加藤清史郎「いろいろなことに挑戦し続ける役者でありたい」 初演から10年、新生『デスノート THE MUSICAL』で夜神 月役に挑戦!

18:00
インタビュー
舞台

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日本発のオリジナルミュージカルとして2015年に初演されて以来、世界中を魅了し続けている『デスノート THE MUSICAL』。初演から10周年という記念すべき2025年11月、新キャストを迎えて上演されることがすでに発表されている。

原作は、2003年12月から2006年5月まで「週刊少年ジャンプ」に連載され、映画やドラマ、アニメなど幅広いメディア展開を遂げてきた人気漫画『DEATH NOTE』。そのミュージカル版となる本作は、2015年に日本で世界初演が開幕し、その後、17年、20年に上演。海外でも高い評価を受け、今や世界中から注目を浴びる大ヒットミュージカルになった。

今回、SPICE編集部は、主人公・夜神 月役を演じる加藤清史郎(※渡邉 蒼とのWキャスト)にインタビュー。初演を客席から観ていたという加藤に、作品に懸ける思いや、俳優としての夢などを聞いた。

――ビジュアル撮影、お疲れ様でした。いかがでしたか?

今日がこの作品の本当にはじめの一歩となったわけですが、最初から最後までずっと楽しかったです。ライティングも何回も変えたし、リンゴやノートなど小道具も変えたし、衣装も「どれがいいかね〜?」なんて相談するところから始まって、ファッションショーのようでした。ここから『デスノートTHE MUSICAL』の世界を作っていくんだと、気持ちがより一層高まりました。

――出演が決まったときはどんなお気持ちでしたか?

僕は初演(2015)を客席で観ていて、ずっと憧れがありました。夢の一つとして「僕がやるなら月(ライト)かな〜?L(エル)かな〜?」なんて、妄想していたので、「あ、月(ライト)なんだ」とも思いましたけど、冷静になってみると、あの『デスノート』の夜神 月を僕が演じるわけですからね。「う、う、うげー!まじですか!!!」という気持ちになりました。

(演出の)栗山(民也)さん、(作曲の)フランク・ワイルドホーンさんとは絶対にご一緒したかったので、今回この『デスノート THE MUSICAL』に出演できることはとても光栄なことだなと思っています。作品の大きさや責任の重さを感じつつ、どんな作品になるのか、本当にワクワクしています。

――初演を客席でご覧になっているのですね。当時を振り返って、何か覚えていることはありますか?

当時は13歳か14歳だったと思いますが、『DEATH NOTE』という作品自体はミュージカル版を見る前からもちろん存じ上げていました。なので、当時は原作ファンの皆さまと同じように、「何がどうミュージカルになるんだろう?」と思いながら劇場に行ったことを覚えています。

そして実際に作品を見て……こういう展開で、こういう音楽で、Lと月(ライト)の対立を描いていくんだと衝撃を受けました。フランク・ワイルドホーンさんの生き生きとした音楽の躍動感みたいなものが、ふたりの信念のぶつかり合いと言いますか、頭脳戦と言われる彼らのパッションが詰まっているように感じたんですよね。

――確かに初演のときは「あの『DEATH NOTE』をどうやってミュージカルにするんだろう」と思う人が多かった気がします。原作の『DEATH NOTE』については読まれていたんですか?

連載開始当時、僕はまだ片手で収まるぐらいの年齢だったので、タイムリーには読めていないですし、ミュージカルの初演時も原作をしっかり読んでいた記憶はないです。でも、映画化やテレビドラマ化されていますし、『DEATH NOTE​』って、読んでいるかどうかに関係なく、日常の会話に出てきません?(笑) 「デスノートに書いてやろうかな」とか冗談で言うときもあるし(笑)、死神リュークという存在もすごく有名ですし!

2015年舞台写真 夜神 月役:浦井健治 (C)大場つぐみ・小畑健/集英社

2015年舞台写真 左より)弥 海砂役:唯月ふうか、死神レム役:濱田めぐみ (C)大場つぐみ・小畑健/集英社

――そうですね。今回の役作りはどの辺りからしていくご予定ですか?

僕は役作りにおいて、「これをする!」とはっきり出てこないタイプなんです。とはいえ、今回、『デスノート THE MUSICAL』に出演するにあたって、改めて原作やアニメなどを読んだり見たりしています。その中で、ここまで共感のできない役は初めてかもしれないと思って……。月(ライト)が周りの人たちを巻き込んで、目も当てられなくなっていく。惨さばかりに目がいって、全然共感できていないんです……。何か、やった方がいいんでしょうか……。

――惨いことをするわけにはいきませんからね……(苦笑)

そうですよね(苦笑)。もちろん、台本や原作を読んだり、作品や役について考えたりすることは当たり前のこととして、そのほか何をすべきか悩んでいます。俳優は想像で補う仕事かと思いますが、今回はいつもと違う何かをした方がいい気もしています。……とか言って結局何も必要としない気もしますが(笑)。

――普段は稽古場で役を作っていくことが多いですか?事前にご自身で作っていくことが多いですか?

原作があるものに関しては、もちろん原作を読みます。ただ、創作が行われるのはやはり現場だったりする。何か持っていくものがないといけないとは思うんですけど、事前に多くを決めていくというよりか、稽古場で実際に感じたことを大事にしたいと思っています。

――今回のカンパニーについてはどのような印象をお持ちですか?

まず、めぐさん(※濱田めぐみ)と浦井(健治)さんがいらっしゃいますよね! 作品の先輩方がいらっしゃるのは心強いですし、いちファンとしても「今回の『デスノート THE MUSICAL』はどうなるんだろう?」という楽しみの気持ちが強いです。ちなみに、浦井さんからは「楽しんでいこうね」と声をかけていただきました。

また、相方となる(三浦)宏規くんのLはどうなるのか、そのLに対して自分は何を思うのか、楽しみです。ご一緒したことがあるのは、今井(清隆)さんとめぐさんだけなんですけど、他の方々も一方的にずっと見ていた方々ばかり。自分が同じ板の上に立ったときに、どうなるんだろうというワクワク感があります!

そして、同じ月(ライト)役の(渡邉)蒼くん。僕は直接の面識はないですが、弟(※俳優の加藤憲史郎)が大河ドラマ『西郷どん』(2018)でがっつりご一緒しているんです。なので、弟や母から「とにかくいい方!」という話は予々聞いていました。それで、今回の『デスノート THE MUSICAL』が情報解禁になったときのコメントを読んだら、僕の名前をわざわざ挙げてくれていて……! さすがですし、嬉しいです。いや、僕も書いておけばよかった!(笑)

そんな蒼くんの月(ライト)がどうなっていくのかも楽しみ。互いに吸収しあったり、刺激しあったりする部分があればいいなと思います。年齢差はちょっとだけあるんですが、カンパニーの中では2人とも若い方だと思うので、ダブルキャストとして支え合っていけたら。……いや、でも支える必要もない気がします。彼に僕が多分支えられるんだろうな。

――栗山民也さんの演出は受けてみたいと仰っていましたね。栗山さんの印象を教えてください。

演劇人ならば一度は栗山さんの演出を受けてみたいと思うのではないでしょうか。いろいろな先輩方や役者仲間が栗山さんの作品に出演されていて、皆さん、口を揃えて「稽古が楽しい」と言うんですよね。もちろん、あの『デスノート』の月(ライト)ですし、重みや責任、怖さみたいなものは感じているんですが、フラットに挑んで、たくさん勉強したいと思っています。

――舞台に映像にと大活躍されていますが、特にミュージカル作品に出演するときに心がけていらっしゃることはありますか?

ミュージカルは、総合芸術と呼ばれているだけあって、いろいろな要素が重なり合って、1つの表現になっているんですが、そこが1番難しいです。踊り、歌、芝居のバランスが大切かと思っています。歌が歌になってもいけないし、ダンスがダンスになってもいけないし……その舞台の上で、その人にならなくてはいけないわけですから。僕としては、その人の心の叫びや感情の起伏があってはじめて、メロディーに乗って歌ったり、リズムに乗って体が動いたりすると思うんです。だから、「歌だ!」「ダンスだ!」といった無駄な意識を極限まで取っ払いたい。無意識的にその人として喋れるようになるために、稽古やレッスンがあると思っています。

そうは言っても、ミュージカル。歌えることが大前提とされていますよね。そこは特に大切にしつつですが、突き詰めるとやはり舞台上で、その人としていかにあり続けられるかが1番大事なことだと思っています!

――子役から着実に俳優としてのキャリアを歩まれている加藤さん。どんな俳優になりたいなど、夢を教えてください。

もともと僕が多趣味で好奇心旺盛な人間というのもあると思うんですが、いろいろなことに挑戦し続ける役者、自分で自分の可能性を広げていける表現者でありたいと今は思っています。経験の有無にかかわらずチャンスがあるのであれば、果敢に挑んでいきたい。そこで自分は何を選ぶのか、そして、皆さんに何をお届けできるのか。ストイックに突き詰めていったら、役者人生を楽しめる気がするんです。

僕はやはり、他人の人生を生きるのが好きで、この仕事をやっています。一生しかない人生の中で、いろいろな人になるのが楽しいし、好きなんです。だから、今回、僕は月(ライト)のように惨いことはできないな〜と思うけれど、月(ライト)になったらなったで、何か新しい物の見え方ができるかもしれませんからね。

2020年舞台写真 左より)夜神 月役:村井良大、L役:高橋 颯、死神リューク役:横田栄司 (C)大場つぐみ・小畑健/集英社

――今回の夜神 月役は確実にご自身の可能性を広げる役にはなりそうですね。

そうですね、そうなるといいなと思います。ミュージカルや演劇や映像といったジャンル関係なく、いろいろなことを1つずつ積み重ねて、たくさんの色の花束を作れるようになりたいです。

――とても素敵だと思います。いろいろなことに挑戦したいと思われたのは、何か明確なターニングポイントがあるんですか?それとももともとそういう考えをお持ちだったのですか?

僕は昔から優柔不断で、将来の夢も複数あったんです。幼稚園の頃、だいたいみんな「お花屋さん」とか「仮面ライダー」とか1つは夢があると思うんですけど、僕はそのときから「忍者とバスケットボール選手と警察官」と3つ夢がありました(笑)。「役者と野球選手」なんていう時期もあったかな。だから、もともといろいろなことを楽しみたい人間なんだろうなと思いますね。

――最後に、観劇を楽しみにされている皆さまに一言お願いします!

どんな夜神 月になるのか、まだ僕も全く想像つきませんが……2015年の初演と、今回の2025年の『デスノート THE MUSICAL』は、キャストも違いますし、いろいろな意味合いやお客様の受け取り方も変わってくると思うんですが、いつ観ても楽しめる世界観であることは間違いないと思うんです。僕も客席で観たいぐらいです(笑)。ぜひ皆さん、劇場に足を運んでくださったら嬉しいです!

取材・文=五月女菜穂

公演情報

『デスノート THE MUSICAL』
 
<東京公演>
期間:2025年11月24日~12月14日
会場:東京建物 Brillia HALL
主催・企画制作:ホリプロ
※ツアー公演あり
 
<キャスト>
夜神 月:加藤清史郎/渡邉 蒼(ダブルキャスト)
L:三浦宏規
弥 海砂:鞘師里保
夜神粧裕:リコ(HUNNY BEE)
死神レム:濱田めぐみ
死神リューク:浦井健治
夜神総一郎:今井清隆
 
俵 和也
石丸椎菜
岩橋 大
大谷紗蘭
小形さくら
尾崎 豪
 駿
川口大地
神田恭兵
咲良
田中真由
寺町有美子
照井裕隆
藤田宏樹
増山航平
町屋美咲
松永トモカ
望月 凜
森下結音
安福 毅

岡 明(スウィング)
森内翔大(スウィング)
 
<スタッフ>
原作:「DEATH NOTE」(原作:大場つぐみ 作画:小畑健 集英社 ジャンプコミックス刊)
作曲:フランク・ワイルドホーン
演出:栗山民也
歌詞:ジャック・マーフィー
脚本:アイヴァン・メンチェル
翻訳:徐賀世子
訳詞:高橋亜子
編曲・オーケストレーション:ジェイソン・ハウランド
音楽監督:塩田明弘
美術:二村周作
照明:勝柴次朗
音響:山本浩一
衣裳:有村 淳
ヘアメイク:鎌田直樹
映像:上田大樹
振付:田井中智子
歌唱指導:ちあきしん
演出補:豊田めぐみ
舞台監督:加藤 高
 
公式HP=https://horipro-stage.jp/stage/deathnote2025/
公式X=https://x.com/dnmusical
公式Instagram=https://www.instagram.com/dnmusical/
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