金子扶生×ワディム・ムンタギロフの名演が現代に響く、ケネス・マクミラン振付『ロミオとジュリエット』~「英国ロイヤル・バレエ&オペラ in シネマ 2024/25」
-
ポスト -
シェア - 送る
(c) Tristram Kenton
英国はロンドンのコヴェント・ガーデン、「ロイヤル・バレエ&オペラ(RBO)」で上演された、ロイヤル・オペラ、ロイヤル・バレエ団による世界最高峰のオペラとバレエを、特別映像を交えて映画館上映する「英国ロイヤル・バレエ&オペラ in シネマ」。今シーズンも全10作品<バレエ6作品/オペラ4作品>を各1週間限定で全国公開する。ライブでの観劇の魅力とは一味違う、映画館の大スクリーンと迫力ある音響で、日本にいながらにして最高峰のオペラとバレエの公演を堪能できる至極の体験を味わえる。
2025年6月6日(金)からは、永遠の愛と葛藤が時代を超えて現代に響く普遍的ラブストーリー、ロイヤル・バレエ『ロミオとジュリエット』(振付:ケネス・マクミラン 音楽:セルゲイ・プロコフィエフ)が、TOHOシネマズ日本橋ほか全国で1週間限定公開される。本作の見どころを、舞踊評論家、森菜穂美氏の解説とともに紹介する。
数ある『ロミオとジュリエット』のバレエ作品の中でも、ケネス・マクミラン振付によるロイヤル・バレエ版は、人間の感情をリアルに描いた演技と振付によって「決定版」と称されている。その理由について、舞台芸術評論家・森氏は「憎しみの連鎖がより大きな悲劇を生み、無垢な若者が無残な死を迎えてしまうことの虚しさを今に伝えている」と語り、本作がウクライナ紛争や『ウエスト・サイド・ストーリー』など現代の問題とも響き合う、普遍的なメッセージを持つ作品であると解説している。
(c) Tristram Kenton
本作における最大の革新性は、ジュリエットの人物像の描き方にある。ジュリエット役を務めたアレッサンドラ・フェリやサラ・ラムは「ジュリエットは最初のフェミニスト」と語っており、14歳という若さでありながら、家族の意向に逆らい、自らの意志で愛を貫く姿勢が高く評価されている。森氏も「ジュリエットは14歳と若い少女の設定ですが、その彼女が、たった一人で家の権威に立ち向かい、両親の意思に反して愛を貫く決意をして勇気ある選択をします」と述べ、ジュリエットの行動に現代的フェミニズムの萌芽を見出している。
また森氏は、セルゲイ・プロコフィエフによる音楽と振付の密接な結びつきにも注目している。本作では、音楽と振付の一体感が作品のドラマ性と感情の深みを際立たせており、「“バルコニーのパ・ド・ドゥ”での恋のときめきと高揚感、疾走感は比類のないもので、終幕の悲劇もドラマティックな音楽で一層胸を締め付けるものとなります」とその魅力を語る。さらに、これまでのバレエ作品では見られなかった「動かない場面」の演出が取り入れられ、登場人物の内面を静かに描くマクミラン独自の演出美学が、本作の大きな特長となっている。
(c) Tristram Kenton
今回のメインキャストには、ロイヤル・バレエを代表する“黄金コンビ”が再登場する。ジュリエット役を務めるのは、大阪出身のプリンシパル、金子扶生。『シンデレラ』に続く主演となる本作では、より一層の成長を見せている。ロミオ役には、世界的スーパースターで「ワドリーム」とも称されるロイヤル・バレエの貴公子、ワディム・ムンタギロフが登場。2023年のロイヤル・バレエ来日公演では、同ペアによる『ロミオとジュリエット』が大阪で上演されたが、2年の時を経て、さらに磨きのかかった二人の演技が披露されることとなった。森氏は、金子の演技について「人形遊びを無邪気にしていた14歳の少女が、わずか数日で大人への階段を駆け上り、無理解な大人たちに一人で立ち向かう強さを体現した金子は、繊細な演技力も見せて新境地を開いています」と高く評価している。
©ROH, 2015. Photographed by Alice Pennefather
さらに本作では、金子をはじめとした日本人ダンサーの活躍にも注目が集まる。ティボルト役を演じるのは、ロイヤル・バレエ屈指の演技派・平野亮一。マンドリン・ダンスのソリストには、若手注目株の五十嵐大地が登場し、驚異的な跳躍と高度な技術で観客を魅了している。
(c) Tristram Kenton
上映に際しては、主演陣のインタビューやリハーサル映像に加え、ルネサンス時代を再現するためのヘアメイクを担当したスタッフのインタビューなど、作品をより楽しむための特別映像も多数用意されている。ロイヤル・バレエが贈る、世界最高の愛の物語を、ぜひ映画館の大スクリーンで堪能してほしい。
(c) Tristram Kenton
※森菜穂美(舞踊評論家)による『ロミオとジュリエット』解説全文は下記↓URLにて閲覧可能です。
■森菜穂美(舞踊評論家)『ロミオとジュリエット』解説全文はコチラ
上映情報
ロイヤル・バレエ『ロミオとジュリエット』
6/6(金)~6/12(木)TOHOシネマズ 日本橋 ほか1週間限定公開
音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
美術:ニコラス・ジョージアディス
照明デザイン:ジョン・B・リード
ステージング、マクミラン財団芸術監修:ラウラ・モレーラ
リハーサル監督:クリストファー・サウンダース
シニア・レペティトゥール:ギャリー・エイヴィス、ディアドラ・チャップマン、サマンサ・レイン、サミラ・サイディ
プリンシパル指導:アレクサンダー・アグジャノフ
指揮:クン・ケッセルズ
コンサート・マスター:セルゲイ・レヴィティン
管弦楽:ロイヤル・オペラ・ハウス管弦楽団
ジュリエット:金子扶生
ロミオ:ワディム・ムンタギロフ
マキューシオ:フランシスコ・セラノ
ティボルト:平野亮一
ベンヴォーリオ:ジャコモ・ロヴェロ
パリス:ルーカス・B・ブレンツロド
キャピュレット公:ベネット・ガートサイド
キャピュレット夫人:クリスティーナ・アレスティス
エスカラス ヴェローナ大公:ハリス・ベル
ロザライン:アネット・ブヴォリ
乳母:オリヴィア・カウリー
ローレンス神父/モンタギュー公:トーマス・ホワイトヘッド
モンタギュー夫人:ララ・ターク
3人の娼婦:イツァール・メンディザバル、マイカ・ブラッドバリー、レティシア・ディアス
マンドリン・リードダンサー:五十嵐大地
2025年3月20日上演作品/上映時間:3時間19分
北海道 札幌シネマフロンティア 2025/6/6(金)~6/12(木)
宮城 フォーラム仙台 2025/6/6(金)~6/12(木)
東京 TOHOシネマズ 日本橋 2025/6/6(金)~6/12(木)
東京 イオンシネマ シアタス調布 2025/6/6(金)~6/12(木)
千葉 TOHOシネマズ 流山おおたかの森 2025/6/6(金)~6/12(木)
神奈川 TOHOシネマズ ららぽーと横浜 2025/6/6(金)~6/12(木)
愛知 ミッドランドスクエア シネマ 2025/6/6(金)~6/12(木)
京都 イオンシネマ 京都桂川 2025/6/6(金)~6/12(木)
大阪 大阪ステーションシティシネマ 2025/6/6(金)~6/12(木)
兵庫 TOHOシネマズ 西宮OS 2025/6/6(金)~6/12(木)
福岡 kino cinéma天神 2025/6/6(金)~6/12(木)
【STORY】
キャピュレット家のジュリエットとモンタギュー家のロミオは情熱的な恋に落ちるが、二つの家は対立している。ひそかに結婚する二人だが、運命のいたずらによりロミオはジュリエットの従兄弟ティボルトと決闘し、彼を殺してしまう。ロミオは罰としてヴェローナから追放される。ジュリエットは両親によってパリスとの結婚を強いられるが、それを逃れるために毒薬を飲んで仮死状態となって、ロミオの元に行く計画を立てる。だが彼女のメッセージはロミオには届かず、ジュリエットの死の知らせを聞いて戻ってきたロミオはキャピュレット家の墓所で命を絶つ。仮死状態から目覚めたジュリエットはロミオの亡骸を発見し、胸を刺して後を追う。
【公式サイト】http://tohotowa.co.jp/roh/
【配給】東宝東和