タラ・エロート(メゾソプラノ)

インタビュー
クラシック
2016.1.21
タラ・エロート(メゾソプラノ) ©Dario Acosta

タラ・エロート(メゾソプラノ) ©Dario Acosta

リサイタルを一つのストーリーとして表現したい

 この3月、東京・春・音楽祭で日本デビューするタラ・エロートは、今世界で一番注目されているメゾソプラノの一人である。1986年にアイルランドのダブリンで生まれた彼女は、21歳のときにバイエルン国立歌劇場の研修所メンバーとなって以来、ミュンヘンを拠点としている。現在は、同歌劇場専属となって6シーズン目となる。

 最初に彼女が世界的注目を浴びたのは、2011年にバイエルン国立歌劇場の《カプレーティとモンテッキ》に、わずか5日間でロメオ役を学んで出演した時だろうか。ここのところオペラでは、《チェネレントラ》表題役などのロッシーニや、モーツァルトの諸役での活躍が目立つ。高音も伸びやかで自由な彼女、今シーズンは《コジ・ファン・トゥッテ》デスピーナ役でのデビューを既に果たし、6月には《フィガロの結婚》スザンナ役も初めて歌う。
「ミュンヘンは、素晴らしいところです。私のような若い歌手の成長を長い目で見ながら応援してくれる、温かさがあります」

 数年前にキャリアの3分の1をリサイタルに取り組む時間と決めた彼女、日本デビューも歌曲リサイタルで飾る。去る12月初旬にカーネギー・ホールで歌ったプログラムを基本に、東京でも歌うという。
「歌いたい曲が沢山あって、レパートリー選びにはいつも苦労します。そこで最初に作曲家を選び、それから曲を選びました。R.シュトラウスは、今の私にとても合っていると思うので、歌わなくてはと思いました。ブラームスは大好きなので、どうしても入れたかったのです。それから、ミュンヘンで研鑽を積んでいますし、今の私のスペシャリティーはドイツ語だと思うことも、二人を選んだ理由の一つです」

 リサイタル全体で「一人のキャラクターが積む人生経験を伝えたい」という彼女。今回は前半でリストの曲を歌うが、これらは音楽的なバランスとともに、全体の“ストーリーテリング”という意味でも、後半のブラームスとシュトラウスとぴったりなのだという。
「“ストーリーテリング”は、アイルランド文化の奥深くに根ざしています。アイルランド人なら、詩人であれ、歌手であれ、誰もがストーリーを伝える能力を持っているのです。ストーリーを伝えることによって、人を幸せにする。それを私は歌を通じてできることに、深く感謝しています」

 彼女自身は今回が初来日であるが、実は妹さんが東京に留学していたことがあったという。
「妹は、日本で素晴らしい経験をしたみたいです。今回、思いがけない形で日本にお礼をする機会ができて、とても嬉しく思っています」

取材・文:小林伸太郎
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年2月号から)

東京春祭 歌曲シリーズ vol.17 タラ・エロート(メゾソプラノ)
3/25(金)19:00
東京文化会館(小)
問合せ:東京・春・音楽祭サービス03-3322-9966
http://www.tokyo-harusai.com

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