ジョイス・ディドナート 来日決定「世界屈指のメゾソプラノ」といわれうる絶対的な理由

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2026.1.9
 (C)Josef Fischnaller

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現代最高のメゾ・ソプラノと名高いジョイス・ディドナート(Joyce DiDonato)が、2026年5月に来日する。彼女の魅力を知るオペラ評論家 香原斗志氏よりコメントが到着した。
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世界屈指のメゾソプラノ――。ジョイス・ディドナートには、そう謳われる明確な理由がある。
長年にわたり世界中で引く手あまたの彼女は、デビューしたころから、ほぼ唯一無二の才能を備えており、それはだれにも真似できないものだった。

デビュー時からしばらく、ディドナートが圧倒的な輝きを放ったのは、ロッシーニやバロック・オペラでの歌唱だった。それは18世紀までに確立されながら、一時は失われた「ベルカント時代」のきわめて高度な歌唱法を、完璧に身に着けていたからだった。18世紀から19世紀前半の伝説の名歌手が、ドラえもんの「どこでもドア」を開けてやってきたかのように、現代の名歌手100人が束になっても敵わないほど、聴き手の心を揺さぶりつくす圧巻の妙技を聴かせた。

現代のほかの歌手が到底まねできない水準のテクニックを駆使できるのは、歌唱の基礎がだれにも増して完璧で、どんな歌唱にも対応できるように形成されているからである。テクニックはあっても声が軽く、歌えるレパートリーがかなり限定される歌手もいる。だが、ディドナートの声にはスケール感も力強さもあったので、鉄壁のテクニックを備えているという強みが、どんな役を歌ううえでも活かされた。

だからいま、バロック・オペラやベルカント・オペラはもちろん、ロマン派のオペラや現代作品まで、異次元の水準で歌いこなす。その歌唱は心理的な描写においても迫真的だが、強い感情を表現するために、ことさらに大仰な表現をするようなことはまったくない。常に抑えが利いた表現で、品格をたもったまま、強い感情をにじませる。これも盤石な基礎と、類例を見ないレベルのテクニックの賜物だといえる。

(C)Simon Pauly

(C)Simon Pauly


それほどの歌手であるだけに、過去に来日経験はあるものの、聴ける機会が滅多にない。
しかし、ひとたびその声を浴びれば、全方位的に研ぎ澄まされた響きに、聴き手は魂の震えが止まらなくなる。実際、筆者はこう書きながら、生で浴びたときのディドナートの声がよみがえり、震えが止まらなくなっている。

文=香原斗志(オペラ評論家)
 

公演情報

ジョイス・ディドナート メゾソプラノ・リサイタル

日程:2026年5月31日(日)19:00開演
会場:サントリーホール

出演:
ジョイス・ディドナート(メゾ・ソプラノ)
クレイグ・テリー(ピアノ)

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