました。例えば、ロングランで公演数も多いので喉に負担をかけない発声の訓練をしなければいけないなとボイトレ(ボイストレーニング)に通いだしたりもしていますし、まだ本格的な稽古に入る前ではありますが、『ハリー・ポッター』シリーズを見返してみたり、様々なインタビュー記事を読んでみたりもしています。そういう下準備を重ね、自分の中で自信を作っている最中です。

――物語の具体的なところも伺わせてください。『呪いの子』は小説の最終巻から19年後の世界で、ハリーも大人になっています。この舞台版のハリーの特徴は。

やはり「19年後」というのは大きいですね。ハリーがお父さんになって、自分の子どもと向き合う世代になっている。ハリーには親がいなかったから、子どもとどう向き合っていいのかわからない……という悩みは、映画にはなかった大きな要素です。

――ハリーが私たちの日常にもありそうな、身近な悩みを抱えていて共感してしまいます。

そうですよね。小説や映画のハリーは、運命に突き動かされてヴォルデモー(映画ではヴォルデモート)と戦っていますが、舞台版は、自分の家族とどう向き合うかということで葛藤している。今までのハリーは自分が望んでいないのに、運命に翻弄され、戦わざるをえなかったというところがありますが、『呪いの子』のハリーは、家族のために自分の意志で戦う。そこが大きく違うなと感じています。

――平岡さんがハリーに寄り添っていけそうだな、と思うポイントはどこですか。

僕は自分のことを“普通”だと思っています。すごい才能を持っているわけではないので、頑張るしかない。ハリーも、魔法省にいるときはエリートの顔をしていますが、家庭に戻ると「なんでアルバスにあんなことを言っちゃったんだろう……」とくよくよしている。そういうところは共感できるし、僕も普段からやっていることです(笑)。表に立つ時は堂々としてみせていますが、家に帰ると葛藤する……というところは、ハリーと似ているなと思いました。

――ほかに舞台版のオススメポイントは。

舞台を見ると、映画のあのシーンの裏ではこんなことが起きていたのか、と思います。例えばセドリックとのシーンなど、映画ではけっして描かれていないのですが、実は裏でこんなことがあったんだというイマジネーションの膨らませ方が巧いし面白い。映画ファンも楽しめるはずです。

――ちなみに平岡さんが一番好きな魔法は?

意外と“ルーモス”が好きです。暗い場所を照らす魔法なのですが、言ってしまえば「懐中電灯!」みたいな魔法じゃないですか。「松明!」ですらない、ちょっとした魔法。なんか、そういうのがいいなって思います(笑)。

――最後に、まだお稽古前とのことですが、意気込みをお願いします!

僕が演じるハリーを観てほしいというよりも、「舞台の上にハリー・ポッターがいる」と思っていただきたいです。ご観劇の間、僕たちが大好きな『ハリー・ポッター』の世界に浸っていただけるよう、皆さんが思い描いているファンタジーの世界に浸れるよう、魔法をかけていきたい。僕はそこに徹していきたいです。もともとすごい作品ですので、ぜひ劇場で『ハリー・ポッター』の世界を堪能してもらえたら嬉しいです。

取材・文=平野祥恵 写真提供=ホリプロ 撮影=番正しおり

公演情報

舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』
 
[日程]上演中~2025年10月31日(金)
[会場]TBS赤坂ACT シアター
[上演時間]3時間40分 ※休憩あり
【主催】TBS ホリプロ ATG Entertainment
【特別協賛】東海東京フィナンシャル・グループ
With thanks to TOHO
In association with John Gore Organization
【舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』公式Webサイト】https://www.harrypotter-stage.jp
 
<10月までの出演キャスト一覧>
ハリー・ポッター:平方元基/吉沢 悠/稲垣吾郎*/平岡祐太*/大貫勇輔*
ハーマイオニー・グレンジャー:木村花代/豊田エリー/酒井美紀/松井玲奈*/奥村佳恵*
ロン・ウィーズリー:石垣佑磨/ひょっこりはん/矢崎 広/上山竜治*/関町知弘*
ドラコ・マルフォイ:内田朝陽/永井 大/姜 暢雄/渡辺邦斗*
ジニー・ポッター:白羽ゆり/大和田美帆/大沢あかね/安藤 聖*/吉井 怜*
アルバス・ポッター:藤田ハル/福山康平/佐藤知恩/渡邉 蒼/原嶋元久*
スコーピウス・マルフォイ:西野 遼/浅見和哉/久保和支/大久保 樹*
嘆きのマートル:出口稚子
ローズ・グレンジャー・ウィーズリー:飛香まい/倉澤雅美*
デルフィー:鈴木結里/乃村美絵/高山璃子/野邑光希*
組分け帽子:尾尻征大
エイモス・ディゴリー/アルバス・ダンブルドア/セブルス・スネイプ:間宮啓行/市村正親*
マクゴナガル校長:榊原郁恵/高橋ひとみ/岡 まゆみ*/白木美貴子*

秋山和慶/安藤美桜/荒澤恵里奈/浅野郁哉*/チョウヨンホ/古沢朋恵*/半澤友美/隼海 惺/肥田野好美*/久道成光/星 郁也/石原健太郎*/伊藤優佑/亀井陵市/加茂享士*/柏村龍星/北代祐太/肥塚綾子*/小結湊仁/倉澤雅美/黒田 陸/松尾 樹/馬屋原涼子/森田万貴*/仲本詩菜/小川 希/岡 直樹/織詠/大竹 尚/坂入美早*/篠原正志/田口 遼*/髙橋英希/手打隆盛/上野聖太/薬丸夏子/横山千穂

ルード・バグマンの声:吉田鋼太郎
 
※「榊」は正しくは“木へんに神”と表記
※*…2025年7月以降の公演に出演するキャストです。各キャストの出演時期の詳細については公式サイトをご確認ください。