レイラ 「またライブハウスで絶対会おう!」――これぞレイラと言える轟音のオルタナロックを放った9周年記念ワンマン公演レポート
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レイラ
9th Anniversary ONE MAN LIVE「精一杯走って」
2025.5.23 渋谷Spotify O-Crest
大きな拍手が迎える中、有明(Vo, Gt)、みうらたいき(Gt)、そしてともにサポートメンバーの奥田一馬(Ba)と風見祐基(Dr)の4人がオンステージ。有明の弾き語りから始まった1曲目の「透明少女」。有明の両脇に立つみうらと奥田が拳を頭の上に掲げると、フロアを埋めた観客が全員一斉に拳を上げ、それに応える。その光景がレイラというバンドがどんなふうに支持されているのかを雄弁に物語る。
そして、「人生で最高のライブをしにきました。行くぞ!」と有明が声を上げ、バンドが演奏に加わる。フロアに身を乗り出したみうらのギターが轟音を放ちながら、4人の演奏は一気に白熱していく。
有明(Vo, Gt)
やる気満々なのは、「やるぞぉ!」と声を上げた有明を始め、ステージの4人だけではない。観客もまた、この日、この瞬間が来ることを待ち焦がれていたのは、自然に始まった手拍子からも明らかだった。
1曲目からすごい盛り上がりだ。なるほど。これがレイラのライブなのだ。
この5月に結成9周年を迎え、10年目を歩き、いや、走り始めた横浜のロックバンド、レイラが5月23日(金)、渋谷Spotify O-Crestで開催した『9th Anniversary ONE MAN LIVE「精一杯走って」』。先日公開された座談会で「これまでやってきたことの集大成」と有明が語っていたとおり、この日、ステージの4人は最新シングルから10代の頃からずっと大事にしてきたという曲まで、新旧の全17曲を披露。
みうらたいき(Gt)
1曲目の「透明少女」に続いたのはダンサブルなビートで観客の体を横に揺らした「神様」、テクニカル&ドラマチックなアレンジがバンドのミュージシャンシップの高さを印象づけた「Ash」、2分に満たない刹那とエモいメロディーが観客の胸を焦がした「つまらない」。
どんな時でも真っ直ぐに向かってくる有明の歌声、常に鋭いトーンで鳴るみうらのギター。レイラの楽曲の聴きどころは、それに尽きるが、邦ロックとオルタナロックの折衷というバックボーンとともに序盤から見せつけた楽曲の振り幅はMCを挟んでから、リズムがボサノバ風になるギターポップの「Happy end」、譜割の大きな歌で魅了する「春風」、フォークロック調の「愛や夢でも」、リバービーな音像で差を付ける「このまま」と繋げ、さらに大きなものになっていく。
ところで、前述の座談会では、9周年記念ワンマンライブの会場にO-Crestを選んだ経緯も明らかにされた。なんでも2021年にO-Crestに出演した際、ギターアンプを壊してしまったにもかかわらず、「修理代は要らないから、いつかうちでワンマンをやってほしい」と言ってくれた店長の室氏からの申し出に、ようやく応えることができたということなのだそうだ。
「念願のCrestワンマンが叶ってうれしい。しかもソールドアウト。絶対やりたいと思ってました。ただ、やるなら今日みたいな素敵な1日にしたいと思ってたから、けっこう時間が掛かっちゃって」(有明)
「そうだね。4年越しにワンマンライブをすることができました。そして、その節はすみませんでした!」(みうら)
因みにポップな曲調とは裏腹にバリバリと鳴るみうらのギターも印象的だった「Happy end」は、アンプを壊してしまった時に演奏していた曲なのだそうだ。
「どんな時も1日をいい日にできるのは自分自身しかいないと思っています。だから、今日をいい日にするのは、みんな自分自身なんだけど、今日、Crestにレイラのライブを観に来たらいい日になるんじゃないかと信じて、みんながここに来てくれたことが本当にうれしいです。みんなにいい日だったと思ってもらえるライブができるように精一杯がんばります!」(有明)
「Gravity」からの後半戦は、ぐっとテンポを落として、さらに深い世界観に観客を誘っていく。その「Gravity」は、みうらがディレイを効果的に使いながらサイケデリックともスペーシーとも言えるギターサウンドを奏でる正調オルタナロックナンバー。単音リフを軸にしたアンサンブルは、90’sエモを彷彿とさせるところもある。続く「Rainy Day」も「Gravity」同様のスローナンバーながら、こちらはレイラ流のバラードと言ってみたい。なぜレイラ流なのか。それは有明の歌の裏でエキセントリックなプレイを炸裂させるみうらをはじめ、途中からバンドの演奏の音数が増えていき、やがて轟音になるからだ。
そこから間を空けずに轟音のギターリフとともになだれこんだ「SEASIDE」は、セットリストにおけるこのブロック唯一のアップテンポナンバー。感情を迸らせるように歌う有明の歌声に圧倒される。
そして、「みんなで歌いたいです!」と繋げた「ふたりのせかい」。この曲で有明が観客にシンガロングを求めたのは、ふたりの世界で生きる美しさを胸に染みるメロディーで繰り返し歌いあげるこのラブソングを、ライブにおいてはバンドと観客を一つにするアンセムに変えたかったからだろう。
「一緒に歌おう!」と言った有明は、会場に響き渡る観客のシンガロングを聴き、「ありがとう!」と破顔一笑。それはこの日のハイライトの一つとなった。
また、「人からどんなにこうしたらいいと薦められても、自分の中で自然にドキドキワクワクした感情には敵わない。“好き”をはじめ、そういう気持ちを大事にしたい。その“好き”が今日ここにいるみんなの“好き”になったらうれしいし、ここにいない人達の“好き”にもなったらもっとうれしい。それを信じて、これからも続けようと思います」と有明が決意を語ってから、演奏した「ヒットソング」と「音楽のある風景」の2曲も印象的だった。
《僕の声は誰にも届かずかき消され》と歌いながら、「届け!」という歌詞にない言葉を、有明が叫ぶように加えた前者の発表は2024年。一方、《願わくば どうか響いてよあなたに 報われないまま忘れ去られても 誇れる様に歌うからさ》と観客を圧倒するように絶唱した後者は2019年。ともに歌い続ける覚悟を歌いながら、「ヒットソング」ではそれがさらに揺るぎないものになっているところが頼もしい。
そんな「ヒットソング」のアップテンポの演奏から一転、テンポを落としながら、ドラマチックかつダイナミックな演奏を繰り広げた「音楽のある風景」はアンビエントなイントロも含め、UKオルタナロックを彷彿とさせる音像も聴きどころだった。前述した「Gravity」「Rainy day」とともにオルタナロック・バンドとしてのレイラの真髄を、そこに見出すこともできるだろう。
「あと2曲で終わりです」(有明)
「え~~~~」(観客)
「すごくうれしい(笑)」(有明)
観客とのそんなやり取りも楽しみつつ迎えた大詰めに満を持して披露したのが、4月から所属することになった下北沢のライブハウス、SHELTERのレーベル「SHELTR UNITED」からこの日の午前0時に配信リリースした新曲「夏風邪」だった。4つ打ちのリズムに加え、新境地とも言える爽やかな曲調とともに、この日のライブが集大成であると同時にレイラの新たなスタートであることも印象づけたかったに違いない。
レイラがこの「夏風邪」を、自分たちの新たなアンセムにしたいと考えていることは、演奏する前に観客と一緒にラーララ・ララララとシンガロングを練習したことからも明らかだった。いきなり手拍子とともにラーララ・ララララと声を揃えて歌い上げ、「すごい、思った以上に歌えてる!」と有明を感嘆させたのだから、観客もまた同じことを考えていたようだ。
そのまま観客の完璧なシンガロングとそれに対する有明の「ありがとう!」から、ステージの4人は演奏になだれこむ。そして、有明の「行こうぜ!」に応えるように観客が再びシンガロングの声を上げ、リリースされたばかりにもかかわらず、フロアにはクライマックスという言葉がふさわしい盛り上がりが生まれたのだった。
そこに1曲目の「透明少女」と同様にレイラとファンの絆の強さを感じずにいられなかった。それはこれまでレイラが熱量の高いライブを繰り広げ、そこに観客を巻き込んできた証でもあるのだろう。
「またライブハウスで絶対会おう!」(有明)
これぞレイラと言える轟音のオルタナロックナンバー「Emma」で駆け抜けるように本編を締めくくったが、観客は早速、アンコールを求めはじめる。その声がちょっと荒っぽいと言うか、ぬるくないところもまたレイラなのだろう。
この日、彼らがアンコールに演奏したのは、有明曰く10代の頃からずっと大事にしてきた「アパートの中で」。バラードを最後の最後に選んだのは、曲をじっくりと聴かせ、その印象を観客の脳裏にしっかりと焼き付けたかったからか。みうらがチョーキングで泣かせたギターソロも聴きどころだった。
《金なんて無くたってさ 君さえいればそれでよかったよ》というリフレインが耳に残る。本来は、離れていった恋人に対する惜別を歌っているのだと思うが、演奏する直前に有明が語った言葉と重ね合わせると、その歌詞はまた別の意味を帯び始める。
「本当に感謝しています。9年間続けてきて、ようやくCrestがソールドアウトすることができて、本当にうれしい。好きなことを続けて、これだけの人に伝染していったことがうれしいです。みんなのこれからの人生にうちらの音楽があってほしいと思っています。うちらにできることはこれからも精一杯、心を込めて、自分たちがやりたい音楽を作って、かっこいいライブをすることと、みんなの味方でいること。私はみんなの味方でいたい。うちらの作る曲はみんなが望むかぎりずっとそばにいるし、味方でいるし、背中も押すし、一緒に悲しい気持ちになったり、うれしい気持ちになったりすると思っていて、それを続けることがみんなへの恩返しというか、感謝の気持ちなのかなと思っています。今日の帰り道、寝る前、通勤通学の電車。みんなが望むかぎり、うちらが作ってきた曲、これから作る曲は、ずっとずっとみんなのそばにいる。そういうつもりで作っています。うちらの曲がずっとみんなのそばにいられたらうれしいです!」
そんな思いを渾身の演奏とともにぶつけてくるのだから、聴く者の胸に響かないわけがないだろう。
「もっと売れてもいい」と有明は笑いながら言ったが、本当にそう思う。バンドと観客の気持ちがぶつかりあうようなロックが好きなら、レイラの音源を聴くことはもちろん、ぜひライブに足を運んでほしい。レイラはきっとあなたの熱い思いに応えてくれるはずだ。
この日、彼らは8月11日の下北沢Flowers Loft公演から、ワンマンライブとなる9月27日の下北沢SHELTER公演まで全7公演の『レイラ EP Release Tour 2025 "あの街に行こうねって約束覚えてる?"』を開催することも発表した。
取材・文=山口智男
リリース情報
“あの街に行こうねって約束覚えてる?”
8/16(土)@伊那GRAMHOUSE
8/30(土)@名古屋RAD SEVEN
9/7(日)@広島ALMIGHTY
9/8(月)@福岡LIVE HOUSE Queblick
9/22(月)@大阪LIVE SQUARE 2nd LINE
ワンマンライブ
OPEN18:30 / START19:00
ADV¥3,500 / DOOR¥4,100 / U-18¥1,500
e+最速先行プレオーダー:5/23 22:00〜5/28 23:59