高輪ゲートウェイまちびらき記念! 新しい街で豪華出演者による新しい寄席『高輪松竹亭』初日第1部観劇レポート

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レポート
舞台

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5月17日(土)と18日(日)の二日間、高輪ゲートウェイ駅直結のLINKPILLAR Hallにて、TAKANAWA GATEWAY CITYまちびらき記念の演芸会『高輪松竹亭』が開催された。「100年先に繋げたい『日本の芸と美』のショープログラム」をコンセプトに、落語、講談、浪曲、漫才、活弁、さらには日本舞踊ショーと、様々な演芸の世界から豪華な出演者が一堂に会した。今回は「旅と電車」をテーマに催された、5月17日(土)の第1部をレポートする。


高輪ゲートウェイ駅の南改札を抜けてすぐ、THE LINKPILLAR 1と名付けられたビルの入り口を入り、エレベーターで地下2階に降りると、今回の「高輪松竹亭」の会場である、LINKPILLAR Hallにたどり着いた。出来立てほやほやのコンベンションホールの中に入ると、ステージ上には近未来的なホールになんとも似つかわしくない、高座とめくりが。そのミスマッチな様子が街とともにこれから色々なことが始まっていく感じを受けて心が躍る。客席はよく寄席に来そうな年配の方が中心ではあるが、家族連れで来られているお子さんの姿も見えて、老若男女が集まっている印象を受けた。

まもなく開演の時間になり、二番太鼓が鳴り響いて驚いた。なんと生演奏なのだ。下座からお囃子さんが演奏する三味線の音が聴こえると、いやが上にもテンションが上がる。

鏡味仙志郎・鏡味仙成

トップバッターは太神楽曲芸。鏡味仙志郎と仙成のコンビだ。太神楽は寄席ではおなじみの傘や鞠などを用いた和製ジャグリングといった趣の芸能だ。始めは仙成の一つ鞠の曲芸から。見事な手さばきに会場からどよめきの声が起こる。ときどき失敗もあるがご愛敬。仙志郎がマイクでフォローをして、コンビネーションもバッチリ。続いては仙志郎による傘の曲芸。太神楽の中では見たことある人が多いであろうポピュラーな芸に客席は拍手喝采。次に仙成による五階茶碗、三本のバチの曲芸と続き、最後は二人で花笠の取り分け。こちらも見事なコンビネーションを見せ、会の始まりから客席を大いに温めた。

立川小春志

二番手は本日の出演者で唯一の立川流。立川小春志。高輪ゲートウェイ駅の所在地でもある港区の出身だという小春志。「港区出身でもこの辺りは初めて来た。本当に何もない」と笑いを取りつつ、「JRの力を感じます」とフォローすることも忘れなかった。

「おめでたい噺を」と言って披露した噺は「一目上がり」。教養がない八五郎が隠居の家で掛け軸の褒め様を教わるが、ほうぼうで失敗を重ねていく、おめでたい席でよく演じられる噺だ。実に江戸っ子らしい端正な語り口が心地よく響いた。

古今亭駒治

三番手で登場したのは古今亭駒治。マクラではやはり「こんなに何もないと思わなかった」と笑いを取る。鉄道ファンの話などをした後に始めたのは、「楽しい山手線」。山手線に急行を走らせることになり、どの駅に急行を停めるべきか、擬人化した駅たちが話し合うという、一風変わった駒治自作の鉄道落語。“山手線あるある”をふんだんに盛り込んだ、山手線ユーザーにはたまらない噺だ。この噺の最後の部分は客席参加型となっており、お客さんの拍手の量で「日暮里」、「五反田」、「高輪ゲートウェイ」のどの駅に急行を停めるべきかを決める展開に。「空気を読んでくださいね」と駒治が念を押した結果、高輪ゲートウェイが一番の支持を受け、客席は大盛り上がり。「旅と電車」をテーマにしたこの会にはうってつけの噺だった。

片岡一郎

仲入り休憩を挟んで登場したのは、活動弁士の片岡一郎。活動弁士とは、戦前の無声映画を上映している傍らで、映画の説明をつけていくという大正~昭和初期に大変流行した芸能だ。燕尾服に身を包んだ片岡さんは挨拶をしたのち、戦前から続く活弁の決まり文句をスラスラと披露。その見事な口調に客席の温度がグッと一段上がったように感じた。

片岡が説明した作品は、名匠・小津安二郎監督が昭和4年に撮った「大学は出たけれど」。「高輪松竹亭」にふさわしく松竹キネマの作品だ。大学を卒業したものの定職につけない男が、故郷の母親と婚約者に「就職した」と嘘をつき、なかなか本当のことを言い出せずにいたが、婚約者はその嘘を見抜いて……。といったストーリー。時に現代風のギャグも交えながら軽快に説明する様子に皆、夢中になってスクリーンを見ていた。

一龍斎貞鏡

続いては、講談の一龍斎貞鏡。冒頭マクラで貞鏡先生が5児の母であることを明かすと、客席からは驚きの声が。ゴールデンウィーク中にお子さんにいいところを見せたくて無理をしたところ、足の骨を折ってしまったという話を披露し、客席からまたもや驚きの声。

肝心の講談は、高輪は赤穂浪士の墓がある泉岳寺のお膝元ということで、赤穂浪士四十七士の活躍を描いた「赤穂義士伝」より堀部安兵衛が主人公の「安兵衛駆け付け」。「高田馬場の決闘」として知られる忠臣蔵ファンにはおなじみのエピソードだ。道中付けのテンポの良い言い立てに客席は感心しきり。貞鏡の力強い声と張扇の音が真新しいホールに響き、得も言われぬ雰囲気を作り出していた。

江戸家猫八

トリのひとつ前の出番、ヒザで登場したのは動物ものまね芸の江戸家猫八。親子四代、120年続く江戸家の動物ものまね芸。その大看板である猫八の名を引き継ぐ、寄席には欠かせない色物の一人だ。挨拶代わりの猫の鳴きまねから始まり、江戸家といえばこれ!という、初春のウグイス。指笛で表現されるウグイスの声はいつ聴いても美しい。猫八の真骨頂はあまり知られていない動物の鳴き声も、巧みな話芸で面白く聴かせてしまうところにある。この日もフクロテナガザルという馴染みのない動物の鳴きまねを披露。お客さんはフクロテナガザルの鳴き声を聴いたことないはずなのに、なぜか感嘆の声が上がり笑ってしまう。客席の心がひとつになったのを感じた。

五街道雲助

客席が温まりきったところでいよいよ登場したのは人間国宝・五街道雲助。本公演の主任だ。マクラでは自身の芸名である「雲助」の解説から。雲助とは、江戸時代に宿場町や街道において荷物や駕籠を担ぐ人足のこと。「旅と電車」がテーマであるこの会にはぴったりというわけだ。

そうして始まった噺は「抜け雀」。小田原宿にある宿屋を舞台にしたまさしく旅の噺だ。無一文で宿に泊まった身なりの汚い男。職業は絵描きだというこの男は宿賃のカタにと、衝立に雀の絵を描く。翌日、衝立から雀が抜け出して飛び始めそれが評判を呼び、宿に連日客が押し掛けるようになるという、なんともファンタジーな展開。雲助の一言一句、一挙手一投足が魅力的で目が離せない。実に完璧な会の締めくくりとなった。

他の部の含め、これ以上ないほど豪華な顔付けで行われた「高輪松竹亭」。お客さんの満足度も非常に高かったのではないだろうか。雲助も「粋なネーミングの寄席が出来上がりました」と言っていたように、この一度だけで終わらず、TAKANAWA GATEWAY CITYの発展に伴って、もっともっと大きな会になっていくことを切に願う。

レポート・文=けんちゃん

公演情報

『高輪松竹亭』公演終了
 
会場 TAKANAWA GATEWAY Convention Center LINKPILLAR HALL A・B
日程 2025年5月17・18日(土日)1日2公演 全4公演
■5月17日(土)
1部 12:15開場 13:15開演(~15:35頃終演予定)
出演 鏡味仙志郎・鏡味仙成/立川小春志/古今亭駒治/片岡一郎/一龍斎貞鏡/江戸家猫八/五街道雲助
2部 16:15開場 17:15開演(~19:45頃終演予定)
出演 田辺いちか/弁財亭和泉/春風亭一之輔/松竹日本舞踊ラボ/三笑亭夢丸/林家楽一/三遊亭兼好
 
■5月18日(日)
1部 11:30開場 12:30開演(~14:45頃終演予定)
出演 柳家あお馬/ロケット団/三遊亭萬橘/坂本頼光/桂小すみ/神田松鯉
2部 15:30開場 16:30開演(~19:15頃終演予定)
出演 雷門音助/おしどり/柳亭小痴楽/松竹日本舞踊ラボ/入船亭扇橋/玉川太福(曲師:玉川鈴)/立川志らく
 
企画・制作 松竹
主催 JR東日本
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